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【ライブレポ】群青の世界×MARQUEE 定期公演 青の記録 vol.8

8月22日(月)、渋谷Spotify O-nestにて、4人組アイドルグループ・群青の世界の定期公演「群青の世界×MARQUEE 青の記録 vol.8」が開催されました。
アイドル雑誌「MARQUEE」とコラボした月一回のこの定期公演、1時間近くのライブに加え、テーマを回ごとに変えた群青の世界メンバー4人へのインタビュー記事が「青の記録」としてまとめられ、一部は小冊子として来場者にプレゼントされるというものです。

2022年1月から始まったこの企画、vol.3からはメンバー一人一人にフォーカスした特集となっていて、vol.7の村崎ゆうなさんをもって全メンバー分が終わりました。
今回のトークテーマは、グループの多くの曲の振り付けを手がけるコレオグラファー、Azさんを迎えてのインタビュー。
少し離れたところから見つめるAzさんにとって群青の世界とは、という内容です。

世界観で魅せる群青の世界のステージでは、ダンスを主とした動きのパートが占める役割は大きいです。
その設計図を描き、4人へその設計図を転写する役割であるAzさんの豊富な語彙によって語られたインタビューはかなり興味深いものでした。
4人の強みや、どう曲に振り付けを合わせていったかという話は深く、自分がこれまで直感的に感じていたことと重なる部分もある一方で、全く考えが及ばなかった内容もありました。
全てが分かった気になってしまうと面白くありません。
一部は分かるけれども多くは謎に包まれているくらいがちょうどいいと思います。
各人の強みだけでなく課題も指摘されていて、凸と凹からなるグループの輪郭が浮かび上がってきました。
今回の記事は、群青の世界に対して分からないことが分かったというようなインタビューでした。

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早速、ライブの内容に入っていきながらインタビュー内容にも触れていきたいと思います。
月曜日ということもあってか、この日のO-nestの入りはいつもほどではありませんでした。
毎回どうしても到着が開演ぎりぎりになってしまい、回によっては2,3人くらいしか入れないのではないかというほど埋まったところにわずかなスペースを見つけなければいけなかったのですが、今回は後方にいくらかの空きがあります。
ステージが低く、一段くらいしかない段差も高くないので、人で埋まるとステージに立つ人の顔がやっと見えるくらいのO-nestですが、今回くらいの入りなら上半身くらいまでもしっかり見えそうです。

定刻、くすんだ空色のような色合いの衣装を着たメンバーが登場してきました。
夏休み期間ということもあり、グループは今多忙を極めています。
2日前の土曜には千葉でのオフ会、日曜には福島での対バンイベントがありました。
移動に強くないメンバーもいるのに、大変だったろうと思います。
遠征を二つ重ねての、月曜日の青の記録でした。

この日の一曲目は「メロドラマ」。
いつもなら走り気味のフロアからのクラップが、この日は綺麗に揃っていました。
そして二曲目は「夢を語って生きていくの」です。
始まりの2曲で、なだらかにテンポが上がってきます。
聴かせる2曲では程よい緊張感に包まれているような感覚がしました。
動員が多く気合いが入るであろうワンマンライブや、アウェイな空気を実感する対バンライブの時ともちがう緊張感です。
いつもより少ないとはいえ、小さな箱は集まったファンでいっぱいになりました。
月曜であっても群青の世界を摂取したいというファンの方々ばかりです。
ホームの雰囲気が出来上がった場内で、メンバーの顔は心なしか全体的にゆるんでいるような気がしました。
しかし、その中にも締まったものがあります。
つまり親しみやすさはあるものの、ピンと張り詰めた感じも失っていない、メンバーはそういう表情に見えました。
2曲だけで、自分は確かな充実感を感じていました。
月曜特有の気の重さが吹き飛びます。
この2曲では照明は白っぽくたかれ、その筋を光が上下に這っているように見えました。
衣装の明るい色合いが特に浮き出てきます。

3曲目は「Quest」。
明るさがここにきて初めてやってきました。
それまで顔を引き締めていた反動なのか、メンバーの表情は弾けていましたし、サビで手を振る動作がいつもより大きく見えました。
4人とも連日移動の疲れを感じさせないばかりか、月一回のホームに帰ってきてやはりリラックスしているようです。

「Quest」の後、簡単にこの日初めてのMCを終えてからすぐ次の曲へと移りました。
群青の世界は、MCが本当に短いです。
マシーンのように淡々とこなしている印象とも違うのですが、気が付いたらあっという間に喋り終えてもう次の曲に行ってしまいます。
直前の曲を終えて「ありがとうございました」と言ってから、「まだまだ楽しんでいきましょう!」と次の曲へと誘導する前の間には、1分ちょっとしかないのではないでしょうか。
それくらい短いです。

4曲目は「シンデレラエモーション」。
どこからか声が上がる、フリコピありの明るい曲です。
「Quest」の流れを繋いできました。、
ただ、それだけで終わらないのが群青の世界というグループです。
テンションの高い曲のあと、間髪入れず畳みかけてきたのが「アイ・ワナ・ビー」「COLOR」といったシリアスな曲でした。
5,6曲目です。

「COLOR」の一番サビ前、一宮ゆいさんがふと自らの手を見下ろす時がありました。
それがアドリブなのかシーンの流れの中なのかは分かりませんがなぜか印象的でした。
この日はメンバーそれぞれに強烈な印象を受けたシーンがあったのですが、今となっては記憶も曖昧です。
一宮さんのこのシーンも、表情が良かったのですがどんな表情だったのかはもう思い出せません。

振り返ってみると、この日は二曲ごとの短いスパンで感情が大きく動くような曲の並びになっていました。
1,2曲目で落ち着かせ、3,4曲目で弾け、続く5,6曲目で再び冷や水をかけるような...
浮いては沈む、忙しい揺れ方ですが、不思議とその場にいると心地いいものです。
むしろ群青の世界はこれでこそ群青の世界であり、不安定な揺れを体験したいがためにライブに足を運んでいるのだと再認識しました。

日常で知ってか知らでか抱え込んでいった重い荷物を解放して少なからず楽になりたいというのが、自分の中でのライブに向かう大きな理由なのですが、群青の世界や他の一部のグループに関して言えば、それ以上のものを期待しているようなところがあります。
アイドルが板の上で歌って踊る姿を見るだけでなく、そこから一歩踏み込んでステージから発される心境や感情に共感したいという思いもあるような気がするのです。

歌詞を言葉として受け止めて思いを重ね合わせるという共感というのもありますが、それよりも、パフォーマンスを通じて心が揺らされ、ステージに立つメンバーと同じ目線になったかのような感覚を得るというイメージのほうが近いです。
音源をセットリスト通りに組み合わせたプレイリストを再生するだけでは得られません。

そして、心を揺さぶる理由を探ってみるとたどり着くのが、今回の「青の記録」のトークテーマです。
つまり、ダンスに代表されるステージ上の動きです。
群青の世界の動きは、独特です。
スローモーションになったかのような動きがあったり、コンテンポラリーダンス風に見える動作があったり、ダッシュで端から端までを駆け抜けることがあったりと、身体全体を使って表現する場面がとにかく目立ちます。
身体をかがみこませたりという上下動も多い。
今回のインタビューでしきりに「身体を伸ばして(伸びやかに)」とか「大きく」という言葉が出てきたのは、身体を使って何かを表現する人にとってみれば常套句なのかもしれませんが、これこそが群青の世界のアイデンティティであり、強調する意味合いがあったのかなと捉えています。

高すぎるクオリティーよりも若干穴があるくらいのほうが時に親しみをもって迎えられる玉石混交のライブアイドル界では、動作を大きくさえすればそれっぽく見せられるという節もあるのですが、群青の世界の動きはそんな安直な発想からくるものではありません。
ただ他より目立つことをしているから目を引くというのではなく、観ていてなぜか心が動かされるからその動作に惹きつけられてしまうのです。
手数が多いわりにせわしなくは見えず、フリコピをしてようやく身体の使い方の上手さに気づくような技術的な側面もあるのですが、上手いという感想よりも先に感情が動かされます。

持ち曲の半分の振り付けを手がけるAzさんにしても、やはりそうした伝わり方を狙っていたようです。
アイドルにありがちなフリコピのしやすさだけにとらわれず、歌と曲に沿った動きにこだわり、一度決めた動作もメンバーに落とし込んだ時の雰囲気を見て直感的に変えたりと、「導かれるまま」に振り付けを当てていることがインタビューから分かります。
また、ステージに立つ人はステージに立つ人であり、そこにアイドルだからとか、アーティストと呼べる段階ではないからとかいうジャンル分けは必要ないという考えを持っています。
このジャンルレスな考え方が土台にあるから、ライブアイドルにしては珍しい振り付けが生まれたのだと分かりますし、ライブアイドルとはこういうものだという固定観念が染みついている自分に気付かされます。

いまでこそ、群青の世界はダンスによる表現技術が確立されていますが、初めからそうではなかったようです。
Azさんによれば、グループの形が明確になったのは手がけた2曲目の「メロドラマ」からだそうです。
始めは手加減して甘めの振り付けにしていたものの、徐々にメンバーのスキルもついていき、今では言わずとも意図が伝わり動きも揃うようになったともいいます。
メンバーから振り付けの提案が出てくることもあるそうで、「僕等のスーパーノヴァ」でMVに映るダンスと実際にステージで踊るときの振り付けが違っているのもそうした意見から来ているのかもしれません。
観ての通り、今が円熟期なのでしょう。

ここに関連してこの日、不思議な体験をしました。
いつも青の記録では10曲が披露され、2回のMCを挟んで3,4,3曲というブロック分けがされています。
6曲目「COLOR」を終えた時点で、どういうわけかもう中盤ブロックの曲を終えてしまったような感覚がしました。
中盤ブロックは4曲立て続けに披露するはずなので、あと1曲、7曲目がまだ残っています。
それなのに、体感では7曲に値するくらいの時間が経っていました。
思いに反して、続けざまに「コイントス」のイントロが流れてきたとき、「えっ」と驚きました。
この日は中盤ブロックに5曲入れてきたんだと本気で思ったほどです。

思い返してみれば、今までにもこうした体験はありました。
中盤を過ぎたころかと思ったらまだ2,3曲しか終わってなかったこともありました。
体感がだいぶずれているというのもあるのですが、時間を見失うくらいステージに没頭していたことなのだと思います。

特に「アイ・ワナ・ビー」「COLOR」の2曲はステージへの引力が強く、思いに耽っていると時間を忘れます。
たった6分くらいですが、ステージ上には文字にしようとすれば収まりきらないほどのシーンがありました。
村崎ゆうなさんの苦しそうな顔や、「COLOR」の、これといった振りが決まっておらずメンバーそれぞれにゆだねられたサビの動作など。
観るたびに感じ方が変わります。
こちらの心理状況もあるのでしょう。

低音がやけに響いているなと感じたのも、中盤にかけてからでした。
出力が振り切れた低音がひずみ、まるで電車が真上を通過していったかのような轟音が響いていました。
この日はマサイをする人はさほど多くありませんでしたが、替わりに地鳴りのような低音が場内を震わせていました。

7曲披露のあとはMCです。
セットリストをいちいちメモしていなかった自分は、この時点でもまだプラス1曲の感覚でした。
MCはまたしても短く、簡潔に終わります。
そしてラストのブロックへ。

8曲目は、新曲でした。
RIBBON」。
8月9日のバンドセットワンマンライブで初披露となったばかりの曲です。

歌詞に明確なメッセージを乗せ、かつエモーショナルに、というここ一年くらいの群青の世界の曲調の傾向そのままのような曲で、僕等のスーパーノヴァとセットでライブ後半に合いそうな気がします。
この曲はまた、横田ふみかさんが卒業して4人体制となって初めての曲でもあります。
個人的には横田さんが抜けてからの水野まゆさんの歌の伸びがすごいと感じていて、この曲には水野さんの歌声を印象づける裏テーマがあるのではないかとすら思っています。
水野さんだけではなく、他のメンバーも自信に満ちているようでした。
抜けた横田さんパートをつぎはぎのように埋めていく他の既存曲ではなく、一曲を通して過不足なく4人に割り当てられた初めての曲ということで、自分たち4人がオリジナルだという堂々とした雰囲気を全体から受けました。

続いては「青空モーメント」。

青春と瞬間と僕と君が
重なった億分の奇跡

固いリボンで結ばれた、友情を越えた結束がテーマの曲を終盤2曲で目にしたとき、最後はもう一つの新曲であり曲名通りのテーマである「BEST FRIEND」を披露するのではないかと思っていましたが、まだ二回くらいしかかかっていないため実績あるこちらの方が選ばれました。
However long」。
捉えようによってはファンとアイドルとの関係にも、普通の恋愛ソングにも考えられる、人と人との体温が通ったつながりを歌った曲で、前の二曲とも反しません。
綺麗な着地です。

グループ名に青が付くだけあり、群青の世界のライブでは必ず青色の照明が活躍します。
例えば曲名にモロに入った「BLUE OVER」などで出てくるのですが、この日はラストの「However long」まで青が目立つ場面はほとんどありませんでした。

たっぷり1時間もあり、月一回とレギュラー化している定期公演は、ともすればマンネリになってしまうことがあります。
飽きを感じさせないよう、各回で変化をつけて新鮮さを常にキープしようというのが制作側の定石的な考えなのかなと思うのですが、「青の記録」はほとんどそういった仕掛けがありません。
普段のライブでは話す時間がないからとMCを多めにとることもないですし、カバーやユニット・ソロ歌唱のような、ホームでこそ出来るチャレンジングな企画に挑むわけでもありません。
もっともセットリストは月のフィーチャーメンバー考案の独創的なものだったり、長尺ならではの流れのあるセットリストとなっていたりはするものの、違いという違いは正直それくらいなのです。
時間が押し気味な対バンライブのようにMCはあっさりとしていて、いつも決まった曲数を、決まった時間の枠内に収めて帰っていきます。
変化をつける役割はライブではなく、インタビューがグラビアとともにまとめられた記事のほうの「青の記録」や、その時の衣装着用での特典会などで十分だという考えからきているのでしょう。

でも不思議なもので、ここまでの青の記録で一度も飽きだとか同じものを見せられているという感覚はありません。
いつも新鮮なものを見せてもらっている印象です。
話が行ったり来たりしていますが、この感覚こそが、感情の起伏を全身運動のパフォーマンスで表現する群青の世界の強みだと思っています。
共感を呼び、心を揺らすパフォーマンスなので、受け手の受け取り方にゆだねられる部分も多いはずです。
感情は日ごとに微妙に違います。
だから毎回新しいものを観ているように感じるのでしょう。

◆セットリスト
M1.メロドラマ
M2.夢を語って生きていくの
M3. Quest
M4.シンデレラエモーション
M5.アイ・ワナ・ビー
M6.COLOR
M7.コイントス
M8.RIBBON
M9.青空モーメント
M10.However long


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