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人生とは

小学生の頃、早くおばあちゃんになって、あとはもう死ぬだけ〜の状態になりたいと思っていた。


人生をスキップしたいと思っていた。


なんだか生きるってめんどくさい、これから私は中学校へ行って高校へ行って大学へ行って、就職して結婚して、子どもを産むのか。

それらを想像したら、なんて面倒なんだと思ってしまい、早くおばあちゃんになりたいと思っていた。





この前、29歳になった。

私は地元の大学を卒業したあと、小さい頃からの夢を追い東京に出てきた。

東京での日々はとても刺激的だった。


きっと地元にいたら出会えなかっただろうであろう人たちと、一緒に好きなことをしている。



私がずっとこんな話をしたい、この感覚を分かちあいたいと思っていた人たちと、出会えた。


なんて幸せなんだ。



ずっと埋まらなかった穴がやっと埋まったような気がした。



25歳までは何も考えず、とにかく好きなことを、しよう。どんな状況であれ、25歳が終わったあとにもう一度考えよう。

25歳まではとにかく、バイトをしながら夢を追いかけた。

そして25歳の時に賞をもらった。


今まで賞とはほぼ無縁の人生だった。


小学生の頃、母親の添削が入った読書感想文で一度だけもらったことがあるくらいだ。


もちろん自分だけの力ではない。


しかし、自分の好きなことで賞をもらえて、私は勝手に背中を押してもらえている、私はこの道でいいんだと思い込んでしまった。


この賞を糧に次にいかねばと思った。


そして今まではとにかく場数がほしかったので、ノーギャラだろうがなんだろうが自分が好きな作品に関わっていた。


しかし、私は賞を取ったのだからそれに相応しい作品に関わらないと、そしてフリーではなくきちんと芸能事務所に所属して、活動をしていくべきだと思った。



ギャラが安い作品に応募をしなくなった。



事務所に入り、地上波のドラマに初めて出た。


しかしセリフは一言だった。


CMや映画やドラマのオーディションを受けまくるも落ちまくる日々。



だんだん自分を見失っていった。


あれ、私は何がしたいんだ。何のために東京に出てきたんだ。



27歳のクリスマスに東京に出てきて初めて彼氏ができた。

自分は夢を追ってここにいるのだから、恋愛をしている場合ではないと思い、恋愛からは遠ざかっていた。


ただ、結婚願望はある。あまりにも恋愛から遠ざかっていると、結婚できないのではないか。とりあえず恋愛をしよう、誰かと付き合ってみようと思っていたところ、素敵な人が現れた。


とても優しく一緒にいると心地が良かった。


そして彼の存在により、さらに私の穴は埋まり、ますます自分を見失っていった。


このまま売れなくても、彼と結婚するのもいいかもしれない。


子どもを産んで育てるのもいいかもしれない。


そしたら、あんなに大好きだった映画もドラマも観る気がなくなってしまった。


オーディション情報を見つけても、応募する気がなくなってしまった。


自分の夢に対するモチベーションがなくなっていく。


そんな矢先に担当マネージャーが異動になり、事務所を辞めることになった。


事務所を辞めたのだから、新しい事務所を探さないといけない。

片っ端から事務所に応募していくも返事はない。


そして年が明け、29歳になった。


私は一体何がしたいんだろう。


果たして本当に俳優として売れたいのだろうか。


映画が好きなんだろうか。


彼と結婚も本当にしたいと思っているのだろうか。


自分の感情がわからない。



そんなある日、3年前に一緒に作品を作った彼女の新作を劇場へ観に行った。


映画が終わり、観客から直接感想を伝えられている彼女の姿を見ていると、何だか幸せな気持ちになった。



わたしはきっと誰かと繋がりたいんだ。


作品を通して、知らない誰かと繋がっていたい。


だから私は俳優という仕事を選んだのかもしれない。

役を演じる行為を通して、人をわかりたい。


別に売れなくてもいい。

うそだ。

ちゃんと多くの人が見てくれる作品にメインで出たい。


孤独だったあの頃の自分を救ってくれたように、私も作品を通して知らない誰かを救いたい。


私は人生の選択を間違えてるかもしれない。


叶うかどうかわからない夢を追いかけて。


気がついたらもう29歳で。


でも、人生をスキップしたいなんて思わない。


痛みも哀しみも悔しさも、もどかしさも全て抱えて、進んでいきたい。


この先どうなるかなんてわからない。


29歳が終わった時、正直想像もつかない。

どんな感情でいるのか。


ただ幸せであってほしいと思う。



あと自分をもっと好きになれていたらいい。


















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