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【ライブレポ】TOKYO IDOL FESTIVAL 2023 day3

この記事の続きです。

日付かわって8/6のTIF3日目。

2日目は、C;ONのあとDOLL FACTORYで数組観て夕方に帰りました。
翌日も快晴かと思っていたのですが、予報では曇りが多く午後には雨マークがついています。
確かに朝やや早めに外に出てみると雲がかかっていました。
不安定だという予報通り、3日目の最終日はスコールが何度かやって来た結果特典会が打ち止めになったり野外ステージが一部中止になったりしたのですが、自分も当初の予定が狂わされました。
天候とは無関係に電車運転見合わせによりMyDearDarlin’の最初のステージが観られず、昼過ぎのステージがこの日一番最初のステージとなってしまいました。
HOT STAGEでAKB48を観てやっぱ初日だよなーとなったあと、ZeppのHEAT GARAGEに入ってこのグループからです。

6. アップアップガールズ(仮)

昨日の九州女子翼を観て出てきた感想と同じく、アプガのステージもやはり鍛え上げられていました。
女子翼以上に見た目に現れていました。
TIFのためにアイドルグループはいくつか特別な仕掛けを用意することがあります。
セットリスト予想キャンペーンをしてみたり、特典券のレギュレーションを甘くしたり。
最大規模のお祭りを味わいつくしてしまおうという目論見です。
特別衣装を用意するというグループもあったりします。
TIFのためだけに作られた衣装を来たり、グッズTシャツを夏らしく衣装風にするグループなどたまに見かけるのですが、アプガも特別衣装での登場でした。
それ自体は驚きませんが、他のグループと大きく違うのは、特別衣装が水着だということ。
装飾の多さや賑やかさでいえば、ブラジルのサンバで見るような、水着風衣装という感じでしょうか。
アイドルが水着でステージに上がるのは、話題性も含めファンサービスの最終手段という感じがありますが、しかしアプガの場合注目させたいのはそこだけではないように思います。
ステージを見上げるとまず目に入ってくるのは、いくつもに割れたメンバーの腹筋です。
白い体に浮き出た腹筋が影を作っていました。
女子翼は内から漏れだしてくるような鍛錬でしたが、アプガの鍛錬は衣装のおかげでビジュアル的にも明らかです。

古谷柚里花さんが発破をかけます。
「まさかZeppに涼みに来たんじゃないですよね!」
それを聞いて燃え上がらない人はいません。
揺れが大きくなってきました。
イントロ長めの「ジャンパー」や「アッパーカット!」、さらには「お願い魅惑のターゲット」と歴史ある盛り上がり曲が多数披露され、メンバーはステージの端から端までくまなく走り回ります。
ステージはリングに変わり、端から端までの動きのときは有りもしないロープが見えました。
フリコピをしているとお腹が痛くなってきました。
飛んだり跳ねたりしているからなのですが、これもまたアプガのライブに来ている実感です。
現体制のアプガの歌姫は古谷さんというイメージでしたが、鈴木芽生菜さんも今回のTIFカラオケ大会で優勝しました。
アプガは歌声がちゃんとマイクに乗って聴こえてきます。
見た目だけでなくパフォーマンスにもちゃんと強度がありました。
オリジナルメンバー・関根梓さん抜きのステージでしたが頼もしさしかありません。

7. 可憐なアイボリー

急なスコールなどで誤算が相次ぎ、時間はもう16時ごろになってしまいました。
再びDOLL FACTORYです。
可憐なアイボリー・通称カレアイの出番は直前のSKY STAGEでも予定されていたのですが、雨により残念ながら中止になってしまいました。

カレアイのステージは言うなれば、高画質でした。
基本的に人数が多いと誰かがミスをしたりずれたりする確率が高く、少人数に対しては部が悪いのかなと思ってしまうのですが、メンバー10人もいるカレアイは人数の多さをデメリットにしていません。
歌もダンスも、誰かが目立ちすぎることなく揃っていました。

特に歌は個人のスキル差が分かりやすく出てしまうところかなと思うのですが、頻繁かつ平等なパート割りの間に音圧の差を感じることもありませんでした。
もちろんパート割が比較的多くてメインを任されているのだろうなというメンバーと、これからソロパートを増やすために外部レッスンに通い続けているという途上のメンバーはいるのですが、PAのボリュームをかさ増しすることなくしっかりと届いてきます。
ダンスは歌以上に語れることが少ないのですが、どういう動作をしているのかがはっきりと読み取れるのは踊りがクリアな証拠だと思います。

カレアイは割と平等主義で、10人とも前後列にいる割合はだいたい同じなはずです。
前列メン後列メンという言葉があまり発生しにくいです。
それはいわば個人個人のスキルが非常に高いということでもあります。
人数の多さは下手さのごまかしではなく、一人のパフォーマンスを10倍に増幅するための拡張機でした。

拝啓ライバル」のアーミーっぽい黒衣装でやってきたメンバーですが、黒とは真逆の位置にいました。
天井の豆粒のような照明が照らす光がよく合います。
よく整備され、個人的には一番綺麗なDOLL FACTORYとピッタリでした。
清らかで清廉。
つい数時間前まで蒸し暑いテントの中で汗をかきながら特典会対応をしていたのに、今では髪の毛一本乱さず、我々の理想とするアイドルの姿のままで目の前に現れています。
10人もいるのにぶれない動きは鮮明で、それでこその高画質でした。
来年以降、DOLLの次に願うのは野外のSMILE GARDENというよりもHEAT GARAGEのほうがイメージしやすいです。

花火より恋」の最後のフレーズ、センターの寺本理絵さんの表情が絶妙でした。
誘われた花火大会で、好きな人と二人きりというシチュエーションの曲。
気付けば門限も超えてしまい、けれども距離を詰められない。
意を決して好きな人いるの?と聞いた後のやりとりで曲は締めくくられています。

“いるよ”って頷いた
花火の音に終わり告げられた
「好きな人聞いていい?」
君は真っ直ぐ私を見つめる

花火より恋/可憐なアイボリー

答えは二つに一つで、どちらに転びそうでもあります。
どちらともとれる返事を待つ表情を、寺本さんは演じ切っていました。
ほんの少しの期待を隠せていない一方、不安も覗かせるような表情です。
もっと押したらいいのか控えめなほうがいいのかのせめぎあいが現れていました。
センターからフロアを見つめる時の目線も、たまたま目が合った誰かではなくその頭上あたりにぼんやりと置かれていたのも絶妙でした。

「拝啓ライバル」は初披露(6月のツアーファイナル)から今までで一番聴いている曲かもしれません。
永尾梨央さんの歌の上手さが際立ちます。
間奏で星を掴もうとする永尾さんの腕をつかむところでは、6本くらいの手がぶつかるように集まっています。
2番「いつか交えよう」のフィストバンプでは柴咲あかりさんがいい笑顔をしていました。

ラスト「ファンサ」での突き抜け方は、何度観ても気持ちが良いです。
SANDAL TELEPHONEのところでアイドルのライブはマンネリになりがちと書きましたが、悪い例だけでなく、これ以上の適役がないからぜひ定着すべき場合も多くあります。
対バンで最後の曲になりやすい「ファンサ」もその一つです。
客席からの「フー!」の掛け声も良いです。

次の週にカレアイは半年ぶりの定期公演を行っていて、そこに行く気満々だったのですが体調を崩して叶いませんでした。
次の単独は9月の福田ひなたさん生誕祭か、あるいは10月の2周年ライブまで待たないといけないかもしれません。
カレアイも単独で観る機会を沢山作っておきたいグループです。

8. タイトル未定

SMILE GARDENに今年も帰ってきました。
今回レポに残すグループとしては唯一の野外ステージです。
前の出番のAppare!でファンが走り回った後方PA前のエリアは、草が剥げゴミが落ち、祭りの後のようでした。
昨年のメインステージ争奪戦で優勝したタイトル未定は、2022年TIFの主役でした。
おおよそ争いを好まないであろう平和主義のこのグループが、知名度を全国区へと確実に広げるため、一度しか出場権のない争奪戦に参加して優勝をさらっていったのは痛快でしたし、勝ち負けでははかれない勝負があるのだと教えられた感覚になりました。

ライブで観るのは去年の争奪戦ステージを行う直前の、同じくSMILE GARDEN以来。
メイン争奪戦をゴールにせず、それ以降も着実に視線を集め続けていることはSNSを通しても十分伝わってきていたので、その経験の繰り返しはメンバーにさぞ自信をつけさせていることでしょう。
去年は下手で、今年は上手寄りの中央。左右は違いますがステージからの距離は去年に合わせました。
同じSMILE GARDENに立つでも、争奪戦に勝つ前と勝った後とでは心情も違うはずです。

そう予想していたのですが、出てきたメンバーを観たとき呆気にとられました。
自信とともについてくるはずの像の大きさよりもむしろ、儚さのほうが勝っていたのでした。
バレエの動きを取り入れたような柔らかい動きはさらに磨きがかかり、先ほどまでの騒がしさは(あれもあれで面白かったですが)意識するまでもなく収まっていました。
環境音の入りやすい野外ステージがしんとなっています。

ステージに目をやると、案外メンバーが小さく見えました。
こんなに華奢な存在だったのかと、まるで特典会で初めて間近で見たときのような感想が浮かんできました。
壊れそうなほど儚いです。
自分が予想図をあまりに大きく見積もり過ぎたのもあるのかもしれませんが、これもタイトル未定に特徴的な感覚なのかもしれません。

タイトル未定には「何者かになろうとしなくていい 何者でもない今を大切に。」というコピーライトがあります。
何者というとつい就活が頭に浮かんできてしまいますが、ここでいう何者とは名刺の有無ではなく、立場に関わらず自分を見失いそうな人を広く指しているのでしょう。
かれらに向けて寄り添うような歌を、知名度を得て何者かになってしまったメンバーが自身の境遇に逆らって届けるわけです。
表現の仕方によっては、視点の違いが災いして全く響かないこともあるかもしれません。
それでもタイトル未定の歌は何者でもないこちら側の心にちゃんと届いてきます。
どうしてなのかと考えると、恐らくタイトル未定もまだ何者にもなれていないのではないでしょうか。
グループとしても、メンバーとしてもです。
メイン争奪戦で勝ったとしても、Zepp Sapporoで単独を成功させたとしても、そうした心の隙間を抱えている気がします。
ほかのグループに、何者にもなれない心の葛藤がないとは言いません。
タイトル未定はそれを下手に隠そうとしないのだと思います。
他の媒体やステージの上でさらけ出してしまう。

だから共感できてしまうような気がします。
等身大という言葉はよく使われますが、アイドル界での認知を広げながらも実寸代に見えてしまうタイトル未定にこそ当てはまるかもしれません。

鼓動」の長尺アレンジされたイントロで、メンバーはクラップを煽ります。
驚くことに、クラップの音が少しもずれていません。
フロアの一体感にほかなりません。
音ズレがないと一定間隔で音が止む時間がやってくるわけですが、そこでは周囲のビルに反響したクラップ音の返りが聴こえました。
クラップのこだままで聞き取れるとは、相当息が合っているということです。

大きく息を吸い込んだときや、フォーメーションで後退したとき、ふっと集中力が途切れる瞬間ですが、ここですらもタイトル未定は惹きつけてしまいます。

日没の時間帯、はじめはステージを控えめに照らすためだった照明の色がどんどん濃くなり、それまで点いていなかった照明にもいくつか明かりが灯されてきました。
空は児島で見たあの景色のように、深まった青色をしています。
地面に埋め込まれた石柱型のライトにも濃いオレンジ色が光っています。
まるで灯籠のようでした。
Appare!の喧騒も含め、まさしく祭りのあと。踏み荒らされたフロア後方を思い出します。
日本人の心のどこかにあるであろう祭りの光景にタッチしてくるようなステージでした。

9. 東京女子流

 外はすっかり夜の景色に変わり、再びHEAT GARAGEに戻ってきました。
同ステージのトリ前にやってきたのは、4人組グループ・東京女子流です。
書き始めるまで気にしていませんでしたが、女子流のライブレポを書くのはじつはこれが初めてでした。
ただ、ライブレポは初めてでも、一時期通っていたこともあり浅からぬ関係があると思っているので、内容に入る前に自分の生活にどう女子流がかかわってきたのかを少し書きたいと思います。

女子流を追いかけて(というほどの頻度でもありませんが)のは2014年から2015年にかけてでした。
初めて曲を耳にしたのは2011年。
鼓動の秘密」が出た時、ラジオのヒットチャートを伝える番組で30位とか40位くらいのどこかにランクインしていて、ワンフレーズだけ流れてきたサビを聴いたのでした。
当時ヒットチャートに入ってきていた女性アイドルグループは非常に限られていて、ハロプロか48Gか売り出し中のももクロやスパガ、あとは韓流アイドルといったところでした。
PASSPO☆が「少女飛行」でいきなり1位をかっさらっていったのもこのころだったはずです。
むかしからのアイドルオタクに言わせれば「いやいやもっといたよ」と否定されるかもしれませんが、少なくとも自分にとっての印象はそんなものです。

決して良い順位ではないにせよ飛び込んできた女子流は珍しい女性アイドルでしたし、しかも女性アイドルの中でも明らかに異色でした。
スパガやAKBが代表的ですが、あの頃の女性アイドル曲は明るさ一辺倒でした。
それもそれで好きだったのですが、女子流の場合は真逆。
マイナーコードを使いこなし、全体的に重めの雰囲気が流れています。

極めつけは鼓動の次の「Liar」でした。
鼓動の秘密に輪をかけて重く、モノクロで描かれたMVには恐怖感さえありました。
劇中、黒い液体がメンバーの目や腕を伝って垂れていくシーンがあるのですが、サイコよろしく流れる血を表現したのではないかと思ってしまうほどでした。
それが本当に血の表現なのかはさておき、水着ではっちゃけるようなグループが主流の中、どう見ても系統の違う作品を女性アイドルグループとして出しているのです。
しかもメンバーの平均年齢は中学生で、当時高校生だった自分よりも下。
信じられませんでした。
常識の輪を大幅に外れてきたという意味では、人生で初めてエンタメで受けた衝撃かもしれません。

その後しばらくして2014年ごろにライブに行き始めたのですが、その前後で女子流は大きな断を下します。
脱アイドル宣言です。
Liarのような表現も備える一方、女子流は若さとビジュアルからアイドル売りもしていました。
そんな状況をどっちつかずとみて、中途半端になるくらいならアイドルを捨ててアーティスティックな路線にのみ進もうと宣言したのです。
TIFのようなアイドルフェスに出ることはなくなり、アイドル寄りの曲はセットリストから除かれることが増えました。
ファンが戸惑うような大きな路線変更ですが、自分は「Liar」に衝撃を受けてそれを入り口にして女子流にはまっていった人間です。
大歓迎なのかと思いきや、当時の心境はそうではありませんでした。

女子流の様々な曲を聴きこむにつれ、アーティスティックな曲はたまに聴くのがいいのであって、全編聴くと胃もたれしてしまうことに気付いたのでした。
これは今もあまり考えが変わっていませんが、明るい曲ばかりのところにふとマイナーコードが入ってくるからどちらも活きるのだと思うようになっていったのです。
2014-2015年はまさに過渡期で、不安定な時期でした。
セッティングされたライブがなんとなく自分の好みではないように感じてしまい、せっかく行き始めたにも関わらずだんだん足が遠のいてしまいました。
自分がまだ若すぎて音楽の楽しみ方にバリエーションがなかったことも大きな理由だと思います。
女子流のことは純粋なパフォーマーではなく、あくまでアイドルの枠内に居ながら高度なパフォーマンスをするグループとしてでしか見られていませんでした。

もっとも、その後何年かして女子流は脱アイドル宣言を撤回。
「見る側に委ねる」と結論してアイドルか否かの論争から抜け出しました。
再びTIFにも帰ってくるわけなのですが、当時は他のグループにハマっていったこともありなかなか現場に行く機会も訪れず、ようやくNPPやTIFのような大型フェスで久々に目にして...という具合です。
久々に観てからは少しずつ接点が増えてきている気がします。
レポには残していないですが、昨年12月には渋谷プレジャープレジャーでの単独ライブ(忘年会?)にも行きました。

一度離れたときと比べると、アイドル以外のいくつかのジャンルの音楽も聴くようになりましたし、感じる語彙も多少は増えたと思います。
この日、今までで一番近いところから観た女子流は、群を抜いていました。
特に素晴らしかったのが、難しい技を難しく見せないということです。
高度なものが要求されているであろうダンスも、名人がパパっと一筆書きしてしまうみたいに何の苦労も見せずにやってしまいます。
横に移動するとき、抵抗のない床を滑っているかのように動けてしまうところは上半身がぶれていないから出来ることでしょうし、手を返すところもあえて1/16のテンポで遅くして目線を惹きつけていました。
ダンスでいうところの達筆はまさにこの状態なのだろうと思います。

Limited Addiction」もハマった頃にリリースされた曲です。
もう10年以上は経つはずで、数えきれないほどメンバーは踊っていると思うのですが、身体で覚えている動作をそのまま複製したのではないような気がしました。
自分が覚えているころよりやけに抑制的に見えます。
他の見知った曲もどこかに即興で踊っているような含みがありましたし、メンバーの中で曲に対する新鮮さを失っていないように思いました。
長いキャリアで鮮度を保てるのは相当すごいことのはずです。

観終わったとき、楽しかったライブでも多少は残る疲労感はありませんでした。
いい意味で25分間何も起こっていない感じです。
余計なストレスがかかっていないとも言い換えられるでしょう。
それでも気持ちよさなど快の感覚だけは残りました。

10. MyDearDarlin’

 いよいよMyDearDarlin’・通称マイディアがロックになってきました。
20時過ぎのDOLL FACTORY、ここまでさらっと書いてしまいましたが、このステージに経つグループももうあと2組を残すのみです。
2023年のTIFもそろそろ終わろうとしています。

さてマイディアのライブです。
知名度をぐんぐん上げ続け、今ではライブアイドル好きでマイディアの曲を一曲も知らないという人は少なくなってきているのではないでしょうか。
DOLL FACTORYのトリ前、人気がゆえに入場規制がかかって観られないのではと覚悟していましたが、案外スルスルと良い位置にいくことが出来ました。

関節に力の入った動きは半年前に観たワンマンライブよりも激しくなり、持ち味とする勢いの良さにより推進力が加わりました。
しかし息が詰まるほど窮屈でもありません。
この曲を通すと後の曲の印象が変わると思ったのは、「Kaleid0scopE」でした。
歪んだギターの音に宇宙空間のようなエフェクトとレーザーが印象的なこの曲。
振り付けは恐らくマイディア史上一番と思うくらいに激しいです。
その後に食べると何でも味が変わってしまう食材のように、不思議なことに「Kaleid0scopE」以降の曲はさらにがっしりとしたものに変わっている気がしました。

咲真ゆかさんはソロで気持ちを出しながら歌いますが、出し過ぎるわけではなくなりました。
どこかの曲では葉山かえでさんと夢実あすかさんとの間で表情にギャップがありました。
この歌詞の解釈がそれぞれで真逆なのだと思うとそれも面白いです。
最後の曲、「七転八起ドリーマー」に行く時に東條ゆりあさんがコメントを残していました。
あとで映像を観てみると、下を向いて耳を傾けているメンバーの表情が一人ずつ映し出されています。
このカットと表情は、映像作品として保存しておきたいくらい綺麗な映りでした。

最近のマイディアはあまりベストではなく、喉の違和感がいつまでたっても消えないメンバーがいたり、7月の野外ワンマンのときからずっと不調を抱えているメンバーもいたようです。
葉山かえでさんはドクターストップがかかり、TIF後のライブを何本も見送りました。
恐らくTIFも、本来ならば休まないといけないくらいだったのでしょう。
この間体調を崩したメンバーもいましたし、6人そろってベストメンバーが万全の状態で揃ライブに臨めた日はそうなかったと思います。
それでも、マイディアはプロです。
不調や不安さは、笑顔の下に隠れていました。

11. Peel the Apple

 DOLL FACTORYのトリはPeel the Apple、通称ぴるあぽです。
メンバー2人(南るなさん、広島世那さん)が加入したお披露目ライブ以来でした。
あの日と比べると、新メンバー2人と元からいる7人との間の分離がなくなっていった気がします。
新メンバーだという頭で見なければ見分けがつかないというのは言い過ぎにしても、違和感は確実に消えました。
それだけ2人がこの2カ月くらいの間で急速に力を付けたことなのだと思います。

南さんは「夏、恋はじめます」で黒嵜菜々子さんとのWセンターのパートが確かあったのですが、身をかがめてもだえるようにして歌っていたところが印象的でした。
広島さんはまず歌に苦手意識があまりない気がしていて、クセがなく聴きやすいです。
誰が誰の声かを比較的識別しやすいぴるあぽの中でもストレートな声質の持ち主として、これからのパート割で重宝されるだろうなと思います。

意外だったのが、3曲目でした。
思ったよりもはやくピアノの聞き覚えあるイントロが流れてきたのでした。
Va!Vamos!」です。
というのも、自分のなかでこの曲はいつもライブの最後に披露されるイメージでした。
ぴるあぽの持ち時間は20分、恐らく4曲披露できます。
恐らく4曲目だろうという予想に反し、はやくも3曲目にかかったのでした。
まさか3曲で終わり...?
最後は「Va!Vamos!」で決まりだろう思っていたのは自分だけではなかったはずです。
イントロでフロアがややざわついている気がしました。

松村美月さんのソロパートの終わり方がいつもより尾を引いて聴こえました。
決められた譜割りを間違えずに歌うのが松村さんだというイメージだったので、譜面を無視したようなロングトーンには、それだけTIFに名残惜しさがあったのかなと思ってしまいます。
佐野心音さんの歌への執着も、浅原凛さんの表情もしっかり見ることができました。
この2人は安定しています。

ところで「Va!Vamos!」の切り札を切ってしまった今、気になるのが最後の4曲目です。
穴狙いで「はじまりのはじまり」が来るのかなと思ったのですが、それも外れました。
2023年DOLL FACTORYのラストを飾った曲は意外にも新曲でした。
確かTIF3日前くらいにMVが初公開となった「VIVA夏サンシャイン」。
レコーディングを前に済ませていた曲はあったようですが、MVは9人で初めて撮ったものなので、レコーディング+映像として初めて残った9人の作品ということになります。

この選択をするのはぴるあぽにとって少しばかり冒険だったはずです。
久しぶりや新規も集まる大型フェスは比較的知識が浅い人に寄り添ったセットリストになりがちです。
安易に考えるのであれば客層に合わせ、認知度の高い曲を最後に持ってくるのかなと思ってしまったりするのですが、出してまだ数日の新曲を当てはめてきました。
戸惑いの感覚はないことはありませんでした。
ただ、これから9人のぴるあぽを意識づけたいであろう意図を考えると素晴らしい選択だったような気がします。
MVまでは正直そこまで刺さらなかったのですが、生で聴いてみるとぴるあぽのもつ新鮮なキラキラ感が非常に出ていて良いなと思いましたし、なによりフロアの適応度合いです。
MIXやガチ恋口上の尺に合わせたVIVA夏独自のコールがあるのですが、披露されてから日が浅いとは思えないほど息が合っていました。


これにて2日間、全11組のライブについて書き終わりました。
実際にはもっと多くのアイドルを見ましたが、特に印象的だったグループにのみ触れています。
こうして振り返ってみると、今年は屋内ステージが熱かったなと思います。
ZeppのHEAT GARAGEやDOLL FACTORYは外音もなく整った環境だからか、やはりクリアにライブを観られます。
それによって格も間違いなく上がっているでしょう。
特にDOLL FACTORY出演グループで自分が取り上げた数組など、ケースから大事そうに取り出してステージに置いたまさしくドールのような美しさや可憐さを20分間ずっと保っていました。
アイドルとの距離が近くなって久しい現在ですが、アイドルにはアイドルのままでいてほしいと思ってしまう自分にとっては、どうしてアイドルを応援しているかの一つの解がそこにあった気がします。


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