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昭和のトレンチ→バーバリートレンチ→ユニクロトレンチ

長いことコートは、10万円くらいしないとダメ、と思っていた。

これは経験則のようなもので、これまで自分なりにいろんなコートを着た結果、ひとシーズン程度着ただけで処分したコートが、概ね数万円以下のモノだったからだ。

2015年、UNIQLO and LEMAIREのメンズトレンチコートが、世に出た時は興奮した。

UNIQLO and LEMAIREとは、Uniqlo Uの前身である、ユニクロとクリストフ・ルメールのコラボラインが初めて発表されたときの名称だ。現在、クリストフ・ルメールは、2016年よりユニクロパリR&Dセンターのアーティスティック・ディレクターとして就任、「Uniqlo U」の商品作りに携わっている。

元々ロングコート好きで、なかでもウールコートに比べて、着る期間の長いトレンチコートは、服の全アイテム史上1,2を争うくらい好きなアイテムだ。

2015年、UNIQLO and LEMAIRE初コラボのトレンチコートのときは、ユニクロ銀座店で、フランス人観光客とおぼしき若い男性2人が、鏡の前で、このコートを着たり脱いだりしながら、テンション高めにキャアキャア言っていたのが思い出される。

クリストフ・ルメールと言えば、フランスを代表するブランドであるエルメスやラコステのアーティスティックディレクターを経て、サラ=リン・トランと共に自分のブランド「ルメール」を展開しているフランス人なのだ。

きっとフランス人的には、14900円→7800円くらいの信じられない価格で、「ルメール」ブランドのトレンチコートを買える驚きが、知名度の低い日本より本国フランスの方が、大きいのだろう、と推察された。

そこで釣られて、ワタシもユニクロの全身大鏡の前で、何の気なしに羽織ってみると、すごくよかった。

しかも当時わたしは、バーバリーの裏地チェックのトレンチコートを着ており、春先というよりも初夏にかけても着られるような、裏地なしのグレーベージュのスプリングコート的トレンチコートを探していたから、タイミングも良かった。

衝動買いした服はこれまでも結構あるが、値段に関係なく、これ買わなくっちゃいけない!と思った服は外れない、という自信があった。

その感覚があったから、その時もほとんど迷わなかった。その後2015UNIQLO and LEMAIREのトレンチコートは、たぶん10回以上は、着慣れたジーンズに合わせて着て歩いた。

でも、今でも、哀しく覚えているのは、これだ!と直感に従って買ったコートなのに、結局のところ、ただの衝動買いだった、という事実を認めなくてはならないことだった。

バーバリーのトレンチコートと双璧で好きなのは、昭和のOL時代に持っていた、SANYOの薄い裏地付きのグレイッシュベージュのトレンチコートだった。20代に着た、あのSANYOのトレンチコート、昭和56年当時、デパートの服売り場に定番としてあったトレンチコートのことだ。

わたしにとって、バーバリーチェックのトレンチコートと、昭和のSANYOトレンチコートこそ、トレンチコートの中のトレンチコートだった。

でも、UNIQLO and LEMAIREの現代版トレンチコートは、そのイメージとは当然のことだけど少しズレていた。

メンズのラインで、Aライン、張りのあるコットン100%、全体のシルエットが、羽織ると生地がスッと落ちないで、パネルの様に横にパリッと広がったのが、致命的に気に入らなかった。

ワタシが着るとちょうど膝丈で、ロングトレンチコートと言うより、膝丈トレンチコートと言う方がぴったりくる丈感だった。

この時の、これだ!と閃きながら、結局処分してしまった苦い思い出は、大袈裟だけど、ちょっとした精神的痛手だった。

ワタシはコートには特別な思い入れがある。特別容姿に恵まれてるわけでもない、大柄で昭和体型の持ち主が、18歳のとき、とある国産のトレンチコートを着た時、服ひとつで印象が驚くほど変わることを知った。いらい、コート、それもロングコートに執着するようになった。次回以降に続く。


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