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【ライブレポ】サンダルテレフォン 2021 LAST LIVE -西脇朱音卒業公演-

2021年12月9日(水)、4人組アイドルグループ・サンダルテレフォンが、渋谷WOMBにてこの年のラストライブを開催しました。

ダルフォンメンバー紹介

この日はメンバー・西脇朱音さんにとってのラストライブでもありました。

2019年4月のグループ結成から4人で変わらず走り続けてきたサンダルテレフォンですが、この日をもって次の夢を追いかけるために西脇さんが抜け、翌2022年から3人体制となります。

まずは、アンコール含め持ち曲が全曲披露されたライブの模様をダイジェスト的に書いてみようと思います。

開場は16時30分に予定されていたのですが、恐らく予定されていたよりも前に開場になったのだと思います。
16時40分くらいに会場に着きましたが、フロア外にはもう誰もいませんでした。
遅すぎました。
17時を前にして場内はぎっちりと埋まり、下手後方では、サンダルテレフォンの楽曲制作のほとんどに関わっているちばけんいちさんのDJによるBGMが鳴らされています。

開演予定時間は17時15分でした。
BGMが消え、メンバーの登場を告げるSE「Ready to Change」が鳴り出したのは予定よりも2分ほど前、17時13分ごろでした。

M1.~M3.(Sleeping Beauty~碧い鏡~Magic All Night)

メンバー4人が出てきました。
注目してしまうのはどうしても西脇さんです。
西脇さんの表情は、安らかといいますか、憑き物が落ちたかのような顔つきに見えました。
もしかしたら、出番直前の楽屋で感情を吐き出してきたのかもしれません。

「今日もニコニコ笑顔!」
この日でお別れとなってしまいますが、ファンには悲しみのまま帰ってほしくないとの思いが見えてくるような表情でした。

一瞬は感傷的にもなりましたが、ひとたび音が鳴り始めると、分厚い低音域の伴奏に支えられながらメンバーが高音を響かせる、いつもと変わらぬサンダルテレフォンのライブの雰囲気へと変わっていきました。

碧い鏡」ではサビ前の「他人と比べたって仕方ないのに(ピント外れてしまったかのように)」にてソロを歌うメンバー、小町まいさんや夏芽ナツさんを束になった白い光が囲み、伴奏は高音をリフレインしていました。
背景のスクリーンには夜のハイウェイを走り抜ける映像が現れていて、高音は道路を照らすカクテル光線かのようです。

M4.~M6.(It’s Show Time!~ワンダーランド~SYSTEMATIC~)

ライブはここまであっという間で、BPMが速めに進んでいきます。
簡単な挨拶を挟んだあとの4曲目には、夏芽さんの「イッツショーターム!」の高らかなコールから自然な流れで「It’s Show Time!」が始まりました。
スクリーンにはリリックビデオが大きく映し出されています。

ここのブロックは、音が重厚です。

SYSTEMATIC」は、西脇さんのリズムの取り方が独特だとかねてから思っていました。
揃った動きがサンダルテレフォンのライブの完成度と言われる部分だと思うのですが、この曲では割と自由度高めに動いているイメージです。
小町まいさんもあえて遅らせてみたり、ただでさえしなやかな動作はより磨かれていました。

M7.~M8.(真夏の匂い~Follow You Follow Me)

「音楽で世界を笑わせたい!泣かせたい!踊らせたい!」


サンダルテレフォンが掲げるコンセプトです。
それを体現していると思う代表的な曲が、この中盤戦にやってきました。
真夏の匂い」にも「Follow You Follow Me」にも、サビでは真似しやすくキャッチーな振り付けがあります。
メロディーも楽しいはずなのに、裏側には切なさや寂しさがくっついているように思っています。
これが、コンセプトにある「泣かせたい!」とする部分なのかもしれません。

M9.~M14(リミックスメドレー)


サンダルテレフォンは、2020年夏にリリースした1stアルバム「Step by Step」収録の全8曲を、およそ1年かけてリミックスバージョンに再構築してきました。
その集大成は、2021年11月リリースのリミックスアルバム「REMIXES」へと収録されました。
サンダルテレフォンの魅力の一つは、リミックスの妙もあって曲間の繋ぎ目が分からないほどスムーズに流れていくところにもあります。
ライブで初めて耳にしたときなど、いつの間に曲が転換したのかと面食らいます。

この日は、繋ぎ目が無いことに対してもそうなのですが、もう一つ驚いたことがあります。
曲は大体1番までで終わり、次の曲へと入っていったのですが、次の曲のイントロが鳴り始めているのに、しばらくメンバーの動作は前の曲の振り付けのままでした。

もしかしたら、見間違いなのかもしれません。
でも他にも、少し前とは微妙に変えたような振り付けの箇所もあったように見えたり、分かるか分からないかの違いをつけたのはこちらの勘違いとも思えません。

重めの音に引っ張られるリミックスバージョンも、メドレーになって曲が頻繁に切り替わると空気がかきまわされて気持ちが良いです。

M15.~M16.(Step by Step remix~Shape the Future remix~オリジナル)

ここまでライブは滞りなく進んでいきましたが、このブロックで西脇さんは涙ぐんでいました。
「朱音は泣きませんので!」
ライブ前に西脇さんは宣言していましたが、最終盤のここにきてこらえきれませんでした。

11月の定期公演で初披露されたばかりの「Step by Step」remixバージョンでは、最後西脇さんをステージに残し、他の3人が手を振って去っていきました。
僕は初披露の定期公演も、以降にこの曲が披露されたライブにも行けなかったので、この日初めてremixを観たのですが、「ダルファン」の間でエモいと噂になっていたのはこのことなのかとようやくわかりました。

一人ステージに残った西脇さんは、remixバージョンの「Shape the Future」をソロで歌い始めました。
この日は、西脇さん推しのファンの方を筆頭とする実行委員の方から一人一人にピンク色のサイリウムが配られました。
「ソロの時に光らせて欲しい」とのことでした。
折って光らせるタイミングが、ここで回ってきました。

1番が終わるころ、袖で見守っていた3人は再度登場してきました。
小町さんパートから始まる「Shape the Future」のオリジナルバージョンが始まりました。
ソロパートを歌った藤井さんは、歌い終わるや否や隣の西脇さんに大きく抱き着いています。

本編はここで終わりました。

メンバーが捌けた後、当然の流れとしてアンコールを求める拍手が鳴り出しました。
登場に先立ち、ステージ背景のスクリーンには各メンバーのコメント動画と「お知らせ」が流れ始めました。
※もしかしたら、告知はライブ後だったかもしれません。

来年からの3人体制の初単独公演や、グループ初の全国ツアー開催の告知、そして新曲「Lightsurfer / レビュープレビュー」のリリース等が発表されたのですが、中でも目についたのはこのお知らせでした。

それは、この日を境にグループ名の表記を変えるという宣言でした。
これまではカタカナの「サンダルテレフォン」だったのが、これからは読みはそのままにアルファベット表記の「SANDAL TELEPHONE」に変わります。
アイドルという枠を越えて、アーティストとして広く世の中に受け入れられるために、3人になるこのタイミングに選んだ一つの変化でした。

いつからか、公式HPのグループ紹介はこうした文言になっています。
アイドルというよりも、アーティスト・ガールズユニットという路線をいままで以上に強く打ち出しているような気がしています。

小町まい,夏芽ナツ,藤井エリカからなる3人組ガールズグループ。2019年に結成し、翌年にミニアルバム『Step by Step』をリリース、“フューチャー×ノスタルジック”の世界観とダンサブルなポップスを取り入れた楽曲、パフォーマンスで注目を集める。オフィシャルハッシュタグは「#SDTP」

メッセージ

やがてメンバーが出てきて、スタンドマイクが2本用意されました。
スタンドマイク2本を挟み、残るメンバー3人それぞれから西脇さんへ、そして西脇さんからは「長くなってしまうので」と、事前に伝えていた内容をかいつまんで3人へとメッセージが取り交わされました。

少しここの内容について触れてみます。

グループ発足の経緯をたどると、サンダルテレフォンは、前身グループに所属していた小町さんと夏芽さんに、オーディション経由で西脇さんと藤井さんが加入という形で2019年4月に結成されました。

夏芽さん小町さんは受け入れる側として、そして藤井さんはともにオーディションを潜り抜けた戦友として、角度は違えど西脇さんに対する第一印象は皆同じでした。

「この子が欲しい」(夏芽さん)
「こんなアイドルっぽい、キラキラした子がいるんだ」(小町さん)
「こういう子が受かるんだろうな」(藤井さん)

※メモを取ったわけではないので、こう言っていないメンバーもいたかもしれません。
あくまでニュアンスだとお受け取りください。

高いアイドル性はこのころから評価されていたわけですが、それでも、アイドルとしては一年生です。
加入当初は覚えることの多さなどから頭がパンクしそうになったと聞きます。

「アイドルは向いていないんじゃないか」

最初のステージを終えたとき、加入組の二人は泣きながら帰ったそうです。
「でも」
このエピソードを語りながら、藤井さんは続けました。
「朱音は泣かなくなり、いつからか泣いているのはエリだけになった」

小町さんからのメッセージも同様でした。
「朱音は上手くいかないときに泣いたりして、その姿は昔の私に重なった」

けれども、成長して泣かなくなったし、最年長としてかなり助けてもらったと言います。

メンバーの口からは、西脇さんが頼もしくなっていく過程が克明に描かれていきました。
極めつけは夏芽さんのこのコメントでした。

「こんなに成長していく人を見たのは初めて」

西脇さんは卒業に際し、インタビューでこう答えています。

「グループとしての活動で自分がやりたいなと思っていたことがいろいろと叶って、卒業しても後悔がないタイミングが来たのかな」

やりたいこととは東名阪ツアーやパフォーマンスの向上にあったといいます。
送り出すメンバーが言うように、ステージ内外での振る舞いに成長を本人としても感じた末の、満を持しての卒業の意志だったのでしょう。

メンバー間でのメッセージのやり取りのあと、西脇さんはフロアのほうに向き直りました。
遠巻きからだと、涙で震えているように見えました。
「私はいいアイドルになれていましたか?」
反応を声で返せない分、万雷の拍手で西脇さんからの問いかけに応えます。

「抜けることを選んだことに絶対に後悔しないので ここに朱音がいればって思わないで欲しい」

気象予報士の資格取得に向けてグループを去る西脇さんの心に、ためらいはないようです。

アンコール(かくれんぼ~Step by Step~コーリング)

アンコールでは3曲が披露されました。
イントロが長めの「かくれんぼ」は、いつものごとく終盤の良いところでくるとは分かっていても、実際にかかるとグッと来てしまいます。
背景のVJも重なり、キラキラと眩しい世界が目の前に広がりました。

ラストは「コーリング」。
「鳴らない電話」を響かせるサンダルテレフォンの、始まりでありその全てと言える曲で、この日の幕は閉じました。
冒頭、いつもフロアを煽って盛り上げるのは夏芽さんが主なのですが、西脇さんがマイクを取りました。

「コーリング」のとき、背景スクリーンには、いつもの定期公演会場でも開幕時SEが流れている時に移され、この日もライブの始まりに同様に映し出されていた各メンバーの紹介画像が改めて映されました。
西脇朱音という存在が、ここに確かに「在る」という証明を、最後の最後に色濃く残しました。

スクリーンには続いて「サンダルテレフォン」の文字が現れ、場面はアニメーションで描かれた「鳴らない電話」の受話器が置かれるというシーンへとうつりました。
アニメーションが終わり、最後に出てきたのは表記を改めた「SANDAL TELEPHONE」の文字でした。

一つの終わりは何かの始まりです。
受話器が置かれてグループ名の表記が改まったとき、その分かれ道に今まさに立っていることを実感させられました。

ライブは終わり、特典会へと移りました。
「ありがとー!」
長い列の先に、西脇さんの甲高い声が響いていたのが印象的でした。

歌割とか、立ち位置がどうとかそんなことを思うより前に、これまでのサンダルテレフォンのライブで目についていたのは西脇さんでした。
一時期のライブレポではかなりの字数を西脇さんについて書いてもいました。
まだ居て欲しいのが本心ではあるものの、本人は非常にスッキリとしていたので何を言うべきでもないのでしょう。
いままで、ありがとうございました。

以上が、ざっくりとしたこの日のライブの模様でした。

西脇さんは卒業してしまいますが、サンダルテレフォンは、SANDAL TELEPHONEという形でまだまだ続いていきます。
終わりでは決してありません。

残されるメンバーのコメントに触れたとき、もちろん西脇さんとの別れを惜しみつつも前を見据えているという姿勢ももまた伝わってきました。
ここからは、3人のメンバーについて、語っていた決意なども含めて書いてみようかと思います。

藤井エリカさん

藤井さんは、強いなと思いました。
同期である西脇さんに対して、特別な感情があるだろうとは容易に想像できます。
数カ月前、他のメンバーよりひと足先に西脇さんから卒業の決断を知らされたとき、泣いてなかなか受け入れられなかったと語っていました。

この日に泣きながら言っていた「本音を言えば、まだ一緒にやりたかった」という趣旨のコメントは、痛く心に刺さってきます。

でも、先に書いた「Step by Step」~「Shape the Future」の流れで西脇さんが涙をこらえきれなくなったとき、藤井さんはつられませんでした。
横で涙を見ても、こらえて踏みとどまっていたように見えたのは頼もしかったです。

藤井さんについてはもう一つ、アンコールのVTRで残したコメントが残っています。
動画の中で藤井さんは、「ダンスが好き」だとはっきりと口にし、現在ダンスレッスンに通っているということを教えてくれました。
知らないだけだったかもしれませんが、恐らく公言したのは初めてだと思います。

「口だけじゃなくて行動に移さないと」
とは言うものの、行動のための第一歩としてあえて「ダンスを頑張りたい」とはっきりと口に出したのだと思っています。
他でもなく自分こそがダンスリーダーになるのだという意志が伝わってきました。

藤井さんはこれまでよく「バランサー」だと称されていました。
これは、結成から1年程度したときにリリースされたインタビュー記事に書いてあったことに引っ張られているからだと思っており、事実僕もこれまでのライブレポでそう書いてしまうことはありました。
でも、バランサーという言葉は結構曖昧です。

悪いように取れば器用貧乏とも思われかねないその言葉を嫌った訳ではないのかもしれませんが、藤井さんはバランサーから変わろうとしています。
ダンスを武器にグループで突き抜けようとしています。

小町まいさん

「朱音も私もステージで泣くような女じゃないので」

西脇さんへのメッセージを読み上げる時、小町さんはこう切り出しました。
机に向かって書いていた時には泣くつもりなんてなかったのでしょう。
でも、実際は二人とも泣いていました。

藤井さんがダンスで引っ張りたいと宣言したのに対し、小町さんは歌でした。
「誰にも負けたくない」

サンダルテレフォンのインタビュー記事などを遡って読んでみると、西脇さんだけでなく小町さんの意識の変化が見て取れます。
当初はメンバーとのライバル意識を強く持ち、こと結成当初は周りが見えていなかったと、小町さんはそう振り返っています。

あまりべたべたしすぎないメンバーの関係性もその意識に拍車をかけたのだと思います。
自分のことしか見えていなかったと自省しているのですが、どこからか「大人」になったそうです。

「ダンスの振りをちゃんとそろえようという意識が芽生えましたし、周りに合わせる協調性を持てるようになりました。」

現体制最後のまとまったインタビュー記事ではこうつづられています。

「丸くなった」とも取れるそんな小町さんが、3人になるタイミングで「誰にも負けたくない」と言い切りました。
メンバーというよりも外を意識してのコメントなのかもしれません。
協調性も持ちつつ、唯一無二の存在へ、2022年の小町さんはまた一味違いそうです。

夏芽ナツさん

ビジュアルに甘い声にその仕草にと、サンダルテレフォンの中でも高いアイドル力を持っていた西脇さんは、「グループの入り口」的な存在だとよく言われていました。
あくまで個人的にはですが、西脇さんが抜けた今、夏芽さんの入り口としての存在感はとてつもなく大きいように感じます。

夏芽さんはアオリやMCの多くを担当し、歌割も多いです。
アオリでの言い回しに注目してみると、夏芽さんはフロアにあくまで優しく呼びかけます。

「ファンの人達を雑な呼び方するのは嫌で」
あるとき夏芽さんがこう投稿していました。
ここで言う「雑な」とは、命令口調だったりファンに向かって言う「おまえら」といったワードなのですが、確かにどんなにライブが熱くなって冷静さを失いそうになろうが、夏芽さんはそうした言葉を絶対口にしません。
また、自らのことは別として、夏芽さんはファンのことを「オタク」とも言いません。

オタク心理を分かっているからと、親しみを込めてでしょうがそういう「乱暴な」言い方をするアイドルが非常に多くなっている中で、僕としては夏芽さんのこのスタイルが好きです。
「ライブやイベントのことを仕事と思いたくない」という夏芽さんの気持ちは、サンダルテレフォンのライブを初めて体験する人たちにとっても伝わってくるのではないでしょうか。

しっかりしていると言われることがプレッシャーになると夏芽さんは言うものの、どうしても期待はかけてしまいます。

最後に、とあるワンシーンを取り上げてこのライブレポの締めとしたいと思います。
アンコール1曲目、「かくれんぼ」では、メンバーが2対2に分かれて「はないちもんめ」の動きをする振り付けがあるのですが、ここでペアを組む藤井さんを迎えに行く夏芽さんの笑顔がとても無邪気で、印象的でした。

アーティスティックに振り切ろうとするサンダルテレフォンがどうなっていくのかは誰にも分かりません。
でも、3人となった「SANDAL TELEPHONE」もこの夏芽さんの表情のように明るいのではないか。
このシーンを見たとき、なんとなくですがそんなことを予感していました。

2022年もよろしくお願いします。

見出し画像:サンダルテレフォン公式ツイッターアカウント(@sandaltelephone)画像を改変


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