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僕の好きな蕎麦屋

好きと言ったってね、たった一度だけ訪れてザルの大盛を喰っただけの小さなお店なんです。
それがもう美味いのなんのってなんて、、残念ながらそんなこと全然なくてね、フツーの白い更科なんですよ。

ススキノの少し外れにある蕎麦屋。
0番地から大雪の積もった道をビクビクしながら歩いた夕刻前。
店には七十は確実に過ぎた老店主が厨房に居、三十代の後半であろう息子が狭い店内に居た。老店主がガチャガチャと食器を片付けているそばで、この息子らしき男は店内で時折テレビをチラチラと見ながら、ガフガフと長靴特有の足音をたてながら店内を歩く。
このビミョーな親子関係を感じながらすするザルの味がなんとも言えないんです。
想像と妄想が脳内のほぼ全てを覆い尽くしてますから、そうと決めたら一途の思い込み男です。
被害妄想上等です。

シーンっとした狭い店内には人の声なんてしませんよ、全く。
テレビとヒーターの燃える音が微かに聞こえるだけ。
ヒソヒソと話さなければいけない雰囲気だけれど、蕎麦だけは江戸っ子並みにサビを蕎麦にチョイチョイとのせて一気にザーっとすすります。
もちろん、つゆになんてほんの少しだけ、手繰った蕎麦の先っちょにちょろっとつけるだけです。
薄暗い厨房とカウンターの間にかかった暖簾の隙間から「おやおや??あのお方もしかして江戸っ子じゃないの」なんて老店主が目を細めるなんてありえませんから、安心して下さい。
強いて言うなら、「早よ食えよー」、、みたいな感じのオーラですがそれもまた味。って言うかね、名古屋くんだりから飛行機に乗ってJRに乗り継いで地下鉄に乗って一直線にススキノまで蕎麦喰いにきたなんて、まさかそんな妄想しないでしょ。


こうなると更科だろうが十割だろうが田舎だろうが、蕎麦の香や味なんてもうどうでもよろしい。
このビミョーな親子の醸し出すヒソヒソ、シーーーンに早よ食えよーーの店内の感じが好きでたまらないのだ。

つぎは名物の筋子のオニギリとビールで長居しますんで!

ヒソヒソ!ゴクゴク!でリピート決定!

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