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【ライブレポ】九州女子翼 東京定期公演 第49片(2022.5.14)

5月14日(土)に、秋葉原・AKIBAカルチャーズ劇場にて、5人組アイドルグループ・九州女子翼の定期公演が開催されました。
九州女子翼は福岡を拠点としながら東京でも対バンや単独ライブにコンスタントに出演しており、中でも月一回の東京定期公演は東京遠征のベースキャンプ的なイベントです。
同じく月一開催の福岡での定期公演と同じ内容であり、東京圏のファンであれば普通なら福岡まで足を運んで観に行かないといけないところを、わざわざグループがこちらまで遠征してくれることによって都内でも楽しめています。

次回でもう50回目というこの定期公演、いわゆる他のアイドルでよくある定期公演と少し違うのが、ライブが2,3幕形式からなるということです。
もちろんグループの曲を1時間弱披露する時間はあるのですが、それはこの日だと後半の「第三幕」ということになっています。
この日だとまず一幕は企画ものの「クイズ〜ノンノン花音」、そして二幕目が「カバー曲披露」。
各メンバーがチョイスした曲をソロでカバーする二幕目はずっと変わらないようですが、一幕目は回によって流動的なようで以前はメンバーのファッションショーとかがあった記憶があります。

構成は定期公演に先だってお知らせされています。
二幕カバーコーナーの曲目も書かれているので、知らない曲でも予習して臨めるところがありがたいです。
ベビレのあの「夜明けBrand New Days」は詩絵里さんが4人をバックダンサーに連れてパフォーマンスしていました。
生で聞くのはもう何年ぶりだったでしょうか。

個人的には、女子翼を観るのは「第35片」の定期公演以来でした。
昨2021年の3月開催です。
1年以上も開いてしまいました

◆欠けていたピースの加入

ライブに行けていなかったこの1年余りで、グループには大きな動きがありました。
もともと5人組グループでしたが、コロナ禍から活動を休止していた新谷香苗さんが2021年4月をもってグループを卒業、残った実玖さん、詩絵里さん、鈴川瑠菜さん、山本愛理さんの4人で活動を続けながら9月には3枚目のアルバムとなる「LOCKON」をリリース、そして翌3月には新メンバーの加入がありました。
コロナとなってから実質的に4人で活動していたところに一人加わり、ようやく元々の構成であった5人組に戻ったのでした。
その新メンバーというのが、花音さんです。

花音さんの加入には前段がありました。
Twitterでバズッた「私、アイドル辞めます」という漫画を実写化したショートムービーが先日公開されたのですが、メインキャストは現役のアイドルがつとめていました。

https://www.youtube.com/watch?v=7VAyiQ2ctZM

主役が実玖さん、そして主人公の妹役として選ばれたのが花音さんでした。
しかも花音さんの女子翼加入が発表されたタイミングは映画の公開時期と重なっていて、劇中で一緒だった二人が現実でも...というのはちょっとした話題を呼んでいました。
二人並んで舞台挨拶していた数日前に、誰がこの結末を予想できたでしょうか。
これ自体がよくできたフィクションかのようです。

3月19日の加入発表からここまで2ヶ月弱が経ちました。
花音さんに対する評価はかなり高いようで、ツイッターでは絶賛の声が多く、運営側としてもそれは感じていたようです。
この日の入場時に配られた「九翼新聞」には、冒頭で「女子翼に馴染んでいるという声が多くの方から聞かれる」とあります。

◆5人だからこそのステージ

自分が女子翼を知ったころはすでにコロナ禍だったので、4人でのステージしか観たことがありませんでした。
前回行った「第35片」は新谷さんの卒業前最後の東京定期公演です。
ただ、女子翼は5人でこそだというのはちらほらと耳にしていました。
公式ツイッターだったかが「九州女子翼は5人でのステージを前提としている」と書いていた覚えもあります。
4人でも6人でもなく、さりとて同じく奇数の7人でもない、5人にこだわってステージングをつくり込んだのが九州女子翼だと、そういうわけです。
それだけにオーディションも、そのたった一人だけを求めて進められたのでしょう。

この日初めて5人での九州女子翼を目にしたとき、メンバーが5人であることの必然性を感じました。
去年観たときにもかなりステージのレベルが高いなとは思ったのですが、5人だとそれをさらに超え、もはや鉄壁の布陣に見えます。
センターと両翼のメンバーという、奇数だからこそできるフォーメーションや、ライブハウスのサイズに対して多すぎもせず少なすぎもしないという人数やスペースの空き具合など、まず見た目からしてとてもしっくりきました。
フォーメーションのなかで新谷さんが立っていた場所を、いずれ来るであろう未来のメンバーのために開けておいたことで生まれた不自然な空間や途切れた輪は、花音さんによってきれいに埋まりました。

4人の時に不足は感じませんでしたが、完全な状態を目にすることでグループがこれまで求めてきたピースが何なのかがわかった気がしました。
でも、数の問題だけでは女子翼のステージを語りきれません。
ライブが成立しているのは、この5人だからこそなのでしょう。

◆攻撃的なダンス

九州女子翼のダンスは攻撃的であり、しかも無駄がありません。
細かいところまで調整して練り込んでるのがよく分かります。
カルチャーズのステージは決して狭いわけではないのですが、メンバー同士がセンターに集まり、あえてスペースを少なくしてぶつかりそうなところを前後に移動してフォーメーションチェンジしていたのが印象的でした。

グループの振り付けを担当している方が、ある日のライブでのステージ真横からの映像を参照しながら「ターンに勢いがついて速いのに正面でピタッと止まれる」技術を絶賛していました。
素人だと見過ごしてしまいそうなポイントですが、確かに言われて意識して観れば綺麗に真正面で止まっています。

他にも、回した腕にワンテンポ遅れて動き出す身体という一連の動作は、もはや芸術的でした。
腕と同時ではなくワンテンポ遅らせることに意味があるのでしょう。

メンバーが腕を広げたりかがみこんだりすると、真っ赤な衣装がまくれ上がります。
目の前に広がるのは赤一色の光景です。
この光景を目にしたとき、何度かトランス状態に陥ったような気がしました。

◆いかつくなった歌声

元からいたメンバー4人のパフォーマンスも、1年ちょっと見ない間に明らかに進化しています。
すごく単純に言ってしまうと、歌声の芯がかなり太くなりました。

鈴川瑠菜さんは安定の域に入っていますし、詩絵里さんの「絶対零度」の入りなども素晴らしかったのですが、とくに取り上げたいのが実玖さん。
映画では数あるアイドルの中で主役を張れるほどの文句なしのビジュアルです。
見た目どおり甘くてやや幼さを感じた歌声だったのが、パートによってはカッコよく変化していることに気がつきました。

https://twitter.com/itr_miku/status/1524873700838764544

フロアに向けたウインクやキメ顔が多かったような気がしたのは、ライブ終わりの「今日はレスを多めにしてみた」というコメントを聞いて納得しました。
実玖さんはただ目を合わせるだけでなく、豊かな表情を作ってこちらに投げ掛けてきます。
充実度が段違いでした。

一幕目の「クイズ〜ノンノン花音」は、出題者の花音さんにまつわるクイズをほかの4人が回答して8問中5問に正解したらご褒美がもらえ、外したら罰ゲームを受けなければならない、という企画でした。
問題ごとに、答えられる自信のあるメンバーが都度前にでて回答するという形でしたが、まちがえられないプレッシャーから実玖さんは後ろに引っ込んで積極的には答えようとしていませんでした。
これがいつもの実玖さんなのかと思っていたら、ライブでの積極的なレスやキメ顔でひっくり返されます。

ところで個人的にはいままでライブでの九州女子翼しか観たことがなく、配信を観たり特典会で喋ったりなどの経験がありません。
素にちかいメンバーの姿をあまり知ることがありませんでした。
MCトークもわりと改まった口調のほうが多いのでキャラも見えてこなかったのですが、この日のクイズコーナーでは初めてリラックスしたメンバーの姿を観ることが出来ました。
MCの時とは違う、気を許して九州弁で喋るメンバーを観ることが出来たのは、普段はこんな感じなんだと多少なり知ることができて貴重です。

◆花音さんのパフォーマンス

そしてなんといっても新メンバー・花音さんです。
二幕で櫻坂46の「五月雨よ」のソロカバーのときからその片鱗は見えていました。
指を回しながら閉じていく、アイドルの振り付けでよく見かける動作だけみても滑らかで、何かが違いました。
薄緑のゆったりしたワンピースも一緒に踊っているかのように見えます。

加入からまだ2カ月弱しか経っていないのにここまで真っ赤に溶け込んでしまうのかと驚きました。
クイズコーナーでは出題者ということもありますがすごく元気に場を回していて、4人のほうがおとなしく感じるくらいだったのですが、「自由でいいよ」と皆に言われた明るいキャラクターの裏には相当の努力があったのだろうなと感じずにはいられません。

https://www.youtube.com/watch?v=7JVNpQFmLQU

◆毎回同じ高まり

先に書いたように、女子翼は月一ペースの定期公演を50回近くもこなしています。
そのたびに東京と福岡を往復し、二幕のカバー用に毎回新しい曲を覚えて振り入れまでしないといけません。
自分がその立場だったら…と想像するのも嫌になるくらいハードだろうと思います。
それを50回も繰り返してきたのは、このことだけでもっと注目を集めるべきですし、称賛されなければおかしいはずです。

しかし、本編終了後のメンバーのコメントを聞くと、数を重ねてきたことへの特段の執着みたいなものはみえず、それよりも今回が第一回目なのかというくらいの気持ちのこもりようでした。
「こうして開催出来ていることは当たり前ではない」
「この一瞬を大切に」

ライブ中にも、多分山本さんだと思うのですが「一瞬しかないから!」みたいなことを叫んだメンバーがいました。

アイドルがたびたび開催する定期公演というのは、ホーム感がある一方で悪いほうに向かえば内輪だけの馴れ合いみたいなものになってしまうことだってあろうかと思います。
でも、九州女子翼はいつも来てくれる方も当然大切にしつつも、この日が初めてだったり、まだあまり知らなくて...という人達の方にもしっかりと目線を向けてくれています。
メンバーが言葉で表現し、態度で示すとそれに応えないとという気にさせられます。

ライブ最終盤になるとよくかかるのが、「空への咆哮」という曲です。
サビでは4拍子の一拍目で空に向かって人差し指を立てるシーンがあるのですが、ここまで魅せてもらったライブによって高まりすぎた感情は、山本さんの「うぃくよー!」の煽りとともに目一杯指を伸ばして空に押し付けたい衝動となってたちあらわれてきます。

まだライブを観た回数は少ないですが、毎度こうした気持ちにさせられているのは、定期公演を慣れきったものにしないメンバーの姿勢のお陰なのだと感じました。

https://twitter.com/ITR_KGW/status/1525466707011112960


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