俺に触れるとヤケドするぜ。
年末年始の休み中に必ずやる、と私が自身に課したミッションの話をさせて欲しい。
それはこびり付きやすくなってしまった鉄のフライパンを復活させる事。
私の場合、特に調理へのこだわりがある訳ではなく、単にテフロン加工のフライパンを数年に一度買い替えるのがどうにも勿体なく感じてしまうという貧乏性故に、鉄のフライパンを使っている。
寿命が1〜2年と言われているテフロン加工のフライパンに対し、鉄フライパンはキチンと手入れをすれば半永久的に使える。しかも調理中に溶け出した鉄分も食材と一緒に摂取できるという嬉しいオマケ付きだ。貧乏性が発端とは言え、我ながらなかなかいい選択をしたんじゃないかと思っている。
そのフライパンが数ヶ月前から、なんとなくこびり付きやすくなってきたな〜とは感じていた。でもまあ、これくらいなら問題ないっしょ!と騙し騙し使っていた。
だがしかし、先日夫がわざわざ買って来てくれた美味しいと評判の冷凍餃子を例のフライパンで焼いた時の、そのこびり付き方は半端なかった。
餃子の皮がものの見事に底面にへばり付き、「これはマズイ」と必死でフライ返しでガリガリと、こそぎ落とした。なんとか餃子は丸裸にならずに済んだのだが、何個かはチラ見せくらいになってしまった。その時私は「こいつ(鉄フラ)は、もう限界だ」と悟った。
一度こびり付きやすくなっても、また元に戻せるのが鉄フライパンのいいところだ。ただしその為にはいくつかの工程を経なければならない。復活までの手順を一応載せておくと、こんな感じ。
とまあ色々書いてあるが、途中まではさほど面倒な事はない。けれど最後に必ずやれと書いてある「油ならし」が、私は苦手である。これは大量の油をフライパンに入れ、モウモウと煙が出るまで加熱させるというもので、鉄の表面に油の薄い膜を作り、こびり付きにくくさせる為の大事な工程なのだが、高温の油を扱うのは神経を使うし、正直ちょっと怖い。
以前に「油ならし」をやったのは、新品のフライパンを使い始める時である。その時は、表面の錆止め塗装を焼き切る「焼き入れ」も行ったので余計に大変だったのもあるが、熱さと慣れない作業の緊張感で汗びっしょりになりながらやった。そしてうっかり真夏に購入してしまった事を、激しく後悔した。
今回は「焼き入れ」の工程はないが、またアレをやるのかと思うと萎えそうになる。
いやいやいや、でも私はこいつ(鉄フラ)と一緒にやっていくと決めたのだ。ちゃんと手入れをして、長く大切に使っていかなければ。
そう自分に言い聞かせ、「よっしゃ、やるか」と気持ちを切り替えた。
そして迎えた、ミッション当日。
この日は12月31日大晦日。ギリギリだが、年を越す前にやってしまいたいと思った。
作業開始前、周りに余計な物は置かないだとか、うっかりぶつかって高温の油をぶちまけたりしないように(想像するだけで怖い)フライパンの柄を必ず横に向けるなど、自分なりの気をつけポイントを確認して、いざ「油ならし」スタート。
火をつけると、フライパンの中の油がどんどん加熱されていく。と同時に周囲の空気も徐々に熱くなってくる。
カンカンに熱せられて、ゆらゆらと揺らめく油を「これってマジの俺に触れるとヤケドするぜだな」と思いながら、そーっとフライパンを傾け、フチにまでまんべんなく行き渡らせる。
白く煙が立つほどになったら火を消して、油が冷めたらオイルポットへ。それをまたフライパンに戻して再び加熱する。
作業を繰り返す事3回、無事「油ならし」は終了した。
新たな油の衣をまとい、なめらかな光沢をたたえた鉄フライパン。しかし、はたしてちゃんと復活しているのだろうか?
早速使ってみる。
おーっ!快適、快適。
表面はツルツルで、こびり付きほぼ無し。使用中のストレスは激減し、改めて復活前との違いに驚く。餃子?100個でも200個でも持って来い。
今後は、この状態を少しでも長くキープしたいと思う。
使用後に表面に薄く油を塗って保管しておくといいらしいので、それもやるようにしよう。
まあ、ちょっと面倒くさいけどね。
けれど手がかかる子ほど可愛いというのは、どうやらフライパンにも言えるようである。
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