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【ライブレポ】サンダルテレフォン定期公演"エス・ティー vol.13"

10月22日(金)、4人組アイドルグループ・サンダルテレフォンが恵比寿CreAtoにて表題のライブを開催しました。
昨10月から毎月開催されているこの定期公演も、これでもう13回目。
とうとう一回りしてしまいました。

ダルフォンメンバー紹介

定期公演ではまた、何かしらのお知らせや、対バンライブなどでは見られることのない新たな試みや仕掛けが用意されており、それが他とは違う特別感をもたらしてくれています。
この日のトピックスは以下の3つになるでしょうか。

①Remix アルバム ジャケット写真・新アーティスト写真解禁
②「Shape the Future」Remixバージョン初披露
③カバーコーナー

まずは①②の話から入っていこうかと思います。

11月30日 リミックスアルバム発売

サンダルテレフォンの曲の多くは、リミックスバージョンとしてアレンジが加えられています。
現在リミックスは全8曲ですが、他アイドルを見渡しても、これだけ多くの曲をリメイクしている例はほとんどないでしょう。
しかも、話題性だけを求めてその実は既存曲を焼き増ししたような出来、というわけではなく、オリジナルの核そのものを残しつつもしっかり組み立て直されています。
ちゃんとした意図をもって生まれ変わったリミックスバージョンはライブのバリエーションを増やす点でも欠かせなくなっています。
今年に入っては「SYSTEMATIC」「碧い鏡/It’s Show Time!」と新曲をコンスタントにリリースしていましたが、その裏ではリミックスの曲数も着実に増やしていました。
今年の夏には「真夏の匂い」「Follow You Follow Me」のリミックスバージョンが初披露されました。
これで、昨2020年8月にリリースの「Step by Step」収録曲のほぼすべてがリミックスに生まれ変わったということになります。
手駒が出そろったタイミングで、満を持して発表されたのが、リミックスバージョンのみを収録した「REMIXES」が11月にリリースされるというお知らせでした。

既にリリースイベントは消化されており、定期公演の時点でリリースまで約1カ月と、徐々に近づいてきている感がありました。
その中でも空白のままだったのがジャケットのデザインで、それがこの日ようやく公開となったのでした。

終盤のMCコーナーで、アルバムにはAB盤があるとメンバーが触れた上で、まずA盤のジャケット画像がスクリーンに映し出されました。
先に書いたように、リミックスに変換されたのは1stアルバム「Step by Step」の曲なのですが、「Step by Step」のジャケットをデザインしたのがnajucoさんでした。
今回のリミックスアルバムにもその流れを組み、najucoさんが再登板しました。
「Step by Step」では、受話器がサンダル型をした黒電話を右手に掲げたストライプ柄の少女がこちらを向いたイラストでしたが、「REMIXES」では「クラブ」の看板を背に、携帯電話を握っています。
真夜中特有の冷たい空気をイラスト越しにも感じるとともに、イラストにある女の子を取り巻くものがこの1年間でがらりと変わったこと、確かに時間が経過したことを感じます。

B盤には打って変わり、メンバー4人の実写画像がデザインされていました。
この別ショットはアーティスト写真や、各人のSNSのプロフィール画像になっています。

アーティスト写真、アー写と略されることの方が多いですが、グループの一つの側面を写す鏡のようであり、各グループ観ていて面白いです。

ライブアイドルの世界では、毎週末複数のフェス・対バンライブが開催されますが、それだけ告知の数も多いです。
ツイッターにはペラ一枚の告知画像がそのたびに上がってきますが、そこには何組ものグループのアーティスト写真が収められています。

たとえお目当てのグループでなくとも、目に訴えかけてくるデザインのアーティスト写真は強く印象付けられるものです。

多彩なメンバーカラーで配色された鮮やかなショットだったり、あるいは少ない種類の色をこれと決めて打ち出すグループが多い一方で、サンダルテレフォンの新アー写は独特でした。
まず、配色がモノトーンです。
20~30組が出演するフェスであっても、「引き」の色合いのアー写は逆に目立ちそうです。

それに加え、首から上が強調されています。
普通見せたいのはメンバーの着ている衣装も含めた全体のビジュアルのはずなので、全身が入ることのほうが多いような気がするのですが、このように首から下を大きくカットするようなショットは珍しいです。
顔が大写しになったメンバー4人は、カメラから目線を外してそれぞれで違う方向を向いています。
その表情は憂いがちで、これがモノトーン調となんだか合っています。

打って変わってジャケット裏面には、モノトーン調は変わらないのですが笑顔でくつろいでいるメンバーの姿がありました。
どこで撮ったのか、机を中心に向かい合って座り、カメラの方を向きながら笑っています。
仕事の合間に楽しくおしゃべりするシーンを切り取ったものだとは思うのですが、自然なシーンのためおそらく本人達にしてもいつのシーンなのか定かではないのでしょう。

B盤の写真を眺めて4人が感想を言い合っているころ、マイクスタンドを手にしたスタッフの方が袖から出てきました。
ステージ前方に4人分のスタンドを等間隔に並べ終わり、コメントもひと段落するころ、4人がおもむろにマイクをセットしだしました。
夏芽さんが代表して「これが、最後の曲です」と合図しました。

Shape the Future リミックス初披露

リミックスアルバムの情報が出されたところで、この日の最後に披露されたのが「Shape the Future」のリミックスバージョンでした。
初解禁となったこの曲が、「REMIXES」収録の最後の曲です。

まさかのスタンドの登場には世良公則的なことを一瞬想像していたのですが、振り回すこともなく、4人はスタンドの前に立ち、一歩も動かないまま歌っていました。

これまで作られてきたリミックスバージョンには、音もさることながら振り付けやフォーメーションなど「動き」にもオリジナルからの変化が付けられていました。
振り付けは同じだけどフォーメーションが違う、あるいはその逆など曲ごとに趣向が凝らされ、それが原曲とリミックスとを全くの別物のように思わせていました。
「Shape the Future」の何よりもの特徴は「動きがない」という点でした。

象徴的なのが前間奏のシーンでした。

オリジナルであれば、「LaLaLaLa...」とコーラスしながら腕を斜めに伸ばす振り付けがあるのですが、動きをなくしたリミックスバージョンでは受け止め方がかわり、なぜか合唱曲のように聴こえました。
リミックスが見せてくれた、新鮮な切り口です。

オリジナルのリリックビデオには、手書きの歌詞が載っています。

「小さなことも積み重ねてけば 確かなカタチになるね」
他の曲以上に歌詞を大事にしているのだろうと思いますが、振り付けを失くすことで詞はより浮き彫りになっていきました。

この「Shape the Future」、主催公演以外ではなかなかお目にかかれません。
時間や機材などの制約からスタンドがなかなか用意できないであろう対バンライブではどういった演出になるのかなど、今後が楽しみです。

お知らせ、トピックスはここまでとして、ここからはライブの中身に入っていきます。
この日のセットリストは、このような感じでした。
毎度のことながら、ファンの方のツイートを参考にさせていただいています。
いつもありがとうございます。

◆セットリスト

M1. Follow You Follow Me(Remix)
M2. Sleeping Beauty(Remix)
M3.コーリング(Remix)
M4. It’s Show Time!
M5. Step by Step
M6. Magic All Night
~SDTPカバー~
M7. 夢見る少女じゃいられない(小町)
M8. 愛が止まらない~Turn it into Love~
M9. 碧い鏡
M10. ワンダーランド(Remix)
M11. SYSTEMATIC
M12. かくれんぼ
M13. Shape the Future(Remix, 初披露)

はや13回目と、毎月のルーティンとなった定期公演ですが、会場は初回を除いて毎回恵比寿CreAtoです。
無機質なステージの床も、湿っぽく柔らかい土のように4人になじんでいるようで、ここが帰ってくるホームなのだと実感します。

前回の開催が9月3日といつもより少し早く、一方で今回は10月下旬にずれこんだため、結果としていつもより半月程度空いてしまいましたが、そんなことは些末な問題でした。

1曲目「Follow You Follow Me」で始まったクラップの音の粒は、いつもの感覚を取り戻させてくれました。
ステージをよく見てみると、過度なフォーメーションチェンジがさほどありません。
手の振りなど動作には、そのぶん各メンバーによるアレンジの余地が広がります。
例えばこの日は、いつも観ているときよりも半テンポほどずれているように見えたシーンがありました。
ただそれは、遅れているというよりもあえてリズムをスライドしているような感じです。
こうしたメンバーごとの工夫が、サンダルテレフォンのライブをその日限りのものにしているのだと感じます。
言葉で言い表せるかどうかはさておいて、観るたびに何かが違います。

外では、冷たい雨が季節外れの寒さを運んできていましたが、ワンフロア潜った地下の会場は、雨とも寒さとも無関係でした。
こちらはとくに動きもしていないのに、ライブの熱さからくるのかなぜか早い段階から汗ばんできます。
夏場と違って会場にクーラーが効いていないだけに、一度熱が乗ってしまうとその熱を逃すことがなかなかできません。
外と中との温度差が広がり、そのギャップで風邪を引いてしまいそうな季節が近づいてきています。

ここからはメンバー各論に移ります。

小町まいさん

カバーコーナー一発目で、小町さんは相川七瀬さんの「夢見る少女じゃいられない」を披露しました。
「カラオケでよく歌っていて、一番うまく歌えているかな?」
十八番の曲だと言っていましたが、MCでのこのコメントを聞かずとも、そうだろうなと分かります。

サビの最高音では、力を入れすぎずあえて抜くような歌い方をしていたり、オリジナルの歌い方をモノにして、そこに自らの色を加えていたような気がしました。
聴きこんだだけだとコピーになってしまいそうですが、そこにプラスアルファがあるのが小町さんです。

上ずってしゃくりあげるような歌声が小町さんのアイデンティティーだと思っているのですが、それがこの曲の世界に現れる、すさんだ幼さとよく合っている気がします。

ところで、小町さんはよく「レス」を送ってくると評判です。
フロアの誰かにロックオンをして、その目線をワンフレーズ以上に渡って離さないままパフォーマンスをすることがしばしばあると、傍目で観ていても感じていました。
ツイッターを見ると、初見でその沼に引きずり込まれてしまった方のツイートがたびたび流れてきます。
かつてはレスを送ることを「ダンスの体勢よりも」優先していたと口にしていましたが、今ではバランスをとれるようになってきたそうです。

その成果なのか、ここ最近の小町さんはいい意味でフロアを見下ろすようになった気がします。
視点が上がり、全体をより高いところから見ている傾向が強まったのでしょうか。
自分のパフォーマンスであれば注目をおのずから集められるだろうという自負も生まれているのかもしれません。

そんな小町さんのレスをこの日じっくりと食らった気がします。
ああこれがみんなのよく言う魅惑的なレスなのだと、ようやく身をもって実感しました。

藤井エリカさん

定期公演では、恵比寿CreAtoのステージ奥にある充実したスクリーンを活かし、曲の世界観に合わせた映像、いわゆる「VJ」が差し込まれています。
この日のスクリーンには、パフォーマンス中のVJだけでなく、場面ごとに「SDTPカバー」などと「メクリ」のような文字まで大写しになっていました。

ユニットコーナーで、小町さんのソロに続き藤井エリカさんと夏芽ナツさんがマイクスタンドとともに登場した時、イントロに先だってスクリーンにはこう表示されていました。

「愛が止まらない~Turn it into Love~」

言わずと知れたWinkの名曲ですが、この二人によるWinkは、これが初めてではありませんでした。
名曲カバーコーナーが始まったのが今年夏の東名阪ツアーだったのですが、ツアーの大阪公演で「淋しい熱帯魚」を既に披露していました。

曲名が表示された瞬間、小さな歓声があがりました。
これは、ツアー以来久々の「エリナツ」デュエットだという喜びもあったのでしょうが、ファン層を良くとらえた選曲に対しての歓声でもあったのでしょう。
サンダルテレフォンの志向する音楽と、こうしたひと昔前のアーティストのテイストは非常に近しいものがあると感じています。
だからこそ楽曲派を自称するファンが寄ってくるわけで、以前のカバーも「secret base ~君がくれたもの~」や、「負けないで」などと、チョイスが素晴らしいです。

下手側に立った藤井さんの姿は、最上手後列の僕の位置からだと見えやすいとは言えないものしたが、限られた角度でも表情には見入られました。

顔の力を抜き、脱力したような表情は、在りし日のWinkの姿ともダブって見えるようでした。

ユニットを離れ、グループの中での藤井さんを観たときに存在感を感じる場面がダンスの力強さです。
ターンするときや動作と動作の間に区切りを付ける時など、バシッとしています。
思い返してみると、そう感じるようになったのが、今年6月にリリースした「碧い鏡」の前後からだったように思います。
スピード感がありながらも、止まる動作が多く動静のメリハリを意識づけられるのが、この「碧い鏡」という曲にあてられた振り付けの特徴ですが、そのあたりから藤井さんのダンスがより深みを増してきた感じがありました。

西脇朱音さん

メンバーとファンとのコミュニティーの場所である「Fanicon」では、ツイッター以上の距離感の近さでメンバーとファンとがあたかもチャットしているかのように交流しているのですが、それとは別に定期公演のファンクラブ会員先行URL等が貼られるページがあります。
「ホーム」とでも言うのでしょうか。

9月のある日、西脇さんが珍しくホームに投稿しました。
「このあと20:00にわたしから皆さんにお知らせがあります」

いつもはあまり投稿することのないホームを選んでこんなコメントを書いた時点でなんとなく内容を察します。

20時、ツイッターに西脇さんが投稿したのは、「2021年をもってサンダルテレフォンを卒業する」というお知らせでした。

4人でのラストライブが12月29日に開催されることもまた発表となりました。
西脇さんにはかねてから気象予報士になりたいという夢があり、その勉強に専念したいから、というのがその理由でした。
これに伴い、芸能活動からも一線を引くそうです。
下準備は進めており、多忙なライブの合間にもテキストを開いているそうです。
なかなか出来ることではありません。

突然の脱退があまりに思いこのアイドル業界で、それなりにたっぷりと時間をとってファンの気持ちの整理をつかせてくれること(それでも拭い去れないものはありますが)、最後に盛大なお別れの場を設けてくれることはありがたいです。

突然の「脱退」ともなると断片的な情報から憶測など様々なコメントが飛び交います。特に悲しいのが、それが「残る」という選択をしたアイドルやファンの心を痛めることです。
これとは対極に、前向きな形で巣立っていく西脇さんに対しては「悲しいけど応援したい」という素敵なコメントばかりが並んでいました。
この状態が一番だと、心からそう思います。

とはいえ、この4人しかいない、欠けることなど考えられないという気持ちもあるだけに、悲しみは否定できません。
何を言ってみたところで、西脇さんは年が開けたら間違いなく目の前から居なくなってしまいます。
おのずと「あと何回」を意識せざるを得ません。
定期公演など、残すところ2回のみです。

個人的にはこの日は発表以来初のライブでした。
どうしても目線は西脇さんへと向かい、その所作に注目してしまいます。
前々からその表情には注目していたのですが、この日まじまじと見てみるといつも以上に目を見張るものがありました。

具体的な表情を挙げるとするならば、たしか「It’s Show Time!」や「Magic All Night」での下からの目線です。
顎を目いっぱい大きく引き、上目遣いのような視線をこちらに投げかけていました。
上目遣いといってもいわゆるアイドル的に甘えるようなものではなく、影が落ちた顔はフロアの方をにらみつけているような感じです。
一般に、二階席もないフラットなライブハウスで、演者がフロアを見上げることはありません。
ステージの方が高いのですからそうなるのが自然です。
でも西脇さんは、あえて上目遣いのような、下から見上げるような目線を見せていたのでした。
色々な捉え方があると思います。
見ようによっては大げさとも言えるくらいの表情でしたが、どうしたら皆を惹きつけられるのだろうかという工夫の跡は痛いほど伝わってきました。

卒業するその日まで西脇さんの表情はアップデートされていくはずだと、これをみてそう確信しました。

夏芽ナツさん

ここまで書いた3人のメンバーについては、目を引いたシーンをピックアップしてきましたが、なにも誰にも分かるような変化だけがライブではありません。
それを支え、ライブを成立させている人のことも見落とすことが出来ません。

今回のライブで言えば、そのメンバーは夏芽ナツさんでした。
とはいっても、夏芽さんの歌割は小町さんと並んで多いですし、引っ込んでいるようなポジションではありません。
MCや煽りも担当していますし、決して影になるような存在ではないのですが、全てがまとまっていてお手本のようなので、ことさらに書こうとするとこれとはなかなか言いにくいところがありました。
極端につくりこんだ表情をすることもありません。
それでもこの日、夏芽さんの働きを感じるシーンは数多くありました。

Winkの時には、左右にゆれながらリズムをとる、オリジナル特有のアンニュイな感じをさりげなく表現していました。
高音は安定して出されており、多くのメンバーのハイトーンを一束にまとめます。
中盤「SYSTEMATIC」からは尻上がりな調子の良さも見えてきました。
夏芽さんの高音がよく出ているとライブはより潤ってきます。

以上がライブレポです。

個人的には、サンダルテレフォンだけでなくそもそもアイドルのライブに行くことさえ1カ月ぶりだったのですが、「復帰戦」でも違和感なく溶け込めました。
少し間をおいてもそこに居てくれるサンダルテレフォンの存在はありがたいです。

見出し画像:サンダルテレフォン公式ツイッターアカウント画像(@sandaltelephone)を改変


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