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【ライブレポ】MyDearDarlin' LIVE TOUR 2022 『GIFT-ANEW-』ファイナル岩手公演

9月17日(土)、岩手・盛岡のCLUB CHANGE WAVEにて、8人組アイドルグループ・MyDearDarlin’(通称マイディア)の全国ツアー『GIFT-ANEW-』の岩手公演が開催されました。

◆イレギュラーのツアー

2022年明けすぐに開催したツアー『GIFT』に、「新しく」という意味の「ANEW」を加え、前回から進化したメンバーの一面を見せようという意気込みで5月16日の東京公演から始まったこのツアーは、予定外の出来事の連続でした。

まず、ツアー直前からメンバーの美咲優羽さんが体調不良のため長期療養に入りました。
そのため、今は7人での活動です。
入院をしなければならないほどの症状で、9月現在でもまだ復帰のお知らせはないほど長期にわたっているのですが、8月頃からは快方に向かっているようでSNSには元気そうな姿をインスタなどで見かけます。

そして、コロナによりツアーの中断を余儀なくされました。
7月の上旬、再び爆発的に流行り出した頃です。
ツアーファイナルの岩手公演が延期になりました。
ここから7月が終わるまで、全国的な観戦増によってライブアイドルは次々と感染者が出て活動が止まったりライブイベントそのものがなくなってしまったりと大打撃を受けましたが、ツアーに加えて7月11日に3rdワンマンライブを控えていたマイディアは重大ライブが2つも飛んでしまったということで、大きいという言葉だけで済まされるものではありませんでした。

その直前にはメンバーの一人、篠崎麗さんの9月限りでの卒業が発表されていました。
ファイナルの地・岩手は篠崎さんの地元です。

ツアーファイナルと自身初の凱旋公演を成功させ、その勢いのまま2日後の3rdワンマン、そして@JAMやTIFが待っている大忙しの夏へ。そして秋へ向かっていく9月末に笑顔での卒業ライブで送り出す...というのが当初描いていた青写真だったと思うのですが、計画はすべて振り出しに戻ることとなってしまいました。
篠崎さんの卒業時期は決まっていたので動かしようもなく、9月末までの2カ月弱の間でなんとか代替日程を抑えないといけない状況で、スタッフの方は相当奔走されたのかなと思います。
メンバーの告知の気合の入りようもSNSで目にしていただけに、一旦延期となってどうなることかと一時は思ったのですが、最終的にはツアー岩手は9/17,そして3rdワンマンは9/20に当初と同じ会場で開催されることが無事決まりました。
つまり、元々この日に岩手公演があること自体がイレギュラーだったのでした。

この日は、2カ月弱で終わるはずが、結果として実に足かけ4カ月以上に渡ったツアーの集大成です。

盛岡駅の北口から北上川を越えるメインストリートを歩くと、「大通り」といういかにもな名前の通りが現れます。
盛岡市民にとっては「お町」であろう大通商店街のど真ん中を走っている大通り。
両脇にはチェーンや数十年前からあったであろう年季の入った店などが並んでいます。
この大通りをしばらく道なりに歩き、何個目かの交差点を右に曲がったところに会場があります。

入り口からさらに2フロアほど下がったところが、ライブフロアです。
ステージと向かい合う側のフロア奥に堂々とPAスペースがあるため、フロアの奥行きは床のバミリ通りに立つと数列程度でさほど広くはない印象ですが、PAブースがない両サイド側の奥だとかなりスペースがあります。
ただここからだとステージは斜めの角度から見るような格好となり、やはりPAブースの前に確保するのがベターなのでしょう。
整理番号のおかげもあり、自分が入ったときの入りは少なかったので上手よりの3,4列目を取ることができました。

改めて見回すと、かなりステージとの距離は近いです。
ツアー初日のSpotify O-EAST公演では前から2列目という、かなり良い位置をゲットできたのですが、O-EASTでワンマンを開催できるくらいライブアイドル界で地位の確立されたマイディアではもうこんな良いところで観る機会は二度とないだろうと思っていたのが、ありがたいことにその機会が同じツアー中に巡ってきました。

開演前のステージは、7人が立つには手狭に見えます。
青白い照明が光り、どこからかスモークがたかれていました。
やがて空気が滞留して、視界が徐々に煙たくなってきます。
時計を見ずとも、そろそろ始まるのだなという予感がしてきました。
それから間もなく、メンバーの一人が影ナレをしました。
誰が喋っているのかは言わずとも分かります。
注意事項などを読み上げ、最後は「以上、篠崎麗でした!

ほどなくしてSEが流れ出しました。
影ナレから何分も経っていません。
「オイ!オイ!」と拳をあげながらメンバーが上手から飛び出してきます。
個人的には8月のアットジャムEXPO以来に見るマイディアでした。

◆本編

一曲目は、台風が話題にのぼりはじめ、夏が出口に差し掛かっている今の季節を忘れさせる「夏が来る」。

マイディアは、フロアをどうやって楽しませられるかを常々考え、遥かに高いレベルでステージを練り上げているグループだと思います。
自分はまだ新規の域を出ないレベルですが、何度も足を運んでいる人だけでなく初見の人まで誰一人置き去りにしないようなライブを見ていると、あまりに完璧すぎてこのグループはアイドルサイボーグ集団なんじゃないかと思ってしまいます。
恐らくここまでやってきた自信がそう見せているのでしょうし、仮に不安だったとしてもそれを覆い隠せるだけの圧倒的なオーラがあります。
それぞれにプライドもあるのでしょう。

そんなサイボーグ集団に押され、気が付いたら1曲目でもう汗が出てきていました。
フリコピが多く、運動量の多い曲とはいえ、スタートから噴き出してくるのはこれまでを振り返っても過去最速かもしれません。
ファンの方から渡された、篠崎さんカラーのピンクのケミカルライトが数えきれないほど光っています。
開演前、余らせていたのか5本くらい頂いて、流石に多すぎると思って3本お返ししたのですが、どうせなら貰っておけばよかったです。

そんな中投下された2曲目「MDDシンドローム」は劇薬でした。
マイディアの曲は基本的にフリコピありきの曲が多いと思うのですが、これはその代表格だと思っています。
振りすぎて、この時点でもうケミカルライトの光が弱弱しくなっていることに気付きました。

3曲目「恋するトップノート」。
あまり見てくれのことに触れるのも気持ち悪いというか、今の潮流に逆らっている感じで気が引けるのですが、マイディアメンバーの細さが際立ちます。
衣装がセパレートのナポレオンデザインのためお腹の部分がかなり露出していて、心配になりそうな細さがより浮き出てくるのですが、スタイルの良さは身体をくねらせるダンスでは武器となります。
身体が波打つのが一目瞭然で、上から下へと揺れが伝わっている様子が非常に分かりやすいのです。
中でも見方を改めたのは夢実あすかさんでした。

180°開脚が出来るという夢実さん。
その柔軟性を活かした動きは素人からみてもかなりしなやかでした。
いやむしろ柔軟も何も出来ない素人だからこそ、意のままに身体を操れているように見える様子に強く惹かれてしまうのかもしれません。

マイディアを知った当初は、ビジュアルからはかなりかけ離れた熱いライブをするグループだという意外性が先に来ていましたが、何回か足を運ぶにつれて意外性なんてものはどこかに行ってしまい、フリコピを最後まで煽りつづけるアッパーなイメージがすっかり定着しました。
それでも、全てが汗をかくような曲ばかりというわけではなく、テンポを落として聴かせるような曲もあります。
数は多くありませんが、その一つが5曲目の感傷的な「ポケット」です。
いわゆる失恋ソングだと思います。
テンションの上がる曲ばかりの中では異色であり、上がって落ちる気持ちの切り替えが結構難しいのかなと思ってしまうのですが、中途半端ではなく振り切っていました。
泣きそうな表情には歌詞が乗り移っています。
フリコピを促すような曲でもありません。
たった一曲で、こちらも苦しくなってしまうほどの表情で魅せてくるのは素晴らしいです。

咲真ゆかさんのソロがどこかであったと思うのですが、低音がとても良かったです。
ためらい気味なハスキーの声が合っていました。

一曲ですっかり切ない雰囲気に包まれましたが、そんな空気を一掃したのもたった一曲でした。
かすかに聴こえてくるイントロ前の音から雷のような轟音で始まった「Symphony #5」では閉じたドアを開き、再び熱気が流れ込みます。

続いては「トーキョーガール」。
KEYTALKにとっての「MONSTER DANCE」、フレデリックにとっての「オドループ」のような、これさえ最低限抑えておけばという名刺代わりの曲だと思っています。
間奏やアウトロで「1,2,3,4」と手をあげながら、東條ゆりあさんがリズムに合わせて「れーい!」と言っていました。
凱旋してきた篠崎麗さんの名前を連呼していたのでした。
思えば序盤でもどこかの合間に「岩手の大天使!」とか言っていました。

人一倍張り切っていた理由は直後のMCで知ることとなります。
ツアーで東條さんの地元・福岡に来たた時に、篠崎さんが「地元だからいっぱい盛り上げようね!」と何度も言ってくれたことが凄く記憶に残っていて、そのお返しのつもりだったようです。
オリジナルメンバーとして共に長らく活動してきて、卒業を目前に控えてようやく行くことが出来たという喜びもあったのだと思います。
凱旋おめでとー!
曲中にもかかわらずそんな声も聞こえてきました。

「後半戦も盛り上がっていきましょう!」
もうそんなに時間が経っているのかと思いつつ、8曲目「ワガママHOLiDAY」に入っていきます。
決して奥行きが広いわけではないステージですが、前に踏み出す一歩目の大きさで立体感を演出してきました。
時に前のほうのギリギリまで来て身を乗り出しながらもそればかりに終始せず、気が付けばステージがとても広くなっているような気がしてきました。
そう思わされている、というのが正しいのかもしれません。

◆紹介する5曲

少し飛んでラスト3曲に注目すると、後で分かったことですが妙な既視感がありました。
一生涯オリジナリティ」「ナノLOVE」「FLOWER」というそれぞれでテイストの違う曲ですが、以前にも全く同じ組み合わせがありました。
それが8月26-28に横浜アリーナで開催された大規模アイドルフェス「@ JAM EXPO2022」でした。
限られたグループしか出られない初日・26日のスペシャルステージでのSKE48とのコラボに始まり3日間で計5ステージ(咲真さんのユニットを合わせたら8ステ)に出演、確かな手ごたえの締めくくりに立った8/28最終日のアリーナ内でのメインステージのセットリストとこの日のセットリストがかなり重なる部分があるように思えたのでした。
自分が観に行っていた日でした。
当時のセットリストを、岩手公演と照らし合わせながら振り返ってみると、いわゆる「モンダン」クラスの「トーキョーガール」は別格として、1,2,4曲目が順番は違えど岩手のラスト3曲であること、そしてオーラスがともに「僕らの詩」であることなど、驚くほど似ています。

◆アットジャムEXPO ストロベリーステージセットリスト
M1. ナノLOVE(岩手M11)
M2. 一生涯オリジナリティ(岩手M10)
M3. トーキョーガール(岩手M7)
M4. FLOWER(岩手M12)
M5. 僕らの詩(岩手En3)

偶然と見ることもできるかもしれません。
締めにふさわしい曲や、盛り上がりのために欠かせない曲などはどうしても限定されてしまうので、勝負所で似たようなセットリストになってしまうことは避けられない面もあります。
ただ、少し邪推をしてみると、恐らくこの5曲が今のマイディアを過不及なく説明する曲なのではないかと自分は思っています。
トーキョーガール」「一生涯オリジナリティ」でテンションをあげるだけにとどまらず、「ナノLOVE」でビジュアル通りの可愛らしさを入れ、東條さんが絶叫する「FLOWER」で感情を決壊させ、「僕らの詩」で言葉を届ける。
ツアーファイナルの核心部分や広い広い横浜アリーナのステージに持ってきたのにはちゃんと理由があるのでないかという気がしてなりません。

ーーー

◆アットジャムレポ

ここでアットジャムのことを思い出したついでに、ライブレポの中にライブレポを挟むという入り組んだ構造になってしまいますが、書きそびれていた当時のレポをマイディア分だけでも振り返ってみたいと思います。

岩手から巻き戻すこと3週間、8月28日15時35分の横浜アリーナです。
去年は争奪戦1位の末に獲得したメインステージに、今回は呼ばれる側としてやってきました。
今回のアットジャムは全部で6ステージありました。
メイン以外の5ステージはアリーナ外の通路や近くのライブハウスなどで、横浜アリーナ付近のステージであることに間違いはないものの、どうしてもサブ感は否めません。
正真正銘のアリーナでライブができるのは、メインステージに立ったグループだけの特権です。

前の出番のukkaの途中からアリーナに入ると、声が漏れました。
広い...
バンドのワンマンなどで踏み入れることは何回かあったものの、その時以上の広さを感じます。
ライブアイドルの立つステージにしては遥かに大きな舞台です。
だれもが入ったら一度は天井まで見回してしまうのではないでしょうか。
アリーナの後ろの方のブロックから7人を見ると豆粒くらいのサイズにしか見えません。
マイディアは既に大きなステージにいくつも立ってはいるものの、それとは比べ物にならないほど遠いところにいました。

ステージから両サイドに突き出すように特設された赤の花道も使いながら、7人のパフォーマンスはまさに躍動していました。
左右を移動するだけで大仕事です。

高いところにある2台のモニターは、ステージの様子を映し出しています。
肉眼で見ると遥かに遠いため、メンバーの表情を知る頼りはもうこの映像だけでした。
モニターを通じて観るメンバーはとても綺麗でした。
もちろん生で間近で観るのが一番なのですが、モニターを通してライブを観る、という事実が間近とは違うフィルターをかけている気がします。
あるところに上り詰めたアイドルでしか得られない、特別な時間でした。
いわゆる天空アイドルではデビュー当初からこれが普通です。
でも、初めからその場所が与えられているわけではないライブアイドルが立つとなると、そこには一層のドラマがあります。
魔法がかかる、というのはこういうことなのかもしれません。

FLOWER」の入りで、咲真さんが涙を流しているのがモニター越しに見えました。

どうやら「FLOWER」どころかその前のSEや、終わった直後もメンバーで相当泣いていたそうです。

ーーー

◆「FLOWER」~アンコール

万感の横アリから再び時は戻って岩手公演。
この日は少し手を伸ばせばステージに届きそうな距離感で、横アリからしてみれば信じられないほど近いところにいます。
モニター越しにみる景色も素晴らしいですし、やはりちょっとしたはずみに目が合う(気がする)くらいのライブハウスの距離感もまた良いなと実感しました。

最後の「FLOWER」に触れます。
序盤、途轍もない早さでフロアに火をつけるメンバーのことをサイボーグみたいだと書きましたが、終盤にかけて豹変します。
軸が一定で、顔が動かなかった前半戦から一転、ここに来ると感情をむき出しにして、姿勢が崩れていました。
このギャップがまた凄いなと思います。
顔は汗だくで遠慮というものがありません。

同じメンバーばかりで恐縮なのですが、咲真さんの歌い方が絶妙で、テンポを遅れるか遅れないかのギリギリまで溜めて歌っていたのが印象的でした。
葉山かえでさんと夢実あすかさんのソリがあったのもこの曲だと思います。
ここにきて全体的に若干の疲れが見え始めた気がしましたが、ここは歌声がすごくよく重なっていました。

「誰でもない僕らの手で繋いでく」

最後のユニゾン、東條さんは最後までマイクを離しませんでした。

そしてアンコールへ。
一曲目は1サビ終わりまで動画のみ撮影可能として「Doki Doki ロングバケーション!!!」でした。
たいして撮れていないですが一応ここに残しておきます。

最後のMCトークへと移りました。
この日の感想を一人ずつ口にし、最後は篠崎さん。
最初で最後の岩手凱旋です。

「初期メンバーとして活動してきて、ツアーとかでも他のメンバーは凱旋公演しているのに私しかなくて...」

一番下手側で喋りながら泣きそうになっています。
やっと実現したと思ったら延期となり、それでもなんとかゴールが見えてきたという段階で安心感などが込み上げてきたのだと思います。
個人的に美爆音の持ち主だと思っている篠崎さん、アンコール3曲のソロではそんな歌声の3連発でした。

アンコール3曲目、オーラスはアットジャムと同じ「僕らの詩」。

「私たちの詩を胸に刻んでください」

是枝優美さんがそう告げて始まりました。

こうして次の3rdワンマン「僕らの詩」へと繋がれていきます。
マイクを通してブレスの音が聴こえてきました。
篠崎さんが感極まっているように見えます。

こうして、ツアーファイナルは幕を閉じました。

◆目前の3rdワンマン

「3rdワンマンがね、もう3日後なんですよ!」
途中のMCで咲真さんが言ったとき、一瞬だけ緊張感が伝わってきた気がしました。

そうでした。9月20日には、延期になった3rdワンマンライブがあります。
岩手から間を置かず、もう次の超重要ライブが迫ってきています。
ツアーが終わったにも関わらず通過点の感が強かったのはこのためでした。
このライブレポを出す頃はもうワンマン前日。

3rdワンマンではライブとしての完成度はもちろんのこと、驚くような仕掛けがあるそうです。
場所は東京国際フォーラムホールC。
演劇やコンサートに使われることが多く、ライブアイドルが立つことの少ない1500人規模のホールです。
予定されていた7月から2カ月越しのライブ、非常に楽しみです。

◆9/17セットリスト
M1. 夏が来る
M2. MDDシンドローム
M3. 恋するトップノート

M4. Candy Chu!
M5. ポケット
M6. Symphony #5
M7. トーキョーガール

M8. ワガママHOLiDAY
M9. アイスクリーム
M10. 一生涯オリジナリティ
M11. ナノLOVE
M12. FLOWER

En1. Doki Doki ロングバケーション!!!

En2. MyDear
En3. 僕らの詩


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