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【ライブレポ】秋葉原アイドルサーキットvol.1

11月3日、文化の日に@JAMとアイドル横丁がタッグを組んだ「秋葉原アイドルサーキットvol.1」が開催されました。
秋葉原の4つのライブハウス・イベントホールに総勢72組ものアイドルがあつまったという今回、出演者の多さゆえ持ち時間は20分と短いものでしたが、透き通るほどの晴天が広がっていた12:30から真っ暗になる20:00まで、8時間にわたって神田・秋葉原エリアの全4会場でライブが止むことなく音が流れ続けていました。

今回僕が観たのは以下6組。
個人的には、今見ているグループはと聞かれたときに挙がる上位6組でした。
タイムテーブルの被りなくちょうどよく揃ってくれました。

サンダルテレフォン
綺星★フィオレナード
Fragrant Drive
Pimm’s
リルネード
転校少女*

この6組だけに限って言えば、どのグループにもアウェイ感がありました。
フロアとステージとの距離感を初めは感じてしまっていました。
フェスなのでお客さんが散らばって濃度が低くなったのかもしれません。
それでも6組はそれぞれの巻き込み方でフロアを揺らし、限られた20分の持ち時間を使い切っていました。

では、トップバッターのサンダルテレフォンから書いてみます。
少し間隔が空いてしまったグループもあったため、熱が入って長くなりそうです。

◆サンダルテレフォン

この「秋葉原アイドルサーキット」は、vol.1とナンバリングが振られていることからも分かるように、今回が初回です。
しかし、実は去年の同日にも同名のフェスがパイロット版として開催されていました。
いわゆる「vol.0」です。

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その時は神田明神ホールとAKIBAカルチャーズ劇場との2会場で開催されたのですが、今回のようにお目当てのグループを求めてファンが会場を行き来するというパターンではなく、会場を移動するのはアイドルでした。

チケット購入時、ファンは神田明神かカルチャーズかどちらかの会場にランダムに割り振られました。
両会場ともに同時刻にスタートします。
出演するグループはまず片方の会場でライブを終え、大急ぎで別のファンが待つもう一方の会場に移動し、同じ内容のライブを披露しました。
片方の会場でトップバッターを務めたグループが、もう片方の会場では3番目に出演...という変則的なタイムテーブルとなります。

こんな特殊なレギュレーションが生まれたのも、人の行き来を最小限に抑えるというコロナ対策からでした。

二部構成でしたが、とにかくコンパクトにまとめられていたため、各部の出演グループは4組だけと寂しいものになっています。
チケットもそれなりに高く(6000~7000円くらいした記憶があります)、なかなか手が出しづらいライブではあったのですが、僕にとっては先月活動休止してしまった東京パフォーマンスドール(TPD)の出演が大きな引きでした。

当時はライブアイドルから離れていたのでTPD以外は知らず、今見ている転校少女*も例にもれずでした。

チケット購入時、僕が引いたのは神田明神でのライブでした。
このことが少し今後に影響してきます。

ライブ開催に先立ち、本編への出演4組とは別にオープニングアクトが追加で発表されました。
カルチャーズも神田明神も同時刻開催のため、オープニングアクトだけは2会場でそれぞれ違うアイドルがパフォーマンスするということになります。
AKIBAカルチャーズ劇場のオープニングアクトがSW!CH、そして神田明神がサンダルテレフォンでした。

あくまでTPD目当てのライブでした。
せっかく観るのだからと、本編出演の転校少女*やAppare!は予習を少しくらいはした記憶はありますが、たしかオープニングアクトの発表はタイムテーブルよりも後で、ライブの数日前にようやく発表になったかと思います。
持ち時間も短いオープニングアクトのアイドルにまで注意を払う余裕はありませんでした。
「変わった名前だな」と、エヴァンゲリオンの使徒「サンダルフォン」に由来するグループ名をぼんやりと眺めていた記憶がかすかにあるくらいです。

唯一何の基礎知識も印象も無いまま観たのですが、あの日一番前のめりにさせられたグループは、他でもないサンダルテレフォンでした。

会場の神田明神ホールは指定席で、等間隔にパイプ椅子が並べられていたのですが、ライブ中は席の前でスタンディングOKということになっていました。
OKだったのですが、サンダルテレフォンの時はほとんど誰も立ち上がっていませんでした。
皆それぞれお目当てのグループを持ち寄っている中で、サンダルテレフォンを目当てに来た人は、名前を知っている程度の方は居たにしてもかなりの少数派だったという感覚です。

これは人気の反映というより、コロナ仕様の特殊なレギュレーションが原因かと思います。
先に書いたように、ファンは会場を前もって選べなく、1/2の確率で神田明神を外してしまいます。
当たったとて、そもそもお目当てがサンダルテレフォンのみの場合に15分のライブに6000円というのは少々高く感じます。
結構通ってらっしゃるファンの方でも、これらの理由からか現地はためらい、配信でご覧になった方が多かったと後で知りました。

端的に言うと、サンダルテレフォンにとってあの日はドが付くほどアウェーな環境だったのでした。
自分達を観に来た人が少ないだろうことは、始まる前からメンバー本人たちも覚悟していたかもしれません。
オープニングアクトというのは言ってみれば前座なので格下感がどうしても拭い去れません。
逆境が、4人に火をつけたのでしょうか。

あの日は「Follow You Follow Me」から始まりました。
初見でもフリコピがしやすく、ノリのいい曲です。
まずこの曲で目線がステージまで持ち上がりました。
そして3曲目。ラストに披露されたのは「Magic All Night」でした。
これもこれで、Follow You Follow Meとベクトルの違う盛り上がり曲で、第一印象にはハロプロっぽさを受けました。

1,3曲目は、多くの人を惹き付けるキャッチーな曲だったのですが、その当時驚かされたのが2番目に披露された曲でした。
赤に変わった照明の下、「SYSTEMATIC」がかかりました。
この曲は盛り上がるというよりも、観る人をステージに釘付けにさせてしまうようなシリアスな曲です。

今になって考えれば、当時は1st EP「SYSTEMATIC」のまさにリリースイベント期間でした。
セットリストに入るのはさほど不思議ではありません。
むしろ、披露しないのが不自然かもしれません。
でも何も知らない当時の自分は違う捉え方をしました。

1,3曲目のような、場を上げる曲だけでなくむしろ「落とす」ような曲をたった15分しかないライブ時間に挟んできた度胸というか、多彩な顔を見せてグループの側面を色々な角度から映し出すことでもっと知ってもらおうという姿勢をみたように思ったのでした。
しかもこの「SYSTEMATIC」の大人びた表情のつくり方が素晴らしかったです。

お客さん皆さんが立ち上がっていないのでできませんでしたが、勇気があれば立って応援したいほど、響いてくるものがありました。

ライブ後、その熱気が冷めぬままサンダルテレフォンを絶賛するライブレポを書いたところ、ファンの方やメンバーからいいねがすぐについて驚いた記憶があります。
「ダルフォン」とそれを取り巻く人々のエゴサーチ力の高さを実感した最初の出来事でした。
自分語りが長くなってしまい恐縮ですが、この日がきっかけとなってサンダルテレフォンを知り、深くハマっていったのでした。

このライブはまた、本編出演の転校少女*も教えてくれました。
でも、少なくとも転校少女*に関しては会場がどちらであっても観られたわけで、ライブサーキットを選んだ時点で好きになることは目に見えていたと思います。
しかし一方で、オープニングアクトのサンダルテレフォンについては、カルチャーズを引いていたらしばらく知ることはなかったでしょうし、こればかりは確率の妙としか思えません。

とはいえ、あくまでライブアイドルの世界は狭いです。
かりにその時カルチャーズを引き、転校少女*のみを追っていた(あるいはその前に配信で観ていたSW!CHの可能性もあったかもしれません)としても、どこかのタイミングで必ずサンダルテレフォンを知ることにはなったはずなのですが、後になって思うとこればかりは僥倖といえる出来事でした。

それから1年。
今や数々のフェスや対バンでメインステージを張るようになったサンダルテレフォンにとって、オープニングアクトなんて懐かしい響きになってしまいました。
2021年11月、この日も昨年と同様1組目の出演で、だれの靴跡もついていないまっさらなステージへの登場でしたが、去年とはその意味合いがまるで違います。
確実にフロアを暖めることが出来るという、数々のライブで勝ち得た信頼が呼び込んだ、重要なトップバッターという役回りでした。

会場は、神田川にかかる万世橋付近の秋葉原パームスでした。

この日のセットリストを振り返ってみます。

◆セットリスト
M1. 碧い鏡
M2. ワンダーランド(Remix)
M3. Step by Step
M4. Magic All Night(intro mix)

2周年ライブからすっかりおなじみになったSEが鳴り、青と黒をベースとした衣装でメンバーが上手から登場しました。
メンバーはフォーメーションにつき、手のひら顔の前にかざして覗きこんでいます。
一曲目は「碧い鏡」でした。
メンバーの工夫によりクルっとひねるような動作が付け加えられているのか、振り付けは手数が多く見えます。

メンバーの目線も、高いステージの上から自在に動きます。
端から端まで置いていくまいと、4人とも見渡していました。

この日いつも以上にテンションが高く見えたのが小町まいさんで、表情の明るさだったり「Step by Step」のサビ前で飛び跳ねている動作でありありとわかりました。

パセラリゾーツの7階にあるパームスには、階下4階にまで響くくらいエコーが強めにかかっていました。
カラオケ店だからということもあるのかもしれません。
このエコーは、高く抜けていく藤井エリカさんの声質をさらに大きくします。
それとは反対に、伴奏の音はメンバーの動きや時間とともに増していく声量に押され、のっぺりとしたように聴こえてきます。
このバランスがとてもいいです。

余談ですが、パームスの公式HPには、ライブハウスの使用実績ページの見出しにはサンダルテレフォンのライブ画像が採用されています。
Follow You Follow Meの衣装なのでもう1年以上も前でしょう。

ラスト4曲目に入るころともなると、フロアの人数も心なしか増えてきたような気がしました。
比例して温度が高まってきている感じもあります。

「たくさんのアイドルの中から選んでくださりありがとうございます!」
だいぶ意訳が入っていますが、夏芽ナツさんがこのように呼びかけてきました。
夏芽さんはあくまで個人のポリシーとして、こうした煽りを加えるときに乱暴な言い回しをしないよう心がけているそうです。

「まだまだ踊れますかー?」
その裏ではかすかに伴奏のツリーチャイムの音が聴こえてきました。

しばらくして流れてきたのは、待ち焦がれた期待を裏切らないこの曲でした。
Magic All Night」。
ちょうど一年前のあの日から、会場をダンスホールに変えてしまう魅力は褪せていません。
変わったのは客席の反応でした。
ほとんど誰も立っていなかったのが去年の神田明神ですが、この日のパームスでは皆が立ち上がり、万雷というべき手拍子を重ねていました。

サンダルテレフォンのライブに教科書があるのならば、この日のセットリストは教科書1ページ目に据えられるべきものかもしれません。。
ド頭の「碧い鏡」で真っ暗なステージの中に存在感を示した後、アウトロから重低音でつなぎながら、グループの特色であるリミックス曲へと引き込み、「Step by Step」でサビのフリコピも促しつつ最後には「Magic All Night」で締める。
見事な、出来過ぎともいえる流れが出来上がっていました。

◆綺星★フィオレナード

「バクステ」と略されるバックステージpassは、AKIBAカルチャーズ劇場などが入るAKIBAカルチャーズZONEの6階にあります。
フロアの下手側には細長いカウンターが常設されており、いつもであれば「バクステ外神田一丁目」というアイドルグループのメンバーが給仕として働きながらこのステージでパフォーマンスをしているそうです。

コロナということで人数を絞っており、キャパは60人だと聞きました。
後方には机が並べられ、2人一席の相席みたいな座席位置からディナーショーみたいな形式でライブを見るという不思議な感じでした。

13時過ぎ、バクステでのライブを行ったのが綺星★フィオレナード(スタフィオ)でした。

スタフィオは、10月27日を境に新体制となりました。
クローバーグリーンの世良明梨さんがその日をもって卒業となり、一人減って6人組グループとなったのでした。
メンバーの地元など6箇所を巡る全国ツアーがこの9,10月に開催され、東京に帰ってきた10/26のファイナル公演が、世良さんにとっての卒業公演となりました。

卒業から日も浅いためか、アーティスト写真はまだ更新されていません。

それだけでなく、この日は世良さんに加え、末永香乃さんが体調不良により不在と、5人でのステージでした。
とはいえ、怪我の功名みたいなもので、2人も欠けたことで1人1人がよりよく見えました。
ここからは、セットリストというよりも各メンバーについて書いていきます。

*11/10、11日、新メンバーとして猫宮りなさん、満天ころもさんの加入が発表されました。一人減ったと思ったら二人入って8人体制となりました。

◆セットリスト
M1. Vana Scusa⊿
M2. fiore d'amore*
M3. La mia adolescenza.
M4. aile←Ave;nir

辻彩花さん

辻さんは、これまで観ていても動きの大きさがとにかく目立っていました。
身長はさほど高いとはいえないのですが、ダイナミックな動きは身長をカバーしてなお余りあります。
以前のレポでは、辻さんの動きはひねりを加えているようだと書きましたが、この日よく見てみると、振りに連れられた首の動きも注目すべき点だと気付きました。

遠心力を使って腕を回すときなど、辻さんの首は一緒に持っていかれたかのように腕の方に向かって伸びます。
それはもげそうなほどです。
身体いっぱいに使った動きというのはよく言われることですが、辻さんの動作はまさにそれでした。

以前のライブで観たときもでしたが、カチューシャだったり身に着けている装飾を邪魔そうにMCの時にステージ奥に置いたり、パフォーマンスの途中に落ちてしまったのか、パフォーマンス終わりに捌けていくときにステージ隅に落ちたアクセサリーを回収して一人遅く退場する、といったシーンを辻さんについては何度か見ていました。
これも、ひと一倍動きをつけていることの何よりもの現れなのかもしれません。
それでいて、「猫目」だと自称する、丸く大きな瞳を閉じてニコッとする表情も隠しています。

歌声のふり幅も持ち合わせていて、これまでは低音がよく届くように感じていましたが、この日「La mia adolescenza.」で矢羽根さんに続いたソロパートでは、高音を綺麗に残したまま中央から下手側に消えていきました。
長く黒い髪の毛はその動きについていけず広がります。

木咲りんさん

かつて「バクステ外神田一丁目」のメンバーとして、このバクステのカフェでウェイトレスをしながらアイドル活動をしていたという木咲りんさんにとって、この日は凱旋公演でした。
場内下手側のカウンターにいる店員の方が、作業をとめてステージをじっと観ているような気がしたのですが、そうしたゆかりがあったからなのかもしれません。
そんな木咲さんで注目したいのが歌声です。

静かに熱を帯びたようなその歌声は、一気にフロアを沸騰させる瞬間的な熱さこそありませんが、低温やけどのようにじんわりと広がっていきます。
7人の時は薄まっていた歌割が、急遽人数が減ったことにより増え、特に辻さんとふたりきりのパートでは、低音が広がる辻さんと互いを補いあってハーモニーを作っていました。

橘すずさん・矢羽根かこさん

相性で言うと、どこかの曲かは忘れてしまいましたが橘さんと矢羽根さんのデュオも素晴らしかったです。
矢羽根さんはとにかくステージ映えする人なので、スタフィオのライブを観る時にまず目に留まります。

センターの位置が似合う橘すずさんは、曲の盛り上がりが肩から上の動きに現れます。
辻さん以上にこの動きをどう表現したらいいものか分かりませんが、フレーズの切れ目で首を揺らしてマイクに身を預ける様子は、シルバーの髪色というビジュアルもあってとてつもなくかっこいいです。
ターン前に目線を切る時、フロアのほうにギリギリまで残しているのも特徴的でした。

冨田菜緒さん

この日のスタフィオのボーカルを一番先頭で引っ張っていたのはこの人かもしれません。
メルティパープル担当の冨田菜緒さんです。
歌声は明瞭で誰よりもよくとおります。
おしとやかそうな見た目も手伝い、これまでは落ち着いている歌声という枠から外れない範囲で観てしまうところがあったのですが、この日は良く伸びていました。
奥行きあるバクステのフロアの奥の方まで貫通していきます。
冨田さんの歌声を聴くことで始めて会場の特徴的な長さを思い知った感じです。

ここまで各メンバーの歌やソロパートについて触れてきたのにははっきりとした理由があります。
それだけ、メンバーの歌が上手くなっていると感じたのでした。
末永さんが不在との報を目にしたとき、まず歌はどうなるのだろうという思っていたおですが、蓋を開けてみると、フォーメーションこそ、卒業した世良さんの後や末永さんの一時的な不在の影響か、不慣れなように見えたものの、歌には迷いがありませんでした。

収容人数の少なさから、この日のバクステには常に入場制限がかかっていました。
次に書くグループもバクステでライブを行いましたが、60人のキャパには収まるべきではないグループです。


◆Fragrant Drive

セットリスト
M1. 胸の奥のVermillion
M2. Dance Flight
M3. 恋花
M4. Everlasting First Kiss

ライブを振り返って、メンバー何人かが投稿したツイートが印象に残っています。
「もっとたくさんの人に知って(観て)もらいたい」
ステージ下手側では、プロデューサーの貝塚さんが見守っていたそうですが、貝塚さんも「悔しさが残る」とよりストレートな形で表現していました。

本人たちと話をしたわけでは無いので、ライブのことなのか特典会のことなのか、具体的に何のことを意図してこうしたツイートをしているのかはわかりません。

でも、とにかくライブそのものを大切にするFragrant Driveのことです。
もしかしたら、与えられたライブの20分間でフロアを掴み損ねた感覚がどのメンバーにも共通してあったのかもしれないと思ってしまいます。

メンバーが動くごとに壇上がドンドンと揺れるのが分かるくらい前のほうで観ていたため、奥行きのあるバクステのフロアの後方などがどうだったのかは全く分かりませんでしたが、初めて観るお客さんとの温度が違っていたのでしょうか。

けれども、ステージを観る感じではそのような感じは受けませんでした。

Fragrant Driveは、定期的に出演している「東京アイドル劇場」のYMCAホールYという会場で観る機会が多く、そこで大きく腕を振ったときに見える姿は綺麗でした。
これはステージ背景が真っ黒なことから、対照的な肌の白さが残像として目に焼き付いたからなのかなと思っていたのでしたが、開放系でカラフルなバックのバクステのステージであっても全く同じでした。
振り付けがそろっているだけに、見ごたえがあります。

片桐みほさんは、視線を色々なところに送っています。
胸の奥のVermillion」で、ラスサビパートが終わってアウトロが切れていくまでの間、メンバーがセンターを中心に背中合わせになって右腕を伸ばしていくところがあります。
全員が外側を向いているため、観る方向はバラバラでな構図になるのですが、下手側に立った片桐さんは、外側を向きながらもふとフロアのほうをメンバー越しに観てきました。

下手の隅のほうにアピールするかのように注目していたことも覚えています。
お客さんがいるところではないのにどこを見ているんだろうと思ったのですが、どうやら配信しているカメラがあったようです。
画面の向こうと客席とで変わらない温度でコミュニケーションを取ろうとしている片桐さんの姿勢が垣間見えました。

Dance Flight」や「恋花」では、明らかに空気が変わっいました。
ボーカルにメンバー全員が加わると、ユニゾンでもコーラスであっても音で埋め尽くされます。

「胸の奥のVermillion」での伊原佳奈美さんのソロ「強さは無垢だと 自分には言い聞かせていた」が良く聴こえました。
糸を引くように細く伸び、それでいて伴奏に負けていません。

終わってみれば、Fragrant Driveもお手本のようなセットリストでした。
グループを背負う随一の名曲「胸の奥のVermillion」に始まり、マイナーコードな「恋花」「Dance Flight」で引き出しを開け、最後は「Everlasting First Kiss」でフリコピを促す。
ライブへのフロアのノリがいまいちだったのかもしれませんが、いつもと変わらない素晴らしいライブだったと思います。

◆Pimm’s

ここからの3組は、サンダルテレフォンが一発目を飾ったパームスでのライブでした。

◆セットリスト
M1. Original War
M2. BOY MEETS GIRL
M3. GekiヤVacation
M4. JUST GO MY WAY

短めのSEが流れる中出てきたメンバーは、足元で立ち位置を確認した後、中央の小山星奈さんを残して腰を落としました。
まずは「Original War」から。

歌いだしは小山さんからでした。
一音目から、とてつもない音を小山さんは出してきました。
そこから何パートか開けての林茜実里さんも、以前には破裂音のようだと称しましたが、この日もでした。

2曲目「BOY MEETS GIRL」では、高橋真由さんのこれ以上出るのかというハイトーンがラスサビに入ってきます。
全6組を観終わってから振り返ってもPimm’sの出番だけは音圧は異質でした。
出される音には遠慮というものがありません。

その中にあって、川崎優菜さんの歌い方は、左右を観ながらとても優しく聴こえてきます。

ツイッターにこの日の「Original War」の映像が上がっています。
これだけでも多少は伝わってきますが、しかし現場ではこんなものではありませんでした。
いかに性能が良いとは言えど、スマホカメラで全ての音をまとめるには限界があるのでしょう。
身体が浮いてしまうような、轟音のような音の束は会場でしか感じえないものなのかもしれません。

ラスト4曲目は「JUST GO MY WAY」でした。
11/9(火)にリリースされた、現6人体制の初アルバム「URBAN WARFARE」収録の新曲です。
11/3時点は、その数日前に音源が初公開されたばかりというタイミングでした。

新曲の音源が真っ先に公開されることはアイドルに限らずどの音楽ジャンルでもよくありますが、アイドルでのみ見られる特殊な傾向として、大抵振り付けがついているという点があるかと思います。
だからなのか、曲を聴くだけでは不思議と物足りなさがあります。
というより、どんなに音源を聞きこんでいたとて、振り付けやステージの姿をとどめておくだけの隙間を無理にでも作ってライブで完成するのを待つようなところがどうしてもあります。

この「JUST GO MY WAY」も、音源は聴いたもののまだあまりイメージが掴めていなかったのですが、この日ようやく分かりました。
サビでは高らかに腕を掲げ、「I JUST GO MY WAY 遠くまで」と外や内に向かってぐるぐると回します。
ポジティブな歌詞との親和性も高い振り付けで、一気に曲との距離を詰められたような気がしました。

やりきったという表情をした林茜実里さんの顔は真っ赤になりました。
「JUST GO MY WAY」 には甲高く「WOW WOW WOW」とシャウトするパートがありますが、ここを出し切ったからでしょうか。聴いているだけでも酸欠になりそうです。

2,3曲目の間だったか、MCコーナーだと思ってフロアが腰を落としたとき、すかさず高橋さんが言いました。「座らせないですよ!」
「ここにいる全員、ピムスと一緒に暴れましょう!」

Pimm’sのインパクトは歌のみならず激しい動きにもあります。
20分間の内に暴れて場を散らかし切り、何事もなかったかのように時間内にすべて畳み、きれいさっぱりと次のグループへとバトンを繋ぎました。

◆リルネード

セットリスト
M1. 純白のリルネード
M2. 今夜、ロマンティック劇場で
M3. もうわたしを好きになってる君へ
M4. 夏のレコードがまわりだす
M5. 王道的なLOVEソング

リズムを取っていてダントツで楽しいのが、リルネードというグループです。
手拍子で裏拍を取りたくなるような主旋律もさることながら、対旋律というのでしょうか、その裏で流れる伴奏のメロディーもとても耳触りよく入ってきます。
斜め前の席では、同じように主旋律よりも楽器が奏でる伴奏のほうに合わせて動いている方がいて、勝手に親近感を覚えていました。

普段は三人組ですが、この日は蔀祐佳さんが不在で、桐原美月さんと栗原舞優さんの二人でのステージでした。
二人で歌割を分担しなければいけないということで、負担はいつも以上だったと思います。1曲目「純白のリルネード」を歌う姿を見たとき、決して二人とも喉は本調子ではないように受けました。
立ち止まって音を確かめながら歌う姿からは、心をこめて歌おうという姿勢もなのですがどちらかというと、出しにくい音を外さないよう慎重に出していたように見えました。

とはいえ、ふたりそれぞれの特徴的な歌声は残っています。

栗原さんの歌声は細くとも強く聴こえてきました。
桐原さんの絞り出すような高音は、これまた独特です。

リルネードはまた、見るたびに印象が変わるグループです。
1年前、初めて見たときには、「もうわたしを好きになってる君へ」に代表される、女の子のあこがれる王道アイドルな雰囲気を感じていたのですが、次第にただかわいい、ふわふわしただけのグループではないと思うようになります。
もちろんその要素も残しつつなのですが、イメージは「純白のリルネード」「ラッタパリニャ」などの、情熱的な雰囲気のほうに寄ってきている気がします。

直前のPimm’sとの対比もあったのですが、栗原舞優さんの歌声は細くとも強い感じです。
桐原さんについては毎度のこと表情に注目してしまうのですが、この日もでした。
右上のほうを意味ありげに見上げてみたり、頬を膨らませたりと切り替わりは豊かでした。
歌詞の具合によっては、泣いているようにさえ見える時もありました。

純白のリルネードでは、人を寄せ付けないような、赤いものが見えてくるようなパフォーマンスでしたが、3曲目「もうわたしを好きになってる君へ」に移るころにはまるで別の表情になっていました。

桐原さんがダンスに矜持を抱いているであろうことは、ライブを一目見れば誰でも分かると思います。
この日注目すべきは、動作自体はなんてことないように見えるパートにありました。
サビで、開いた手をパラパラとおろしていく振り付けが、このパートにはあります。
真似できそうなのですが、桐原さんの下ろし方は目で追えないほど滑らかでした。

難しく、まず素人には真似できない振り付けを軽々とこなしてしまうこともすごいのですが、真似が出来ないだけにどれほどすごいのかが意外と見えてこないことがあります。
ここの振り付けはさほど難しいものではないのですが、真似できるからこそ、そこにつけられた変化や工夫を実感を持って受け止めやすくなります。

この日は多くのアイドルが4曲に収めるのに対し、リルネードが披露したのは5曲でした。
20分という時間なので4曲でやむなしかなと思っているのですが、ねじ込んできました。
それが、「王道的なLOVEソング」。

単独ライブでも本編のラスト等に披露される、大団円的な曲です。
綺麗にライブがまとまりました。

◆転校少女*

パームスのトリには転校少女*がやってきました。
この日を迎えるにあたって書いておきたいのが、その前日になされたこんな発表でした。

「解散のお知らせ」

2014年から、転校少女歌撃団としてその活動をスタートした転校少女*ですが、2022年1月のラストライブをもって解散するとのことでした。
このお知らせの直前には、昨2020年11月に加入した佐藤かれんさんの突然の脱退がありました。

そのお知らせの時の運営の言い回しに違和感を覚える人が多かったことや、佐藤さんがグループを越えたタレントパワーをもっていたことなどからグループ外のファンにまで憶測が飛び交い、穏やかならざる雰囲気が一部ネット界隈では広がっていました。

僕としては運営がどうのこうのというよりも、心配している風を装いながらも対岸の火事とばかりに面白おかしくツイートしている他グループのファンに対して思うことはあるのですが、なによりつらかったであろうは、残されたメンバー4人だと思います。

急遽この日のお昼には「解散宣言」と題したライブが渋谷で開催されました。
解散発表後メンバーが顔を出す初めての機会だったのですが、多くのメンバーは泣きながらコメントしていたと聞きます。
「解散をお伝えするまでがとても長く感じた」
その後の個人配信で、松井さやかさんはそう言っていました。

看板を最後まで背負う人の言葉はひたすらに重いです。

「解散宣言」では、活動初期から最新曲までを、歴史を追いながら計10曲を披露しました。
それを終え、少しは肩の荷が降りたであろう状態でメンバーがやってきたのが、この日の夜の秋葉原でした。

ここからライブの内容に入ります。
最初の3曲は、改めてファンに挨拶をするかのような曲が並びました。

M1. 銀河列車
M2. With You
M3. 星の旅人

With Youは、もともと「歌って踊って銃を撃つ」というサバゲ―要素を取り入れたコンセプトに始まった転校少女*(転校少女歌撃団)から、「エモーショナルかつ文学的な楽曲をパワフルなステージングで表現するグループ」という現座の方向性へ転換するきっかけとなった曲でだそうです。
星の旅人は、サンテグジュペリの小説「星の王子様」をモチーフとした、別れとその先を歌った曲です。

3曲いずれも、くるりとターンをする振り付けが動きについているくらいで、焦点はとにかくボーカルワークにあてられています。
これぞ転校少女*の代名詞とも言えるバラード曲です。

ここで注目したいのが塩川莉世さんと松井さやかさんです。
結成時からのオリジナルメンバーで、かつ歌唱力には相当の定評がある二人です。

曲も曲ですし、久しぶりに二人の歌声をしっかりと聴くことができました。
二人ともハイトーンを苦にしない音域の広さが武器ですが、そこへのアプローチが違います。

塩川さんは前だけをひたすらに向き、そこから一直線に会場の空気を裂いていきます。
一方の松井さんは、ライブでは必ずと言っていいほど一度は目が合う気がします。
「楽しめているかな?」とフロアを確認しながら歌声を出すのが松井さんだと思います。
一見相反するふたりの歌声は、互いに目を合わせたときに調和します。

もう二人のメンバー、成島有咲さんと佐々木美紅さんは佐藤さんと同じく、昨2020年に加入しました。
松井さんと塩川さんという、高く高い双璧を見上げながら、ここまで二人はやってきました。
体制が変わってもここまで転校少女*のパフォーマンスを落とさずに保っていられるのは、この二人の存在が言い表せないくらい大きいと思います。

佐々木さんは「With you」で「これからのストーリー きっと大丈夫」と歌いながら、手を頭の横においていた姿が印象的でした。
成島さんはこんなバラード曲であっても、随所には顔を崩して八重歯が目立つ笑顔を見ていました。
それが余計辛くなったりもするのですが。

M4. TRIGGER

ラストは、転校少女歌撃団時代からかけてきた「TRIGGER」でした。
グループで一番といっていいほどの盛り上がり曲です。
フェスのオーラスということもあり、ラスサビでクラッカーが鳴らされても不思議ではないほど、フロアは揺れていたように思います。
こうなってくるともう、心を痛めた解散宣言のことも、それを取り巻く話のことも、少しは忘れられました。
色々思うところはあっても、ライブでステージと対話できればそれも軽くなります。
転校少女*の活躍の場はSNSではなく、なによりライブなのだと、今一度実感することができました。

来年の解散まで、気持ちを平穏なまま保つのは相当難しいでしょうが、それでもライブに行けば答えは用意してくれるので、あと数回しかないであろうライブを楽しみたいと思っています。

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