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英検1級・一発合格への道

 2023年12月1日。小学生の娘たちに、英検1級の合格報告をすると、「ママすごい!一発合格じゃん」と、長女は自身の水泳教室の進級テストと重ね合わせて初回受験での合格の難しさを知っているのか、何度も賞賛の言葉をもらった。なので、この記事のタイトルに「一発合格」を入れることにした!
 英検なんて、遠い学生時代に受験した記憶がうっすらあるのみという友人・知人へ、気になっていることだけ、目次をクリックして拾い読みしてもらえればと体験記をつづります。


1.英検という鉄板資格

公益財団法人日本英語検定協会が発表した最新の受験状況

 娘たちの通う公立小学校で、週末に英語教室を開催するようになったのは一昨年の冬。ボランティアとしての無償の講師なのだから、誰かに自分の英語力を示す必要性もなかったのだけれど、ふとした時に英検の受験者数は年間なんと400万人超という数字を耳にした。英検を主催する英検協会発表の2022年度の志願者数は、実際約420万人だ(2021年度は同370万人、2020年度は同390万人)。

また、受験者数が増加の一途の中学受験や、高校や大学への入試においても、英検という資格が有利にはたらいていると聞き、日本の教育界で支持されていて、自分が教える子供たちの英語レベルの指標とされているなら、自分も最上級を持っていた方がいいな、という考えがもたげたのが、昨年10月に筆記の一次試験、そして11月に面接の二次試験を受けた理由だ。

2.最新の英検1級の合格率は?

 合格率は2016年以来発表されていない。それまでと異なる新しいスコアの算出方法(CSEスコア)が導入されるなど、採点方式に大幅な変更が生じたからだ。2016年以降、全受験者の採点終了後に難易度・形式の異なる試験の結果を比較するための統計的手法を用いて、難易度において公平性が保たれるようになってた。2015年までは、正答数を基準とした合否判定だっとらしい。

加えて、新たなCSEスコアは、国際的な語学力の指標であるCEFRとの比較が可能になっている。さらには、4技能ーつまり、リーディング、リスニング、ライティング、スピーキングーごとの配点はすべて均等になったため、極端に苦手な技能が1つでもあると合格が難しくなっている。

1級は合格率12%という数字をよくみかけるが、英検協会から最後に発表のあった2015年度のデータだ(2014年:10.9%、2013年:10.9%)。このデータは、合格者数÷志願者数であって、当日欠席した志願者数もカウントされており、分母を受験者数とした場合には、合格率はもう少し上がってくる。

最後に合格率が発表されてから8年後に受験している私だったが、その間に日本人の英語力の底上げがはかられるような転換点もなく、英検1級の志願者の7割超が社会人であり、実際、1級の受験会場の会場に集合した人々の年齢層は30〜40代の印象だったことを思えば、例え、日本人の英語力の底上げがはかられるような効果的な指導要領の改訂があったとしても、この間にその恩恵に預かれるタイミングでは義務教育どころか、高等教育過程を終えている世代が厚い受験者層なのだ。その他の学生の層も、1級受験となれば青年層であると思われ、2020年の改訂で英語の授業が小学3年生からに前倒しという程度で、英語教育の抜本的改革はなきままの日本で、その合格率は前述した2013-2015年の合格率から大きく改善も改悪もされてはいないのではないだろうか。

実際、まったくもって「個人的な感想」ですという、何かの商品広告にでもありそうな文句を前提にすれば、2023年度第2回受験時の試験会場における私自身の経験は次のようなものだ。合計100分のリーディングとライティングを終えた後の、リスニングの試験では、問題を耳で聴きながら、即座に眼前の問題の正誤を判断して、正解を選び出す力が必要だが、試験問題の見開きページ最後の問題が読み上げられる度に、その瞬時のタイミングで、試験問題をめくっていた受験者数は、私の受験した30人強を収容する教室では数人程度だったというのが私の耳が捉えた印象だ。都心のとある試験会場の一教室での、リスニング問題に限ってその解くスピードの速いグループがその教室の全受験者数の12%程度、つまり3~4人(合格者レベル)だったのではないかという乱暴なサンプリングによる推測ではある。

けれど、実際に受験してみて、日本国内だけで英語の教育を受けてきたとしたら、英検1級の英語力(下記引用をご参照)を身に付けるのは正直非常に難しいレベルの問題だと感じたし、それが合格率10数%程度と言われれば、日本の公教育における英語教育が、英検1級という、グローバルな世界に耐えうる英語力を身に付けさせるには不十分だという証左ではないかと感じた。
 下記は英検1級で必要とされる、CEFRのC1レベルについての説明。

いろいろな種類の高度な内容のかなり長い文章を理解して、含意を把握できる。言葉を探しているという印象を与えず に、流暢に、また自然に自己表現ができる。社会生活を営むため、また学問上や職業上の目的で、言葉を柔軟かつ 効果的に用いることができる。複雑な話題について明確で、しっかりとした構成の、詳細な文章を作ることができる

文部科学省「各資格・検定試験と CEFRとの対照表

3.TOEICと比較してみると?

英会話教室大手のECCが前述の国際標準スコアCEFRをもとに作成した比較表

私には英検を受ける差し迫った必要性はなかっただけではなく、既に社会人として20年以上を過ごしてきて、過去の節目で受験し、転職時に英語力の証明に使用してきたTOEICの得点があった。2010年に取得した945点という数字だ。

2022年に英検受験を思い立って、前述の国際標準スコアCEFRがC1の英検1級に相当するTOEICの点数を調べると、なんと945点以上が目安、つまり、10年前の実力ではあるけれど、合格ラインすれすれとも言える能力は、保持していた瞬間が過去にはあるという結果になった。

なお、受験料は、1級に至っては11,800円で、決して安くないどころか、育児と家事と国家公務員としての仕事で、15分の時間だって捻出するのが難しい自分には、この比較表を見た上で、勝てる試合だなと判断して臨むことを決意した。因みに、英検協会から、2024年度以降は受験料の値上げが発表されていて、1級は12,500円になるという。鉄板資格ゆえの、強気の値上げだ。

4.傾向と対策

(1)現時点の実力を知る
 英検協会では、過去3回分の過去問を解答とともに掲載してくれている。私にとっては、勝算はあっても、その根拠が10年前の実力だったから、受験の半年前に初めて過去問を解いてみた。読解問題もリスニングも数問の間違いはあったが、9割の正解率だった。ここで読解問題と書いたのは、リーディングには、25問からなる語彙問題のパートと、16問の長文読解問題から成っているから。英検1級の単語は、 TOEICと比して難易度が非常に高いと言われていて、私は全く歯がたたず、6割の正解がやっとだった。実際の受験では、リスニングが88%、語彙問題56%、読解問題81%だった。上記3.で、各技能の得点が極端に低い場合には合格できない配点がされていると書いたが、リーディングでは、読解力が語彙力不足を助けて合格できた感じだ。 
 なおなお、事前対策では、勉強時間の捻出が難しい中、コンスタントに無味乾燥な単語力強化をすることができず、この点、なんら対策できていないていで受験した。が、1級受験により、自分の英語力を客観的に把握できたので、語彙力と同時にその他の弱点と認められた力をつけるため、底上げを強く願い、以後早朝に無心に英語の勉強をするようになった。
(2)一次試験の時間配分
 リーディングとライティングで100分が試験時間だ。たいていの参考書には、ライティング25分の配分が推奨されているが、社会問題(青少年犯罪や、人権問題などなど)、国際問題(核兵器やテロなどなど)、経済・ビジネス(雇用制度と所得格差問題、ビジネス倫理とCSRなどなど)、環境(温暖化対策、生物多様性などなど)、この他文化や教育の側面など広範囲の対策が必要になるパートだ。誰しもある苦手な分野からの出題となった場合でも、このパートだけであっても、低い点数は不合格につながるので、私自身は40分を充てる予定で、実際には35分を費やして作文した。なお、私の時の問題は「Do social welfare programs help reduce inequality in society?」だった。
 語彙問題に10分、リーディングに45分(ライティングで予定より余った5分をここに充てた)で、10分余らせることで、次に始まるリスニング問題の先読みをしておいた。
(3)二次試験の実践演習は必須

英検協会が二次試験のサンプル問題としてHPに掲載している5つのお題


a: 形式 与えられた5つのお題から一つを選び、2分間のスピーチをするというもの。この問題を裏面のまま試験官から手渡され、表に返してから1分間で、お題を決めつつ、準備する。自分の意見とその意見の根拠を2~3のパラグラフとして述べる準備だ。
 1分後に、スピーチを始めるように試験管から指示があったら、導入、本論、結論の構成で、本論は少なくとも二パラグラフを必要としつつ、2分のスピーチをする必要がある。
b: 実践練習 英検の一次試験の合否がwebで確認できるようになってから、1か月後にこの面接型式の二次試験がある。テーマは上記サンプルのとおり、一次試験のライティング対策と同様の何らかの社会/経済/国際問題などなどについて自分の意見を述べることが求められており、ライティング対策と同様の、知識と自身の意見を支える根拠の整理が必要になる。
 私は2分間のスピーチの感覚をつかむことに不安があり、今やあまたあるオンライン英会話コースから、ヴァリューイングリッシュという会社の、英検1級二次試験対策に限定した講座、といっても、毎回30分のレッスン中に、二次試験の予行練習と称して、ひたすら実践練習を積み上げた。おかげで、試験直前には2分間のスピーチというものがどの程度の長さの文章で組み立てるものなのかについて、体得できるようになっていた。

最後に:教え子たちに伝えたいこと〜英語の楽しさを見失わないように〜

 私が合格可能性があると踏んで受験しながらも、とにもかくにも絶対に1回で合格したいと強く願った理由がある。試験の合否だけで人の能力をはかるという、あたかもそれが絶対的な指標でもあるかのように取り扱われる状況が、例えばそれが、未来ある、そして心はとても繊細な子供達が置かれている状況であればなおさら、自分にとって非常に嫌悪する状況であって、合格という目標に向けて自分自身の時間を試験勉強に投資するなら、最低限にしておきたかった。
 我が子たちの幼い頃から、より良い教育環境を求める親の心理は痛いほど理解できるけれど、試験の点数や合否で自分がはかられる存在として扱われるとしたら、非常に苦しいものがある。
 なので、私の英語教室では、英語の楽しさをレッスンの合間にできるだけ語ることにしている。私自身、早期教育とは程遠い、20代で自らの意思で英語を身につける訓練をし、その後海外の大学院へ留学もし、仕事でも英語を駆使しながら、その結果、どれだけ充実した日々を送ることができたか、住んだり、出張したりした国々でのエピソードを交えながら、英語が通じる楽しさを伝えることに努めている。
 レッスンメニューは、フォニックスを中心に、正しい口の動きで、正しい発音を身につけ、話すことができれば、英語を聴くこともできるという感覚を身につけてもらいながら、自分の考えを論理的に述べられるレッスンに進んでもらっている。これを数年、楽しく続けることさえできれば、小学生のうちに5級や4級、より熱心に取り組める子であれば、必要最低限の試験対策で、英検3級にも合格できる力が身につく。
 英語は紙の上で能力を示すことではない、自分の考えを、他者の考えを、地球上で最も多くの話者がいる言語を介して、違いや共通項を見出しながら、互いをいかにリスペクトしながら関係性を築いていけるかの実用的ツールだ。合否に縛られて、その楽しさを見失わないでほしい。1人でも多くの子供に、英語が通じる楽しさを、世界の広さを感じられるツールを手にしてほしいという思いで、毎回のレッスンの準備をしている。


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