見出し画像

全 41 作!買ってよかった漫画 2018 年版

今年も残りあと少し。今年は「今日のおすすめ漫画」を 3 月 1 日から毎日投稿したのだが、12 月 2 日でとうとうネタが尽きてしまった……。これが個人的には本当に悔しかった。丸 1 年間、続けるつもりだったのに。

まあ、それもあってか、今年になって新しく知って読んだ漫画がかなり多かった。その中から「今年の買ってよかった漫画」を発表したいと思う。完結漫画も連載漫画も、今年発売になった漫画が主だが、中には過去 1 年以上前に完結した漫画を大人買いしたものもある。どれも胸を張ってお勧めできる、私の今年のベスト版だ……!

(1)安田剛助「じけんじゃけん!」

部室で密室トリック……学食で毒盛り……離島の洋館に夏合宿……ミステリ好きのちょっと変わった美人先輩と過ごす、事件だらけのスクールライフ――。

ミステリー×ラブコメで思い出す「君が死ぬ夏に」は主人公とヒロインが殺人事件に巻き込まれる本格的なミステリーだったが、この漫画はミステリーを自ら起こして解きたいし解かせたい美人先輩を囲むコメディ。とにかくこの先輩のキャラがめちゃくちゃ可愛くて、確かに現実にこんな女子がいたら憧れだけで一線を引いて近づきたくないと思う人は凄く多いと思うのだが、自分だったら逆にこの同好会に本気で入りたい。だから主人公の気持ちが本当によく分かって、先輩の奇行のひとつひとつが愛しくて堪らない。広島弁女子、この先輩で初めて好きになった。主人公が先輩を大好きで、それを先輩は分かっていて、等身大で奔放に日常を過ごす、これは年上だからこその母性というか、マジでこの先輩スキだわ……ドヤ顔とかマジクソ可愛い。ヤングアニマルは本当に優秀な雑誌になったなあ。

(2)伊島ユウ「俺を好きなのはお前だけかよ」

鈍感なラブコメ主人公を装い手当たり次第にフラグを立ててハーレムな高校生活を送ってやろうと画策する如月雨露。その黒い腹の通り、クールな美少女生徒会長・コスモスと、明るく活発な幼馴染・ひまわりから呼び出され、ついに告白をされるが――。

あらすじも無視してタイトルだけ目に入れて先入観ゼロで読み始めたときは、「よく有りがちな鈍感な主人公」の極めてオーソドックスなラブコメかよって失望したのだが、それを敢えて狙ったキャラ作りで、ハーレムルートを策略しているという点で一気に惹き込まれた。そしてその後の二転三転、四転五転する展開に見事にやられた。これは実は、サスペンスやミステリーではないかと思うくらい相当に面白い。とにかく天丼されて、それがまた何度も笑えて、こんなに次巻が楽しみなラブコメも、なかなかない。

(3)暁なつめ×鬼麻正明×カカオ・ランタン「戦闘員、派遣します!」

秘密結社キサラギに所属する戦闘員六号。悪の組織の尖兵として、これまでヒーローと苛烈な戦いを繰り広げてきた彼が、次に派遣されたのは剣と魔法が主役のファンタジーな星だった。あまりにもブラックな労働環境に悪態をつきながら、相棒である美少女型アンドロイドのアリス(毒舌)と共に侵略の糸口を探すものの、人類と思しき種族は魔王軍の侵攻を受けており――。

似たり寄ったりのラノベ発・異世界転生モノが横行する中、一線を画す面白い設定だ。主人公は「悪の組織」に所属している為、慣習的に悪態をつくことが身についているのだとは思うのだが、その「邪な行動原理」と「スケベさ」は、思わず声を出して笑ってしまう。なんとなく「健全ロボ ダイミダラー」を思い出してしまったのだが、ちゃらんぽらんな雰囲気が似ているのかもしれない。ポンコツな人がポンコツな人を偏見なく受け入れられるのは、結構、凄いことだと思う。本編でも少し出てくるが、実は一番優しい人種なんじゃないだろうか。こういう主人公は凄く好きだ。

(4)暁なつめ×森野カスミ「この素晴らしい世界に爆焔を!」

それはカズマ&アクアと出逢う前のお話。めぐみんは紅魔の里で、爆裂魔法習得を目指し、ライバル・ゆんゆんと共に勉学に励んでいた――。

この素晴らしい世界に祝福を!」のスピンオフ作品。本編は実はあまり好きではないのだが、「Amazon Prime Video」で本編を改めて一通りアニメで観て、この世界観にドハマリした。それぞれのキャラの個性をこれだけ面白くできるのって、とんでもない才能だと思う。無駄なキャラが一人もいないというか、読めば読むほど沁みるように面白い。とにかくスピンオフなのが残念なぐらい物語の本筋を捉えているような気がする。他のキャラのスピンオフも是非読んでみたい。

(5)九井諒子「ダンジョン飯」

ダンジョンの下層でドラゴンに負けて全滅してしまった冒険者・ライオスたち。金も食料も失い、再びダンジョンに挑む体力がない。そこでライオスは決意した。モンスターを食べよう――。

似たり寄ったりの飯系漫画がやたら流行っていて、この作者の漫画もどうも好きになれなかったから、完全に読まず嫌いしていた。モンスターを食べるという奇行、一体どうやって食べるのか、それらはどんな味なのか、いつの間にか読めば読むほど楽しみになってくる。そして何より、登場するキャラたちの絶妙な面白さ。「モンスター喰らい」というトリッキーさだけではない。このパーティだからこそ、この漫画は面白い。そして最近は、冒険漫画として思っていた以上に凝ったストーリーが背景にあったのだと気付かされて、その展開が楽しみで仕方がない。

(6)栗井茶「メメメメメメメメメメンヘラぁ…」

高校生の彼女が18歳の誕生日におねだりしてきたプレゼントは、「双子の赤ちゃん」。そして誕生日に彼女がプレゼントしてくれたものは、まったくもって身に覚えのない、「婚姻届受理証明書」――。

+チック姉さん」に掲載された複数話を再編集して構成された作品。それもまた凄い売り出し方だ。以前「+チック姉さん」はすぐに読むのをやめてしまっていて、その関わりを知らずに本作を読んだのだが、メンヘラ漫画に対して初めて声を出して笑えた。これまでに読んだ他のメンヘラ漫画は、怖さと気持ち悪さが際立っていて本当に苦手だったのだが、本作もリアルだったら勿論怖いのだが、どことなく可愛げがあって、本当に凄く良かった。このギャグテイストならもっと読んでみたい。続巻はまだか。

(7)栗井茶「+チック姉さん」

模型部なのに模型をほとんど作らない姉さんたちの青春――。

よくあるメチャクチャなギャグ漫画だと思って読むのをすぐにやめていたのだが、「メメメメメメメメメメンヘラぁ…」を読んでこれがとにかく面白すぎて、再び本作を手に取って、その面白さに改めてドハマリした。ギャグとしてとにかく面白いのだが、この学園生活での自由さ、部活というコミュニティの密度、そういったものを体験しなかった自分にはちょっとこの作品が眩しくなってきた。こんな奔放な日常を過ごせるこの限られた時期・時間、今となっては取り返しがつかないんだから。そして女子であるという絶妙な勢いが、この漫画の素晴しいところだ。

(8)江野スミ「亜獣譚」

人が異形の獣と化す病、害獣病が蔓延する世界。性格に難ありな害獣駆除兵のアキミア・ツキヒコは害獣を追って入った森の中で衛生兵の美女、ホシ・ソウと出会う。行方不明の弟を捜しているというソウに対し、アキミアは驚くべき提案をもちかける――。

コメディなのかシリアスなのか分からない独特な雰囲気に一気に虜になった。主人公のキャラがそうさせたのだが、始めはそのキャラが異常であるがゆえに物語の方向性がなかなか見抜けなかった。戯けたそのキャラの意味も少しずつ見えてくるし、周囲や環境も少しずつ分かってくる。なんだろう、なんだろう、でどんどん引きずり込まれる感じで、ちょっと冒頭だけ読んで何だか分からず手放すのは、とても勿体無い。バトル一辺倒な感じにならず、この異常な雰囲気のテイストのまま、今後も続いてほしい。

(9)佐倉準「湯神くんには友達がいない」

父親が転勤族のため転校に慣れてしまった綿貫ちひろ。新しい学校の隣の席は野球部エース・湯神くんだった。だけど湯神くんいつも一人、友達がいなかった――。

「ソリタリー」という性質があり、私もそうなのだが、主人公・湯神くんもまさにそうだ。だから私には湯神くんの気持ちが凄くよく分かる。群れることに執着がなく、柵に縛られるのが本当に馬鹿馬鹿しくて、決断は全て自分で行う。これは他人が嫌いなのでは決してなく、優先順位が他人になることが人生の無駄であると考えているだけだ。結局、人間なんてものは、普段どんな殊勝な態度であろうが、最終的には自分本意な訳だから、取り繕って他人と接するのは時間の無駄だ。それを実践すると、いつの間にか一人ぼっちになるわけだが、そんなことは全く苦にならない。むしろ柵から解放されて、こんなに気持ちの良い人生はないのだ。一人ぼっちであることを、世間は勘違いし過ぎだ。それは不幸な結果ではない。それはこの漫画を読めばよく分かる!

(10)七月隆文×りすまい「俺がお嬢様学校に「庶民サンプル」として拉致られた件」

極平凡な家庭に生まれた神楽坂公人は、超お嬢様学校である「清華院女学院」に「庶民サンプル」として拉致された――。

「超お嬢様」ということで、世間知らずからのギャグ展開が豊富で面白い。突拍子もないことも、とにかく何でもかんでも世間知らずにしてしまえばよいのだから、無限に面白くできるこの設定は読んでいて最強だと思う。基本はラブコメで、凡人である主人公がモテまくるのも面白いし、お嬢様たちだから、そのアプローチ方法が奇想天外でそれらもまた重ねて面白い。主人公の過去にちょっとした秘密があり、それが徐々に明かされる展開もなかなか良かった。もう物語は終盤ではないだろうか……最終回がもうそろそろというのは残念だ。

(11)松本次郎×永井義男「いちげき」

江戸近郊の村から百姓たちが集められ、侍監修の元、秘密裏に選抜試験が行われた。幕府を挑発する目的で薩摩藩が結成した武装集団「御用盗」、その対抗手段として即席「一撃必殺隊」が結成された。百姓たちの「侍」としての戦いが始まる――。

「原作付きのお固い時代劇」を描き始めてしまって、とうとう松本次郎も日和ったかと思っていたのだが、いやいやいやいや、さすがの面白さだった。脱帽の思いだ。単純に敵対し合って、死合うだけのチャンバラになるはずがなかった。百姓であることの葛藤だったり、それぞれの思惑、想い、誘う笑いもゾクゾクさせられて期待に応えてくれる。「女子攻兵」が終わってからしばらく消沈していたのだが、これでまた楽しみが増えた。

(12)森恒二「創世のタイガ」

何故生きているのか、人生に目的を見出せない無気力な大学生・タイガ。ゼミ仲間との卒業旅行中に偶然発見した洞窟内で、崩落の事故に巻き込まれた。命からがら逃げ出たが、そこはマンモスが生息する古代の大地だった――。

自殺島」で味を占めたのか、今回の作品もサバイバルだ。しかも今度は古代でガッツリのサバイバルだ。精神的に弱い人間が過酷なサバイバルを通じて孤独にも成長していくのが、森恒二は描いていて好きなのだろう。まだまだサバイバル生活は始まったばかりで、どんな展開になっていくのかは予想できないが、少しずつ登場してくる古代の雰囲気が、堪らなくワクワクさせる

(13)赤坂アカ「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」

恋愛は告白した方が負けなのである……家柄も人柄も良し、将来を期待された秀才が集う秀知院学園。その生徒会で出会った副会長・四宮かぐやと会長・白銀御行は、互いに惹かれているはずなのだが――。

文字が多くて一度は読むのを挫折してしまったのだが、このお互いのダラダラと長い能書きこそが、この漫画の面白さの真髄だったと気がついた。恋愛頭脳戦コメディで、ここまで面白いモノは今までになかったと言っても過言ではないくらい本当に素晴らしい。巻数が増えてくれば、どうしてもサブキャラに注目が散ってくる。これもまた秀逸で、サブキャラの一人一人が本当に魅力的だ。最近、少し重めのトラウマ話もあって、人間ドラマを深めてきたのも期待だ。

(14)谷川ニコ「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」

何もしなくても高校デビューが叶うと信じて疑わなかった黒木智子。しかし現実は、ぼっち街道まっしぐら――。

「ぼっちギャグ(+ちんちんギャグ)」だと思って軽く笑って読んでいたのだが、本当に少しずつだが交友も増えてきて、進級もして、入学当時よりも成長している黒木智子に思わずニンマリと微笑んでしまう。迂闊というか、軽薄さで毎度のこと同級生たちにボコボコにされるのだが、周囲も黒木智子のそのクソ度胸に良い影響を受けて変化していく。思えば、いつの間にか「青春漫画」になっているではないか。黒木智子が卒業を迎えたら、私は泣いてしまいそうだ

(15)南勝久「ザ・ファブル」

殺しのプロとして生きてきたファブルと呼ばれる男。今日から、誰も殺さずに、一般人となる。誰も殺してはいけない、平穏に、ひっそりと――。

殺しちゃいけないのに殺しちゃうとか、殺しそうになっちゃうとか、そういうコメディ展開は読む前から分かってしまうが、殺し屋としてしか生きてこなかった人間の感覚、人格、それを表現するのが勝負になる漫画だと思うのだが、この難しいであろうキャラ設定が、とにかくめちゃくちゃ面白い。なるほど、確かにこういう風に育つかもしれない、そうリアルに思わされる。そしてこんな奴がリアルにいたら面白くてしょうがない。殺し屋なのでどうしても戦闘シーンがある。私は暴力が嫌いなのでその展開は好きにはなれなかったが、人間ドラマとして続きを読まされてしまうし、どんどん続きが読みたい。

(16)堀尾省太「ゴールデンゴールド」

海で奇妙な置物を拾った中学二年生の少女・早坂琉花。その置物を山中の祠に祀り、願いを込めて拝むと、実家の民宿にその置物とよく似たオジサンが宿泊客として現れた。少女の暮らす島には、「福の神伝説」があるのだが――。

冒頭、初めはどう展開するか全く想像が出来なかった。島に伝わる「福の神伝説」を紐解いていくと、おそらくその通りの結末になるのだろうが、島内の人々が、島外の人々が、どうやってこの事件に巻き込まれていくのかが、読んでいて面白いし楽しみだ。「刻刻」でもそうなのだが、堀尾省太はキャラをコミカルに描くのが違和感がないし、その描写だけで読んでいる印象をいつの間にか操作されているので、本当に不思議な作家だ。

(17)鳴見なる「渡くんの××が崩壊寸前」

両親を亡くし妹と二人で叔母の家に居候する高校生・渡直人。高校生活を楽しむ余裕もなく、妹の幸せを最優先に考えて日々行動する。そんな彼の日常が、幼馴染・紗月が転校してきたことで一変する――。

幼馴染もいて、主人公は優柔不断だし、妹もいて、主人公には憧れのヒロイン(石原)もいる。幼馴染の登場で日常がドタバタにされて、ラブコメとしての設定は王道中の王道。鳴見なるの描く女の子はどの作品を読んでいてもとにかく可愛い。他のラブコメと違うこの作品の面白いところは、ヒロインの真面目さというか、真面目すぎて恋愛に対する考えが重く、ある意味では「恐怖」であるというところだろうか。大抵のラブコメのヒロイン位置にいる女は、可愛いがそれだけで中身に面白味がない。なんでそんな女を好きになるのか、子供の時代の恋愛なんて見た目だよなって呆れる。ところが石原は、可愛いのは勿論なのだが、幼馴染の紗月に対する醜い感情や、嫉妬心などが、凄く面白い。逆に可愛い容姿が残酷に思えるくらいだ。今後、どんな結末を迎えていくのか、楽しみで仕方がない。

(18)涼川りん「あそびあそばせ」

圧倒的画力で描かれる美少女とシュールギャグに笑わずにはいられない、「美少女×お遊戯」コメディ――。

なんの事前知識もなしに読み始めたときは、若干劇画タッチに見えたせいで、一昔前のギャグ漫画かと思った。昭和の古典的な遊びを見せられてもなあ、と思っていたのは大きな勘違いで、現代に「あっち向いてホイ」や「双六」などで本気で遊んでいる女子中学生、それだけでもシュールなのだが、ギャグも絶妙で思わず声を出して笑ってしまった。ギャグだとどうしても「オバカ男子」のイメージがあるが、この漫画は舞台は女子校で、中学生という少女だからこその無垢な言動が可笑しくてそして微笑ましくて仕方がない。これも青春だよなあ、としみじみしてしまう。それにしてもヤングアニマルは最近はホントに優秀だ、昔からは考えられない良作を排出するようになったなあ。アニメ版も最高で、一日で二周も観てしまった。

(19)蝸牛くも×黒瀬浩介「ゴブリンスレイヤー」

冒険初心者たちが陥る悲劇、死。それは徒党を組んだ弱小モンスター・ゴブリン共の討伐だった。その脅威を心底知り尽くし、悪魔に取り憑かれたように憎み続ける男、「ゴブリンスレイヤー」。ただひたすら、ゴブリンを狩る――。

モンスターに陵辱されるこの手の漫画は山程あるが、圧倒的な画力に心を奪われた。嬲りものにされる人々、特にゴブリンに孕むまで犯される女たち。その描写はグロやエロを通り越して、胸糞が本当に悪い。本当に。神経を逆撫でされる。はやく、はやく退治してくれ、殲滅してくれ、助けてくれ、心から叫びたくなる。こんなに読んでいて鳥肌を立てて戦慄したのもなかなかない。本当にゴブリンスレイヤーがゴブリン共を全滅するのを願ってしまう。

(20)内山敦司「世界か彼女か選べない」

謎の美少女・神堂ひかりに「彼女に告白したら世界が滅ぶ」と警告された中川光輝は、それでも幼馴染・藤咲歩美への想いが止められなかった。歩美への想いを諦めさせるためなら、神堂はエロ仕掛けもする――。

この漫画は、自分の中では今までのラブコメになかった設定で、とにかく凄く面白い。「世界滅亡」と天秤に掛けて、「世界救済の方が何よりも大事」だと神堂は心に決めて、とにかく自分の体を中川光輝に自由にさせようとする。神堂は光輝に手篭めにされてまで「世界を救済したい」と考えている。物語の大筋ではそのことにあまり触れないのだが、コマの端っこなどに神堂と光輝のLINEのやりとりが載っていて、そのやりとりの中では光輝が神堂に対して「おっぱい、好き」とか「おっぱいの写真、ほしい」とか送っていて、純愛のラブコメを装っているのにLINEの中では「思春期の少年の欲望」が丸出しで、これに気がついたとき、めちゃくちゃ笑ってしまった。これはでも物語の真理をついているような気がしていて、結局、男は世界よりも愛よりも、目の前の欲望を選択してしまう悲しい生き物なんだろう。この作品の結末がマジで楽しみ過ぎる。

(21)稲垣理一郎×Boichi「Dr.STONE」

一瞬にして世界中すべての人間が石と化す、謎の現象に巻き込まれた高校生の大樹。数千年後――。目覚めた大樹とその友・千空はゼロから文明を作ることを決意する――。

実は一回、読むのを挫折していて、それは冒頭の展開から、単純な「世界が滅ぶパニック・サバイバル」ものだと思ったから。それだったら二番煎じだし、「週刊少年ジャンプ」連載だから、どうせ荒野でバトルするんでしょと思っていた。ところが、そうではなかった。「文明を作る」が、「科学文明を速攻で作る」で、現代科学の知識をフル活用して、石器時代に一気に電気を復活させていく物語だった。何これ、めちゃくちゃ面白い……。ハッキリ言って、学校の理科、科学の授業、勉強って、相当につまらないでしょ。自分はバリバリの理系だが、学校の理科の面白さは皆無だった。ただ仕組みを理解できるだけで。この漫画は、少年に理科の、科学の素晴らしさを強烈に示す。自分が習ってきた科学が、実社会のどこでどう役に立っているのか、自分の生活の礎になっているんだって。これぞ科学の本来あるべき姿の勉強だよ。ただ、教科書に羅列されていることを必死に詰め込むんじゃなくて、活かされていることを実感するから、自分の手でも作り出せるから、面白いわけじゃん。ジャンプ、してやったりだと思うわ。この漫画は素晴らしい。

(22)矢部太郎「大家さんと僕」

一緒に旅行するほど仲良くなった大家さんとの「二人暮らし」がずっと続けばいい、そう思っていた――。

芸人・カラテカの矢部太郎が「手塚治虫文化賞短編賞」を受賞したエッセイ漫画。素人の私にはエッセイ漫画としてそこまでの偉大な作品なのかは正直よく分からない。ただ、この漫画の面白いところは、血の繋がりのない見知らぬ婆さんと知り合いになって始めは疎ましくも今はまるで孫のようなそして恋人のような関係にあること。核家族になり街は閉鎖的になっていき、こうして他人と年配の人たちと関わり合いがなくなった現代で、昭和の人情を思わす関係が、こうやって人間の心を打つのは、やはりそれが人間にとって正しい関係のあり方なんだと示しているようにも感じる。羨ましいんだよ、読んでいて、この二人の関係が

(23)林田球「ドロヘドロ」

「爬虫類顔」の男・カイマンが人間の姿を取り戻すべく、彼を異形に変えた「魔法使い」に立ち向かう――。

敵と味方に分かれていて、味方側の視点から敵を一方的に見る、というような構図ではなく、主人公・カイマンの日常も面白いし、敵対する魔法使いたちの関係も凄く惹かれる。こんなに全てのキャラに感情移入してしまっていいのだろうかというくらい、全員が愛おしくなってしまう。でもこれは相対するバトル漫画。キャラが殺される度に、切なくなってしまう。どちらが悪いとか置いておいて、その人生を断ち切るのが単純に悲しい。こんなにもキャラに対して豊かな感情を持たされたのは、この漫画が初めてかもしれない。この漫画を人に勧めると、「キモチワルイ」という感想の人が多かったんだけど、自分はそんな印象は受けなかった。バトルがあって、謎があって、絵柄に感想が集中することなく、内容が十分に満足で期待できたから。クライマックスでは展開も読めず、なかなか進まなかった謎が一気に加速して、かなり面白い。それにしても掲載誌がコロコロ変わって大変だったなあという印象が一番強いかもしれない。実は林田球はサゲマン(下げ漫)だったりして……。

(24)井上淳哉「BTOOOM!」

家に引きこもり働きもせずゲーム三昧の日々を送る坂本竜太は、突如、南海の孤島に連行された。そこで繰り広げられるのは、竜太が毎日ハマっていたゲーム「BTOOOM!」の現実戦闘だった――。

読み始めた当初は、「バトル・ロワイアル」的なパニック殺戮モノかと思っていたのだが、人間模様が綿密で凄く面白いし、もうここで完結か~と思っていたところで別の展開がさらに発生して、後半から終盤はこういうクライマックスかよと驚かされるばかりだった。現実でも、アンダーグラウンドではこういった殺戮はエンターテイメントとして、ギャンブルとして、存在するのかもしれない。ラストは本当に展開が読めず、どうなるのか想像もつかなかったが、まさかの最終巻が、マルチエンディング形式だった。どういうことかというと、「Dark 真実編」「Light 友情編」の2巻が同時に発売されたのだ。それぞれ全く違う完結になっていて、これはかなり面白い試みだし、読者にはIFストーリーが公式に読めてお得だ。個人的には「Dark 真実編」が好きだった。

(25)ムサヲ「恋と嘘」

配偶者を国が決めるシステムが確立した世界。古墳好きの少年・根島由佳吏は、政府が決めた相手ではない少女に恋をしてしまった――。

この設定だけを知ってまず思い浮かぶのは、意外と、人というのはお見合いが上手くいくように、初対面でも相手を知ろうとすれば好きになれるんじゃないかということ。やっぱりこのことは漫画でも出てきていて、「本当の恋」「本当の愛」を主人公たちだけでなく、読者にも問うている。読んでいると、とても深い話で、この国のシステムは、現実社会でも凄く有効に働くんじゃないかと思えてくる。少子化で、結婚離れで、それは配偶者を見つけるという努力と、その後の生活に不安を抱いていたり、離婚が増えている世間からも、結婚という形式に疑問も持つようになってしまっていて、家柄や個人の性格から最適な相性の配偶者を「AI」に選択してもらって、その生活と子孫が素晴らしいものだと証明できれば、国民は挙ってこのシステムを使いたがるのではないだろうか。私はもう既にこのシステムを使いたい。アニメ版もオススメだ。

(26)ペトス「亜人ちゃんは語りたい」

バンパイア、デュラハン、雪女の女生徒たち、そしてサキュバスの女教師に囲まれて、亜人について研究する高校生物教師・高橋鉄男は、楽しみながらも真剣に彼女らの悩みと向き合っていく――。

漫画の中でも語られるが、「亜人」である、「人間の亜種」であるということの悩みや、葛藤、差別、イジメ、偏見などは、結局、亜人だから発生しているのではなくて、「人間」だったとしても同じように起こること。それはただの「個性」として。亜人であるというレッテルを如何に認めてあげるか、一人の普通の女の子として、女性として。その奮闘は、思わず涙してしまう。心の有り様でしょう、人間ってのは。改めて「アニメ版」を観ていたら、また泣いてしまった。

(27)永椎晃平「星野、目をつぶって。」

学校で人気者の美少女ギャル・星野は、その超地味な素顔を隠していた。同級生の美術部員・小早川は、星野の素顔を知ってしまい、メイクが自分でできない星野の代わりにメイクをしてあげることに――。

星野にメイクをしてあげたいけどトラブルでできない、素顔がバレちゃう、どうしよう、というドタバタコメディの展開は読む前から想像できてしまう。その予想した期待通りのコメディ展開が発生するのだが、どうも、様子が違ってくる。冠にもなっているのに、星野はすぐに脇役みたいな扱いになる。作者も人気などから方向転換したのかもしれないが、早々から、小早川メインの青春ドラマに変わっている。なんだこれは………いやいや、これが大正解だった。小早川のキャラがとても良い。星野と出会うことで、星野と強制的に関わることで、小早川の何かが変わる。小早川の取り巻く環境が変わる。どんどん、どんどん、小早川を応援したくなる。主人公を応援したくなるなんて、こんな漫画は初めてだ。現実にこんな奴がいたら、小早川がいたら、学生生活を楽しめた人は、もっといたかもしれない。そう思わせてくれる、不思議な奴だった。学園ラブコメ&青春群像劇としか言い表せないのがホント悔しい。その枠には収まらない本当に忘れられない作品だ。

(28)艶々「落日のパトス」

漫画家を目指す青年・藤原秋の隣に、高校生時代の恩師・仲井間真が引っ越してきた。偶然の再会に喜ぶが、彼女は人妻となっていた。夜、隣から漏れ聞こえる、この声は――。

寸止め、焦らしが、これほどエロいとは思ってもいなかった。お互いに良識があるつもりで、一線を探り合っている。「心」が惹かれているのか、「肉欲」が惹かれているのか、分からなくなる。寸止めできるということは、肉欲だけなのかもしれない。動物の生殖本能に逆らうのがこんなにもしんどいとは。読んでいるこちらがエロすぎてしんどい。同じ焦らしでは飽きてくるので、続巻毎に新しいキャラやシチュエーションが出てくるが、今後、どこまで楽しませてくれるのか。とても大っぴらに人に言えないが、本当に待ち遠しい。

(29)大柴健「君が死ぬ夏に」

高校二年生の山野智也は、同級生の谷川沙希に密かな恋心を抱いていた。その想いが通じたのか、突然、山野の前に谷川が現れる。しかし、その姿は幽霊だった。谷川沙希は死んでしまった。何らかの事件に巻き込まれて――。

ヒロインが死んでいて、犯人を追求する物語なので、ラブコメと評して良いのか分からないが、展開は立派な王道ラブコメだ。ラブコメも大量生産で、どんな設定にするかその隙間を探っているような状況なのだと思うのだが、この本格ミステリー×ラブコメというのは、大変に面白い。これは大正解だ。そしてこの、ミステリーが本格派だというのが凄く重要で、学園ミステリーとしても惹きつけられて、最後の最後まで犯人も想像できず、久々に連載が楽しみでしょうがない漫画だった。また、とにかく、谷川がいちいち可愛い。主人公がこのヒロインを好きになる助けたくなる気持ちが本当に良く分かる。く~、ロスだ、完結が惜しい!

(30)眉月じゅん「恋は雨上がりのように」

高校二年生・十七歳の橘あきらは、バイト先のファミレス店長に恋をした――。

連載開始当初から読んでいて、所謂「枯れ専」の一途な女子高生というのが凄く面白かった。オッサンが舞い上がるのではなく、親子ほどの歳の差に苦悩して避けようとするその感覚は、安易な男の理想の実現ではなかった。ラストだけ物凄く賛否両論があり、主に「否」が多いようなのだが、これは分かるような気もする。私はこのラストでも悪いとは思わなかった。「恋は雨上がりのように」という題名の意味を、やっと理解できたから。

(31)ONE「モブサイコ100」

自己表現がヘタな超能力少年・モブ。普通の生き方にこだわり超能力を封印しているモブだが、感情が高ぶり数字が「100」になったとき、少年の身に何かが起こる――。

ワンパンマン」の原作者でもあるONE。この画風は下手なのか敢えてなのか、どうしてもギャグ漫画向けのテイストに見えてしまうのだが、もちろんギャグ要素も強い本作だが、青春ドラマとして心に響く作品だと思っている。自分が超能力を持って生まれてきたら、素直にそれを喜んで受け入れられるだろうか。その葛藤とトラウマに苛まれ、なんとか普通に生きたいと思っているモブは、別に超能力に限らず誰しもが通過する思春期の心の動揺だと読んでいて感じる。それはモブだけではなく、周囲の同級生や先輩、大人たちも同じ。今しかできないことに興じて、何かを身に付けようと必死になって、誤魔化して、嘘をついて、後悔して。良い最終回だったよ。

(32)ツガノガク×谷川流×いとうのいぢ「涼宮ハルヒの憂鬱」

「ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上!」入学早々の自己紹介で、クラス全員をア然とさせた涼宮ハルヒ。だが、ハルヒは心の底から本気だった。謎の集団・SOS団を結成したハルヒの暴走に巻き込まれ、一体どーなる俺の運命――。

存在とタイトルだけはよく耳にして知っていたのだが、読まず嫌いしていた。冒頭だけ読んで、どうにも頭に入ってこないので、何度も挫折していた。しかし、これはまんまと「彼女」に読んでいる自分自身もやられていたのだと気がついた。学園の誰もが敬遠する強烈キャラの主人公・ハルヒ。確かに、その通りだ。だけど、時折見せる、常識と超常の間で葛藤する彼女の憂鬱に、いつの間にか惹き込まれていた。こんなに面白い漫画だったのなら、もっともっと若い内に読んでおけばよかった。同じ世代に読めば、心打たれることはきっと多い。

(33)篠原健太「彼方のアストラ」

高校の課題で惑星キャンプに生徒たちだけで赴くが、突如現れた「謎の球体」に触れた全員が見知らぬ宇宙空間にテレポーテーションされてしまう。生徒たちは何に巻き込まれたのか。右も左も分からない宇宙空間で生き残ることができるのか。放置されていた宇宙船を偶然発見し、惑星キャンプに戻る為の宇宙サバイバルを始める決意をする――。

全5巻で終わったのが残念だ。あとがきで作者が「漫画では人気のない宇宙冒険SFというジャンルで新作を描くということには、編集部から反対の声もありました。」と書いていたが、実際に人気がなく全5巻で終わってしまったのだろうか。SF科学的な高度な知識は出てこなくて、少年・少女の等身大の目線で宇宙サバイバルが描かれていて、その不安な感情のぶつかり合いや、芽生える友情や愛情は、見事に「少年漫画」だった。奇を衒っていないし、ギャグも笑えたし、この世界観は全5巻ではなく、もっと堪能したかった。ただ物語として、ダラダラと帰星する宇宙サバイバルを続けるわけにもいかないだろうし、仕方ないか、という感じで読了。久々に読んでいて冒険にワクワクした。

(34)若木民喜「神のみぞ知るセカイ」

授業中であっても「美少女ゲーム」を手放さない主人公・桂木桂馬(17)は、「落とし神」と世間から評されるほどのガチオタク。少女たちの心のスキマに隠れてしまった「地獄の悪人の霊魂=駆け魂」を取り除くべく、現実の世界の少女たちを攻略していく。「落とし神」の名に懸けて――。

「ゲーム脳」で出会う少女たちを次々に落としていくお莫迦なお気楽なラブコメを期待して、日々のスキマ時間でダラダラ流し読みしていたのだが、第19巻「女神編」の最終話で、まさかの涙。。。これはマジでやられた。作者も背表紙で「女神編が遂に終わりました。個人的には、もう思い残すことはない!という感じです。」と書いているくらい、渾身の出来だったのだと思う。この後に続くラストに向けての話がそこまで面白くないのは、やはり第19巻「女神編」最終話のインパクトが強すぎて、気持ちを切り替えられないからだと思う。ここで終わっても良かったが、それだと後味が悪いので、最終巻のラストでしっかり完結して、読後の自分を納得させたみたいな感がある。いやあ、面白かったよ。

(35)冨明仁「ストラヴァガンツァ-異彩の姫-」

類い稀なる美貌を仮面に隠した、オーロリア王国の女王陛下ビビアン。その素顔の秘密が国民に明かされぬまま、首都ミテラは猛獣の被害に脅かされていた。世界に何が起こっているのか――。

表紙だけで既に妙にエロい。ただそれだけで「ジャケ買い」した本作なのだが、読んでいると、内容は別にエロさを狙っているわけではないのだが、絵柄がとにかく艶かしい。そのせいか、傷つく人たちが痛々しく、感情に訴えかける迫力がある。今どき、こんなベタなファンタジーの設定で、ここまで惹き込まれるような面白さを引き出せるのも、絵柄や構成の力があるのだと思う。凄い中毒性があって、まさか第6巻で完結だとは思わなかった。「第7巻に続く」とあったのに、それはサイドストーリー集だった。それはそれで有り難いのだけど。でも本当に、もっと続いてほしかった。なんなんだろうか、この感情は。仮面に隠された美女、そんな属性に目覚めてしまったのだろうか。

(36)平本アキラ「監獄学園 プリズンスクール」

全寮制のお嬢様学校が本年度から男子入学を解禁した。女子高・私立八光学園。入学した5人の男子は、女子に囲まれ浮かれるが、その先には、「監獄」が待っていた――。

絶対に電車の中では読めない漫画だ。エロがあるが、エロいというか、際どいシモネタで、ふいに思わず声を出して吹き出してしまう。その姿をとてもじゃないが人様には見せられない。ハッキリ言って、この漫画を読んで得られるものは何もない。何もないのだが、完結まで連載を追って読めたこと、この時間消費に全く後悔はないし、胸を張って誇りに思う。ましてや、最終話はちょっと感動してしまった自分がいる。なんだかんだ、監獄に囚われていても、真っ直ぐな青春を送っている彼らのことが、心から羨ましい。

(37)押切蓮介「ハイスコアガール」

1991年、格ゲーブーム到来。そんな場末のゲーセンに、似つかわしくない美少女が――。

色々あったが、打ち切りせずに連載再開してくれて、本当によかった。当初は単なるゲーセンギャグ漫画かと思っていたが、結構がっつり青春ラブコメだ。大野の姉ちゃんがとても良いスパイスになっていて、それが絶妙に面白い。ハルオの思春期ゆえの葛藤は、読んでいて面白いけど、ハルオはかなり心が優秀な少年だと思ってしまう。これは何故だろうか。ゲームという遊びであっても、真剣に打ち込めるものがあるからこそ、芽生える成長なのかもしれない。遊びにすら真剣に夢中になれない、それは確かに、何をやっても、駄目になるかもしれない。

(38)安部真弘「あつまれ!ふしぎ研究部」

普通の高校生・大祐が入部したのは、女子3人が「ふしぎ」を研究する部活。催眠術で裸を見たり、マジック用のハトを捕まえたり、呪いのお面を被らされたり、ちょっとうらやましい苦難が続く――。

部活で遊ぶ感じは「あそびあそばせ」にテイストが似ていて、そこに男子が投入されてドタバタ感が増した様相だ。ふしぎ部分は「手品先輩」の失敗ギャグに通ずる安定の面白さ。男子一人、ぞんざいに扱われながらもハーレム的な状況に少しお色気があって、ただそれは登場するキャラたちの魅力に支えられて下らないシモネタギャグにはなっていない。風紀委員長など、外部の賑やかしキャラも秀逸。めちゃくちゃ笑う作品ではないのに、妙に惹かれて読み込んでしまうこの独特な雰囲気は、全体のそういった少しずつの魅力から成り立っているのではないだろうか。

(39)五十嵐正邦「まったく最近の探偵ときたら」

世間を騒がす難事件を即解決。その名は名探偵・名雲桂一郎……だったのは10年以上も昔の話。名雲はいまや、ただの渋いおっさんになってしまった。時代に取り残され、スマホすら扱えない彼のもとに、若さあふれる女子高生・真白が助手希望で押しかけてきて――。

冒頭はシリアスな面も匂わせつつ、意表を突く笑いを誘う探偵ギャグ。「女子高生と中年」という危険なカップリングに、「恋は雨上がりのように」とはまた違った浪漫を読んでいて馳せているのかもしれない。真白のハイスペックな体術やクソ度胸など、絶妙な良いスパイスになっていて、思わず声を出して笑ってしまう。かと思いきや、ふいに真面目に探偵をやるところも裏切られて悔しい、まんまと惹き込まれる。少しずつ登場してくるサブキャラたちも全くハズレがない。やっぱり漫画の面白さは、魅力的なキャラたちなんだろうなあ。

(40)片瀬茶柴×城平京「虚構推理」

怪異になってしまった一人の少女と、怪異にさえ恐れられる一人の男が出会った時、生まれるものは――。

「少女」が主人公なので、所謂「萌」的な要素で攻めてくるのかと思ったら、もうそんな時代ではないのか、とても人間臭い魅力的な登場人物ばかりだった。「まったく最近の探偵ときたら」の影響で推理モノに目覚めて手に取った本作だが、冒頭は主人公に対する「怪異」という設定に戸惑った。そのまま妖怪バトル的な展開だと想定していたのと違うから嫌だなと思っていたが、そういう要素も交えながらの結構ガッツリな推理もあって、良い意味で裏切られた原作を全く知らなかったのだが、今更になってこの作品を知ったことがなんか凄く悔しい。もっと早くからこの物語を楽しみたかった。

(41)諫山創「進撃の巨人」

手足をもがれ、餌と成り果てようと、人類は巨人に挑む。巨人がすべてを支配する世界。巨人の餌と化した人類は巨大な壁を築き、壁外への自由と引き換えに侵略を防いでいた。だが名ばかりの平和は壁を越える大巨人の出現により崩れ、絶望の戦いが始まってしまう――。

ハッキリ言って絵が下手で、顔の見分けが全然できなくて、全く面白さが頭に入ってこなかった。何度も読むのをチャレンジしたが、全くダメだった。だが、最近になって、「巨人の謎」がやっと解明されて、その展開がめちゃくちゃ面白い。解明されてから見比べて読み返すと、誰が誰だかようやく分かるようになって、そのひとつひとつのエピソードがやっと面白い。貪るように一から読んで、こりゃ凄いわと改めて感心する。巨人に襲われてパニックになるだけのホラーだと思っていた自分が恥ずかしくなる。漫画は絵ではなくストーリーだとも言われるが、まさにこの才能を見出したのは素晴しい。最近の展開からの結末が楽しみ過ぎる。

おわりに

当初想定していたよりも、ずっと多いラインナップになってしまった。が、これらはひとつのハズレもない、自信を持ってお勧めできる漫画ばかりだ!

以前、以下の記事にも書いたのだが、「面白い漫画を発掘するのはギャンブル」だと思っている。

これだけの漫画を買うのは正直、出費が馬鹿にならない。だから確実に面白い漫画を読もうと考えると、どうしても「人気漫画」を手に取る日和った選択になってしまう。一巻無料など、最近は選択の幅も広がってはきたが、面白いのは一巻じゃないんだよな~という漫画も多々あるので、まだまだ出版社には期待したい。「売れてないから面白くない」では決してないからだ。

さて、今年のこのラインナップの中から一番を決めるのはとても無理だが、最近になって感動したのは「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」と「進撃の巨人」。ここにきてそんな胸熱な展開にしてくれるのか!と読んでいて嬉しさが止まらなかった。

悔しかったのは「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」と「虚構推理」。今年になって自分で面白い漫画を意識して探し回るまで、全くこの存在を知らなかった。面白いと認知されている漫画は本当に極一部で、普通に生活していると耳にすら入ってこない。膨大なコンテンツがある中で大変だとは思うが、もっともっと面白い漫画を日常でも知られるようになってほしい。探す労力も大変だ。

来年も、どれだけ面白い心に残る漫画に出会えるか、今から楽しみだ!

買ってよかった漫画 2019 年版


この記事が参加している募集

推薦図書

コンテンツ会議

読書感想文

買ってよかったもの

食費入力のみ家計簿アプリ「食費簿」、自慰管理アプリ「アイナーノ」、どちらも御陰様で好調です。より良いアプリ開発に役立てます。