日本人の「礼儀正しさ」について

日本人は礼儀正しくて相手への思いやりがある、って本当?って思う時があるんです。
いや寧ろ、相手への思いやりなんて無いんじゃないかと思うことが多いんですよね。

公共の場所で化粧をしたり、居酒屋で耳をつんざくような大声で話したり爆笑したり、業務上のやり取りではとても丁寧な言葉使いで笑顔で話しているのに、「おはようございます」や「お先に失礼します」といった挨拶は虚ろな表情で蚊の鳴くような小声で言ったり。

個人的に、日本人の笑い方があまり好きではないです。
各国の笑い方を隈なく比較したわけではないんですが、なんて言うか、笑い声の声量が大きいし、爆発的な笑い方をする人が多い気がするんですよおね。
話し声と笑い声の大きさのギャップが大きすぎて、近くで聞いててびっくりするとこがあるんですよ。

話を戻すと、日本ではお店の店員さんの応対が丁寧なことに外国人が感動するとよく言われますが、確かに外国の店員さんに比べて、応対が丁寧で仕事もきっちりしてると思います。
職場でも、役職の上下を問わず誰もが丁寧な言葉遣いで話してます。
仕事の進め方にしても、必要に応じて関係者に助言や許可を求めたり、報告をしたりして、関係者間で情報共有された状態で物事を進めていくスタイルが浸透しているので、一人で突っ走って周りを巻き込んだ失敗をする人って、あまりいません。

これらを見ると、一見「礼儀正しさ」や「相手への思いやり」が浸透しているように見えますよね。
でも、それって相手への思いやりが起因となっているのではなく、自分の評判を下げないことが動機になっているように見えるんですよね。
自分の頭で考えた結果の言動ではなく、みんなと同じようにすればとりあえず自分の評価が下がらないからしている、という感じ。
そして「自分の評価」というのも、「自分の能力や人間性への評価」という中身ではなく、「自分は和を乱さない、空気の読める真っ当な人間である」という表面的な見た目が重要視されているため、どことなく「やっつけ感」が出てきてしまってる感じがするんです。

考えてみれば、コンビニやカフェの店員さんも、取引先の相手も、社内の他部署の人も、丁寧な言葉使いではあるものの、無表情で抑揚のない話し方をしてる人がほとんどですよね。
それって、中身を吟味せずに「こうしてさえおけば良い」と思考停止してることの表れなんじゃないでしょうか。
確かに話し方は丁寧なんですが、表情とかテンションは外国での現地の人たちと変わらないと思います。
むしろ、自分の本心を隠してやるべき対応をしているという空気を相手に感じさせることで、本音を言いづらい空気を作り出してしまってるように思うんです。それってもはや「相手への思いやり」の逆になってませんでしょうか。本末転倒な気がします。

日本人が「言いたいことを言えない」ことの大きな原因は、この「本心を隠して丁寧(に見える)言動に徹する」というスタイルが浸透しすぎて、言いたいことを言うためのお手本を目にする機会が少ないことだと思うんです。
言いたいことがあっても、どんなタイミングで、どんな言葉使いで、どんな調子で言えば良いのか分からない。そういうサンプルを持ち合わせていないことが大きな原因の一つだと思います。

中身を吟味して、自分の頭で考えた結果、このやり方がベストだと思っているわけではないので、多分みんなこのやり方に納得してるわけではないんでしょうね。
だから、いかなる時もこのスタイルを実践できるわけではなく、「必要と思われる場面」に限定されてしまう。
即ち、自分に利害関係がある場面のみに発動される。
裏を返せば、自分の利害関係に影響がない場では、利己的な振る舞いを平気でするのではないかと考えてしまいます。
むしろ、「他人からの評価」の目が届かない場所では、そのような同調圧力の反動でより無礼な行動をしてしまうのではないか。

丁寧な言い方をすれば万事OKとされてしまう風潮。
中身ではなく、形式や見た目を重視する価値観。
これらが相まって、
丁寧な言い方だけど言ってること鬼畜。
何でもかんでも「させていただく」をつける。
「迷惑がかかる」という漠然とした理由で異論を排除する。
みたいなことが日常的に起こっている気がします。

何でもかんでも伊勢丹の包装紙に包まなくても良いと思うんですよね。
中身あっての包装だと思います。
中身が充実していれば、スーパー玉出のレジ袋で良いと思うんですよ。

インバウンドで外国人観光客が激増していますが、日本に興味を抱く人が増えれば増えるほど、日本社会に存在するそんな問題点に気が付く人が増えてくると思います。
今はインバウンド黎明期なので、外国人も日本の良いところしか目につかないと思います。
でも、その内日本にさらに興味が湧いて、もっと深く日本と日本人について観察したり、日本に居住する外国人が増えると、日本の良いところと悪いところを天秤にかけられる時がいずれ来ると思います。
そうなってから問題を解決るんじゃなくて、もっと自発的に、この問題を解決していくことは出来ないのかなと、少しの無力感を覚えています。
他でもない、僕たち日本人のために。

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