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フリージアの家庭での促成栽培

はじめに

12月も下旬になると、花屋さんやホームセンターにフリージアの球根を4球ほど植えた鉢が出回りますね。あれは業務用の冷蔵球根を使ってやっているのですが、あれよりも1、2ヶ月遅れの開花であれば、加温温室があれば簡単にできます。ここではそのノウハウを公開しましょう。本来4月にならないと咲かない香り高い球根植物を、コストをかけずに1月末から2月中旬にかけて咲かせます!

リビングに持ち込んだ促成フリージア(2月中旬)

なおこちらは家庭用の加温ビニール温室の活用の事例の1つです。この記事はすでにヒーター付きの温室をお持ちのことを前提で書かれています。
加温温室の効果的な使い方については別途、ご好評の下記の記事がありますのでご覧ください。


0. フリージアの基本的な性質

※ この項目はフリージアを手がけたことのない方のためのものですので、栽培歴のある方は読み飛ばしてください。
球根植物にはヒヤシンスやチューリップのように、室内での水栽培が可能なほどに、球根自体に養分を蓄えているものがある一方で(これらはいずれもユリ科で、ユリ科が例外ともいえる)、フリージアやラナンキュラスなど、球根は発芽のための養分程度しか蓄えてなくて、花を咲かせるどころか一定程度の株まで成長するためには日射が欠かせないものの2とおりがあります。フリージアは、発芽後に陽に当て続けないとそもそも開花しませんフリージアの球根とは、少し大きめのタネのようなものだと捉えるようにしてください
日本では球根植物としては例外的に養分を貯め込んだ巨大球根であるヒヤシンス等の水栽培から入るので、この点を誤解してすべての球根植物がそうだと思い込むと、そもそもフリージア栽培は失敗します。
フリージアの花が好きだけれども栽培したことがないという方は、まずこの点を頭に入れておいてください。

1. 準備作業


たいそうなことではありません。
準備作業(1)
ふつうに秋に植えるフリージアの球根を、促成栽培用と通常の植え付け用の2つに分けます。2つに分ける理由は、
① 家庭用の加温温室は大きさが限られていて、全部促成栽培しようとするとフリージアだけで一杯になってしまう。
② 時期をずらして4月下旬まで咲かせた方が楽しい。
ということによるものです。分け方に決まりはありませんので、4月の本隊と2月以降の分隊という観点で、ご自身で適当にお決めください。分けた促成栽培用の球根は、本来の4月に咲く主力部隊とは別のプランターや鉢に植え付けますが、途中までの管理は通常どおりで同様に扱います。

準備作業(2)
フリージアの球根は、一定期間寒さに遭わせないとそもそも開花しない性質があります。ですから11月の下旬に温室を設置したとしても、ただちに加温を始めては促成どころか、通常の開花すらしてくれません。ここを間違えないようにしてください。
ですから分隊の方も、最初は本隊と同様に寒にさらしておきます。昨年のような暖冬の場合、この自然冷蔵の期間がむしろ後ろにズレ込む形になるので、かえって平年よりも促成栽培の開花は遅くなってしまいます(後述)。

近年の珍しい花色の品種(同時期)

2. 本作業

本作業(1)
その年の寒さのぐあいを見て、いよいよ促成栽培用の分隊の鉢やプランターを加温温室に入れます
。関東以西の暖地の標準で12月に入ったぐらいでいいと思います(昨年〜今年のような暖冬の場合には、さらに半月ぐらい遅らせる必要があります)。
加温温室が一杯になってしまうので、代わりにガーベラやカランコエなど、促成で初冬に開花する鉢植えをリビングに持ち込むことで、温室内のスペースを空けるといいです。

本作業(2)
1月の下旬以降、ときどき温室の分隊の葉を観察して、蕾が上がっていないか確認します。最初はうち1株だけ、トランプのカードを手の中で開くかのようにスッと葉柄の間から薄い蕾が、少しズレて出てきて顔を見せ、やがてそれが分厚くなって本格的に蕾になるのが、フリージアの習性です。プランターや鉢全体に蕾が回るようになってきたら、リビングに取り込みます。これによって開花がさらに早まります。
なおこのさいに完全無農薬で栽培していると、蕾が膨らむにつれて、どこかに潜んでいたアブラムシが大量発生して、満開時にはアブラムシで蕾やガクに粉が吹いたようになって、床にまでこぼれて美観を損ないます。若い方は虫に慣れていないので嫌がりますし、私は仕方なくオルトランのたぐいをこの時期だけ使います。

本製品は計量容器を兼ねていて、農薬に手を触れることなくワンプッシュで必要量が撒けます。容器の分、割高ですが、そもそも農薬を大して使うわけではない人には、お勧めの製品です。
お店で買ったガーベラを2年め以降も自宅で育てていて、花が虫の吸跡で白くみすぼらしくなってしまって困っている方にもお勧めします。ガーベラの場合、年末に上がった蕾が開いて少し大きくなったものの、まだ色付いてはいないタイミングで与えると市販の鉢植えのようにキレイに咲きます。

青花を活けたもの(本当の切り花栽培ではないので、葉は球根のために株の方に残す)

本作業(3)
最初に取り込んだ鉢やプランターが開花のピークを過ぎたところで、温室で複数待機させていた次の鉢をリビングに取り込みます。開花の過ぎたものは、もう温室に戻す必要はありませんから、ふつうに屋外で春まで葉を伸ばさせて、来年に備えて球根の肥大を図ります。

まとめ

いかがでしたか?、意外に簡単だと思われたと思います。
順調に球根を増やしてゆけば(ある程度増えたら、小指の先ほどもない球根は育てずに捨てるようにします)、2月から5月の初めまで途切れなくフリージアの花と素晴らしい芳香を楽しめるようになり、花の少ない冬やまだまだ寒い春が楽しくなること請け合いです。ぜひ、お試しください。

※ なお「12月に入ったぐらい」等の表現はあくまでも目安であり、お住まいの地域にもよりますので、ご自身で経験的に調整してください。書かれているとおりにやって、結果的に冷蔵期間が不足してしまい、その年は開花しないプランターや鉢が出たとしても、自己責任でお願いします

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