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【読書日記】 限界集落株式会社 黒野伸一 著

私の祖父母の里が胸に去来した小説でした。
日本の山間部の村はどこも似た風景なのでしょうか?
進学や就職で村を出た若者が帰って来ない高齢化が進む村、農業を継ぐものがおらず廃村の危機に陥る、それが「限界集落」。

本書はそんな「止村(とどめむら)」が、そこにルーツを持つ元銀行員・多岐川優の手で株式会社に変わっていく様子を描いた作品です。

もちろん、今回もご用意しました、YouTube!
お急ぎの方は、こちらをご視聴くださいませ↓


<ざっくりあらすじ>

あらすじも何も、もう上に書いたことがすべてです。

日本の農家、農業、JAについても深く書かれてあるし、都会から「農業研修」にやってきた3人のそれぞれの事情も昨今の格差社会や引きこもりが絡んでいて、身近な出来事として読めました。


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米作りは儲からない?

私にとって意外だったのは、米作りは儲からない、ことと、日本産の野菜が消費に対して余っていること。

お米は日本人の主食だから、どこの家庭にもお米は常備されているし、チンするだけのパックご飯を買い置きしている方も多いでしょう。
ファミレスでは、50円ぐらい払えばご飯大盛りにしてくれたり、お代わり無料ってお店もありますよね。
お米は必要とされているから需要もあり、作れば儲かると思い込んでいました。
本書によりますと、稲作は大規模にやれば採算性が高いけど、稲作面積が小さいとコストがかかるものだそうです。

また、スーパーマーケットでは輸入野菜を多く見かけるので、日本だけの生産量では私たちのテーブルは満たせないのだと、これまた思い込んでいましたが、どっこい、日本各地の農家、畑では野菜は余っているそうです。

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流通がネックになっていたり、JAが虫食いやカタチなどを理由に規格外として出荷しないため、適正価格で売れない野菜はたくさんあるそうです。

余談--祖父母のいなか--

この写真は、今は亡き祖父母が住んでいた家を改築して、いなかライフを頑張っている叔母が送ってくれた一葉です。

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場所は、岡山県。
兵庫県にも鳥取県にも近い位置にあります。
私が5歳ぐらいまで、祖父母は神戸市灘区に住んでいました。
結婚と同時にこのいなかから神戸に出てきて、母と叔母が生まれました。

祖父が退職後、ふたりはこの里へ戻り家を建て暮らしていました。
山間部なので冬は冷え込み夏は暑いけど、夜は高原のように涼しくなる村です。

この村も過疎化が進んでいます。
やはり進学で早い人なら中学校を卒業後、遅くても高校卒業後には村を離れるからです。
なかには進学や就職で村を離れ、都会で家族を持って暮らしていても定年退職後に高齢の(両)親のために戻ってくる人もいるようです。
叔母は、自分の両親はもう他界しているけれど、いなか暮らしがしたくてこの村に住み始めました。
とは言え、現在の神戸の住まいを手放してはいないので、いなかの家と行ったり来たりしながらの生活を送っています。

祖父が他界した後、いなかで一人暮らしをしていた祖母を、老後を心配した母が奈良へ呼び寄せました。
四半世紀ほど前になりますが、当時はもう奈良のケアハウスに暮らしていた祖母と親戚数名で、いなかの家へ行ったことがあります。
おじいちゃんとおばあちゃんが暮らしていた頃のままで、懐かしかったです。
小学校の頃、夏休みは毎年いなかの家で祖父母と過ごしたし、たまにはお正月も一緒に過ごしました。
中学生になり、クラブ活動や受験などを理由にだんだんといなかへは足が遠のいてしまいました。

2017年に祖母が亡くなり、2年後の法事の際に久しぶりにいなかの家へ行きました。
すでに叔母が手を入れていたので、家は傷む事もなく祖父母が暮らしていた頃のままでした。
しかし、家の周りは私の記憶にあるよりかなりこざっぱりしていて驚きました。
黒光りする見るからに重そうな瓦が載っていたあるお宅は、スレートに吹き替えられているし、土壁だったとおぼしき家は、モルタルの壁にアルミサッシの窓枠になっているし、ある家にはソーラーパネルが乗っていました。

叔母に聞くと、生まれ変わっている住宅はやはり都会で子育てを終えた息子や娘が戻って来ているのだそうです。

それでも若い世代がいないことには変わりなく、祖父母が通っていた小学校も平成半ばに他校と合併されてなくなったし、1時間に一本あったバスももう通学時間帯の朝と夕方に2、3本ずつある程度。
ここも限界集落でしょう。

続編あり

さて、「限界集落株式会社」には続編があるようです。
限界集落だった村に、オフィス用のハコモノまで作った止村。
多岐川優が率いる村の頭脳集団、高齢で働き者のおばあちゃんたち、そして、農業研修でやって来た3人が続編でどんな活躍を見せてくれるのか楽しみに、読みたいと思っています。



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