君たちはどう生きるかという漫画

娘が友達から借りてきた漫画を読み始めた。数年前に流行った漫画だ。

1章の主な内容の一つが地動説と天動説を用いたメタファーだった。それは、立花隆さんが晩年に若い人へ向けて講演した内容とも重なった。その時立花さんは、極座標的思考からデカルト的座標への転換という言葉を使っていた。脳の構造が成長期から青年期へと変わるその境目が丁度、聴衆者である大学生くらいの年齢だと。22〜24歳位を境に、脳波が変わり、それは可塑性をもつ脳から在るものを組み合わせていく脳へと変化していく時期だと。そしてI/O比は比例すると。アウトプットはインプットと比例するから、アウトプットしていく基となるインプットの量を増やすことができる限界が、脳波の変化する24歳くらいまでだという話し。

若いうちは自分が世界の中心だと勘違いしがちだけど、そのままではダメだよね、ということを原作の吉野さんは書いていて、立花さんも極座標とデカルト座標の違いを説明する時に、地動説と天動説を用いていた。

立花さんは70歳を超えて、若い人へ伝える役目というものを感じられたそうで、その時に孔子の言葉を持ち出していた。

子曰く十有五にして学に志す。三十にして立ち、四十にして惑わず、五十にして天命を知り、六十にして耳順い、七十にして心の欲するところに従えども矩をこえず。

そして、四十五十(五十六十)は鼻垂れ小僧とも。

漫画の主人公は人間の活動と分子に類似性を見ているのだけど、組織、器官とマクロ化していく視点と、原子、素粒子とミクロ化していく視点で、どうやって人間社会のメタファーを娘に伝えていこうかと思う。多分、自分もよくわかっていなくてだからこそ色んな本を読んで考えていくのが楽しくて、自分が無知であることを知れるだけでも学び続ける意味があるよとは言えそう。

立花さんのように「20世紀以前の世界像はニュートン力学。デカルト哲学。ユークリッド幾何学が三位一体をなして支える古典的自然科学世界像が基盤」などと続けられれば良いのだけど、そうはいかない。ヴィーコについても言及し、人間の知的活動の面白さを伝えられたら良いのだけど、自分の知識量が足らない。だからこそもっと学びたいと思う。子供と学び直しという楽しみもできた。老眼になるまでに、あと何百冊本が読めるだろう。

なにより、共通の話題を通じて話ができる楽しみができ始めたことが嬉しい。読んだ漫画について感想のシェアができるようになるなんて。

野球選手の大谷翔平さんが、日本の子供達に留学体験の機会を与えるキャンペーンを展開している。ポケットマネーで100人の子供達にアメリカ留学をプレゼントしてくれるそれは、応募資格が小学4年生からなので、娘にも挑戦してほしいなと思っている。スタンフォードのマネジメントエンジニアリング学部教授ティナ・シーリングが言うように、曲がり角の先を楽しめるようになると色んなん選択肢が増えると思うから。色んな人に出会っていってほしい。


読み終えて

思春期を迎えた中学生から新社会人向けの漫画なのだろうけど、その頃流行していた超訳ニーチェとか、あの類の延長線上にある商品のようで、中身の軽いものだった。深く読みたい人は同時に販売された活字版の方を読んでくれということなのだろうけど、読もうとは思わない。

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