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【ライブレポ】SANDAL TELEPHONE 2022 1st LIVE

SANDAL TELEPHONEの2022年の「明けましておめでとう」は、新年の挨拶から1カ月以上も過ぎた、2月5日(土)でした。

この日、3人組アイドルグループ・SANDAL TELEPHONEが恵比寿CreAtoにて表題のライブを昼夜二部制で開催しました。

サンダルテレフォンからSANDAL TELEPHONEへ

2021年末のライブをもって西脇朱音さんが卒業し、3人体制となったサンダルテレフォン
明くる2022年からは、カタカナ表記だったグループ名を「SANDAL TELEPHONE」へと改めました。

アーティスト写真も一新され、またここからスタートという意志を表明しましたが、ライブ出演は年明け一発目のお正月に開催の「NPP2022」のみで、そこから2月5日までの一カ月に渡って一切の出演がありませんでした。

一カ月の空白

ファンの前には生の姿を見せなかった一方で、この間メンバー同士はほぼ毎日顔を合わせていたそうです。
全てはレッスンのためでした。
ボイトレ、ダンスレッスン...
我々には姿を見せないまま、メンバーは静かにメンバー減への対応とパフォーマンスのブラッシュアップにつとめていたのでした。
もしかしたら、この一カ月は普段のライブの日々より忙しかったのかもしれません。

でも、と考えます。
4人から3人へ移り変るにあたり、取りうる選択肢はこれだけではなかったはずです。
ほどほどにレッスンの時間を取りながら、休まずライブにも出演する。
あくまで目下の照準は年末に発表されていた3月からの全国ツアー。
そこまでに徐々に3人であることに馴らしていけばいい。
こういう考え方だってあったかもしれません。

文にすると軽くなってしまいますが、サンダルテレフォンのメンバーがどれだけ真剣にライブに向き合ってきたかは、ライブを観に行って多少なりともそのパフォーマンスに触れた人なら分かると思います。
このパターンでも、あの3人なら不足のないパフォーマンスをみせてくれたでしょう。

1カ月という期間は、ライブに飢えたファンを繋ぎ留めておくには短くないです。
とにかくライブに出演し、修正や反省があればレッスンもそこそこに次のライブで実践。
これだって着地点としてはあり得たはずです。

しかし、SANDAL TELEPHONEチームの目的は、目下の活動をなんとなく維持することにはありませんでした。
目線はさらに上へとあったようです。

ファンの方のツイートを拝見して驚きました。
メンバーはこの一カ月の間に持ち曲全てのダンスの振り付けを一から確認し直したそうです。
この一カ月は、西脇さんが抜けた穴を埋めるためだけの期間ではありませんでした。
一旦まっさらにして再デビューするための期間でした。

もともとパフォーマンスには定評があったのに、です。
ストイックさには舌を巻きます。
しかしながら、どうしてそこまでするのでしょうか。

関連して、一つ印象的な話を取り上げてみたいと思います。
2年程前、つんく♂が、あるライブアイドルの楽曲制作に関わったことがありました。
ライブアイドルの中でも高名であり、動員的にはほとんど「地上」にいるのではないかというグループです。

つんく♂のnote記事には、メンバーを初めて観たときの印象、振り入れからレコーディングまでのあれこれやその過程が書いてあるのですが、かなり厳しい評価になっています。
「リズム感が無い」「メンバーのリズムが合わない」、あげくの果てには「滑稽だ」と。
「あちゃー」となっている寺田の姿が浮かんできます。
文面からだけから受ける印象だと、デビューを控えたグループへの講評を見ているかのようです。
ただ名誉のために書き加えますが、そこから1年経ったnote記事では、そのグループはべた褒めされていました。

ライブレポには良いところしか書いていない自分の価値観が揺らいだ、というのが当時読んだ時の感想だったのですが、悲しいかなこれがライブアイドルの現状なのでしょう。
ライブに重なるライブでまとまった時間をなかなか確保できず、突き詰めだしたらキリがないライブパフォーマンスを詰めるほどの余裕はないと思います。
かといって、例えば新体制などをきっかけにライブを一旦取りやめることも現実的ではありません。
一度クールダウンさせてしまったエンジンを暖め直すには、かけっぱなしの時以上のエネルギーが必要です。

しかし、面倒ではあっても、ここで詰め切れるかどうかがもしかしたら夢の舞台に立てるかどうかの分水嶺なのかもしれません。
改めてハロプロのステージを観ると、完成度にたじろぎます。
再ブレイクしたハロプロ、特にモーニング娘。の武器はフォーメーションダンス。
現役メンバーによると、0.5cmのズレも許さないと言います。
売れると一口に言っても色々ありますが、少なくともパフォーマンスを推してやっていくのであれば、これくらい突き詰めなくてはいけないのかもしれません。

2019年のデビューから走り続けて3年が経ったサンダルテレフォン。
着実に積み上げたスキルには、それと一緒に癖や悪い意味での「慣れ」などがもしかしたら付いてしまっていたのかもしれません。
とはいえ、われわれ素人にはわからないようなレベルだと思います。

この一カ月にかけてのレッスンは、そうした癖をこすり取り、多くの人に見てもらうべく今一度基本に立ち返るというものだったようです。

統率のとれたダンス

ライブの中身に入っていきます。

4人の時と3人の時とで一番感じた違いが、ダンスの動作が揃っているということ。
これまでのサンダルテレフォンは、統率が取れているというよりも各人の個性が出ているイメージの方が強かったです。
例えば、「SYSTEMATIC」のサビでは0.5拍くらいテンポを遅めて腕を回すメンバーが居たりもしました。
かといって動きのバラバラさが気になっていたかというとそうではなく、むしろ良いように捉えていました。
4人それぞれが型にはまらずそれぞれのやり方でフロアを掴みに行く姿勢を受けたのでした。

でも、つんく♂の言葉を借りれば、これは「メジャー感」を出すためにはぴしっとそろえたほうがいいとのことなのでしょう。
最後列であってもステージから10メートルもない狭いライブハウスであれば良いが、規模が大きい会場ではてんでバラバラに見えてしまう。
ここまで書いた見当があたっているのかは分かりませんが、「もっと踊れるのに」という思いを胸にしまいつつ、3人が歩み寄って踊っていたように見えました。

これまでのように個を押し出さないだけに「控えめ」や「硬そう」に見えたという感想コメントも見かけましたが、意図をもって今までに無いものを作ってきたことははっきりわかりました。

今年こそ売れたい
一部と二部の間、3人で熱い話をしていたらすぐ二部の開演時間が来てしまったそうです。
「今年こそ」を現実のものにしてほしいですし、その予感を、揃ったダンスに覚えました。

ここからは新曲について取り上げていきます。
ライブがない期間に、新曲の音源が公開されました。
5月10日リリースの3rdEP「Lightsurfer/レビュープレビュー」から「レビュープレビュー」。

新曲「レビュープレビュー」

耳を押しつぶさんばかりの音圧で攻めてくるのが、これまでの「サンダルテレフォン」のライブでした。
恵比寿CreAtoでの定期公演の時など、ぎっちりお客さんで埋まっていても、吸収されることなく爆音が聴こえてきます。

しかし「SANDAL TELEPHONE」としてのデビュー曲であるこの曲は正反対でした。
最たるものが、イントロでの音の少なさです。

音源を聴いている時から小さいと感じていましたが、会場でもでした。
鳴り出してから20秒弱、小町さんが初めのパートを歌いだすまでの音はかなり控えめでした。
それまでの強烈な音と比較すると、スピーカーは沈黙しているに等しいです。
一番後ろの端っこで観ていても、メンバーがゆっくり歩き出してブーツと床が触れる音、新衣装がこすれる音が聴こえてきました。
普通は聴こえないはずの物音がこちらに届く。
それくらい、伴奏の音が来ないのです。

そして小町さんの歌い始めです。
この曲に限らなかったかもしれませんが、PAの加減で小町さんの歌声にはエコーがかかっているような気がしました。

「待ち合わせは 終電近く 君のチケットも買ってあるよって」

エコーからは、夜も深いまどろんだ雰囲気が漂ってきます。

この曲、表面的に歌詞をすくい上げると、こういう印象を受けました。
「別れ話を切り出そうか逡巡する女性心理」
相手との温度差に違和感を感じている心の揺れ動きは、ちょうど1年前にリリースされた「SYSTEMATIC」とも近しいものを感じます。
「SYSTEMATIC」は「飾られた言葉なんて聞きたくないから、さようなら」という捨て台詞のようなフレーズで終わります。

雑に言えば両者「大人っぽい」という点で似通っているのですが、どうも同じものとは見なせません。
「SYSTEMATIC」にあった若干の背伸び感が、「レビュープレビュー」にはなくなっているような気がします。
起伏少なめに進んでいく展開も、その一つかもしれません。
語り手はどこか一歩引いた、冷めたような見方です。

パフォーマンス初披露の2/5に戻ってみます。
この日、1カ月にわたってメンバーが取り組んできたレッスンの成果を細部まで受け止めることが出来たかというと、観ていた位置の悪さ(自業自得です)もあり、さほど自信がありません。
唯一気付けたのがこのパートでした。

「深い椅子に 沈むからだは 子供みたいに眠くなっちゃって」

2番冒頭、夏芽さんのソロパートです。
動きに注目しました。
ステージやや奥に立ち、自らの頭を小突きカクっと首を揺らしていたのですが、その姿はまるで誰かから食らったかのようでした。
自らの頭を小突いた時の夏芽さんの反応が、一人二役のように見えたのです。
非常に細かいところなのですが、入り込んだ動作には、1カ月のレッスンの跡を垣間見た気がしました。

二部のMCでは、この曲の振り入れ秘話が語られました。
衣装は新体制発足を期に、身体にフィットした流線型のデザインに一新されました。
そのため、いままで通りに身体を動かすのでは衣装の揺れが少なく、動きが縮こまって見えてしまうところがあるようです。
だからこそレッスンでは、大げさなまでに動きを大きくしてこれまでとのギャップを埋めるようにしたと。

「コーヒーの香りで思い出すのは...」

ここの振り付けは前に向かって歩く動作ですが、「軍隊みたいに行進」するイメージで練習してきたそうです。
とはいえ、歩くのはたった5歩です。
言われないと気が付かないくらいすぐに過ぎてしまう5歩なのですが、力感をつけるために繰り返し繰り返し練習したとメンバーは振り返っていました。

各メンバーについて書いてみます。

小町まいさん

小町さんはマイクをほとんど口に付けて歌っています。
細かい息も入るからか反響が強く、声量としてはそこまで出していないはずなのにかなり聴こえてきます。
二部ではイヤリングをつけていましたが、どこかの曲で外しました。

パフォーマンス中はクールに見えることの多い小町さんですが、いつからか非常に穏やかになった印象があります。
この日も、いつにも増して楽しそうにしていました。

夏芽ナツさん

小町さんとは対照的に、夏芽さんの歌い方はマイクを離しています。

これまで夏芽さんの歌声には少し力が入ったように感じていたのですが、ライブ後半にかけての歌声は出しやすそうでしたし、非常に聴きやすかったです。
力が抜けてきたのでしょうか。
上ブレした夏芽さんののびのびとした第一声を聴けば、ライブの成功を確信します。
4人のときも、3人となったこれからも変わらないでしょう。

藤井エリカさん

西脇さんのパートを一番引き継いでいたのが藤井さんではなかったかと思います。
これまで小町・夏芽ペアが多かった歌割に、西脇さんのパートを背負った藤井さんが食い込んできました。
歌声は、西脇さんのぶんまで心を込めているかのように暖かさに溢れていました。

あともう一つ藤井さんで印象的なのが、MCトークです。
4人の頃から、サンダルテレフォンのMCには、独特の緩さがありました。
べたべたしすぎない関係性だからこそ出せる空気感なのでしょうが、時として少しの距離感やぎこちなさを感じさせていました。
本人たちが「間持つかな...?(笑)」とか言ってしまうくらいです。

その中でもよくしゃべっていたのは夏芽さんと西脇さんのイメージで、夏芽さんが回しをしつつ、しっかりしている西脇さんが全体を見ながらトークの方向をつける、というのが通例だったかと思います。

西脇さんという羅針盤が居ない今、一番喋っててトークを膨らませていたのは藤井さんだったのではないでしょうか。
人数が減ったことで一人一人の間隔が空間的に広くなる一方で、藤井さんのおかげでお話の距離は縮まったように見えました。

ーーー

以上がライブレポになります。

去年の同じ時期に書いたことの繰り返しですが、3月からの全国ツアーが終わるころには、メンバーがエゴサーチしようとしても追いつけないほど「SANDAL TELEPHONE」のワードが飛び交っていることを期待しています。


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