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[展覧会] Elias Sime "NOISELESS" at James Cohan

私が勤めているギャラリーの2件先に、James Cohan というギャラリーがあります。休憩にコーヒーを買いに行くついでに寄れる距離なのでよくのぞくのですが、今週まで開催中のエチオピア人作家 Elias Sime の個展が素晴らしいです。

プレスリリースにmonumental「記念碑的な」と形容されている、3メートルを超える巨大サイズの平面作品のシリーズで、少しくすんだ、色のとり合わせが好みで、とにかく大きな作品に圧倒されました。近づくと、電気コードやパソコンのキーボードなど、廃棄物を緻密に組み合わせて制作されたものであることが分かります。日本画の実に緻密な筆使いの表現を、コードやパソコンの基盤を打ち付けて表現してあるような感じです。

作家の故郷であるエチオピアの首都アディスアベバには、世界中から産業廃棄物が集まってくるそう。シリーズの名前は「Tightropes(綱渡り)」、技術革新と環境汚染の危ないバランスについて疑問を投げかける作品になっています。

ゴミでアートを作り社会問題を提起するという作品はたまにお見かけしますが、高尚なメッセージ性はあっても、アート作品としては面白味が感じられないことも多い気がします(個人的な感想です)。Simeの作品がすごいと思ったのは、とにもかくにもアート作品として絶対的な存在感があることです。ゴミ素材ありきで作ったわけではなく、「この質感、表現を実現するためにわざわざ素材を探したのではないか」と思わせるほどに、ゴミを完璧にアートに昇華させています。とにかく圧倒的なビジュアリティ、存在感で鑑賞者を引きつけ、作品に近づくと廃棄物でできていることに驚き、素材が語る文脈、社会問題に誘いこむ。社会問題を提起する作品としては、実にまっとうなアプローチだなと思いました。

この作品など、クリムトっぽくて詩的です。今写真で見てもウットリ。しかし近づくと基盤というギャップが面白いです。緑の部分は緑色のコードとくりぬいた基盤がみっしりと詰められています。


Elias Sime "NOISELESS" at James Cohan

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