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定額音楽配信と私

最初にお断りしておくと、これは単に「私がこう思っている」という話であり、それも趣味でDJをやるような、世間からすると圧倒的に少数派のアラフォーおじさんの独り言で自分語りであって、それらしいデータもファクトも示すつもりはないし観測記事の類でもないので、そういうのを期待している人は「定額音楽配信」とかでぐぐると山ほど出てくるそういう記事に飛んでほしい。

私がなんとなく定額音楽配信を遠ざけていた理由

先日メルセデスベン子=サンという方のツイートがいくつかRTで流れてきて、その内容にひざぽんしたところから話が始まる。かいつまむと、

昔は限られた予算の中で聴き放題にする音楽を決めるためにCDのことを調べて買っていた。その後定額音楽配信を使うようになって便利にはなったが音楽に対する興味が薄れたように思われる。世の中がみんなこの感じになると文化振興としてどうなのかと心配になる。定額音楽配信はビジネスとしてはいいのかもしれないが音楽自体に興味を引く作用が弱いのではないだろうか。

というようなお話であった。これが、私がなんとなく定額音楽配信を遠ざけていた理由につながっていると感じたのだが、特に関係があるのが「音楽に対する興味」の部分だろうと思う。

自分で利用したことはないのでこれは憶測で書くのだが、定額音楽配信というのは利用者が何となく音楽のジャンルや傾向、あるいは信頼する選曲者だけを指定して、それに合致する曲が入ったプレイリストに沿って曲が流れてくるといったもので、利用シーンとしてはきっと「聞き流す」というか、うっすらBGMとして楽しむ感じが多いのだろうなと思っている。

私が日常のなかで音楽を聴くシチュエーションというと自分の手元にある音源を何らかの形で聴いているか、あるいは自分以外の誰かのDJプレイを聴いているかがほとんどである。確かに自分以外のDJプレイについては基本的にBGMとして楽しんでいて、それでも耳につく曲というのはたまにあるが、それほどいちいち入れ込むわけではない。

問題(?)は、自分の手元の曲を自分で聴いている場合で、私はこれを「聞き流す」ということがなかなかできない。このあたりのことについては、件のツイートを読んだ後に私は以下のように書いている。

私は別に文化振興に責任を負う立場ではないし「digる」にこと責任を負ってるつもりもないのだけど、自分のライブラリについては、飽きない程度に鮮度を保ちたいということと、ほどほどに好きな曲じゃなくてだいぶ好きな曲だけで満たしておきたいという動機が強い。
https://twitter.com/cursed_steven/status/1101892992300802048
サブスクは私のライブラリを「豊かにする」のではなく「水増し」してしまうのではないかという忌避感があるんだよな。ほどほどに好きな曲じゃなくてだいぶ好きな曲だけを聴いていたいんだよ私は。「ハズレ」を聴くのに割く時間を極小化したい。
https://twitter.com/cursed_steven/status/1101893442651643904
変なところで我が強い人間なので「これはそれなりに純粋に私の好みで選んだのだ」と思っていたい。
https://twitter.com/cursed_steven/status/1101894163149217793

さらに要約すると「自分で聴くものはなるべく全部自分で決めたい」ということかなと思う。この日はここから自分のDJにそれがどう影響しているかの話になっていくのだがここでは割愛。

作者の不法行為を発端とするお蔵入りの慣習

深夜のTLに激震をもたらした「ピエール瀧逮捕」のニュースから数日、彼がかかわった音楽作品や映像作品について続々とお蔵入りのニュースが流れてきた。そのこと自体についての私自身の賛否についてはこの記事には関係ないので書かない。

が、私が今後どのようにライブラリの「飽きない程度の鮮度」を維持管理していくのかということに直接かかわると思っている。
今回のお蔵入り騒動の結果として彼がかかわる(特に音楽)作品を定額配信に頼っていた人々からは嘆きの声が多く漏れていて、定額配信に依存するのは自分で聴きたいものを自分で選べなくなることを意味するのだという言説がいくらかTLを流れていた。さらにそこに「定額配信は音楽家自身ではなくレコード会社が音楽流通を都合よく統制する手段なのだ」というニュアンスがついたツイートも見られた。

陰謀論風味が出てしまうとアレではあるが、いざこういうことになると困るので普段から音源を買って保持しておこうという話が出ている。私もおおよそ同じ考えである。

ダウンロード販売の利用が最適解かなと思う

そんなわけで、自分の手元で自分の好きなものを自由に聞くためには定額音楽配信よりは音源を手元に置くのが私にはよさそうである。
音源の入手方法としては大別してレコードやCDのような物理媒体とダウンロード販売される電子媒体があろうかと思う。

レコードは……慣れている人からすればいろいろとメリットも多いのだろうが、専用機材が必要であったりレコード盤自体の管理がやや難しいことを考える少なくとも私には向かないなと思っていて実際に(DJはそれなりに長い時間やってるけど)ほとんど持っていない。

CDは、アルバムジャケットまで含めたアーティストの作品としてのCDパッケージの意義云々という話に異論があるわけではないが(これはレコードもそうか)、いまの私はそこに興味がない。私の嗜好に合う面白い音や気持ちがよい音、前述のような「ライブラリに置いておきたい音」を効率的に集めるのには経済的な面で言ってもあまり有利ではない。
加えて、CDショップやレンタル店は今後もずっと減っていくのだろうし、そもそも入手が難しくなっていく可能性が高い。

そう考えると、少なくとも私にとっての最適解はダウンロード販売で、今後も当面 beatport なり iTunes Store なりを利用していくのがよいのだろうなと思っている。これは私の趣味の話だが、数千曲を整理して聴きたいときに聴きたいものを聴けるようにしておきたいと思うと、物理媒体では無理もある。

オチもないまままとめ(?)

最初の目次で書いておいたとおり、このままオチもなにもなく好きなような書き散らかしてこのまま終わるのだが、最後に少しだけ一般論っぽいことを書く。

世間で今後主流になっていくのは間違いなく定額音楽配信だろうと(私も)思う。

私は使わないが、自分で選曲しようという発想がそもそもない世間のふつうの人たちには(選曲しようと思うこと自体がすでに少数派なのだ)、誰かが「いい感じ」に選んでくれたものが何も考えなくても耳元に流れてくるのはきっと心地よいだろう。そして、その大多数の人たちはお蔵入り騒動に接しても特に何もしない。まぁそういうもんかとか、犯罪ならしょうがないよねとか、きっと苦も無くするっと受け入れる。

そんな世情の中で音楽ファン各位は、自分の心の王国(の音楽パート)を如何に自衛していくのか、その具体的手段は何だろうというようなことを、たまに少し考えておくのもよいのではないだろうかと思う次第である。

ダウンロード販売がなくなったら私はどうすればいいんだろうなぁ……。

【追記! @ 2019-03-20】

差オム=サンが言及してくれた。

これ、上記の私の記事で書き損ねている部分を見事に言い当てていて、それは「私は私のライブラリを自分自身でコントロールしたい、【でもそれは100%自分で制御できるということもありえない】」ということ。

たとえば私が普段使いしている beatport は、定額配信でこそないものの「膨大なライブラリ」には違いない。beatport の機能を使って、「フォロー」しているアーティストやレーベルの新譜をチェックするだけだと自分で100%選んでいるとも言えるのかもしれないけど、私がよくやるのはそこから「ところでこの人が出してるこのレーベルよく知らないんだけどどういうのやってるの」とレーベルホームに飛んで Best 10 をだーっと聴いてみたり、その Best 10 で知らないアーティストを見つけて「誰これ」とそのアーティストのホームに飛んでこれまた Best 10 聴いてみたりで、それこそ YouTube の関連動画で延々時間が溶けるあの体験に近いこともよく起きている。

これと同様の「出会いを演出」するチカラは定額音楽配信の強みとして挙げておくべきだろうと確かに思う。それにしても、

「配信側の都合によっていつ聴けなくなるとも知れない」点については、そもそも(演奏が先にある場合は)流れ去る音楽を捕まえる手段が録音なので、それがないならないで自然という話でひとつ。ほら世の中録音された演奏よりもそうでないもののほうが8万倍くらいあると思うよ。もっとか。8億で。

これ、シビれましたわ。差オム=サンの世界観とかクールネスがビシーッと出てて。

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