カミカゼ

カミカゼ

そそらそらそらウサギのダンス~♪たらったらったらった♪
音ちゃんのピアノの伴奏に、みつの歌声、そしてねねの後ろ足のみで器用にピョコピョコ踊るダンスで行われた、介護老人保健施設「あしたへの空」の敬老会。

パチパチパチ…!!割れんばかりの拍手に、

「ねねちゃーん!!可愛かったわよー!!踊りも最高!!」
とおばあちゃん達の黄色い声援

そして、敬老会の締めくくりはもちろん、移動BAR M&N。

ポロロン…ポロロン…とムードチックな音ちゃんのピアノ演奏の中、
「いらっしゃいにゃせー!いらっしゃいにゃせー!!ご注文がお決まりでしたら、是非ともこのねね様にお申し付けくださいにゃせ!!」

気合の入った看板猫ねねの本領発揮!?

「ワシ…家でも滅多に酒なぞ飲まなくなったのー」しみじみとおじいさんが言い、

おばあさんは、「私も、カクテルなんてハイカラなもの、飲んだことがありませんよ?」

みつは、そんなことをおっしゃっている皆様に、

「お酒ではなくても、甘酒を準備していますし、雪国、サムライ、カミカゼという和名のカクテルもご用意していますよ」と答えた。

すると、それを聞いた皆さんが生き生きとなり口々に、

「あぁ!!私、甘酒好きなのよね~、お正月の、寒いときに温めて飲むのが、体が温まって最高なのよね~、最近寒くなってきたから、丁度飲みたくなってきたところよ!!」

「雪国かぁ~、追いかけて~追いかけて~追いかけて雪国~♪って歌を思い出すなぁ!!」

「サムライか…。ワシは、桃太郎侍が好きでの、再放送をBSで見とるよ」

「カミカゼか…。俺の兄さん、特攻で死んでいったなー!!ちくしょー!!!!」

リュウさんが「カミカゼといえばな…昔、日本は鎌倉幕府の時代、モンゴルのチンギス・ハーンと、孫のフビライ・ハーンが、日本を攻めてきた。しかし、どちらの時代でも、日本が負けそうになった時、暴風雨が降り注ぎ、モンゴル軍は逃げて行って日本軍は
モンゴルに勝った。それから、神風という言葉が出来たのじゃよ」

「その、神風と特攻と、何の関係があるにゃん?」不思議そうにねねが聞くと、

ねねを優しく膝に抱いたタカさんは、静かに語った。

「第二次世界大戦中にのぉ、神風特別攻撃隊というものが日本軍に存在していてなぁ、特攻と呼ばれていてなぁ、一機の飛行機に爆弾と一人のパイロット、そしてな、片道分のみの燃料が補充されてなぁ…敵地に機体ごと突っ込んで自爆していった…それが特攻なのじゃよ」

戦時中に敵にやられて右足を負傷したタカさんは、膝から下のない足をさすりながら言った。

「…。…。」

さすがのねねも、しょんぼりとした表情になり言葉が出ない。

それを聞いたミネさんは、
「戦時中はねぇ、赤紙というものが兵士になるものに渡されてなぁ、渡された者はさぁ、女性が白い腹巻に千人針と言ってよ、一人一人針で赤い糸を縫い合わせたものを渡されてなぁ、鉄砲玉にあたっても無事でいますようにとなぁ、願ったんよぉ。
そしてねぇ、町中の皆が総出で兵士を見送りに来てさぁ、兵士は、お国の為に死ぬ気で頑張ってきます!!といい、皆は、日本万歳!!日本万歳!!と喜んだものだが、兵士が戦死しても、家族は、お国の為に死んでいった!!万歳!万歳!!とかなしみながらも言ってたよ…。今なら滑稽な話だろう?」さらにミネさんは言う。

「それになぁ、お寺の鐘やなんかの鉄製品も武器に変わってさ、そしたら、国に残っていた製鉄工場もな、武器や軍艦などを作るとされてよ、敵機から攻撃されてしまって、それなのに国はそれより弱い精度のボーキサイトで武器や軍艦を作れ、それもだめなら板にしがみついてでも戦えと命令されてな…。
物事には限度というものがあるだろうに、あの当時の人間は何を考えていたのだかねぇ…」

おソノさんも言う、
「私もねぇ、戦時中に夫を亡くしたんですよ、でも、その時にはすでにあの人の子供がお腹にいたんですよ。でも、あの人の弟と再婚したんですよぉ」

「そこには、愛はあったにゃんか?」

不思議そうにねねが聞くと、

「あの当時はそんなこと日常茶飯事でね、戦争で一家の大黒柱を失って、後継者が必要だったの。だから、何とでもなったし、今の夫を何とか愛せるようになったし、
子供もさらに二人もうけましたのよ」にっこりとおソノさん

「女は強しにゃんね」うなずくねね。

「家を守るんだもの、強くないと!!」

「今のところ日本にも、自国を守る自衛隊はあるにゃんけど、自国ならず同盟国が敵に攻撃されたら、戦争に行くみたいにゃんよ?」ねねは言うが、フミさんは、

「今、こんなに文明が発達して豊かな国になったっていうのに、外国では、領地を奪う争いなんかして、貿易や環境破壊に影響してるんだよ!」

タカさんは…
「そもそも、戦いを起こすのが間違っているのだよ。
何事も話し合いで済ませないとね?
国や宗教の違いなどで他国が自国の言うことを聞かないだけで、軍事的圧力をかけるのが間違いのもとなのだよ」
という。

「それに…核兵器など根絶すればよい!!
日本は二回も核爆弾を投下され、綺麗だった町並みは壊滅状態、人々は見るも無残な姿で死に絶え、奇跡的に生き残った人々でさえ、後遺症で苦しんでいる方々がたくさんいらっしゃる!!
それなのに、今海外で起きている戦争は、何じゃ!?核を使おうとして!!非核三原則
(持たず、作らず、持ち込まず)すらも守れないのか!?
今、地球には、7回地球が破滅するくらいの核兵器があるんじゃぞ!?」

ふーふー言いながら、興奮が冷めない様子のタカさん。

「にゃんこも本能的に争いはするけど、いつも恨みっこなしのタイマン勝負にゃんよ!!
しかも、武器とかなしにゃん」と興奮気味のねねに

おソノさんも、「私も女だけど空手は黒帯よ!!かかってらっしゃい!!
車椅子だけど、みっちゃんのか細い腕くらいは折れるわよ!!」

「えっ!?私、何かしましたか!?」

もくもくと一人でカクテルを作っていたみつにおソノさんが突拍子もないことを言ったので、みつは驚いて両手に持って振っていたシェイカーを手から
滑らせ、勢いよくガシャーンと大きな音を立てて床に落としてしまい、中身もすっかり落としてしまった…。

「あーあ、もったいねーなー、しょーがねー、片付けてやるよ」

ピアノ演奏をしていて、騒ぎを聞きつけた音ちゃんが片付けているうちに、呼吸を整えるみつ。

「冗談はさておき、昔話も疲れてきたし、何か作ってもらおうかな!?」とタカさん

「かしこまりました」

冷静さを取り戻したみつは、カクテルを作る準備をした。

材料…ウォッカ…45㎖、
   ホワイトキュラソー…1tsp、
   ライムジュース15㎖

作り方…材料をシェークして、氷を入れたオールドファッションド・グラスに注ぐ。

カミカゼ(27度の辛口)の出来上がり

和名だが、生まれはアメリカという不思議なカクテル。
辛口だが、オレンジとライムの香りがみずみずしい。

カクテル言葉は、覚悟、あなたを救う。

「大事な人を強く想うという素敵な意味が込められています」

「ゴクゴクゴク…っかー!!たまんねーなー!!」

「おい、嬢ちゃん、俺と歌ぁ歌わねえか?ラバウル小唄!!え!?知らねぇ??何だ、聞かせてやっから真似してみなよ!!」と音ちゃんにタカさんが言うと、

「お!?タカさん!!ラバウル歌うのかい!?じゃぁー、俺は、月月火水木金金歌う!!」
とリュウさん

「じゃあ、あたしは王将だね!!」とおソノさん

いつの間にか、カラオケ大会になったようだ。チリンチリン♪

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