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【アイドルファンインタビュー#4】あまりりす「LET'S SWEET CHOCOLATE PARTY」(しばちゃんさん)

フォロワーさんにおススメアイドル(アーティスト)をお伺いする企画の第4弾。
今回ご協力いただいたのは、しばちゃん@shibachan_photo)さんです。

共通のフォロワーさんを介して昨年のTIFでお話したのが初対面でした。
ともに好きなグループのライブでお会いした時にご挨拶する程度で、深く語り合うなんてことは今までなかったのですが、今回膝を突き合わせてじっくりとお話しする機会をようやく得ました。

カメラ撮影に熱心に取り組まれている方で、アイドルのライブ写真のみならず、日常を切り取った風景写真や臨場感あふれる競馬写真などで日々のTLが潤っています。
TLを眺めているだけで、さながらちょっとした写真集をめくっているかのよう。
それぞれの写真にコンセプトや意匠がちゃんと込められているはずなのですが、自分みたいな無粋な人間はそれも解することができず「綺麗だなぁ...」と言っていいねを押すくらいしかできません。

喫茶店でお伺いしたお話は、テーマが多岐にわたりました。
今回ご紹介頂いたグループのことはもちろん、ライブアイドルの在り方と推し方、カメコならではのライブの見方、果ては写真を撮るときのマインドなど。
対象は違えど、ライブレポにとことんこだわる自分にとっては非常に参考になる面やシンパシーを感じる部分などが多々あり、熱く意見を交わしていくうちに気が付いたら時間が過ぎていました。
結局、閉店時間になるまで約3時間居座っていました。
さらに付け加えれば、自分が待ち合わせ時間を勘違いしていて予定より1時間遅れたスタートだったので、それがなければ恐らく4時間、あるいはそれ以上に達していただろうと思います。
(時間間違えたのはすみません...戒めとしてここに書き残しております。)

インタビューの後半に語っていただいた内容の方がアイドルの話よりよっぽど長くて濃く、むしろこちらを記事にしたほうが良いのではとすら思いましたが、趣旨がぶれてしまうのと、内容が感覚に基づくセンシティブなもののため、下手に触って分かった気になってしまうのもどうかと思いここではまるまるカットします。
ただ一つだけ取り上げたいのが、「不自由さや制約があるからこそ」という考え方。
例えばライブ撮影でいえば、「どうぞ撮ってください!」なんていうおあつらえ向きの環境が毎回整っているわけもなく、光量に乏しかったり撮影可能席の角度が悪かったりと、どこかしらに不自由がついてまわるものです。
カメコを名乗るのであればそこで萎えてしまうのではなく、むしろ燃えないとおかしいというわけです。

往々にして芸術は、失敗かと思われたところや制約から生まれるもの。
客という障害物がなく、一番近いところから撮れる最前中央にこだわり、ファンやスタッフと言い合いになるカメコもごく一部にはいるのですが、外的な環境のベストを求めるのではなく、たとえ撮るのに適した場所でなくとも工夫してあれこれとやりくりするところに面白味があるのだと言います。
実際に語っていただいた内容はもっと濃いのですが、大変興味深いお話でした。


ご紹介いただいたのは、現在4人組(一人は研修生)のアイドルグループ・あまりりす
結成から4年以上経っています。

アイドルオタクを続けていると、名前くらいは聞いたことのあるアイドルはかなりの数になっていくものなのですが、「あまりりす」というグループは聞いたことがありませんでした。
自分が主に観ているのが「TOKYO GIRLS GIRLS」や「MARQUEE」など、いわゆる”王道”と言われるグループが集まるイベントに偏りがちだというのもありますが、それを抜きにして規模感からしても、あまりりすはアングラなほうのグループだと思います。
しかし奏でる音楽は意外にも、新宿BLAZEやO-EASTを埋めてしまうグループよりも遥かにロックで、時として上質でした。
なにせアングラなので、しばちゃんさんもはじめから存在を認識していたわけではありません。
別のグループを経由しています。
アリの巣を掘り進めていったら、小さな居住スペースのさらに下にまた部屋があったという風に、フェスや外部イベントが盛んなライブアイドル特有の連鎖的なつながりからあまりりすにたどり着きました。

「去年の5月の連休明けに、横浜1000CLUBでイベントがあったんですよ。その時に見かけたのが、『軍服ワンピ青藍組』というアイドルで、カメラを構えたらやたらカメラ目線を送ってくるんですよね。
すごく撮られようとしてくるから、この子たち面白いなとなって。曲もいいし。持ち曲にsurvival dAnceがあるんですよ、TRFの。それをアイドルっぽく歌ってた。」

面白いなとは思いつつ、目当てのグループでもないため特典会でチェキを撮るつもりもなかったのですが、メンバーの怖いもの知らずな営業に押されます。
軍服ワンピとはご新規さん無料のチェキを撮ってその日は終わりました。
その後メンバーの生誕祭を配信で観てリプを送ったり、小さな箱でのイベントに参加するなど少しずつ、しかし確実に関心が向いていきます。
秋葉原の末広町にあるそのライブハウスで行われた対バンイベントには、実はあまりりすも出演していました。
しかしその時は軍服ワンピを観るのみで、あまりりすをライブで初めて見たのはそれから数週間経った浅草橋でのライブのこと。
こちらも、あくまでお目当ては軍服ワンピでした。

「秋葉原は狭くて年齢層も幅広くて独特な空気だなぁと思ってたんですけど、浅草橋のもこれまためちゃくちゃアングラで、なんだここはと驚きながらも最後に『あまりりす』さんが出てきました。そこで初めて観たんです。面白いなと思ったのは、普通のアイドルならはきはき喋るじゃないですか。『こんにちは!●●です!』みたいな。違うの。『こんばんは...あまりりすです..,』ぼそぼそ喋ってるから聞こえないんです。何だこの子たちはって思ったんですけど歌は良いんですよ。しっかりしていて。」

ロック色の強い曲

そのライブで一番刺さったのは、「月下のアマリリス」という曲でした。

「聴くと結構ロックでめちゃくちゃかっこよかったんですよ。なのに喋りがグダグダで、それが結局可愛いんだけど。この子たちいいなぁなんて思いつつ。
でもね、特典会は行かなかったんだよなぁ。そのまま帰っちゃったんだけど、耳には残っていて、サブスクを調べたらあったんで落として聴いてみた。
そうしたら、いつの間にか通勤の時にほぼほぼ毎日聴くようになったんですよね、不思議なことに。」

「月下のアマリリス以上に刺さったのがアルバム『LET'S SWEET CHOCOLATE PARTY』の、特に『Sweet Baby Love』っていう曲。これがまぁロックなんですよ。可愛い歌い方してるんだけど、ギター中心のしっかりリフが効いたロック。昔バンドやってたのもあって、ギター中心でグイっと押してくる音が刺さるんですよね。」

イントロを初めとした伴奏に特に力を入れているのは、一聴した自分も感じました。
生の音を聴かせるイントロです。
それでいて、前に出すぎることもなく、自己満足的に奏でている嫌味やいやらしさもない。
ここまで音にこだわっているのは(他に失礼かもしれませんが)久々に出会った気がしました。
タイパ重視でイントロなしの曲がもてはやされるこの時代にあって、身を任せていれば楽な流れをかたくなに逆流しているかのようです。

どんとすとっぷ☆無双モード」は裏のベースが耳を震わせ、「Sweet Baby Love」も主に竿隊の低音が通底していながら、ひと昔前のゲームのようなピコピコした音が響きます。
落ちサビの音使いが良いなと思いました。
CHOCOLATE DIVE」はかき鳴らされるギターのソロが素晴らしい。
音がどことなく懐かしく、サビの最後のフレーズに上ハモを加えているところにこだわりを感じます。落ちサビには泣きのシンセの音が入り、エモーショナルが際立ちました。
違う世界に迷い込んだ感覚を覚えたのが「残光イノセンス」でした。魔法にかけられたような不思議なメロディです。この曲もベースが目立ちました。
群青シンセシス」にtake2とあるのは、以前に別バージョンをリリースしていたからでした。カラフルでテンポは速く、終始はためいているような音があったりと、メロディはやはり多彩です。

通して聴いて、転校少女*の「じゃじゃ馬と呼ばないで」が浮かびました。
甘く高いメンバーの歌声を、ベースなどの低音が支えて奥行きを演出するという音の使い方に、両者近しいものを感じたのでした。
「アイドルだから」というエクスキューズを嫌い、ペラペラを排し、このアルバムでアイドルのみならずポップシーンに切り込んでいくという制作側の意気込みも感じます。
自分の行くグループとライブで被ることは今後ほとんどないと思いますが、知らないところにとんだ「楽曲派」が眠っていました。

調べてみたら、クリエーター陣が錚々たるメンバーだそうで、だからこんなに音が良いのかと納得です。

◆紹介文
収録曲はゆいざらす(ex.ゆるめるモ!)が作詞を担当したライブで盛り上がる定番のエレクトロポップ「どんとすとっぷ☆無双モード」、FM音源をアレンジに取り入れたキュートなポップロック「Sweet Baby Love」、「共依存」をテーマに天下のちゃんゆき(ex.THE BANANA MONKEYS)が作詞を担当したロックチューン「CHOCOLATE DIVE」、80年代から数々のゲーム音楽制作をし続けているKawagen作曲によるドリームポップ「残光イノセンス」、1stシングル「泡沫の華」からリードトラックの「群青シンセシス」の新録バージョンの全5曲を収録。
https://sweeprecord.biz/?pid=162974904

まだ2回

ライブアイドルは文字通り平日休日問わずライブを重ねているわけですが、応援する側も、止まったら死んじゃうのかというほど日々のライブを欲しています。
自分は1週間に1回程度と、決してライブアイドルオタクの中では頻度が高くないほうですが、ライブやコンサートに行くという習慣がない人にしてみれば、それでも目をむくような高頻度なはずです。

毎日行って何をするかというと、昨日と今日とで微妙に違うパフォーマンスを虫眼鏡で探してみたり、言葉では言い表せない「ライブ感」を味わいに行ったり、出席確認のごとく推しと挨拶したり。
理由は様々ですが、摂取し続けないと病んでしまう、禁止薬物のような匂いがそこはかとなく漂っているのがライブアイドルの世界です。
天空アイドルやアーティストならブランクが数カ月から一年以上空いても平気ですが、面白いことにライブアイドルではたった2週間の空白でさえも季節が巡ってしまったかのような隔絶を感じます。
その隔絶の間に、様々な出来事が起こります。
知りもしなかったグループに急にハマっている可能性もあるわけです。
しかもそれくらいの空白はいとも簡単に生まれてしまうのだから恐ろしい。

例えば自分の都合と推しグループのライブ日程がなかなかかみ合わないとき。
あるいは何らかの事情で平素よりライブのペースを落としたとき。
誰かが卒業したあと、新体制の準備期間として少しばかり間が空くことは当然ながらあります。
いわゆる主現場と呼ばれるところがそんな状態になったとき、穴埋めの応急処置的のつもりで行ったグループに気が向き、気付けばそちらに傾倒するようになり、ブランクが空けてもそのころには、元のグループに対してはもう心が冷え切っていたなんてこともあったりします。

ところがしばちゃんさんとあまりりすとの付き合いは、よくあるライブアイドルの楽しみ方とは少々異なります。
どちらかというと天空アイドルを見ているかのような接し方。

「実は、あまりりすのライブをまだ2回しか見たことがないっていう(笑)。浅草橋のライブと2022年10月に主催ライブがあって、そこで一回観たくらいかな。」

ハロウィンのライブで撮った写真を見せていただきました。
数カ月ぶり2回目のライブとは思えないほど、ライブの動線が完全に頭に入ってないと撮れないと思ってしまうようなショットなのですが、結局これきり行けていないそうです。
数あるとは言えどライブのタイミングや、(金銭、時間的な)キャパシティーの問題だったり、様々なものが上手くいって初めて「通う」という状態になれます。
たまたまそれが上手くかみ合わなかったということなのでしょう。
日々のライブで心を繋ぎとめるのがライブアイドルの常識のようなものですが、しかししばちゃんさんとあまりりすの間には、それよりも固い楽曲のつながりがあるようでした。

「こういう界隈は嫌味がないし、観ていて楽しいんですよ。ぽっと入っても普通に話しかけてくれるし、平和なんですよね。いつも観ているグループとは別の刺激をもらいに行ってる感じ。」

「(先日の、Zepp DiverCityで開催されたTGGに触れて)あまりりすさんTGG出てくれないかなぁ。出たら面白いと思うんですけど。Zeppとかに絶対映えると思う。曲も強いし可愛いし、初見だけで数10人引っかかると思うんですけど。」


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