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勝手に流れる涙と筑前煮

元気がない。
冷蔵庫の奥でしなびてしまった野菜のように、くったりとしている。
何かが明確に起きたわけではない。
でも、何かが心に積もっている。
これは、不安というのだろうか。

***

昨日と今日と、それを見ないようにするのに、必死で、何かしなきゃ、何かしなきゃと過ごしていた。

ドラマを5本みた。
本を2冊読んだ。
新しい本棚を組み立てて、そこに本を並べた。
時間をかけて筑前煮を作った。
映画を見た。

それでも、全ての時間を埋め尽くすことはできなかった。
疲れているものだから、すぐにねむくなる。
特にやらなきゃいけないこともないから、大人しくベッドに吸い込まれる。
目をつむる。
寝付くまでのわずかな時間…

目と鼻が急に赤くなる。
とまどった。
自分の意思とは関係なく、勝手に目から水分が流れてくる。
やだ、やだ
トレーナーの袖で、拭っても拭っても、足りない。
やだ、やだ

昨日の夜、泣いた。
今日の朝も、泣いた。

朝がすぎて、昼が過ぎて、夕方になった。
ずっと部屋にいた。
このままじゃ駄目かもしれないと思って、外に出て、スーパーで買い物をした。今日はポイント2倍デーだし。

帰り道、少し遠回りをした。うっかり空白の時間ができてしまわないように。
空に浮かぶ月をみて、まんまるだな、と思ったりした。

小さなこと、ひとつひとつを拾い上げて、ばかみたいに丁寧に、確認した
私は、大丈夫。
月がまんまるだな、と思える。

***

晩ごはんは、筑前煮。
2日続けて、筑前煮。

昨日は、1時間以上かけて、食べた。
味は、よくわからなかった。
食べているうちに、お米もおかずもすっかり冷めてしまって、おいしいとは感じなかった。

今日は、はっきりと、おいしかった。
冷めないうちに食べきろうと思っていたけれど、意識する必要もなかった。

おいしい。
鶏肉もごぼうも、れんこんも、にんじんも、こんにゃくも、ねぎも。
箸でつかんで、口に入れて、噛み締めた。
同じ味がついているのに、それぞれが個性的な触感と味でびっくりした。
お米も白く、さっぱりもちもちとしていた。
あたりまえのことに、ばかみたいに丁寧に、感動した。

食べ終わっても、物足りない。
まだ食べられる、と思った。
食べられるうちに食べておかなきゃ。

おかわりをした。
たぶん、小学生ぶり。

自分が前向きになっていくのを感じた。
ご飯を食べるというのは、すごい。

***

今日は早く寝よう。
この元気がなくならないうちに。

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