スッ〇リの「からあげは手抜き」発言に感動した話

◼︎本文章はフィクションであり、実在する人物、団体、キャラクター、その他森羅万象とは一切関係がありません。
◼︎本文章を読む上で生じた精神的、肉体的および社会的な苦痛、気分を害した、時間の無駄だった等に対しては、一切の責任を負いかねます。


2ヶ月前の話なので覚えてない人もたくさんいると思いますが、8/10放送のスッキ〇での男性の「からあげは揚げるだけだから手抜き料理」という発言をきっかけにTwitterが大盛況でした。

とは言っても、いきなりこんな発言を取り上げて勝手に炎上したバカな話というわけではなく、きちんと前振りがあって燃えるべくして燃えた放送でした。

そもそも当時のTwitterでは、それなりの頻度で手抜き料理云々が話題になり盛り上がっていました。一番最初の元ネタは以下の「ポテトサラダくらい作ったらどうだおじさん」だったはずです。

「母親ならポテトサラダくらい作ったらどうだ」の声に驚いて振り向くと、惣菜コーナーで高齢の男性と、幼児連れの女性。男性はサッサと立ち去ったけど、女性は惣菜パックを手にして俯いたまま。
私は咄嗟に娘を連れて、女性の目の前でポテトサラダ買った。2パックも買った。大丈夫ですよと念じながら。

引用元:https://twitter.com/mitsu_bachi_bee/status/1280640234120568832

上のツイートが発端で広がっていたポテサラおじさんブームを受けて、少し後に盛り上がったのが以下のツイート。

夜ご飯しんどくて冷凍餃子にしたの。
長男が『ママ餃子美味しい!』って喜んでたの見て旦那がすかさず
『手抜きだよ。これは れ い と う っていうの』
この人ポテサラじいさん予備軍みたいなんで埋めるか打ち上げて良いですか

引用元:https://twitter.com/ponkots15493241/status/1290605153993633793

そして上を受けての味の素冷凍食品の公式垢の反応がこちら。
(長いので頭のツイートだけ貼ります)

冷凍餃子を使うことは「手抜き」ではなく「手“間”抜き」ですよ!
工場という“大きな台所”で、野菜を切って、お肉をこねて、皮に餡を包んで…という大変な「手間」をお母さんに代わってに丁寧に準備させていただいています。(続)
引用元:https://twitter.com/ff_ajinomoto/status/1291359002018758656

いかにも”Twitter”って感じがして良いですね。


実際に番組でもポテサラや餃子の話題に軽く触れてから件の発言を流したらしく、構成として明らかに「意図して火を点けた」ことが分かります。

ですが、これまで紹介してきたインターネットとは違い、この手の炎上商法においてはテレビ番組が圧倒的なアドバンテージを持っています。
上のTwitterでは「惣菜のポテサラに苦言を呈するジジイ」「冷凍餃子を手抜き呼ばわりする夫」という架空の人物を用意する必要があり、ここにリアリティがないと陳腐な創作になってしまい、マーケティングの品質を担保できません。
その点テレビ番組では、「からあげは手抜き」発言を「映像」として用意することで、これ以上ないリアリティをもった創作を視聴者に届けることができます。それさえすれば後は何もしなくても、視聴者が「テレビでこんなこと言ってるんだけど」という「事実」をツイートし、テレビを持っていない人たちまでどんどん拡散していきます。

冷凍餃子のツイートが8/4、唐揚げは手抜き発言の放送が8/10なので、かなりのスピード感で本放送の企画が進められていたことが分かります。この仕事の速さも結構重要で、多分あと1週間遅れていたら「いつの話してるんだよ」と感じる視聴者も少なくなかったかもしれません。


テレビや新聞などのマスメディアに「オールドメディア」なんて呼び名が付き始めた昨今では、それらは情報の早さだけではなく「現実構成力」の面においても絶対的だった立ち位置を失いつつありました。
しかし、今回の件はどうでしょうか。Twitterで盛り上がっていた話題を利用して「世の中にはからあげを手抜き料理だと思っている男性が存在する」という現実を構成することで、この話題を知っている人全てに対して「いや、からあげは手抜きじゃないでしょ」と思わせる機会を得ています。
この日のス〇キリを見ていたか、テレビを普段から見ているかに一切関係なく、あらゆる人を炎上商法のスコープに入れています。

あまりにも鮮やかなマーケティングで感動してしまいました。
僕はテレビ大嫌いなので、テレビ番組を作ってる人や見ている人を心底馬鹿にしながら生きてきたんですけど、これを機に少し考えを改めようと思いました。



本記事全編において「”唐揚げは手抜き”発言は台本である」ということを前提として話を進めていますが、これは「味の素が〇ッキリのスポンサーである」ということを根拠にしています。
参考:https://w.atwiki.jp/tvsponsor/pages/27.html


テレビにとってお客様はスポンサーであるので、スポンサー様の望む番組をスポンサー様の機嫌を損ねない内容で提供するために努力が必要です(その努力を「支払い義務」の一言で不要にしている怠惰な放送局もあるみたいですが)。

顧客の看板商品に泥を塗りかねない内容の発言をノーチェックで流す馬鹿な組織は流石に存在しないと想定して、十分な会議やレビューを経た上での台本であると考えて間違いないはずです。

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