見出し画像

今、「家族」と口にする社長が経営する組織に勤めているなら、そんな会社は直ちに辞めなければならない|小さきアプリ屋の悩み

スッキリで加藤浩次も言っていたが、「家族」と口にするのはトップだけで、下の者たちがそれを実感したことは全く無い。ねぎらいの言葉も掛けられないし、ピンチのとき、社員が窮地に陥ったとき、「家族」として助けられもしないし支えられもしない。行われたのは、早急なトカゲの尻尾切り、解雇の判断と実行だけだった。

私は今日までに数社の小さな会社を転々として、前職だけ、吉本興業とほぼ同等の規模の大企業に勤めていた。小さな会社の社長は、皆、一人の例外もなく、社員を「家族」と形容した。社員はそれを冷ややかに聞いていて、それが会社が成長できない所以であるのは明らかだった。

もし、本当に「家族」のように、助け合い支え合い守ってくれる組織だったら、と空想もしてみたが、赤の他人が雇用契約で集まっている集合体で、「家族」と心から思える絆なんて、形成できるわけがない、どう考えてみても。

年商数百億円の会社の社長が、当然、社員のことを「家族」なんて考えない。私が勤めていたその会社は、極めてホワイト企業で、それは社長が企業として若くからガバナンスをしっかり構築していたからだ。数人で始めた創業時においても勿論「家族」だなんて考えは持っていなかった。それが当たり前だと思うのだが、そうではない会社は、私の経歴の中では圧倒的に多かった。

ワイドショーでコメンテーターたちが口を揃えるように、「家族」とは便利な道具として使っているだけだ。「家族」だから「子」は「親」の言うことを聞かなければならない。「家族」は裏切らない。だから「親」の反対意見なんてあり得ない。「親」に反対すれば「解雇」される。現場で問題を起こせば「解雇」される。「親」を裏切ったから。「親」の信用を落としたから。「親」に迷惑を掛けたから。

アプリ屋なんて、何の問題もなく納品できることなんて滅多にない。クライアントとの密なコミュニケーションは必須だし、それでも認識齟齬は起こるし、技術的なスキルの不足で品質が製品に到達できない状態に陥ることもあるし、本当に「家族」なんだったら、そういう逆境でこそ、「親」に助けてほしい局面なのに、問題を起こした社員を社長を筆頭に幹部総出で責めて、損害の責任を取らせるという名目で即刻解雇する。

小さな会社は、例外なく同じ体質だった。だから問題が起こったとき、誰も助けを求めない。助けてくれないから。社長に報告されて、解雇されるから。問題を隠蔽して、どんどん問題が大きくなって、発覚したときには取り返しがつかなくなって、結局、解雇された社員を山のように見てきた。

「家族」という「親」のその時々の感情で組織している会社は、こうして一向に成長しない。最終的に、社員が殆ど辞めてしまって、社員不足に依って倒産した会社もあった。当然、誰も同情しなかった。

年商数百億円の会社に勤めて感心したのは、社員が問題を起こしたとき、案件で問題が発生したとき、会社としてどう対応するのかというのが、全てガバナンスとして決められていた。その時々で考えられる殆どのケースを。それによって誰かが責任を取らされて解雇されるとか、咎められるとか、そういうことはなくて、新たな人員を投入したり、問題解決にスキルマッチする幹部や社員を他案件から何人も派遣してきたり、当日のうちに問題解決に向けて多くの人が動き出すその組織力には本当に脱帽だった。

吉本興業の社長が、問題を起こした社員やタレントに対して簡単に契約解除や引退を決断できるのは、明らかに小さなワンマンで未熟な会社の社長のそれであって、経営陣が会社規模に見合った成長ができていないからだ。経営陣が未熟なまま、優秀なタレントたちの功績によって、会社を大きくさせてもらって、それで今の規模が維持できているのに、その功労者であるタレントを簡単に契約解除や引退に処して、どうやって今の会社が維持できると思ったのだろうか。それは何も思っていない。「家族」だから、一時の感情で決断しただけだ。

今、「家族」と口にする社長が経営する組織に勤めているなら、そんな会社は直ちに辞めなければならない。その答えは吉本興業の会見で明白だ。「親」の機嫌を損ねたら、すぐに「家族」ではなくなるから。「家族」の和を乱すものとして。

食費入力のみ家計簿アプリ「食費簿」、自慰管理アプリ「アイナーノ」、どちらも御陰様で好調です。より良いアプリ開発に役立てます。