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詩 「嫉妬」



ガラスに刻み込まれた文字が二つ
そこに僕は君の横顔を見た
名前なんて書いていなくても分かる
あの独特な文字や
精密な仕上がりは
君だけのものだから
限りなく近くに寄り添うことは出来るけど
決して一つに交わることはない
それ位
君の光は強すぎた
僕を寄せつけもしなかった

ガラス板に手で触れた時
君の手の骨格や感触を思った
人の温もりが通って生きているみたいだった
それが尚更僕の神経を逆撫でし
昂らせた

暗い暗い闇の中
煌々と光る電灯の下
僕は君の思いを
乾いた溝の中に落とした
君の一部をバラバラにし
満足気に笑った
その瞬間
飛び散った破片が
僕の真ん中の指を乱暴にかすった
それを冷静に目で確認しながら
僕は
もう二度と
君に会えないと悟った

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