見出し画像

【ライブレポ】TOKYO IDOL FESTIVAL 2022 (8/5初日)【6年ぶり】#1

「本日はTOKYO IDOL FESTIVALにお越しいただき、ありがとうございます...」
ゆりかもめのテレコムセンター駅からセンタープロムナードへは真っ直ぐな道が続いています。
リストバンド引き換えのためプロムナードに向かって真っ直ぐな道を行く最中、白のテントで周囲を覆われた右手のステージの方から注意事項のアナウンスが聞こえてきました。

2022年8月5日(金)。
この日から土日にかけての3日間、お台場エリアで「TOKYO IDOL FESTIVAL 2022(TIF)」が開催されました。

それにしても...
感慨に襲われます。
ここまで長かった。
男性の声によるアナウンスを聞き、いよいよやってきたのだなという実感がわいてきました。

毎年8月の頭に開催される世界最大級のアイドルフェス・TIFですが、コロナの影響を受けて昨2021年は台風吹き荒れる10月の開催、そしてコロナ初年の2020年も同じく10月開催で、かつこちらは無観客のオンラインライブという形でした。
したがって8月の夏開催は2019年以来、じつに3年ぶりということになります。

夏の風物詩たるTIFが、様々な規制もありながら再び夏開催にこぎつけたことへの感慨もさることながら、個人的にはそれ以上の思いが溢れていました。
まさかまたTIFに行くことになるとは、という驚きの混じった高揚感です。
自分にとって、TIFに行くのは6年ぶり。
2016年以来のことでした。

それ以降は色々あってしばらくアイドル自体から離れていて、コロナ禍となって再びこの世界に戻ったのですが、それからも行く機会がなく、ここまで空いてしまいました。
昨2021年など、チケットを買ったはいいものの結局行かずじまいでした。
そのときは好きなグループの解散直後ということで頭を切り替えられなく、他に気持ちがどうも向かなかったというのが大きな理由なのですが、夏開催でないTIFに行ってもどうにも気持ちが盛り上がらないという思いもなかったわけではありません。

非常に消費スピードが速く、1年もすれば有様が大きく変わってしまうのがライブアイドル界です。
今自分が応援したり興味を持ってみているグループの中で、2016年当時から活動しているアイドルはほとんどいません。
それどころかコロナ禍前後のデビューで、規制も何もないかつてのライブの様子を知らないグループのほうが多いです。

ちなみに2016年のTIFで記憶に残っているのは、背中に大きな「ま」の文字とともに招き猫の手のイラストがかかれたTシャツです。
これを着ていた人がやけに多かった。
言わずもがなこれは「まねきケチャ」のグッズです。
今や業界内で知らない人はモグリだというレベルに売れ、今年もごくごく当たり前にメインステージに立っているこのグループも、2016年当時はTIFメインステージ争奪戦で優勝しやっとその座を掴み取ったという、挑戦者の立場でした。
Tシャツを着ていた人が多かったのも、それを思えば納得です。
まねきをまともに見てはいませんでしたが、このグループは売れるぞという活躍前夜の予感は、そこに関わる人は皆あったのでしょう。
それから6年して、予感通り昇りつめただけではなく未だにトップに君臨しているのは流石という感じです。

横道に逸れてしまいましたが、それくらい長い空白期間を経てこの日にたどりついたので、ステージからのアナウンスを聞き、何年かぶりに通る道を歩くだけで万感の思いでした。

ただ、この日を迎えるにあたり、少し思うことがありました。
もはやTIFは昔ほど価値のあるイベントではなくなっているのではないかということです。
ライブアイドルの在り方は6年前から変わった気がします。
CDをリリースする機会がほとんどなくなり、それに伴い販促のインストアライブや単なる接触イベントが少なくなり、替わりに対バン/フェス形式のライブの数が格段に増えました(体感であり、2017~2020までは知りません)。
対バンが増えたことで、お目当て以外のグループの情報もよく入ってくるようになりました。

NATSUZOMEやSPARKなど夏フェスもあちこちで開催されており、同じ規模感のグループ同士であればいずれはどこかのライブで被ります。
平日昼間ということなどかまわず次々とライブが入るようになり、さらにはグループ対抗の課金レースもあり(TIFもそうですが)、周年やワンマンなど節目のライブの余韻に浸る間も与えられないまま次のイベントへと気持ちを切り替えないといけないのが今のアイドルの常識です。
そのフィールドで戦い続けないといけないのは本当に大変だなと同情してしまいます。
対バンライブで日々を繋いでいる今のライブアイドルにおいては、もしかしたらTIFの価値は相対的に下がり、もはやいくつもあるフェスの一つになってしまったのではないかという懸念がありました。

しかし、自分にとってTIFの価値はあの頃から変わっていません。
どんなにフェスが増えようが、結果顔ぶれは都内対バンと変わらなかろうがTIFは特別です。
お台場エリアはしょっちゅうライブの開催される渋谷・新宿エリアとさして距離はありませんが、フジテレビ湾岸スタジオ横の、土埃が舞い「何かが起こる」SMILE GARDENや、箱馬などテレビ用の大道具が置かれた横の通路を通って入るDOLL FACTORY、あるいはセンタープロムナードにかけてオタクがうろうろしている光景などは、TIFでしか味わえないものです。

何かに意味を見出さないと、詰め詰めスケジュールのせいで本来非日常であるはずのライブイベントが色褪せた日常に成り下がってしまうライブアイドルの現状に耐えられない自覚もありました。
長くグループを観続けるためには非日常が必要です。
TIFには1グループが2回程度は出演しますが、持ち時間が短く、長くとも20分、大抵は15分しかありません。
それに加えステージ間の行き来に時間がかかるため、行けないステージも出てきます。
トータルでみたらコスパが良いとは言えそうにありません。
しかし、それ以上の価値がTIFにはあります。
よく「日常を取り戻す」と言います。
えてしてそれは何か悪いことが降りかかったときに生まれてくる言葉ですが、(贅沢なこととは分かっていますが)ライブは日常であってはならないと、個人的には考えています。
日常とは切り離されるべきものであり、ライブの日々が当たり前になる前に、非日常を取り戻さないといけません。
盛り上がっているのは自分だけかもしれませんが、TIFは非日常を取り戻すのにこれ以上ない舞台でした。

TIFに行くことがどんなに重いことかと語りましたが、とはいえ目的は行くことではなくそこで時間いっぱいまで楽しむことにあります。
そのためどういうアイドルグループが出てくるのか、これはとても重要です。

一日のうちに目当てのグループがいくつも出演し、しかも複数ステージでその出演が被らず、移動含め無理なく押さえられそうなタイテとなって初めて動けます。
座組と時間帯との勝負です。

開催4カ月前から次々と発表される出演者を眺め、3日間の中で最もベストだと思ったのが、この初日・8/5でした。
特にこの5組に連れて行ってもらったようなものでした。

・Pimm’s
・MyDearDarlin’
・透色ドロップ
・群青の世界
・タートルリリー

岩手、仙台、名古屋、大阪、福岡...ツアーや対バンの遠征について行くくらい好きなグループが上手いこと集まってくれました。
このうち、透色ドロップとタートルリリーは単日の出番にもかかわらず被ってくれたのは幸運としか言いようがありません。

改めて書き並べてみても、これらのグループはTIF限定の組み合わせでもなんでもなく、日常の対バンでもしょっちゅう目にするメンツではあります。
もっと持ち時間が長く、それも1ステ制で暑い中屋外を移動する必要のないという、コスパの良い対バンライブは別の機会にいずれ組まれるでしょう。

でもTIFとなると特別です。
よくぞ出てくれたという思いがありました。
ここには挙げませんでしたが、ちょこちょこ見てはいるグループもこの日は結構出演しており、それらも入って過不足ないタイムテーブルが出来上がりました。

前段はここまでにして、この日のことを順を追って振り返っていこうと思います。

外に出ずっぱりの夏フェスでまず気になるのは天気です。
晴れた場合、日差しはどれだけ強くてどこまで気温が上がるのか。
常にカンカン照りで体力を大幅に削られたことや、日焼けの痛みが一日くらいでは引かなかった以前のTIFの記憶を思い出しました。
あるロックフェスに行ったときには、散々気を付けていたのにクラっときたこともありました。
熱中症になりかけていたのでしょう。
お酒なんてもってのほか、自分の出来る範囲内では多少なり対策していないと、救護テントに横になったままうっすらステージから流れてくる音楽を聴く羽目になるということになります。
大げさではなく、そうした体験談は痛いほど耳にしました。
一方で雨となるとこれも厄介です。

注意深くみていた8/5の予報は、日ごとに大きく変わりました。
開催1週間~数日前までは晴れ時々曇りで、最高でも30℃を少し越えるくらいとあります。
30℃やそこそこなら、狂ったような暑さにはならなそうです。
これなら一安心か、そう思っていたのですが、3日ほど前に一転。
水曜から天気が崩れ始めるという予報がちらほらと出だし、しかも週末まで引きずりそうだとのことです。
実際の天気も水曜から途端に雲行きが怪しくなり、雨がちになっています。

週の頭には35℃くらいあった気温が30℃を下回っているのはありがたいのですが、熱中症の不安が消えた代わりに、今度は土砂降りのなか観ないといけないのかという別の不安要素が顔を出してきました。
中庸が一番とはよく言ったもので、暑すぎるのもどうかという話なのですが、かといって雨が振りかなり気温が下がるのも考えものです。
その中間くらいがちょうどいいです。
木曜午後に観た予報では降水確率70%くらいで、もうこれは覚悟しなければと思っていたものの、幸運にも雨雲は木曜日のうちに過ぎ去ってくれたようです。

仕切り

そうしてやってきた金曜日は、寒さで目が覚めました。
昨日までの雨によって朝の空気が冷え切っています。
雨ではありませんがかなり怪しく、晴れ間は見えてきません。
まさかTIFに長袖を着ていくことを考えることになろうとは思いませんでした。

TIFの会場があるお台場への向かい方はいくつかありますが、未だにどれが最適解なのか未だによく分かっていません。
ともかく自分は新橋からゆりかもめで「テレコムセンター」駅に向かうこととしました。
ここで降りると、参加証のリストバンドとチケットを引き換える場所への道中でTIF名物のステージ・SMILE GARDENの脇を通ることになります。
この動線で向かい、TIFの空気感を早々に味わっておこうと思ったわけです。

新橋からのゆりかもめの流れをたどってみると、新橋~汐留あたりまではまだオフィス街を貫いているという雰囲気ですが、3駅目の竹芝から進行方向左手に視界が開けてきます。
眼前に広がるのは東京湾と、フジテレビの球体。
ここから旋回を繰り返して目的地に向かうので、到着まではまだ時間があるのですが、テンションはどうしても上がっていきます。
一時は予報で70%、ほぼ降るのは確定だろうという高確率だった天気も当日の朝になれば20%ほどにまで落ち込んでくれました。
天気予報は当てにならないと言いますが、前日に雨確実の予報を見ていただけにそれが覆ったというのはかなり心強かったです。
とはいっても空はどんよりとしていて、鈍色の雲が臨海地区のタワーマンションやオフィスビルに覆いかぶさったような、そんな様相でした。

芝浦から台場に移ろうかというとき、ゆりかもめは大きく右にカーブを描きます。
レインボーブリッジと線路の間にある数10mの高低差を解消するための一回りだそうで、ここに差し掛かると方向感覚が狂います。
車と並走しながらレインボーブリッジを抜けた先にはいよいよお台場海浜公園。
左手には取り壊し中のZepp Tokyoも見えてきます。
ここまでくると、見える景色はライブで見慣れたものになっていて、一気に気持ちがライブモードへと切り替わっていきました。

カーブの多いゆりかもめの線区、台場駅を出たところで今度は左に曲がります。
時刻は9時30分。
オープニングイベントは別として、ステージが始まるのが10:00とそれまでまだ時間があり、さらに世間的にこの日は平日なので通勤時間帯とも被ります。
車内の雰囲気はフェスのそれではありませんでした。
会社勤めの方や夏休みの家族とかそういった方々が主なようでした。
お台場で降りるといっても別の目的です。

そんな車内から突如小さな声が上がったのは、台場からクルーズターミナル駅に向かってぐるりと曲がり、何百台も停められる大きな駐車場が見えてきたときのことです。
いつもであればただただ広大なアスファルトが横たわっているはずのその土地に、赤、黄色、あるいは緑色のカラフルなボーダー柄のテントが並んでいたのでした。
まぎれもなく、TIFに出演したアイドルの特典会用のテントです。
カラフルなテントがずらっと並んでいるので、全く事情を知らなくても何か楽しげな催し物が今日開かれるのだろうなと察する方は多かったことでしょう。
眼下のテントを鳥の目になって眺めると、一層感慨が増してきました。
今からそこに行くのだという感慨です。

クルーズターミナルを過ぎ、列車は再び左に大きく曲がりました。
入線したテレコムセンター駅は、産総研などオフィスがいくつも立つ中にあります。
台場駅のダイバーシティ東京や巨大ガンダムなどといった娯楽施設の趣からは少し遠ざかり、落ち着いた雰囲気が広がります。
うっすらとした記憶では、6,7年前にTIFに来たときはここで降りました。
この日も、ここからTIFの一日を始めることとしました。
降りたのは9時37分。
センタープロムナードへの真っ直ぐの道を歩き、アナウンスを聞いて心に迫るものを感じながらリストバンドを交換、コロナ対策による消毒や同意書など、経るべきステップはあの頃より増えました。
そして向かうは、先ほどゆりかもめの車内から見下ろしていたテント周辺のエリアです。「DREAM STAGE」。
ライブの時間が近づいています。
観たいグループは、10時からオンステージでした。
3年ぶりに夏に帰ってきたTIFのこのステージ一発目のグループは、デビュー9周年を迎えた7人組です。

「時間をギリギリまで詰めた」Pimm’s

メンバーの背景は様々で、ほとんど結成時からいたメンバーも居れば、コロナ禍となってから加入したメンバーや、つい数カ月前に加入したメンバーもいます。
およそ10年のうちに起こった様々な変化の波を受け入れ、グループとしても数々の変容を経てここまで来ました。
そんなグループが、2010年より始まって12周年となるTIFのトッパーを務めるということに、歴史の重さを感じます。
一日の始まりがPimm’sというのはこれ以上ない滑り出しです。

「TOKYO IDOL FESTIVAL 2022 next idol…」
ナレーターは変わりましたが、変わらぬ出囃子とこのアナウンスの文言は懐かしいです。

いつもはSEが鳴り出して登場するところを、この日はSEもなしにメンバーが出てきました。
さして長くはないSEですが、これを削った意味を最後に知ることとなります。
8月リリースの新アルバム「RELIGHT」衣装のメンバーは、アルバム収録のリード曲「Anthem」からライブをスタートさせました。
もしかしたら音源だけでは、この曲の良さは伝わりづらいかもしれません。
現場に居合わせ、メンバーに合わせて手を挙げてようやく陶酔感を得られます。
色々な楽しみ方がライブにはあると思いますが、Pimm’sの場合でいえばメンバーの言うがままに手を上げ、音に混ざっていくこと。
ロック風のこのスタイルこそ、一番の楽しみ方ではないかなと思っています。
リリースイベントも佳境に入ったようで、曲も育ってきました。

5月に加入した立仙愛理さんの表情を、この日はよく観ることが出来ました。
クシャっとしていて、とても愛嬌があります。
その一方で3曲目「Light My Fire」のアウトロでの表情は曲の締めにふさわしい、きりっとした顔つきでした。

去年の今頃初めてPimm’sのライブを観てから何度も書いていることではあるのですが、2014年からのメンバー・小林智絵さんの視線の送り方は凄いなと毎回思ってしまいます。
ステージから対角線上に飛ばしたり、上下に激しく揺れるような踊り方でもこっちを向いているような感覚があります。
前を向いている限りこちら側を見るのは当然ではあるのですが、小林さんは踊りながらただ漫然とこちらを見ているわけでなく、意志を持って視線を合わせに来ています。
激しいダンスでもぶれずにレスを送れるアイドルってどれほどいるのだろうと思ってしまうのですが、それだけ難易度が高いことなのだと思いますし、8年以上の経験がなせるものなのでしょう。

4曲目「99.9」あたりから、早川渚紗さんが可愛らしくぴょんぴょん飛び跳ねているのが目立ちました。
ロック色の濃いグループにあって、アイドル性の強い早川さんのようなメンバーは貴重です。

持ち時間は20分。
フルコーラスで披露してきたので4分が相場です。
恐らくこれで終わりなのかな。
そう思っていたら、徐々に近づいてくる電流のようなイントロを耳にしました。
メンバーがアンプ近くに忍ばせていたサイリウムを取り出します。

SEを削り、MCをなくした理由が、ここにありました。
5曲目のためでした。

5曲目は「うりゃおい。」
何度となく披露されたであろうこの曲で温度が一気に上がりました。
サイリウムを上下に振り回し、高橋真由さんの煽りが絶叫となります。
相変わらず灰色模様の空からは、ほんの少し雨が降ってきた気がしました。
Pimm’sを前回観たのは名古屋でのアイドルフェスで、その時の天気も曇り。
直前まで降っていた雨のなごりが落ちてきたのは、その時の再現かのようでした。

◆Pimm’s DREAM STAGE セットリスト
M1. Anthem
M2. GekiヤVacation
M3. Light My Fire
M4. 99.9
M5. うりゃおい。

次のステージに向かうとき、6年前には感じなかった違和感を覚えました。
場内の動線がきっちりしすぎなくらい徹底的に分けられています。
コロナ対策のためなのでしょう、出ていく人と入ってくる人が重ならないようになっています。
入ってきたところから出るのは原則としてダメで、出口は入り口から遠く離れたところに用意されてました。
その時入ってくる人が少なかろうが、決められた出口から出てくださいというわけです。
ステージ間の行き来も出来ません。
直線距離ではなんてことないステージ間ですが、このおかげでだいぶ余計に歩くこととなりました。
(ロッキンではどこからでも出入りが出来たのですが...)

仕切り

次に向かうステージは、DRREAM STAGEから物販・特典会場を挟んだ向こう側にあります。
ENJOY STADIUM」。

「カンカン照りならどうなっていたことか」MyDearDarlin’

2020年、コロナがまだ日本海の向こう側の事件だった頃にデビューした、8人組グループです。
通称マイディア
9月の卒業を予定している篠崎麗さんと、体調不良で長期療養中の美咲優羽さんがお休みで、6人でのステージでした。

季節の短さより遥かに長いこと脳裏に焼き付くであろうマイディアの夏は、「夏が来る」で始まりました。

この天気だったから助かった。
ライブ後、真っ先に出てきたのがこの感想です。
すでに朝の寒さはどこかに引っ込み、昼に向かって暑くなりはじめていました。
それでもまだまだ曇り空で、猛暑からはほど遠いです。
これくらいの控えめな天気だったからまだ耐えられました。
マイディアのライブの魅力は、熱さにあります。
グループ名に始まりビジュアルや衣装などからは想像が出来ないほど猛烈なライブを見せるのがマイディアというグループです。
その熱さはステージだけでなく、観ているこちらにもふりかかってきます。
象徴的なのが、たとえば2曲目「アイスクリーム」でのラスサビのところです。
直前にあえて全員でステージ奥の方まで下がり、サビとともに右左右右と手を振る振り付けのまま手前側にやってきてフリコピを煽る光景は迫力十分です。
こんなライブを見せられて、もしカンカン照りの天気だったらふらっとなっていたかもしれません。

マイクは全員の歌声を均等には拾えていないようで、ややPAが不調のように感じましたが、マイディアメンバーのライブのつくり方は本当に上手いなと感心してしまいます。
たった15分という持ち時間は、数々メインステージに立ち、対バンライブに出れば最終盤の出演、そしてツアーをやればO-EASTを埋めてしまう程のグループにしてみれば短すぎます。
25分、30分が当たり前のようになっているだけにメンバーの体感としてはかなり短かったはずです。
それでもあっという間に会場をホームの空気にしてみせる。
たった15分なのに、必ずしもマイディア目当てで来たわけではないであろう方たちまで巻き込んでライブを作り上げる「技術」がありました。

特にメンバーを挙げるとすると夢実あすかさん。
180°開脚の動画を上げるほど身体が柔らかいメンバーです。
その柔軟性を活かしたダンスはとてもシームレスで、動作と動作の切れ目を塞いでいました。

そして表情もいいです。
アイスクリーム(だったと思うのですが定かではありません)の振りの中に、フロアのほうに手を伸ばしてすぐターンして奥に引っ込む振り付けがあります。
メンバー2人ずつ前に出てきて手を伸ばした後に引っ込むという流れなのですが、ここなど首を切る寸前の表情までしっかりみてほしいがための振り付けだと思います。
そこでどういう表情をするか、各人のこだわりが伝わってきました。

◆MyDearDarlin’ ENJOY STADIUM セットリスト
M1. 夏が来る
M2. アイスクリーム
M3. トーキョーガール

3曲でもかなりの充実感で、もうこれで終わりにしてもいいのではないかと思ってしまうくらいでしたが、まだまだ始まったばかりです。

仕切り

出口まで遠回りをしないといけなく、移動に案外時間がかかることをここまでの出入りで十分痛感したので、お隣の「DREAM STAGE」」でタイトル未定のライブを観るのを諦め、一旦セントラル広場に戻って椅子に座りながら音漏れを聴くことにしました。
今年のTIFの話題をさらっていったタイトル未定の出番はまだもう一回あります。
無理をするほどではありません。

ともあれ木々が作る日陰の下、聴こえてくる「ガンバレワタシ」は良いものです。
初めて聴いたとき、タイトル未定の地元・北海道の大地の自分なりのイメージが頭に広がり、あげくは草原に寝転んでいる状態まで想像できてしまったのですが、青空も見えてきたこの時間帯はそんな情景とマッチしていました。

そんなことを考えていると、次のステージの時間が近づいてきています。
とはいえ目的のステージまでは20分ほど余裕があったものの、次に向かう「DOLL FACTORY」にはもしかしたら入場規制がかかるのではないかという不安がありました。
4グループほどが間髪あけず一気にパフォーマンスし、10~15分ほど開けて次のブロックへ..というタイムテーブルだったDOLL FACTORY、ブロック内はなんとなく同じような雰囲気を漂わせていたり同じような規模感だったりというグループで固められていたのでファンが被る傾向にあり、ブロック内での人の行き来は意外と少ないのではないかと思っていたのです。
お目当てがブロックの最初でなかろうが、初めから入っていたほうがいいのではなかろうか。

特に、これから観ようとしているブロックはコロナ禍のなかデビューし、その中で力をつけてきた脂ののっているグループです。
6年前はまだ土日開催だったため金曜に行ったことがなく、初日の金曜日は人が入りづらく規制があまりかからないという(当然と言えば当然なのですが)常識は後に知るのですが、このときは何も知らないままDOLL FACTORYへと急ぎました。
行ってみると、もちろん人が少ないわけではないのですが、想定よりも空いています。
前3列が椅子ありの席になっていて、スルスルと何の苦労もなくそこに入ることが出来ました。

「可愛さにやられちゃってください」透色ドロップ

2020年6月デビューの、現在7人組。
自分が今注目しているグループの一つです。
この日は特別衣装を初お披露目することになっていました。
どういうデザインかも知らないまま、ステージで初めて目にします。
そのはずだったのですが、どうやら出番の10分前くらいに公式ツイッターから先だって画像が上がっていたようでした。
ただDOLL FACTORYは奥まったところにあったため電波が通りづらく、電波が途絶えた時点で観るのを諦めたので全く気づけませんでした。

フライングの初出しから10分、いよいよライブが始まります。
SEに乗って整列して出てきたメンバーを見て声が出そうになりました。
会場の隅ではもはや抑えきれていません。
いうまでもなく、その理由は新衣装にありました。

途轍もなく可愛い。

透色ドロップ新衣装

水色のストライプの上に紗のかかったような生地が覆いかぶさり(ジャガード生地というそうです)ふわっとした印象を与えます。
半袖はデビュー以来初めてだそうで、これまでの袖がつまった長袖とはもう見てくれの涼しさが違いました。
心なしか、メンバーも幼く見えます。
背の低い花咲りんかさんや佐倉なぎさんが着るとシャイニングに出てくる双子のようでした。

透色ドロップはこの日2ステージを予定していて、夜の「DREAM STAGE」では披露する3曲のセットリスト予想キャンペーンが行われていました。
どの3曲を披露するかを当てた人に抽選で特典券などがプレゼントされるというものだったのですが、この衣装を見てしまうと自分が入れていた「衝動」「アンサー」という暗く表情で魅せる曲の線はきわめて薄いなと思わざるを得ませんでした。

恋の予感!?」という、グループで一、二を争う可愛い曲から始まったDOLL FACTORYの15分一本勝負、イントロで「初めまして、私たち、透色ドロップです!...」フロアに声をかけた瀬川奏音さんの声色はいつもより数段弾けていました。
頭にはヘッドドレス風のカチューシャをしていて装飾もまた可愛らしい。
背の低いメンバーが一層幼く見えた特別衣装ですが、自分として一番目に留まったのは背が高い瀬川さんでした。

「透色の可愛さにやられちゃってください!」
「ぐるぐるカタツムリ」など可愛い曲の曲振りでメンバーが時に言うセリフです。
この日のライブは終始そんな雰囲気で進んでいきました。

2曲目は「きみは六等星」。
歌いだしのソリや、Cメロまでのブリッジで他のメンバー6人が作った星の中から飛び出すシーンなど何かと目立つ天川美空さんのほうをこの曲ではまず見てしまいます。
上ずった見並里穂さんの歌声は、特に可愛く装った瀬川さんの声とよく合いました。

全員を見て、やはりと思ったことがあります。
今年5~6月にかけての「2nd Birthday Live」くらいから格段に歌が上手くなりました。

ラストは「君色クラゲ」。
親指と中指をくっつけて他の指を立てる「クラゲポーズ」でおなじみのこの曲、「ユラユラフワフワヒラリ」と漂うクラゲは、透色ドロップのカラーとも重なります。
落ちサビに入り、橘花みなみさんを頂点としたフォーメーションでメンバーが腰を下ろした時、照明の色が一変しました。
DOLL FACTORYはステージもさることながら4×5列に並んだ照明がとても綺麗で、そのカラフルさをもってアイドルを煌めかせていました。
ところが、「君色クラゲ」の落ちサビに入ると多彩な光が一旦引っ込みました。
照らしてくるのは太陽のようなオレンジの光のみです。

ファン投票でセットリストを決めた際のライブ映像でも似たような色合いの光が当たっていますが、これより人工物感はなくもっと自然な色でした。

照明は上手側の斜め上のほうから光っているようでした。
まるで天井が取り払われ、空が顔を出したかのようです。
瞬間ステージは夏の浜辺となりました。
浴びるだけで痛そうな真夏の太陽を受け止め、メンバーが歌っています。
実はここの落ちサビの導入にはもともと波の音も差し込まれていて、あらゆる要素が夏を感じさせる演出になっていました。

ツアー前から腰痛を抱え、7月にかかったコロナの影響でまだ本調子ではない見並さんの名残惜しそうな表情が効いていました。
あるいは単にまぶしかっただけなのかもしれませんが、それも捉え方です。

◆透色ドロップ DOLL FACTORY セットリスト
M1. 恋の予感!?
M2. きみは六等星
M3. 君色クラゲ

仕切り

続くは、この9人組。
この日は8人でのステージでした。

「6年前ならどうなっていたことか」テラス×テラス

前列の椅子席にまだ留まっていられましたが、一曲も知らないグループに対してそれは失礼だろうという思い、後ろに下がっておとなしく見ることにしました。
SEが鳴り、一人ずつ出てきてフロアにアピールし、クラップでオープニングを促します。

ライブを観ていて直感的に感じたのが、懐かしさでした。
レトロや古臭いという意味ではありません。
自分にとって(一旦は)最後だった6年前の気持ちを思い出したのでした。
(6年前ばかり言ってすみません。)
当時paletというグループを応援していたのですが、テラス×テラスを観ているとなんだかあの頃の心境がよみがえってくる気がしました。
王道清純派を掲げていたpaletに対し、若くビジュアルの良いメンバーを集めた「テラテラ」。
同じような路線を行っている感じがあります。

ただ曲はというとそれほど似ているわけでもないですし、一人一人を見てみると系統は違います。
そういう細かいことではありませんでした。
見えている葉や花の部分は違っていても、根っこはどこか繋がっているような気がしたのでした。
6年前の自分だったらがっつりハマっていたかもしれません。
そんな匂いを感じました。

後で調べたら、テラテラは「プラチナムピクセル」という事務所に所属していることが分かりました。
プラチナムプロダクションからのれん分けした事務所で、ニジマスを筆頭にぴるあぽ、月アトが所属しています。
そして何を隠そうpaletも、プラチナムからのれん分けをした事務所にいました。
プラチナムパスポート、こちらはPASSPO☆やサンミニなどがかつて所属していました。
まさかという思いと、やはりという納得感がありました。
やはり繋がっていた。
テラテラメンバー本人たちからしてみれば、10年も前にデビューし、5年前に解散したグループと姉妹的な事務所だったなんて知るわけもないのでしょうが、これもつながりの一つです。

曲で言えば、1曲目の印象が強かったです。
君を照らす
太陽神をモチーフとしたグループ名が歌詞に入った、ギターソロで始まる曲です。
サビのフレーズが頭に残りました。

照らす 照らす 太陽 登る方へと

「登る方へと」の音が、ホ長調(恐らく)を「ララ♭ソ♭ファ」と一度ずつ下がっていくのですが、最後の音「ファ」だけは臨時記号となっています。
ここだけ調号をつけて音階を外すことで生まれるのは、ちょっとした違和感。
この違和感がとても大事で、恐らく作曲された方は耳へのフックとなるようにこんなメロディーにしたのだと邪推しています。

メロディーとしても凄く良いのですが、ここのフレーズで絶妙なのは音域です。
すなわち、「ラ」から始まって「ファ」という、中音域のみで動いているということです。
聴いたところ、テラテラメンバーは人数の多さもさることながら声質も一人一人違うようでした。
大所帯にありがちな画一的な歌声という風ではありませんし、まだよく分かっていないということをお断りした上でですが誰か歌声やボリュームで抜きんでているメンバーがいて、その人が他を食ってユニゾンを支配しているわけでもなさそうです。
となると、ユニゾンでなったとき、それぞれの声が主張し合い、コンディションによってはバラバラな感じに聴こえてしまうきらいがあるはずです。
特に高音や極端な低音ともなるとそれぞれのスキルに依存しやすい。
しかしそれも、中音域なら解決しそうです。
誰でも出しやすく、しかもよく響く音域です。
音の広がりの中にそれぞれの歌声が収まり、かつ倍音っぽくなります。
やはり生で聴いてみると、波長の揺れが伝わってきてフックのあるメロディーがさらに強調されていました。
作曲された方は、もしかしたらそこまで狙っていたのかもしれません。

ド素人の意見なので見当違いかもしれませんが、「君を照らす」のワンフレーズにはここまで深い意味があるのではないかと勝手に考えて舌を巻いていました。

仕切り

「来年の主役?」かすみ草とステラ

2021年、元AKB48の佐藤栞さんプロデュースで「刹那的アナスタシア」とともにデビュー、活動としては1年とちょっとなのですが、SNSにも頻繁に名前が上がっては高い評価を受けているグループです。
10月にはSpotify O-EASTでワンマンライブを開催することが決まりました。
ライブアイドルでO-EASTワンマンというのは間違いなくステータスです。
ここからもっと伸びていくのでしょう。

自分は他のオタクの方がnoteに書かれているような総論っぽい文章が書けないので、「かすテラ」のどういうところがヒットしているのかを論じるのはここではしません(というかできません)が、過程を追いかけることが好きなアイドルファンに受ける「素朴さ」「物語性」を備えている点にあるのかなと思っています。
ワンマンライブを2回に分けて開催し、それぞれに意味を持たせるという試みや、おとぎ話のようなメロディー、あるいは青春を感じさせる曲調や歌詞、さらにはメンバーのたたずまいなどがこのグループの色を決定づけています。
それらが非常にいい方向に進んでいるような感じをはた目からも受けていて、来年のTIFはもしかしたらかすテラの年になるのかもしれないと思っているところもあります。

さてライブへ。
今年のTIFは全面的にジャンプや過度なフリコピが禁止にされていて、もちろん声出しもなくサークルやモッシュなどもってのほかでという状況で、SMILE GARDENでサイリウムが飛び交っていた(比喩的な意味ではありません)6,7年前からは隔世の感というほどにおとなしくなっていました。
最も荒れていたであろう2016年から出動しはじめ、暴れるオタクをボコボコにしていたBONDSというセキュリティー会社の面々は今年もいたのですが、彼らもやることがなく暇そうでした。
たまに隣の人にぶつかりそうなくらい大きくフリコピをしている人に軽く言葉をかけにいくくらいです。

そもそもこの時点のDOLL FACTORYにはセキュリティーが一人もいなかったように記憶しています。
それをいいことになのか、かすテラの出番ではいわゆるマサイがいくつも発生していました。
マサイをする人の気持ちは正直未だによく分からないのですが、ともかく人気の高さをここでも感じました。
決して質が悪いオタクがかすテラについているということではなく、絶対数として他より多めに人を集めていて、跳びたがる人達も集まってきたということなのだと思っています。
前のほうにいたスタッフがそれを見て慌ててジャンプ禁止の立て札を掲げていたのも印象的でした。

メンバーで印象的だったのが、小柴美羽さん。
ツイッターで前から知ってはいましたが、生で見ても桁違いなビジュアルです。
加えて歌いだしを任されている曲があるように歌も上手い。
特徴やクセがないことが特徴のようです。
好みもあろうかとは思いますが目が勝手に追いかけてしまうメンバーが、どのグループにもいます。
いってみれば華のあるメンバーです。
この日も初見グループで何人か見かけましたが、その一人が小柴さんでした。

初日のライブを振り返った、こんな記事にも小柴さんの名前が出てきています。

好みの範囲を越えて、多くの人が認めるのが小柴さんの存在感のようです。

2曲目「夏色微炭酸」は、8月12日に配信リリースされたばかりの新曲です。
アウトロのところで横にならんだメンバーが一人ずつ上に跳ねる動作は、炭酸のはじける泡のイメージのはずで、良い振り付けです。
フロアでは推しが跳ねるのに合わせて飛んでいる人もいました。

ラスト3曲目は「正夢の少女」。
ギターの見せ場の多い曲で、どこかで耳にしたことのあるようなイントロやサビのフレーズを聴くと鳥肌が立ってきます。
ライブを観るのはまだ3回目で、グループにさほど思い入れもないのですが、ここのフレーズは充実感しかありませんでした。
動作が分かりやすくシンメトリーで、しかも同じ動きを2回繰り返してくれるためフリコピがしやすいのも特徴です。
2番サビ前の吉川美紅さんのソロには力がこもっていました。

Bメロで発生した手拍子はこの日一番大きかったです。

◆かすみ草とステラ DOLL FACTORY セットリスト
M1. 君と週末の秘密基地
M2. 夏色微炭酸
M3. 正夢の少女

かすテラの出番が終わったのは12時15分。
いよいよSMILE GARDENに場所を移し、今年のTIFの主役となったあのグループを目にすることになります。

ただ前段を重くし過ぎたせいで長くなってしまったので、続きは「#2」として下の記事に残しました。
こちらもよろしければご覧ください。
#2のほうがより長いです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?