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【ライブレポ】MyDearDarlin' 3rd anniversary live @ Zepp Divercity Tokyo

2023年2月16日、6人組アイドルグループ・MyDearDarlin’(通称マイディア)が「3rd Anniversary Live」をZepp Divercity Tokyoにて開催しました。

ワンマン直前に単独

2月27日にグループは4thワンマンライブを中野サンプラザにて開催予定です。
こちらは昨年9月の3rdワンマンで開催が発表され、そのころから約半年をかけて「Road to 中野」への気運がじっくり醸成されていった一方で、この日のライブ発表はそれよりも後。
12月ごろだったと記憶しています。
中野と比べると急にポンと入った感は否めなく、しかも平日開催で会場はZepp Divercity Tokyo。
並みのグループであれば生涯で一度立てれば御の字のような会場で、平日に単独が組めてしまえるのは、マイディアの未だ衰えない勢いを端的に示しているのかなと思うのですが、だとしてもたった2週間足らずの内に大きな会場で立て続けに単独(ワンマン)ライブというのもなかなか聞く話ではありません。

実はライブが行われた2月16日は特別な一日でした。
2期メンバーとして加入した、葉山かえでさんと夢実あすかさんがステージデビューを飾ったのが2021年のまさにこの日。
2期加入前のマイディアは卒業や学業によるお休みなどが相次ぎ、一時は4人だけでライブに出ることを余儀なくされるなど不安定で、人気も出たてのころと比べて若干落ち込んだとのことでした。
そんなピンチを救ったのが2期メンだったようです。
大きい会場での2ndワンマンや3rdワンマンを成功させ、あるいは大規模フェスでのメインステージ争奪戦を勝ち取ったのはこの後。
このメンバーで円盤の1stフルアルバムも出しており、形として残るマイルストーンをも手にしました。
それもこれも2021年2月16日が起点であり、この日を迎えられなかったら今のマイディアはなかった。
そのことを忘れないために、デビュー日と同じくらい価値がある2月16日に大箱でのライブを設定したようです。

ワンマンが近いのであれば3周年(2期加入2周年)もろともワンマンライブ兼周年ライブとして一つにまとめてしまえばいいという考えもあるかもしれません。
しかし、マイディアチームはこれらをあえて区別しました。
ワンマンは先に進んでいくためのステップですが、周年ライブはこれまで進んできた道に名前を付けて棚卸するための振り返り。
それぞれのライブに役割を持たせ、未来を見据えるワンマン前に振り返りという順序を踏むことによって意識を一つにまとめようという意図があったのだと自分は捉えました。

ワンマンが近いのにモチベーションをどうやってこの単独に持っていったらいいものかという思いもなかったわけではありません。
お客さんの入りもマイディア現場では初めて体験するくらいの率でしたが、入るに超したことはないにせよ目的はどれほど埋まるかではなかったのだと思います。
数字上の記録は中野にとっておいて、Zeppの周年ライブの目的は記憶。
ワンマンが迫っていることで連日レッスンをしているであろうメンバーの負担なども考えれば周年の振り返りは配信やライブ以外のイベントで済ませる(済ませるというと言い方が悪いですが)選択肢だって残っていたと思います。
ただ、マイディアはライブでフロアを一つにまとめあげてきたグループ。
振り返りはあくまでライブパフォーマンスで、ということだったのでしょう。

始まりのセットリスト

この日は「MyDear」から始まるセットリストでしたが、重大ライブでの「MyDear」始まりは過去にもありました。
東京国際フォーラムでの3rdワンマンライブです。
グループ史上初めてバンドセットを従えたライブでしたが、生バンドのことは本番まで一切明かされていませんでした。
開演時間になり向こう側を隔てていた緞帳が開き、待ち構えているバンド隊に驚かされたのですが、メンバー不在の中かき鳴らされる音が始めは何なのかが分かりませんでした。
次第に集約されていく音で「MyDear」だと気付いたころに主役たちが登場したでしょうか。
現在着ている、メンバーごとにデザインの違うゴージャスな白衣装は当時が初お披露目でした。
横にも上にもひらけたフォーラムの大きさもあり、この一連を見た時点でマイディアが一歩も二歩もスターへの階段を上がっていったような感覚を受けていました。
しかも「MyDear」という選曲。
マイディアで一番好きな曲と言われたら自分は「MyDear」を挙げます。
一番好きな曲がバンドセット一発目で披露される。なかなかないことです。
3rdワンマンの思い出の半分くらいはここに尽きるのではないかというくらい、印象深いシーンでした。

それから半年経ったこの日も同じ開幕。
バンドこそないですが、フォーラムのゴージャスな景色を思い出すようなところがありました。
ただ3rdの時もですが、惜しむらくは冒頭の時点で最高過ぎてしまった。
大好きな曲が素晴らしい演出で輝いているのを見られてこの上なく嬉しいのですが、一曲目ということに「もったいない」という気持ちもどこかにあったのです。
贅沢な話だと分かっているのですが、出だしからあまりに最高過ぎたため、これ以降更新するのが難しいと思ってしまった。
そのため、もう少し後で披露してもらいたかったというわがままを捨てきれませんでした。
ただ、「MyDear」が冒頭に据えられたことにはちゃんと理由がありました。
後に知ることになります。

「MyDear」から食い気味のイントロで続いたのが「MDDシンドローム」「トーキョーガール」というアッパーな2曲。
レーザー光は先日の同会場での対バンライブよりも明らかに光量を増し、サイリウムが火花を散らしていました。
恐らく日常を過ごしている間では満たされず、気付かないままに干上がっていくエアポケットのようなものが心のどこかにあるのだと思います。
その渇きを、マイディアのライブは満たしてくれます。
特にこの2曲は双璧で、「トーキョーガール」の「右、左、右」と一見おかしな動きを皆で真似しだすところとか「MDDシンドローム」の指さすところだとか、サイリウム片手にやっていると不思議とテンションが上がってきます。
恐らく自分一人で真似しているだけでは上げられないもので、最大8色のサイリウムが飛び交う現場の中にいるからこそ高揚してくるのだと思うのですが、これは何度体験しても良いものです。
そうして飢餓状態が満たされていき、そこで初めて「渇いていたんだ」ということに気付かされるわけです。

なんでここで

それにしても贅沢なセットリストです。
「MyDear」だけでなくマイディアの象徴ともいうべき2曲が立て続けにカードを切られた。
そこにあって後を継いだのが「七転八起ドリーマー」。

「ボロボロになってそれでも立ち上がって ここから始まるんだ私のストーリー」

最後には拳を固めて夢を掴もうと立ち上がる曲です。
3年間の過程を語るうえで最も重要な一曲かもしれません。
メンバーをして一番変わったと振り返るのがこの曲でした。
中野に向けたインタビューで、東條ゆりあさんはこう言っています。
昔は“なんでここで七転やるんだよ?”とかよく言われた
デビュー時からあった曲ですが、当初の印象はあまり良くなかった。
「トーキョーガール」「MDDシンドローム」は振り付けも分かりやすく、問答無用で楽しい曲なので分かりやすく盛り上がったんだろうなと容易に想像できますが、七転八起はそうした点では伝わりづらいというのはなんとなくわかります。

立ち上がって間もない、一転もしていないようなグループが山あり谷ありの苦楽を語ることの尚早さ、アンバランスさもあったのかもしれません。
歌うメンバーにしても受け取るファンにしても、茫洋とした未来にこの曲を託せなかったのだと思いますが、時がたつに連れて変わっていきました。
グループに七転八起が実際に降り掛かってきたのです。
活動間もない頃にコロナでライブイベントがたち消え、いくつかのワンマンは内容変更、直前での日程変更を余儀なくされました。
主力メンバーの立て続けの卒業もありましたし、2期メンバーが加入しても安定するまでに時間はかかったと思います。

MCでは「これまでの活動を漢字一文字で」それぞれ表現するという企画がありました。
東條さんが書いたのは「」。
落ち込むことがあるとすぐに病みツイをしてしまう自分を最近は「これではアイドルとしてだめだ」と奮い立たせ、暗いツイートをしそうになっても耐えてきたということでしたが、グループに降りかかる困難に耐えてきたというのもあるでしょうし、病みツイは個人だけではなくグループのあれこれが原因となっていたことも多かったはずです。
たびたびメンバーの口からは「私達は百転百起だよね」なんて言葉が出てきます。
苦難に耐え、立ち上がっていくのを繰り返すうちに顔つきが変わり、3年の間で「七転八起」の説得力が増しました。
今では、「ここで七転?」なんていう人はいなくなったそうです。

手放せない曲

4曲披露してMCに移ったのですが、個人的には始めて知る事実が明らかにされました。
ここまでのセットリストはデビューライブのそれと全く一緒だというのです。
人気曲が立て続けにやってきて、もったいないと感じるくらい贅沢なセトリだと思っていたのですが、それもそのはずでした。
グループの船出を飾った曲たちですから、強くないわけがありません。
ライブ一曲めに「MyDear」がチョイスされることが多い理由も同時に知ります。
デビュー日、産声を上げたばかりのマイディアの第一声がこの曲だったからでした。
ことオリジナルメンバーは、開幕で「MyDear」を披露するたびにただ走り出すだけだったあの頃を思い出すのだろうなと想像しています。

対バンライブで「MyDear」がかかることは少ないのですが、それでもMC中の賑やかしや捌ける直前の追い出しBGMなどでたびたび耳にします。
「MyDear」は手放せない曲なのでしょう。

序盤を書いただけで重くなりすぎてしまったので、ここからは印象的なシーンのみ取り上げていきます。

「変」

ずっと気になっていたのが東條さんの目線でした。
丸い目を開いたまま、フロアをじっと見つめているように見えます。
様子を伺うかのような視線です。
アイドルともなればニコッと目を細めることも多かろうと思うのですが、こと前半ではそのシーンが少ない気がしました。

これまでを漢字一字で振り返るコーナーで咲真ゆかさんは「変」を上げました。
変態かといわれて「ちゃうからね」と返しながら語ったのは、デビュー当初はSNSが大嫌いだった自分が変わっていった話でした。
前途洋洋でデビューを飾ったもののすぐさまコロナ禍になってライブが出来なくなり、主戦場がSNSに移らざるを得なくなった。
はじめは嫌で仕方がなかったけど、続けていくうちに自分を可愛く魅せる角度や光の当て方などを研究するようになり、次第に「武器」と呼べるくらい得意なものになっていったといいます。

咲真さんの「友達いない」エピソードやSNSの話、あるいはご飯をこぼすなどのいわゆる抜けたエピソードを聞くたび、ここ一年間でマイディアを知った自分などは信じられない思いに包まれます。
SNSが苦手だったことも結びつきません。
自分は咲真さんのツイートかマイディアを知りました。
今ではSNSにおいて一番影響力のあるメンバーといっていいと思います。

変わったところでいえば性格もだそう。これも驚きです。
小さい頃は授業で当てられるだけで泣いていたという子が、今では大きなステージに物おじせずキメ顔を作っている。
最上級の言葉を安易に使うのもどうかと思うのですが、咲真さんを見ると完全無欠のアイドルだと言いたくなってしまいます。
子供時代に内気だった人が憧れのアイドルになるために上京し、自分を変えたいとオーディションに臨み、アイドルの座を掴んで徐々に輝きを得ていくというストーリーは、今活躍しているアイドルの多くが経てきたかもしれません。
ただ咲真さんは話を聞く限り、その中でも飛びぬけてビフォーアフターの振れ幅が大きいように思います。
いわゆる”人見知りがアイドルをしている”という感じが全くないのです。
本人としてもそれを押しているわけでもないですし、エピソードとしてあるとすれば鳩が親友な事だと思うのですが、これは人見知りや友達が少ないのとはまた別のタイプの感じがします。
しかしちゃんと(?)人見知りで、その一方でステージに立てばほかを寄せ付けないパフォーマンスをしてしまう。
聞かれるエピソードとパフォーマンスを照らし合わせたとき、同一人物なのかと疑ってしまうくらい針が触れているというのが、自分が見た咲真さんに対する印象です。

再来年の話

「一年くらいで辞めると思っていたけど...」という水城梓さんは、身体から炎が見えてくるような東條さん、咲真さんとは対照的にのらりくらりと3年間を乗り越えてきたような調子で振り返っていました。
印象深いのが「5年目、6年目もね...」と3周年のグループにしてはやや先の具体的な数字を口にしていたことです。
活動年数がきわめて短い女性ライブアイドル。

●●歳までとか、●年やったら身を引くと初めから決めている方も少なくないと思うのですが、直近の未来より先のことはぼかされがちです。
「これからも」とか曖昧な言い方になることが多い中で、すぐ辞めるだろうと思っていた水城さんが想像のしにくい先のことを口にした。
5,6周年を迎える時にも確実にここにいるというメッセージなど深い意味はないでしょうが、さらっと言ったとしても少しは期待してしまいます。
もしかしたら、一番しぶとく生き残っているのは飄々としたところがある水城さんなのかもしれません。

夢実あすかさんの体の使い方にはいつ見ても上手いなと感心させられます。
「世界一楽しいライブにしましょう!」と言いかけたところを「宇宙一」と言い直したところは「火星でライブがしたい」と常々言っている夢実さんらしく抜かりがありません。
「僕らの詩」だと思うのですが、上手側の余りあるスペースをスケートリンクのようにターンしながら移動していたのが印象的でした。

新しい聴き方

この日の最大音量は「SAYONARA」のクライマックス。

「ありがとう」最後の声も 愛しくて...なんて言えなかった
僕はもう君を忘れるよ きっと 一生をかけて

6人でのユニゾンが、後にも先にもこれ以上無いような太い音の束となって降り掛かってきました。
6人とも、自分の出せる限界を出さないとこのボリュームにはならなかったはずです。

その直前も印象深かったです。
クライマックスに向かうきっかけとなる落ちサビでは、東條さんから咲真さんへとソロが受け渡されます。
東條さんのソロで、前にいるファンの方が耳に手を当てているのが見えました。
何をしているのか始めはわからなかったのですが、どうやら耳をそばだて、入ってくる音を一つ残らず集めようとしているようでした。
号泣議員のポーズです。
こういう聴き方があったのかと、新たな発見をしました。
中央付近に目をやれば、頭上でオレンジ色のサイリウムをぐるぐる回している人がいます。
楽しみ方に多様性がありました。

初披露となった新曲「Kaleid0scopE」(カレイドスコープ)。
どの曲よりも剛直さが増しているというか、これまで多少なりあった繊細さが影を潜めて鋼になったような印象を受けました。
2番頭だったでしょうか。東條さんが言葉を連ねるパートがあります。
病んだりするところもまた東條さんの個性だと思っていて、日常暗いものを抱えているからこそ荒んだ感じのそのパートと合っていました。

聞き慣れない音はラストの「FLOWER」で聴こえてきました。

「悲しみを越えて 今越えて 君と二人笑える明日へ 繋いでく 世界が待ってる」

オリジナルにはないはずの、高音のハモリが聴こえたのでした。
新しい音を出していたのは葉山かえでさんだったようですが、ライブで始めてかけたとは思えないほどきれいで、ラストのフレーズ「繋いでく」のところも美しくまとまっていました。

CO2ガスが噴射され、火柱が飛び出し、最後には紙テープが舞ってこの日は終了。
ファンの声も加わってこれ以上のものが見られると思うと、中野が非常に楽しみになりました。


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