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仙酔島の旅の記録

【day 1】


◉福山駅前に集合

仙酔島は、今回の旅で訪れるまでは名前も聞いたことがない島だった。福岡からは一人だけの参加となり、橘川さん以外はほとんどが初対面となる。ワクワクと不安が半々ぐらいの心持ちで、福山駅近くに停めてある埠頭行きのバスに乗り込んだ。バスから見える鞆の浦の町や空は、いかにも夏景色という感じで、その見晴らしの良さに少しだけ心が安らかになった。

仙酔島行きの船


◉チェックイン

埠頭から船に乗り込み、仙酔島に到着。10分〜15分程度で、意外に早く着いた。人生感が変わる宿「ここから」にチェックインをして、荷を下ろして昼食休憩に入る。2階にある昼食会場から海と砂浜が見え、まるでバカンスに来ているかのような気分に。昼食では、久恒さんから、人物記念館や図解の可能性、人生のライフデザインについての話を聞かせていただいた。その中で、日本の政治や企業についての話になり、その関わり方についての話をした。久恒さんは、その日の出来事や感じたことについての文章を、次の日に欠かさず書いているという。それを続けていくことで人生のデータベースとなり、この世に同じものがない唯一無二のコンテンツが出来上がると仰っていて、その方法論や継続力に脱帽した。

昼食


◉自己紹介未来フェス

昼食後は自己紹介未来フェスが催され、1人3分の持ち時間で自己紹介をすることに。深呼吸学部の1期生〜3期生、地元の大学生や大学教授、各分野の専門家などが、現在熱中していることや、仙酔島に来た経緯、今後の展望などを語った。

◉大空さんの講義

全員の自己紹介が終わり、10分程度の休憩後、酒・ホテル・観光事業など多岐に渡る事業を展開する大空宗元さんの講義を受けた。大空さんは宮崎駿監督のような面持ちで、ただならぬ雰囲気とオーラを醸し出しており、ファーストインプレッションは“ただ者ではない”という感じ。講義の内容は、自身の人生体験談から始まり、人生観や死生観、十八番、価値尺度、教育、仙酔島、世の中の法則…などなど。大空さんの話は、普通に生きていては到底出ないようなワードが出てきて、その一つひとつが過激で力強く、深みがあった。それ故に、旅が終わっても、大空さんの言葉の余韻がいつまでも頭の中をぐるぐるして、自分の過去と現在、未来について考えさせられた。横で聴いていた久恒さんは、大空さんの話を真剣に聴いていて、時折メモをしていた。

◉島内ツアー

大空さんの講義を終え、そのまま大空さんに島内を案内していただくことに。その際に、仙酔島は国立記念公園の第一号であり、島全体がパワースポットのようになっており、神々が宿ると仰っていた。島内を歩きながら、各所に点在する七福神が宿るとされるスポットを巡る。旅館のすぐ近くにある神社らしき所では、正しい参拝の仕方についてのレクチャーを受けた。大空さんに指摘を受けながら、代表として田久保さんが実践することに。何度も指摘されては四苦八苦する田久保さんを見て、陰ながら応援していた。

大空さんによる島内ツアー

海沿いを歩いていると、田原さんが浅瀬を遊泳するエイに気付き、「あそこにエイがいるよ」と教えてくれた。また、遠くに見える島が亀の形をしており、仁上さんが喜んでいた。旅のメンバーは五色岩を見つけるや否や、自身の体と岩に手を当てて、温度が変わるかを検証していた。海沿いには五色岩だけでなく、洞窟のような場所もあった。人によっては「入って頭が痛くなった」という方も。橘川さんはずっと先頭に立って、全体を見つつも、大空さんの話に耳を傾けていた。
最後に、開けた砂浜に到着。目の前に壮麗な海景色が広がる。そこで幸運にも、神様のお声を聴くための所作や礼儀を伝授していただいた。大空さんを真似して独特な呼吸法をやってはみたものの、ただただ苦しくて結局聴けず終い。しかし、そう簡単に神様の声が聴けては甲斐がない…と考え、そこで断念。それでも、大空さんが力説する言動は嘘だとは思えず、形容し難い説得力があった。旅の帰路にふと思ったのが、大空さんはこの島の魅力のひとつであり、この島に欠かせない存在ということ。実際に、島内ツアーの時も大空さんのガイドがなければ、ツアーの充実度は半減していたと思う。

神様の声を聴くための作法を伝授

砂浜を後にし、旅館へ帰る(勾配のある険しい)道中、さらに上に行く階段があったため登ってみると、島から見渡せる綺麗な景色が広がっていた。旅館への帰路でAR3兄弟の3男である小笠原さんは、とある映画を引き合いに出し、とあるスペクタクルな妄想を膨らましていた。

階段上から見た眺望


◉夕食

旅館に戻り、少し休憩した後、夕食。橘川さんの音頭で「いただきます」をして、新鮮な魚介系の料理を堪能しつつ、地元の大学生の伊藤さん、埼玉の工業大学に通う前川英大さんの話を聴いた。伊藤さんは地方創生に興味があり、ももさんの紹介でこの旅に参加したとのこと。英大さんは珠子さんの息子さんで、音楽や電車をこよなく愛しているという。福岡にあるローカル路線の駅名を知っていて、さらに、実際に乗ったことがあると聞いてビックリした。一緒の食卓にいた小笠原さんは、会話の途中で何かがツボに入ったらしく、ずっと笑っていて苦しそうだった。

夕食後、『はやぶさ』の映画鑑賞会があるとのことで、足早に大浴場に向かい急いでお風呂に入った。「お風呂から海が見えます」と書いていたため、少し楽しみにしていたものの、外は真っ暗で何も見えなかった。

板前さんによる生調理


◉映画『はやぶさ』鑑賞会

お風呂から上がって、天文学者のアベルさんの解説付きという豪華な鑑賞会で、ドキュメンタリー映画『はやぶさ』を鑑賞。2003年の5/9に打ち上げられ、7年の時を経て地球に帰還した小惑星探査機「はやぶさ」の軌跡を、フルCGで再現した作品。小惑星イトカワを目指すも、度重なるトラブルに見舞われる。通信が切れ、もうダメかと思われた…その時!ここからは観てからのお楽しみ。小惑星の粒子のサンプルを採取するという重要なミッションを任され、様々な困難に見舞われながら、力を振り絞ってミッションを遂行しようとする様は、まるで生き物のように感じた。はやぶさを応援するすべての人との心のつながりや絆を感じ、思わず感情移入。3部作とのことで、2.3も鑑賞予定。

◉星空ツアー

アベルさんが主体の星空観察会があるとのことで、砂浜に出た。天気のせいか、空を見上げても見えるのはせいぜい1〜2つ程度。しかし、10分ぐらい経つと次第に星が見え始め、気付けば空一面が輝く星空に。アベルさん曰く、普段使っている視細胞が、明暗の細胞に切り替わることで、明るさを認識できるようになるとのこと(視細胞には錐体(すいたい)細胞と桿体(かんたい)細胞の2種類ある)。砂浜では皆んなで仰向けになり、海風に吹かれながら1時間以上もの間、星空を眺めた。そこで、天文学や流星、宇宙に関するどんな質問に対しても、アベルさんは分かりやすく説明してくれた。衝撃だったのは、子どもに「ビックバン」を説明していたこと。その説明の仕方が独特だったため、気になる方はぜひ本人に聞いてみてほしい。また、次の日、お風呂から上がった直後に隕石について質問したら、まったく嫌がるそぶりを見せず、素人の自分に対しても詳細に説明してくれた。ぜひとも宇宙に行って夢を叶えてほしいと思えるような、天文愛と徳に溢れる人だった。

砂浜で星空を眺めていると、横で一緒に星を眺めていた伊藤さんが「チルですね〜」とひと言。「ね〜」と同調するも、本当は意味をちゃんと理解してなかったのはここだけの話。「まったりと過ごす、ゆっくりとくつろぐ」という意味を後になって知った。一夜にして、神様への所作や天文について、若者言葉を覚えた。小笠原さんは相変わらず、スペクタクルな妄想にふけこんでいた。

◉就寝

部屋に戻って一息してから、寝る準備。寝る前に、同室だった窪さんの縄文焼についての話を聞いた。窪さんは橘川さんとはロッキングオン時代からの旧友で、縄文土器にこだわりを持って、何十年も作り続けてきたとのこと。縄文焼を始めるきっかけや、最近の活動状況について事細かに話してくれた。窪さんはまさに職人という感じだった。

その後、スペクタクルな妄想を膨らませていた小笠原さんとホラー映画の話になり、お互いのおすすめ作品について情報交換した。実のところ、旅の始まりから小笠原さんには親近感を抱いていた。というのも、知人に小笠原さんそっくりな人がいて、顔、髪型、笑い方、話し方、背丈、格好までが同じだったから。小笠原さんは旅の間は終始、思慮深く、相手を深く観察し、相手が話しやすいように適度な質問と相槌で話を聞いていたのが印象的だった。


【day2】



◉餅つき

早朝は餅つきからのスタート。自分より年上の女性や賢者の方々が、朝日に照らされながら「ヨイショ!ヨイショ!」と元気よく餅をついており、「この方々の底なしのエネルギーはどこから来るのだろう…」と不思議に思ったのを覚えている。橘川さんを筆頭に、またハッピの似合うこと。皆でついたお餅はとても美味しく、よく噛んで食べた。ちなみに、前川英大さんは、底なしの胃袋かと思うほど爆食していた。

伊藤さん(左)と小笠原さん(右)が餅をつく様子


◉部屋でのひと時

餅つきが終わり、荷物をまとめて部屋で一休み。その間に、同室の田原さんのマレーシアの話に。田原さんのマレーシアでの生活や仕事、カルチャーの話はとても面白く、色々と質問させていただいた。特に印象的だったのが、日本とのカルチャーの違いについて。また、ドリアは美味しい食べ物だということも教えてくれた。シンガポールに行った時にドリアの匂いにノックダウンした経験があり、その話を半信半疑で聞いていたものの、本当の話らしい。

◉江戸風呂

一段落してから、江戸風呂に入る。なんでもここは服を着たまま入水するとか。標に沿って階段を降りていくと、回る順番が記された看板があった。どうやらサウナとお風呂、海を順番通りに入っていくらしい。サウナ後の海は気持ちよく、天にも昇るような解放感を味わった。一緒に回っていた伊藤さんは6年間水泳をやっていて、海水に興奮していた。同じく一緒に回っていた小笠原さんはクラゲらしきものに刺されたのか、鋭く尖った何かによって足首あたりから流血していた。海に入っていると、橘川さんや久米さん、珠子さんが宗教について話していて、ちょっとした冗談を交えながらも、かなり興味深い内容だった。

◉薬膳カレー

江戸風呂を堪能した後は昼食の薬膳カレーを食べた。味は抜群に美味しく、あっという間に平らげた。その際に、宮崎さんに肺を開くためのストレッチ法を、どういった原理でそうなるのかを説明しながら実演していただいた。すると、曲がり気味だった姿勢が矯正され、福岡に帰ってからも姿勢の良さを指摘された。宮崎さんの一本ゲタを買おうと思った。

◉チェックアウト〜解散

全てのイベントが終わり、名残惜しい気持ちで宿を出る。船を待つ間、船着場の待合室で英大さんがギターで弾き語りを披露してくれた。そういえば、昨日から音楽には触れておらず、旅の締めくくりの音楽という感じで、聴いていて心地良かった。仙酔島を出て、港で集合写真を撮り、福山駅付近で解散した。

◉尾道ラーメン

福山駅で解散した後、伊藤さんが地元の美味しいラーメン屋を知っているとのことで、英大さんと3人で「尾道ラーメン 一丁」というラーメン屋のラーメンを食べた。出汁は濃い醤油ベースで、背脂がのっていて食欲をそそられる感じ。伊藤さんが紹介するだけあって、そのお店のラーメンはとても美味だった。正直、薬膳カレーを食べていたのでお腹いっぱいだったものの、完食。ちなみに英大さんは大盛りを注文していた。そのまま福山駅の近くで2人と別れ、福岡行きの新幹線に乗って、広島を後にした。

尾道ラーメン

◉旅を終えて

仙酔島での旅は、今まで見聞きしたことがないような驚きや発見、たくさんの出会いがあった。
仙酔島は日本で一番古い島らしいが、自分にとっては新しさの連続で、まさしく、温故知新という言葉がピッタリの旅になった。個人的には、仙酔島は自分自身を見つめ返す場所のように感じた。山、海、空、神々…すべてが存在する始まりの地というイメージ。豊かな自然にダイレクトに触れながら、ゆっくりと深呼吸する時間ができて、体も心もデトックスできた気がする。
また、今まではオンライン上でしか話した事ない人や、名前だけ聞いた事のある人が、リアルに出会える違和感と喜びがあった。そして、その多くの人が個性的で、尚且つその道の専門家ばかり。中には、子どもやフレッシュな学生もいて、初対面の異色の旅だった。この旅を通して、本当にたくさんの人に話を聞かせてもらった。その時に、「こんな世界もあるのか」「こんな世界観を持っているのか」と、それぞれが持っている世界の広さを実感した。自分を語ったり、興味のある分野の物事について語る時の皆さんの目は、本当に生き生きしていて、初対面の自分の質問にも全員が丁寧に優しく教えてくれた。

  • 久恒さんの図解と人物記念館の話

  • 松本さんの足守藩についての話

  • 小笠原さんのARの話

  • 窪さんの縄文焼の話

  • アベルさんの天文学の話

  • モモさんのご縁とワクワクについての話

  • 仁上さんの亀と図書館についての話

  • 大空さんの仙酔島の話

  • 久米さんの美術や映画、宗教についての話

  • 田原さんのマレーシアの話

  • 伊藤さんの地方創生の話

  • 英大さんのバンドや電車の話

  • 宮崎さんの体幹や姿勢についての話

自分は今、こんなに面白い人たちが集まるコミュニティの中にいるんだと、改めて実感。この島での居心地の良さは何だろうと考えた時に、旅の途中でモモさんに聞いた、深呼吸学部の人たちの関係性についての話を思い出した。そこには上下関係や利害関係はなく、皆んな平等に楽しさや面白さを追い求めている面白い人達が集まっているということを聞いて、腑に落ちた。自然溢れる仙酔島のゆったりとした空気感や旅館のおもてなし精神はもちろん、このコミュニティの人達と過ごす時間や空間が居心地がいいのだと思った。

◉あとがき

旅を終えてから数週間が経つ今も、この世に生まれてきた意味をずっと反芻している。ただ、どこまで考えても答えはない気がする。大空さんや仙酔島は、それを考えるきっかけを与えてくれたのだと思う。神様の声を聞いたり、この世の理を理解して天国だと思いたいと思ったけど、やっぱり今の世界線で生きていくことに意味があるのだと思う。

この島での旅行を企画した橘川さんの目の付け所に着目。大空さんや他の参加者を含め、橘川さんには人々や神々を引きつける見えない力があるのだと思う。旅の途中、しばしば橘川さんの言動を観察していたものの、特別何かやってるわけでもなく、いつも通りの橘川さんという感じ。新宿の父の境地に達するには、まだまだ道は険しいと感じた。


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