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これから「文化をやる」ということ

どうもカワムラです。

今回はアートに関わっていく中でわかってきた、これから「文化をしていくこと」について書きます。
これはアートに限定される話ではなく広く共有可能なものでそれぞれの領域で機能する、クリエイティブ業界全体の利益に繋がる話です。


「これから文化をする」には、「掘り下げる」「翻訳する」「アーカイブする」の三つを丁寧に行っていくことです。


もう少し説明すると、文化を先端する、それを同時代の人たちがその文化について語れるようにする、その文化を未来の人たちが語れるようにすることです。




「掘り下げる」とは、

これは一番わかりやすいものでその分野の技術開発を進めていくことです。
これまでされて来なかったことをやる、時代の変化に合わせた方法を採用するなどいろんな形はありますが、コミュニティの競争し合いながらどんどん掘り下げていく中で面白いものを作り上げていくことです。アンダーグラウンドカルチャーは、「オレたちの」の価値観を共有するコミュニティの中でオーバーグラウンドではできない、アンダーグラウンドという条件だからできることを開発する場です。ハードコアパンク、ハードコアプロレス、最近では地下アイドルの中で地上のアイドルではできない、地下アイドル固有性のようなものがどんどん開発されていてとても面白かったりします。ちなみにカワムラが注目している地下アイドルに「絵恋ちゃん」という方がいるのですが32人のオタクと結婚式をしたり、新婚旅行をしたりライブがすごいことになっていたりするのでオススメです。



「翻訳する」とは、

翻訳というと別の言語への翻訳をイメージされるかもしれませんが、そこに限定されることなく、世の中の多くの人に届けるためにわかりやすい言葉に翻訳するなどの意味も含みます。
特定の文化を別の文化圏、あるいはマスにわかるようにするためには、それぞれの文脈や「言葉」を理解する必要があります。それぞれの文化が細分化しどんどん閉じていく現在においてそれぞれを行き来し、それぞれの文化を「翻訳」できる立場はとても重要です。「掘り下げる」が先端かしすぎるとと新規参入する人たちが入り込めなくなりその文化自体の衰退してしまうことがよくあります。そうならない為にも文化を他の領域に「翻訳」して新規参入しやすい状況を作ることが大切です。

翻訳のやり方は単純に言葉で書くことだけではなく、より実践的な形で「翻訳」をすることもできます。例えば、アンダーグラウンドで熟成されたハードコアな文化を多くの人が受容できるように加工することも実践的な「翻訳」の一つです。グランジを代表するバンドNIRVANAの92年発売のアルバム「NEVERMIND」は本来の彼らのスタイルやグランジ自体の音楽性に比べるととても聞きやすく仕上がっています。つまり、アンダーグラウンドで「掘り下げ」開発され、抽出されたエッセンスをうまいことマスが消費しやすいように「翻訳」したのです。(これはNIRVANA自体の才能というよりプロデューサーのブッチ・ヴィグの能力によるところだと思いますが)同様のことはいくつも事例がありニューメタルのエッセンスを抽出しつつ、歌詞にFワードを使わないことで多くの層に届く音楽を作ったリンキンパークなどはそれに該当します。

またそれぞれの領域で開発された技術を別の領域で流用するのも重要です。カワムラが運営として関わっている現代アートの勉強会「土曜会」はIT業界でよくされている勉強会の形式を流用した勉強会です。このように有効性が高いものを取り入れていくためにはまずそういったものがあることを知らなければ始まりません。そのためにも文化間の翻訳をして多くの人が情報にアクセスできるようにしておくことが大切です。


「アーカイブする」は、

アーカイブは未来の人たちが特定の文化について語れるようにするために必要です。
例えば美術館は作品を将来の人たちのためにぶち込んでおく箱です。もちろん今生きている人たちに作品を見てもらうという役割もありますが基本的に将来の人たちにある時代の文化の集大成である作品をブツで見てもらうためにあります。アーカイブの仕方はいくつかあり、先ほど説明したブツを残す方法、本という形で残す方法、映像として残す方法などあります。

しかしその先に問題があって、それらを最終的にどこで保管管理するもかという問題です。美術品のようにある程度価値が認められているものであれば美術館で保管管理する道がありますが、そうではないもの、価値が未確定で限定的なものをどこで管理するのかとても難しい問題です。個人のコレクションとしてアーカイブされたものも家族の理解度によっては捨てられる可能性もありますし、WEB上での保存も可能性としてはありますが、実際問題として古いサイトが意外と残らないという問題があり完全とはいえません。

そうした中での比較的安定したアーカイブとして、本にまとめて出版することで少なくとも一冊は国会図書館に保存されることにかける方法か、もしくは、その文化を語り継ぐコミュニティを構築し機能することで残していく方法があります。いずれにしてもとてつもない労力が払われる仕事ですがここまでしないと本当に何も残れないし誰も知らない忘れ去られて文化となってしまいます。

アーカイブすることのもう1つの可能性に、そのアーカイブをデータベースとして新しい創造性が生まれることです。近年海外で美術館のデジタルアーカイブが公開されるなどアーカイブのデータベースに誰でもアクセスできるようになって来ています。国内でもブルータスの過去5年のアーカイブを公開するなどその潮流が流れてきています。

そうした中で昨年開催された展覧会で、美術館のコレクションをキュレーターが独自の視点で再編することで展覧会をつくる試みがありました。(豊田市美術館「抽象の力」 展、DIC川村美術館「静かに狂う眼差し」展、国立国際美術館「かつてない素晴らしい物語」展など)

それらも美術館のコレクションというアーカイブのデータベースを使って創造された展覧会です。作品単位でもこれからどんどん同様にアーカイブを使った作品やアーカイブにインスパイヤされた作品が出てくると思います。

ちなみに今現在で最大のアーカイブのデータベースは「YouTube」ですね。
(アーカイブとしての保存性は低いですが)
そこから「Vapor Wave」やその派生系の「Future funk」などが生まれています。




この3つの役割がうまく機能することがこれから文化をやる上で意識する必要があります。簡単にできることではないですが。ちなみにカワムラの立ち位置は「翻訳する」あたりにあり、「土曜会」も最近企画したアート系の交流会「art_drunk」基本的には文化の翻訳を見据えた下地づくりの役割を意識して企画しています。今後もいくつかのプロジェクトで実践していくつもりですので、ご興味あればそちらも是非!

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