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【ライブレポ】EVOLUTION POP! Vol.63

2月4日(土)に、Spotify O-WESTにて表題の3マンライブが開催されました。

アー写だけでも伝わる清楚感

系統が近しいもののあまり接点のなかった3グループによるライブです。
何十組も出るフェスのように、前後の演者でがらりと空気が変わるのもそれはそれで良いのですが、最初から最後まで雰囲気が保たれたなか過ごすのは波がないだけに安心します。
とりわけこの日は持ち時間が35分とかなり長く、かつどのグループも世界観を大切にするようなグループぞろいだったので、より集中することが出来たような気がしました。
遠征についていくほど好きなグループ、久々に観たグループ、そして初見グループと、自分にとっては思い入れのバランスが3組でちょうどよく、もともと楽しみにはしていましたが期待通りのライブでした。
最初から振り返っていきます。

1. かすみ草とステラ

トップバッターは6人組アイドルグループ・かすみ草とステラ
去年はO-EASTでワンマン、今年はクラブチッタでワンマンライブを成功に収めた、今とても勢いに乗っているグループです。
生で目にしたのは去年の3月のフェスと夏のTIFの2回。
「通学路」や「教室」など、学生生活にまつわる言葉が頻出し、またいくつかのMVではメンバーが制服風の衣装を身に着けて学生役を演じていることから、その存在を通して遠い過去となってしまったあの頃を再び体験させてくれるようなグループだというイメージが「かすてら」にはついていました。
一言で言えば、青春の風味を大いに感じていました。

そんな6人が漂わせる雰囲気は、活発というよりも大人しめ。
見た目は違うものの純朴な印象はどこか共通していて、同じ学校に通っていたらこの6人でいつも一緒にいてもおかしくないだろうなと想像できます。
年齢もそれまでの経歴もバラバラであろう6人ですが、アイドルグループの一員としてお嬢様風の衣装を着てみると、かすてらという箱で起こるリアルな学園生活が浮かんでくるのです。

その箱に収まった少しばかり内気そうな6人は、同時に幼さも備えているように見えました。
一言で青春といってもいくつか種類があり、往々にしてそれらは色で表現されます。
青年期に差し掛かっているころの万能感からくる青臭さ、恋愛模様の桃色、あるいは芽吹いていく草木になぞらえた緑色など...
初めてライブで観た約1年前の印象に大きく引っ張られているとは思うのですが、かすてらが表現する青春はそのどれとも見えませんでした。
淡く薄くて向こうまで透けて見えるような、それだけに何色ともとれない色です。
輪郭がなくて形を持たず、衣装を含めたお人形さんのようなビジュアルもあって若さを通り越して芽を出す前の種のように思えていたのでした。

シンメトリーで真似しやすい振り付けのある可愛らしいグループ。
はじめて見たときの感想では「野草を摘むようなステージ」と書いたのですが、摘み取った花をきれいな額縁に収めるところまで思い起こされたあの頃のかすてらと、この日は別物のように見えました。
SE「想う日に咲く花」で一人ずつ壇上に上がったメンバーが身に纏っていたのはボルドー色が主体の落ち着いた衣装。
これまでの白やベージュがメインで配色された、光を放つような色合いのものとは異なり、むしろ照明の明るさを吸い込むような深い紫色です。
出てきて一人ずつお辞儀するメンバーを迎える拍手は、一年前はまだ抜けきらない幼さを包み込むようだったのが、この日は重々しさに変わっていました。
メンバーは心なしか、あの頃より堂々としているようにも見えます。

頭上に光るのは電球色の暖かな光。
飾らないこの色もまた、素朴な6人を引き立てます。
1曲目「青より青く」のイントロではエアギターを鳴らす振り付けがあるのですが、学園生活というイメージが強くあるため、本物のギターというよりも、掃除の時間にふざけてそれっぽく構えたほうきに見えました。
小柴美羽さんはしゃがんでフロアと向き合ったとき、歌詞とは別の言葉を口にしているようでした。
目の前の人に何かを話しかけていたのでしょうか。

ライブ後、各メンバー持ち回りで各曜日を担当しているShowroom配信で、土曜担当の小柴さんは「もっと見てほしいし反応してくれたら嬉しい」といっていましたが、小柴さん相手に正面切って見つめるのはなかなかの至難です。
少なくとも自分が最前にいたら固まるだけだと思います。
まともには見られません。

スカートの裾をつまんで少しだけ上げる動作などが入ったダンスは非常に上品でしたし、2人一組となってペアのダンスをするところもまた綺麗です。
面白いなと思ったのが、動きが定規で当てたように揃っている一方で、例えば指の伸ばし方や耳への手の当て方など、細かいところで微妙に個性が出ているところでした。
根幹が揃っているだけに、ズレではなく6パターンの振り付けに見えます。
柔らかさもあり、たわんだと思ったらすぐに元の形に戻るしなやかさも備えている。
一曲が消化されるたびに声が漏れてしまいます。
すごい...

すごいなと思ったポイントをいくつか挙げてみます。
斜め上を向いたときの比賀ハルさんの、陽光に当てられた鼻筋から首にかけてのライン。
冷静さを保っていそうな鈴森はるなさんは、センターに来たときのややクールめな表情が目につきました。
汚れを知らない場所で大切に育てられた花は、陽の当たる場所でたっぷりと水分を吸ってこれほどまでに潤って大きくなるのかと、自分がほとんど知らないかすてらのこれまでを想像していました。
35分と対バンにしては長めの持ち時間が取られていたにも関わらず、MCタイムという名の休憩時間がほとんどなかったところも驚きです。
自己紹介すらしませんでした。

アイドルでありながらオタクも兼任すると自称する二刀流は「もえなす」こと渡辺萌菜さんです。
渡辺さんは恐らく思いを言葉にするのが巧みな方なのだと思います。
その日のセットリストの意味をずらっと書いた文や、日々つれづれなるままに書いた文の細やかさからは、コンセプトを大事にするかすてらをファンに伝える貴重な翻訳家なのだろうなという印象を受けていました。
「もえなす」が歌い始めを担当したのは3曲目の「アリス」か5曲目「ペルソナ」か、あるいはそのどちらでもなかったのか忘れてしまいましたが、前かがみで苦しそうにしながら歌っていた曲がありました。
目じりが緩やかで、笑顔の時にくっきり浮き出てくるその線は今、苦痛の曲線になっています。
こんなに苦しみながら歌うことがあるのかと驚きましたが、渡辺さんのこと。
考えに考えて生み出した表現方法なのでしょう。

そしてこの「アリス」「ペルソナ」こそ、今回一番書きたい曲でした。
過去の自分の乏しい記憶と繋げた中で、イメージしていたかすてら像と最も遠かったのがこの2曲でした。
どちらもクラブチッタにて開催の、2023年最初のワンマンライブで披露されたばかりの新曲です。
なりたい自分と、なれない自分。~私たち6人のアイドル人生。私の生きざま。~」と題されたこのワンマンライブは、演出が一風変わっていました。

昨2022年10月に行われたO-EASTでのワンマン「かすてら大青春祭」では、建物2階のフロアに通じる階段や踊り場にさながら文化祭の出店のようなパネルが置いてあったり、ライブ本編では実際の学校にありそうな椅子と机などが登場したりと、文化祭のような若さ溢れる青春のみずみずしさがテーマになっていたようなのですが、年明けワンマンのテーマはいわば「祭りのあと」。

限られた時間を一直線に駆け抜けていく儚いアイドル人生と、3年間に世界の全てが詰め込まれた学園生活。
どこか共通点のあるこの2つを限りなく近づけ、理想の夢として提出したのがO-EASTのステージであるならば、チッタはそれとは逆に残酷な現実を突きつけるようなライブだったようです。
なれない自分という現実。
楽しさの裏で膨らんでいく小さくはないしこりは、アイドルを、いや日常を生きていて少なからず感じるものです。
掲げた理想や夢と実際との間でもがく姿は、夢を見せる存在がアイドルとするならばあえて公開することではないのかもしれません。
しかし、かすてらは「6+FAN」とメンバーだけでなくファンすらもワンチームとして包んでしまい、会場に集まったかすてらチームに隠さず本音を打ち明けた。
ライブの途中ではメンバーが心の仮面を取り、活動していく中での苦悩を語るシーンがあったといいます。

そして、現実を直視する苦しみが表現されたのが、独白の前後の「アリス」「ペルソナ」でした。
MVが上がっているアリスのみについて取り上げると、この曲もまた他と同様に、6人からなる学園生活が描かれています。
しかし、そこに広がるのは穏やかならざる空気でした。
身につけているのはこの日と同じボルドー地の衣装ですが、ケープはつけていません。
肩を出した半袖のブラウス姿になると、一気に制服感が出てきて幼さが増します。
そんな6人が教室で授業を受けているシーンから、MVは始まります。
数学の問題。
これを解ける人、と先生に聞かれても誰も手を挙げません。
誰もいないならと指名されたのは比賀ハルさんでした。
黒板に背を向けたカメラは、椅子から立ち上がる比賀さんにピントを合わせていますが、その後ろにいる渡辺さんが自分が当てられなかったことでホッとしているような様子がぼやけた背景からでも見て取れます。
他のメンバーも外を向いたり、無関心そうでした。
一列目の真ん中という、先生の目に付きやすい位置で運悪くも当てられた比賀さん。
ためらいがちに立ち上がりました。
うつむいたまま黒板に向かうのですが、チョークを手にしたところでこらえきれなくなりました。
「もう嫌だ!」
あまりに単調な現実に不満が爆発したのでしょうか。
教室を飛び出していってしまいます。
残された5人は、止めるでも追いかけるでもなくただぼんやりとどこかを眺めていました。
どこまでも他人事のようです。
あまり仲が良くないクラスメイトという設定なのかなと最初は思ったのですが、単純にそうとも言い切れない気がしてきました。
もしかしたら、5人は叫びながら飛び出していった比賀さんに、自らを重ねていたのではないでしょうか。
たまたま指名されたのが比賀さんだっただけで、もし自分が同じ立場でも爆発していただろうと。
対岸の火事のような表情は、無関心からくるものではありません。
比賀さんが自分の写し鏡のように思え、自分もああなっていたかもしれないという恐ろしさから目を背けたいがために無関心を装ったのではないかと、考えています。

MVで寒気を覚えたのが、次のシーンでした。
序盤で絶望を見せ、希望へと変わっていく過程を見せるのが「アリス」なのかなと思っていたのですが、なれない私を打ち明ける暗い教室でのソロショットでは、メンバーから微妙に笑みがこぼれていました。
まだ1番。
2番からラスサビにかけて大きなプラスの展開が起こるはずです。
黒いものを吐き出し切らないうちに見せた笑顔に、少し大げさに書けば感情のコントロールが効かず笑顔が出てきてしまったような不気味さを感じてしまいました。
こうしたとき、大きなギャップを感じるわけです。
かつて見た幼さはどこに行ったのだろうかと。
ライブでは個人の細かい表情まで捉え切ることは出来ませんでしたが、「アリス」をプレイする目の前のかすてらメンバーは、自分が思っていたよりも遥かに情に揺さぶられる集団になっていったようでした。

こうしたものを見てしまうと、ますますコンセプトライブに行くべきだったなという気持ちが強くなってしまいます。
「なりたい自分と~」では盛り上がってきたライブに水を差すように、メンバーが涙ぐみながら本心を語るシーンがあったというのはライブレポか誰かの感想かで見ましたが、ただ言葉を発するだけでなく「アリス」「ペルソナ」あるいは「カタルシスダンス」等を通じて身体でも表現しきってしまっていたというのは想像がつきませんでした。

やや重めの空気が流れましたが、ラスト2曲にかけては炭酸の弾ける音で中和されました。
夏色微炭酸」は、小柴さんが好きな曲だと語っていたのを最近どこかで見かけました。
本人は確かに嬉しそうです。
TIFで観たときにはなかった、サビ前のクラップを煽るメンバーの姿がありました。

短い夏に別れを告げたのがラストの「正夢の少女」。
あの夏の思い出だって 君と超えてく気がした
現実は現実でも、「アリス」ともまた違ったリアルに引き戻されます。
「夏色微炭酸」のフリが効き、寂しさが襲ってきました。
かすてらの得意とする物語性にすっかりはまってしまっています。

手を振って肘を曲げるところまでがワンセットの振り付けが特徴的で、楽しい曲という印象でしたが、吉川実紅さんを見れば2番あたりで切ない顔をしているところがありました。
これまで知らなかった面が明らかになった一瞬です。
まだライブは3回目くらいですが、ようやくかすてらに対する視力があがってきたのかもしれません。

SE.想う日に咲く花
1.青より青く
2.改札口までの青春
3.アリス
4.春風
5.ペルソナ
6.夏色微炭酸
7.正夢の少女

2. 可憐なアイボリー

2021年のTIFでデビューした「カレアイ」こと可憐なアイボリー。

ステージを観て真っ先に出てきたのは「鍛えられている」という感嘆でした。
さぞしごかれたんだろうなというレッスンの厳しさを感じたというよりも、「アイドル筋(きん)」みたいなものを見たのです。
メンバーは10人と大所帯なのですが、一切ほころびのない統率取れたダンスを見てしまうととても2桁人数とは思えません。
振り付けは、グループ名にもあるアイボリー色と桜色が重なった穏やかな衣装とは裏腹に、身体を大きく使って激しめです。
2回転するようなシーンもあり、そこもまた驚きでした。
人数が多いという事実だけでステージ映えはしてしまうものだと思うのですが、それに満足せず限られた空間をいっぱいにまで使っていました。
ステージとの距離がやけに近く感じたのは、人数が多かったことだけが理由ではないはずです。
誰かがセンターに来たとき、ほんの一瞬ふらつきました。
ふらついたといっても気のせいレベルですが。
そこで初めて足元を見ました。
履いていたのは茶色のヒールローファー。
可憐な、というグループ名は足元まで徹底されていました。
見るからに硬そうな靴です。
それならふらつきもするでしょうし、逆によく踊れるなと思ってしまいます。

自分たちなりのアイドル像を掲げた、標語のような曲が多いのもまた特徴でした。
アイドル目線の「職業アイドル」論が独り言や日記のように語られる曲が多い。
誇り高きアイドル」では「バカにするやつは嫌いだ 見下されるのも嫌いだ」と言いながら右腕を振り払います。
「“アイドルなんか”という言葉は この世でいちばん大嫌いだ」
痛烈な宣言は気持ちがいいです。

特に書きたいのが「アイドルでよかった。」。

はじまりが特殊でした。
10人が横一列に並び、マイクを両手にしんみりした空気が広がっています。
最初の歌詞は「次の曲の前にMC挟みます 今日は僕に会いに来てくれてありがとう」
どうやら場面はライブ中。
実際のMCよろしくソロパートの人が一歩前に出て、一人ずつ思いを語っていくような形式でした。
10人に割り当てられたのは歌割りというより配役。
それも、台本をただ読み上げているというよりも本心から出てくる言葉を連ねているように見えました。
自らのパートを待つ間、下を向いて寂しそうな顔をしているメンバーもいます。
その姿は、まるで現実の卒業コメントを残す直前かのようでした。
歌詞に登場するのは架空のアイドルのお話ですが、その架空と、いまステージに立っている10人との境界線が曖昧になりました。
「歌う意味を 踊る意味を 汚れた世界でも愛そう愛そう」
サビではダイナミックな音とともに扉が開かれました。
バレエの動きを取り入れたようなダンスからは、満ち足りた感情がありありと伝わってきます。
たとえ美しくはない世界でも、アイドルでいることに価値を認められる自分で本当に良かったという感慨です。

集団生活が苦手な自分だからより強く思ってしまうのかも知れませんが、大人数でいることの難しさは、見かけ上の動きを揃えることだけではなく、向かっていくベクトルや活動への姿勢などのメンタル的な足並みを揃えるところにもあると思います。
しかしカレアイは、10人とも強い信念のもと同じ方向を向いているように見えました。
アイドルで良かったと心から喜び合い、「上向く花に私はなりたい」と共に願っている。
10人もの配役が無駄になっていませんでしたし、初めて観たにも関わらず、この10人で変わることなくずっと活動してほしいなと思ってしまうくらい愛着が湧いていました。

7曲目はこんな歌詞から始まりました。
「最高の仲間がいて 最高の夢をもって 君に見せたい 僕らの決意」
親指と人差し指を広げてVサインのあとに2回クラップ。
最後には拳を天に掲げます。
メロディーは明るく華やか。
歌詞に腕を引っ張られてメロディーに背中を押されるような曲なのですが、この曲の肝はそこではありません。

タイトルにもなっているサビの一言。
ここで目が覚めます。
「僕らはきっとすごくない」

応援歌のような明るいテンションを貫きながら、冷や水を浴びせるようなことを言っているのです。
ぼくらはちっぽけな存在なのだと。
一人では何も出来ず、だからこそ最高の仲間が「必要」なのだということです。
これほど前向きに負けを認める曲がかつてあったでしょうか。
一方で、2番の歌詞は「弱くない」に変わっています。
足元を見つめつつも、まだ膝をついていないというささやかな抵抗だと、自分は受け取りました。
右腕を伸ばして左手を顔の前にかざし、獲物を狙うように腰を低くする振り付けも、見た目に似合わず泥臭くていいです。
よく聞いてみると、ベースの音が目立ちました。
遊ぶようなメロディーで、楽譜に色を付けています。
バンドで大切なのは主旋律よりもベースやドラムだといいますが、足元を見つめて重心が低いこの曲だからこそ響いてくるのでしょう。

全曲わりと聴きなじみがよくてすっと入ってくるのですが、どれもありきたりではなく特徴を伴っているところが面白いです。
一番の人気曲であろう「推し変なんて許さない!」のイントロはきっかり10秒。
タイトルの言葉としての強さ、一度聞けばなぞれてしまうくらい分かりやすい歌詞も合わせ、タイパ重視の今の時代にぴったりです。
先に挙げた曲以外にも考えさせる歌詞が多かったり、縁の下の楽器が前に出てきたりとハニワプロデュースなだけあって多彩です。
注目すべきグループがまた一つ増えました。

M0. SE
M1. 誇り高きアイドル
M2. いつだって戦ってる
M3. 私、アイドル宣言
M4. 推し変なんて許さない!
M5. 大嫌いなはずだった。
M6. アイドルでよかった。
M7. 僕らはきっとすごくない
M8. ファンサ

3. 群青の世界

4人組アイドルグループ・群青の世界。

カレアイの後だとステージに空間がより生まれ、丸腰に見えます。
工藤みかさんと水野まゆさんが特にヘアアクセを付けず、髪をおろしているだけというシンプルないでたちだったのが印象に残りました。
先にセットリストを見てみます。

M1. ステラ
M2. However long
M3. BEST FRIEND
M4. Starry Dance
M5. ごめん、好きになって
M6. カルミア
M7. 僕等のスーパーノヴァ

活動は2018年から。
豊富な曲があるにも関わらず、この日チョイスされたのはここ2年弱の間にリリースされた新しい曲ばかりでした。
BEST FRIEND」「Starry Dance」「ステラ」「ごめん、好きになって」は秋ツアーとそのツアーファイナル兼4周年ワンマンにかけて立て続けに解禁していった、最新曲です。
「ごめん、好きになって」は略して「ごめす」なのだと最近知りました。
ライブでかかるとファンの多くが跳び始める「カルミア」がこの中では一番古いのですが、それでもリリースは2021年の夏頃。

フレッシュな曲ばかりで構成されたセットリストに新しい風を感じていたのですが、同時に、新曲を続けてリリースしだしたころからなんとなく感じていたことがより明確な形となって目の前に迫ってきた気がしました。
新曲が増えていったこの数カ月、群青の世界の中で何かが変わっていったとずっと思っていました。
何が変わったのかは未だにはっきりとは分からないのですが、一つを挙げるとするならば、「身近」になったことなのかなと自分は思っています。
それまで群青の世界に対して持っていたイメージは、抽象的な感情を全身で表現するという、近寄りがたいほどのめり込んでいくパフォーマンス。
身体のしなりや首の切り方、あるいは頭の傾け方などは非常に練られていて、まるで精密機械のようでした。
グループ名に背負っている”世界”とは、自らの心に広がる、高次元の空間に他なりません。
自分の色を取り戻そうともがく「COLOR」、操り人形の糸を断ち切るまでの過程をつづった「ロールプレイ」、「BLUE OVER」では限りなく青い空に手を伸ばして叩き割ろうとしています。
こうした曲ばかりでないことは承知していますが、少々難解なこれらの曲が群青の世界を語るうえで必須なことには間違いないはずです。
そんな曲たちを、メンバーは再現性の高いダンスでもって表現するわけです。
時に共感し、時に詩的な表現に圧倒されながらこちらはなりゆきを眺めていました。

ところが最近、テーマが変わってきました。
恋愛や友情などといった(かつてもありましたが)身近なものになり、自分の内面ではなく他の誰かに対する想いを題材にした曲が増えだしました。
BEST FRIEND」は女子同士の友情が二人称のメッセージで書かれていますし、歌詞にある「男子」という言葉は学校生活を連想させます。
10代の話なのでしょう。
ごめす」などは読んで字のごとくですが、真っ向から恋愛系。
後悔の念がこもった「ごめん」は迷惑をかけた相手へのお詫びと、それでもまだ諦めきれないという相反する感情が現れているように思います。
言葉を投げかけている時点で反応待ちの感じがするのです。
この日はありませんでしたが、「ノエルに君は」も悲恋の曲でした。こうした曲は、扱うテーマがわかりやすいこともあり、歌詞に登場する人物像が描きやすいという特徴があります。

それまで割とどうともとれそうな話を展開してきた群青の世界が、誰にも起こりうる日常にフォーカスし始めている。
これが大きな変化でした。
すると急に身近に感じるようになります。
昨2022年1月にリリースされた「However long」は、終点に向かう電車に並んで座る2人の描写から始まり、その片方の心情へとズームアップしていきます。
恋愛模様とも取れるのですが、アイドルとファンとの関係を歌った曲とも捉えられそうなところがあります。
以前の曲紹介ではこう取り上げました。

そんな目線に立つと、2番Aメロ「終点」も俄然気になってきます。
一緒に乗っている列車の終着駅という意味だけではないのかもしれません。
アイドルとファンの脆い関係そのものが終わってしまうピリオドなのだとも、考えられなくはないでしょうか。

今まではファン対アイドルの見方のほうが強かったのですが、アイドルより一般人の感覚がトレンドになりつつある最近の曲に挟まれると、直球の恋愛ソングという印象という見方でも無理はありませんし、そちらのほうが自然な気もします。
深読みすることなく、そのままの受け止め方のほうが違和感がなくなったわけです。

別の変化を挙げてみると、振りよりも歌をメインに据えようとしている意図も感じました。
かつては歌や動きが優位だったように思うのですが、動きを減らして歌を聴かせる場面が多くなっています。
象徴的なのが、「ノエルに君は」ではほとんど踊ることなく歌に集中しています。
先のツアーでもアカペラに初めて挑戦することがありました。
4周年を境に意識して何かを変えようとしているのはたしかなはずです。

清楚系のグループが2組続き、ステージには汚れなどなかったのですが、さらに磨きをかけてピカピカにしてしまったのが群青の世界でした。
黒いものを見せる深淵たる曲もありませんでしたし、衣装の水色は華やかです。

見た目的に一番目立っていたのが、ツインテールの村崎ゆうなさんでした。
体調不良で数日お休みし、久々に集まったこの日。
だからなのかいつも以上に笑顔です。

ラスト「僕等のスーパーノヴァ」はさすがの盛り上がりでした。
2021年11月からの曲でこちらも古くはないのですが、今や他グループの生誕祭でも使われるほど不動の人気曲になっています。
最新曲ばかりでフロアをやや置き去りにしている感じがあったものの、ここはさすがのまとめ方でした。
最後の最後でまた一つテンションがあがったところで上を見上げると、星球が光っていました。
星や天体もまた、「アンノウンプラネット」から続く群青の世界のシンボルです。
変わった変わったと言っても根幹はそのままでいてくれているのかもしれません。


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