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【ライブレポ】群青の世界×MARQUEE 定期公演 青の記録 vol.7

2022年7月20日、Spotify O-nestにて「青の記録」が開催されました。
4人組アイドルグループ・群青の世界とアイドル雑誌「MARQUEE」がコラボした、月1回の定期公演です。

2022年の年明けからスタートしたこの定期公演、開催の度に公演タイトルと同名の特集記事がwebにアップされ、一部内容は小冊子にまとめられてライブの来場者に配られます。
vol.3からは月替わりでメンバーの特集が組まれ、なかなか知ることのできない素顔に迫った内容になっているとともに、ライブはフィーチャーメンバーがセットリストを全て決めるということになっていました。

3月の一宮ゆいさんから始まった企画も、今月をもって最後の一人となりました。
5人目、村崎ゆうなさんです。

フィーチャーメンバーに全ての決定権があるセットリストには、メンバーの個性が現れると思います。
25曲もある群青の世界の曲のそれぞれに違った色があるので、チョイスの仕方でなんとなくそのメンバーのパーソナリティーが浮き出てくる気がするのです。
曲の好みやこだわりは、選曲や曲順に現れます。
逆に、選ばれない曲からも考えが見えてくることがあります。
普段のライブでは定番なのになんで入っていないんだろう?と思うと、そこにはそのメンバーの感性に裏打ちされた理由があったりします。

自分でプロデュースしたライブへの向き合い方も人それぞれで、色々考えて導き出した個性たっぷりのセットリストを、どうだ!と自信満々に披露するメンバーもいれば、かたやこのセットリストで楽しんでもらえるのだろうかとライブ前にお腹が痛くなるくらい不安になってしまうメンバーもいます。

記事「青の記録」にはインタビューを通してメンバーのキャラクターがよりつぶさに書かれていて、5月末に卒業した横田ふみかさんを含め、ここまで4人の個性が少しずつ分かってきました。
そうしたところで、ラストの村崎さん。
自分としては、この日はかなり楽しみでした。

村崎さんは、自身のことを厨二病だと言います。
表面上は輝かしいアイドルの顔を持っているものの、その一方ではあらゆるものにひねくれた見方をし、心に影を抱えて生きているのだというのです。
工藤みかさんとはアニメ・二次元好きという共通点があるそうですが、厳密な好みとなると正反対なようで、綺麗なものだけを観ていたい工藤さんに対し、村崎さんは「まずは誰かが死んでくれないと(笑)」と言います。
映画でも、横で一緒に観ていた一宮ゆいさんとはたいがい正反対の感想となるらしく、インタビューだけから判断するに好きなのは恐らく考察系。
あちこちに張り巡らされた伏線を目を皿のようにして回収するのがたまらないのでしょう。

そんな村崎さんのこと、この日のセットリストに並んでくる曲がどういうものかはなんとなく分かる気がしていました。
群青の世界の中でも闇を感じさせる曲ばかりなのだろうと思っていたのです。
特に、半分願望ありで入っているだろうと予感していたのが「ロールプレイ」「アイ・ワナ・ビー」の2曲。
何かに縛られ、求められる役割を演じなければいけない息苦しさから解放され、何者かになりたいと歌うこの2曲は、次の発達段階に進もうとするときに受ける痛みを歌っているような気がしていて、なんとなく厨二のイメージとも合います。
実際「ロールプレイ」を披露するときは血が騒ぎカッコつけたくなるんだと、村崎さんは以前教えてくれました。
普段のセットリストに登場する頻度が高いとはいえないことからも、ここぞとばかりにねじ込んでくるのかなと思っていたのですが、結果としてこの予想は半分外れました。
入っていたのは「アイ・ワナ・ビー」だけで、「ロールプレイ」はありませんでした。

大本命と目していた曲が披露されなかったのは驚きだったのですが、意外性はこれだけではありませんでした。
セットリストは、こちらが予想していた村崎さんのイメージとは少々異なる雰囲気でした。
しかし、これを含めて「村崎ゆうな」なのだと、のちのMCや「青の記録」のインタビューで知ることとなります。

村崎ゆうなというアイドル

ライブの内容に入る前に、まずは「青の記録」に残された、他のメンバーから見た村崎ゆうな像、あるいは村崎さん自身による自画像を読み進めていこうと思います。
これで少しでも村崎さんの素顔に近づけるでしょうか。

群青の世界の曲は、一曲を通して浮き沈みが激しいと感じます。
同じようなテンションで進んでいくことはまずありません。
音の起伏が大きいためなのでしょう。
ABメロでかなり低音域まで落ち込み、サビで一気に高音域へ広がるという流れは、メンバーの表情を急変させてしまいます。
もしかしたら一般的なJ-POPの構成と大差ない、よくある構成なのかもしれませんが、群青の世界が特徴的なのは、女性アイドルの曲にしては低音域が結構深いということです。
気のせいかもしれませんが、ABメロの音を取ってみると他グループの曲より二度くらい低いように思います。
そしてこの低音こそ、群青の世界にとって大切な個性なのだと思っています。

音の高低はテンションの高低、ひいては雰囲気の明暗にも繋がります。
明はもちろんサビであり、逆に「暗」の部分をつかさどるのはABメロですが、何音か低いABメロの雰囲気に凄く合うメンバーこそ村崎ゆうなさんだと思っています。

陰キャラを自称するアイドルは今も昔もそれなりにいます。
友達がいない、オフの日は一日外に出なかった、何かにのめり込むときのスピードが早くオタク気質だ...
芸能界というキラキラした世界に身を置きながらも、素顔は内向的だというアイドルは思いのほか多いようです。
オタクという言葉が市民権を得て好意的に捉えられるようになった昨今の風潮もあり、あえて隠す必要がなくなってきたようです。
ましてやアイドルという、オタクを相手にするお仕事であればなおさらです。
歓迎されることはあってもマイナスなほうには絶対働きません。
むしろ、親近感を沸かせるための武器として積極的にオタクアピールすることだって多いはずだと、断言はしませんがそう考えています。

村崎さんもゲーム、アニメにおいてはオタクであることを隠そうとしないアイドルの一人ですが、ファッション的になりつつある今の風潮の中でも筋金入りのオタクだという印象があります。
オタクの地位も低い黎明期みたいな頃から、オタク文化の中で育ってきたという匂いがぷんぷんします。

深淵と称する村崎さんのインスタアカウントを覗いてみると、もちろんアイドルとしての告知や自撮りがメインではあるのですが、二次元の推しのために重課金したり尽くす様子もストーリーを中心に上がっています。
誰かからの見てくれを気にせず、自分の気持ちを隠すことなくさらけ出す活動報告は見ていて気持ちがいいです。
本人としてはそういうつもりなど一切ないのでしょうが、推しとはこうやって推すのだというモデルケースを村崎さんは身をもって見せてくれているような気がしています、

かといって性格がオタク気質に寄りすぎているかといえばそうでもなく、SNS外を見るとどちらかというと外向きです。
ライブ中のMCでは村崎さんから話が始まることも多く、対外的にはおとなしめなメンバーの先頭に立ってスポークスマン的役割を果たしていると言われることさえあります。

村崎さんは、水野まゆさんとともに群青の世界に途中加入しました。
2020年7月のことでした。
加入当初は陰キャラが出てどうやら暗かったそうなのですが、2021年の夏、自分が初めてグループを知ったときには、情報としてかなりのオタクだということを聞いてもピンと来ませんでした。
それよりも社交的な、明るいイメージのほうが強かったです。
明るくふるまっていても、そうした属性の人の裏には隠れてうごめく影みたいなものが見えてくることがあります。
ところが村崎さんにはその影の気配すらありませんでした。

しかしSNSを覗いてみれば、底の深い独特な世界が広がっています。
豊富な語彙から出されるワードは、一部専門的過ぎてよく分かりませんが、ともかく深淵を覗いているような感覚をわれわれにもたらします。
かと思えば自撮りを上げる時につけるセリフはいかにもアイドルといったもの。

自らの意志がどれほど挟まっているかは分かりませんが、オタクだというものさしだけで見るとかなり誤解してしまうのが村崎さんというアイドルなのだと、次第に感じるようになっていました。

そうした前置きを踏まえ青の記録を読んでみると、オタク/アイドルだけでなく様々な点で対照的な顔を持っている村崎さんの一面が見えてきました。

例えば水野まゆさんは、「不器用」だといいます。
これはかなり意外でした。
制約の多いMCトークを引っ張り、途中加入という繋ぎ目を感じさせないほどグループにハマっている村崎さんに対して、ソツなくこなすイメージは合っても不器用という言葉は不釣合いな気がしていたのです。
しかし、しっかりしているように見えて同じことを何度も確認したりあわただしい姿というのはどうも事実のようです。

別のエピソードとしては、ライブの日は楽屋に入ったときから意図してオーバーなまでにスイッチを入れるのだそうです。
これまた器用なイメージとともについた、落ち着き払った印象と違うものです。
ライブ前は誰よりも喋り、ライブに入り直後の特典会でもその勢いのまままくしたてる。
ほうっておくと無口で陰キャラっぽくなってしまう自らのことをよく理解した上であえて真逆の方向に振り切っているというのは、なんとなく受ける頭の良さのゆえんなのかなと思うのですが、それでも特典会も後半に差し掛かり、気が抜けてくると我に帰り押し黙ってしまうところがあるといいます。
明るく振舞える反面、抱えている闇の部分は時としてコントロールできないもののようです。
陰キャラ的な部分は村崎さんにしてみれば素のようで、アイドルになる前を知る一宮さんによれば「アイドルになってから明るくなった」。

群青の世界というグループは、楽曲やパフォーマンスにこそ起伏があったり内に秘めた黒いものを感じますが、ステージから抜け出してしまえばどちらかというと正統派のアイドルだとおもいます。
ビジュアルはまさにですし、イロモノとして目を引くグループではありません。
SNSで炎上を狙うこともなく、公式アカウントには最近はやりの馴れ馴れしさもありません。
あくまで告知を伝え、メンバーの近況をアップする伝書鳩なのだという姿勢を保っています。
スタンドプレーに走ることもなく堅実にライブをこなし、手広くあらゆる層に訴えかけているのが群青の世界なのだと、少なくとも自分はそう感じています。

青の記録を読んでいくうちに、もし村崎さんが別のグループに入っていたとしたらどうなっていたんだろうと考えました。
例えばもっと闇の部分を強調したグループです。
今よりもっと濃いメイクをして、発信する内容はたとえ9割以上の人に眉をひそめられたとしても一部から狂信的なまでの支持を集めるグループだとしたらどうか。

あるいはいっそ王道に振り切ってしまったようなグループにいたとしたらどうなっていたでしょうか。
アイドルとして活動している人ともなれば、デビュー前から素材は光っていたはずです。
周りから「可愛い」と言われることは人並み以上にあったに違いありません。
村崎さんもそのはずなのですが、本人の記憶に残っているのはほめられたことよりも、家族からルックスをネタにいじられたというエピソードでした。
きょうだいを引き合いに出しされて笑いの種になったと言います。
だから可愛いと言ってもらえる存在になりたかった。
その最短ルートが、アイドルになることでした。
トラウマ的な記憶から形となった反骨精神は、ファンシーなグループでこそ花開くのかもしれません。

一方では劣等感を抱き、他方では趣味にのめり込んで世界を広げていった村崎さんのことですから、色々思ってみてもどういうカラーのグループに入ったとしても無理なく溶け込んでいけるのだろうなとは思います。
しかし、ベターなグループは数多くともベストはやはり群青の世界としか思えません。
不器用ながら何にでもなれる村崎さんだからこそ、何かに偏らず全方向向けな群青の世界が一番合います。

思えば、これまでインタビューを受けてきたメンバー4人も、対照的な顔を持っているという点では村崎さんとどこか似たようなところはありました。
見えるところとそうでない部分のギャップが大きく、おっとりしておとなしそうに見えても、それはステージ上だけの話でという人もいました。
それはしかし大きな隔たりと大げさにいうほどでもなく、人間誰しもがもっている性格のちょっとした隙間なのかもしれません。
それでも、メンバーの演技のような表現力をステージに見てしまうと、ちょっとしたオフの顔でもとてつもない落差に思えてしまうものです。
メンバーにして4人ですが、その中には4人分だけでないキャラクターが隠れているのが、群青の世界というグループのようです。
村崎さんもまた、その一人でした。

想定外のセットリスト ライブ本編

ひとしきり村崎さんのキャラクターに触れたところで、ライブの内容に入っていきます。
セットリストが意外だったのは、まず一曲目が「最後まで推し切れ」だったことに始まります。

横田さん卒業の直前にリリースされたこの曲は、推しているアイドルの卒業を体験したオタクがテーマとなっていて、詞は目の前で起こる卒業発表などの出来事や、それを受けて感じる心境がわりと写実的に描かれています。
考察の余地もないほどテーマが一本道でストレートな曲なので、オタ活における心得として身近な題材ではあっても、一癖あるものが好きそうな村崎さんにしては意外なチョイスだったのですが、逆にこれだけ親近感の沸くテーマの曲もそうそうありません。
だからこそ選んだのかもしれません。

続いては、序盤に来ることが多く群青の世界のライブの入り口を感じる「アンノウンプラネット」と「真夏のヘリオス」でした。
「アンノウンプラネット」はともかく、ヘリオスでもまた虚を突かれました。
最初のMCまでは、平たく言えば明るい曲が続いたことになります。

驚きの目でライブを観ていたのですが、パフォーマンスでも目を見張るメンバーがいました。
水野まゆさんです。

横田さんが5月末に卒業し、5人で分け合っていた歌割はまるまる一人分空きました。
横田さんのパートは残ったメンバーにわりと均等に分配されたようなのですが、個人的な感覚としては水野さんはやや多めに貰ったような気がしています。
というのも、ライブ中の歌声に占める水野さんの割合が、横田さん卒業後から明らかに増えたように思うのです。
そして気付くのが、こんなに歌が上手かったのかということです。
水野さんの歌声は、なぞっているメロディーの他にも何か別の音を含んでいるような独特な響きがあります。
鼻を通しているのか、それとも違う部分を震わせて出しているのかは分かりませんが、最近その歌声に安定感が増しました。
真夏のヘリオス」2番の下手から歌いだした時が、この日聴いた中での一番でした。
それに加え、息継ぎする直前の、少し音が上ずる感じも素晴らしかったです。

人は耳から忘れると聞きます。
かたや死ぬ間際まで生きている器官は耳だという話もどこかで見たことがあります。
感じる閾値が低く、入ってきやすく出ていきやすいのが耳という器官なのでしょうか。
振り返ってみると、確かに最近はあまりライブ中の歌声をちゃんと拾えていない自覚がありました。
忘れっぽい耳の話を思い出し、この日のライブは歌に意識を集中させることにしました。
たとえば時に目をつぶり視界を塞いで大部分の情報をシャットダウンしてみたりしたのですが、そうして聴いてみると群青の世界メンバーはわりと切るような歌いかたをすることがわかりました。
伸ばしていくのではなく、バッサリと切ります。
先に書いた、水野さんの少し上がる語尾もその類です。
そして高めに切れていく音の源を探っていくと、たどり着くのが工藤みかさんでした。

どうしても工藤さんの歌声はユニゾンでも目立って聴こえてきます。
やはりグループの歌は工藤さんを中心に置いているのだと感じますし、切るような歌い方も、そもそも工藤さんがそうしたスタイルだから皆が寄せていっているにすぎないのかもしれません。

1回目のMCを挟み、「夢を語って生きていくの」「カルミア」「コイントス」と続きました。
「コイントス」の始まり、波のさざめきと追いかけてくる鍵盤の音に続いてフロアから声が聞こえてきました。
披露のたびに毎回歓声があがる気がします。
自分が行くと高頻度でかかるような気もしていますが、単に今年に入ってセットリストに入ってくる回数が増えただけなのでしょう。

計6曲を終えてMCに入りました。
青の記録の記事には、フィーチャーメンバーのパーソナルな話が事細かに掘り下げられている一方で、ライブのMCでメンバーが喋る量は本当に最低限です。
いつも通りではあるのですが。

この日も記事に差し込まれるグラビア用に撮りおろした、フィーチャーメンバー好みの衣装の話を少しと、あとはセットリストをどういう意図で組んだかを簡単に話したのみでした。
ただ、その短いトークの中に重要なコメントがありました。
村崎さんが選曲について語ったくだりです。
私らしくないセットリストにしてみた
不思議と続いた明るい曲には、しっかりとした理由がありました。
「ひねくれた」村崎さんは、らしくない曲をわざと積極的に入れたのだというのです。
ライブ前、自分含め多くの人はもっと違った曲が並ぶことを予想していたはずです。
ところが村崎さんはそう予想されることを分かっていて、その通りではつまらないからと裏をかいてきた。
らしくない選曲は逆にらしさでした。
言葉遊びのようですが、このセットリストこそが村崎さんの性格を表していました。

ただ、意図して予想を外してきたことに「やられた」と感じたのはライブまでの話で、ライブ後の特典会終わりに公開された青の記録を読んだ時には、また違った感想が生まれてきていました。
人から押し付けられず色々なものを自らの興味にしたがって吸収していったという話を目にすると、厨二っぽい闇の部分だけでなく、陽の部分もふくめて村崎さんの特性なのではないかという風に思います。
暗い世界観が似合うというイメージがついているのは、「(自分は)群青の世界では異質だと思う」「暗めな感情の部分のエグみをちょっと出せるような存在」という本人の言葉もあるように、グループにおける自分の強みを理解している村崎さんが、われわれにそう思わせるために闇の部分を濃いめに出すよう振舞っているからというのが正解なのかもしれません。

ライブは続きます。
ラストの4曲は、ようやくといっていいでしょうか。
村崎さんに当初抱いていたイメージ通りの曲たちでした。
まず7曲目は、入ってくるだろうと予想した、というより入れてほしかった「アイ・ワナ・ビー」。

大人になるため夢は邪魔ですか?
「大人になるほど我慢できるせいで 本音も嘘もわざわざ言わない」

歌詞に散りばめられた言葉は、青臭いと言われればそれまでですが、ある年齢に差し掛かった時に誰しもが少なからず感じるであろう違和感を描いていて、自分としては凄く共感できます。
ステージを見れば、フロアに向かってこれが見たかったんでしょと言わんばかりに、笑みを浮かべた村崎さんがいます。
村崎さんの表情で特徴的なのが、こうした明るい曲でないときに出てくる笑顔です。
多くのアイドルが口を結んで真剣な顔の表情を選択するであろう暗い曲でも、村崎さんは口をあけて笑っています。
このアンバランスさがたまりません。
暖色系の光がその顔を照らしたとき、照明の位置がずれていたのか、光にあおられた顔に影ができていました。

続いては「BLUE OVER」。

この2曲に「メロドラマ」を加えた並びは、2021年12月に開催の「BLUE SYMPHONY」の印象が強く残っています。
当時この3曲を聴き、身体の震えを抑えられなかったことが、自分が今こうして群青の世界のライブを見続けている理由の一つです。
思い出深い3曲のうち2曲が続きました。
この組み合わせは、自分にとってはそれこそその日以来でした。
ここは集中して見ておかないといけません。
耳だけでなく、あらゆる感覚を張り巡らせました。
BLUE OVER」には全身を使ったダンスが多く、サビでそれを真似する楽しさもあったりするのですが、この日はそれもなく、地蔵の様に固まってライブを観ていました。
これほど丁寧にライブを見たのは久しぶりではないかと思います。

集中して観たからといってステージの情景をはっきりと記憶出来たかというとそれはまた別の話なのですが、終わった後身体に残った感覚は思い出すことができます。
ライブに通うきっかけとなった「BLUE SYMPHONY」の時に似た、抵抗できずひたすら流されていくような感覚です。
世界観に飲み込まれていく感覚。
「群青の世界」という、色と世界を掲げる壮大なスケールのこのグループの、名前に負けないステージングを、まさにここで目にしました。

フロアを飲み込み、世界観で魅せることができるのが群青の世界なのだとこれまでも何度か書きました。
そんな強みが発揮されるような曲では毎度期待してしまうのですが、そのたびにメンバーは期待以上のものを見せてくれます。
トーンダウンしないのが素晴らしい。
一宮ゆいさんは、時として顔をほとんど動かさずに歌います。
感情が浮き沈みする曲にあって全く動かない姿勢、これもまたいいです。

そしてライブはファイナルの局面へ入っていきます。
9曲目「最終章のないストーリー」。

ハイハットにスティックが下り、鍵盤のような音が聴こえてくるのがこの曲の始まりなのですが、その直前に空いたわずかな空白でそれと分かります。
このイントロで、終わりに向かっていくレールに乗ったような感覚を覚えます。
長いイントロの隙間で誰かが「これで最後の曲です!」と言えばもうライブも終わりなのかと察しますが、この日はありませんでした。

最後はこの一曲でした。
メロドラマ」。

ここに「メロドラマ」を持ってくるかと、またしても村崎さんにしてやられました。
この選曲はずるいなと思います。

そっと目を閉じて描く君との物語

1時間弱のライブを通して生まれた、その日限りのステージとフロアとの信頼関係は、この「メロドラマ」に集約されました。
「昼メロ」と言われるように、和訳としては通俗的な恋愛劇という意味で使われるのが「メロドラマ」という言葉ですが、ライブでの意味合いはそんな俗っぽいものではなく非常に高貴な関係です。

見どころは工藤さんの「届けよう歌に乗せて」という最後のフレーズ。
声が出なくなるギリギリまで終わりの音を伸ばすこともある一方で、この日のロングトーンは長すぎずかつ余韻もしっかり残すという完璧なバランスでした。

こうして、折り返しとなった青の記録は充実のうちに終わりました。
メンバー企画はこれで一区切り。
それぞれが胸の内を明かすインタビューはなかなかなく、かなり貴重な機会でした。
特典会に行く頻度も少なければSNSでしかメンバーの言葉を聞く/見る場がありませんし、SNSはメンバーの偏った面のごくごく一部しか切り取りません。
「青の記録」での長編インタビューは、SNSだけでは知ることの出来ない、メンバーの様々な面を映してくれました。
そうして見えてきた素顔はイメージ通りのこともあれば、意外なこともありました。
今回でいえば、村崎さんが思いのほか多方面に向いていると知ったのは新たな発見でした。

本人たちの口から自分評が語られ尽くしたところで、続いての企画は第三者の目線です。
vol.8で登場するのはダンスレッスンの先生。
第三者には群青の世界はどう映るのか、これもまた気になるところです。

◆セットリスト
M1. 最後まで推し切れ
M2. アンノウンプラネット
M3. 真夏のヘリオス
M4. 夢を語って生きていくの
M5. カルミア
M6. コイントス
M7. アイ・ワナ・ビー
M8. BLUE OVER
M9. 最終章のないストーリー
M10. メロドラマ

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