四角いだけの箱に夢はあるか?

少しずつ仕事も忙しくなってきて、現場にいる時間も長くなってきた。腰の調子が悪く、泣く泣くバスケに行くのを諦めた。ギックリ腰になる直前のピキっという感覚が何回も来た。なんとなくギックリ腰を回避するのが上手くなっているような気がした。ここ最近は油断してコルセットを全くしていなかったし、筋肉痛で思うように筋トレもできていなかった。1日何もしなければ問題はなさそうだった。バスケをしない代わりに何かしようと思い、マイリスト登録をしてあった「鉄の骨」を見ることにした。

これが良かった。とある建設会社の話だが、その入社面接で「うちはかっこいいビルではなく、ただの四角いビルを手がけるのがほとんどだ。四角い箱に夢はあると思うか?」と聞かれた主人公は「ただの四角い箱にも施主の夢はあると思います。」と答えていて、ハッとした。まさにこれである。自分にとっては日常でも、使う人にとっては一生ものかもしれない。こういう人と一緒に仕事がしたい。主人公のように現場を外されてしまったら、自分ならすぐに現場に戻してもらうようにお願いするか、会社をやめるかを考えるてしまうだろう。

週明けは社内試験があり、東京に行くことになっていた。部長が「模擬試験なんだからわざわざ東京に行かなくてもいいんじゃないか」と粘ってくれたらしいが、どうしても集まりたいとのことで、前乗りで試験を受けることになった。また着ているだけで気落ちしてしまいそうな暗い作業着を着なければならない。昼の便で東京に行った。雪がないだけで感動してしまう。それにしても暑い。電車の窓から見える建物は、北海道に比べると個性的な形をしたものが多い。自分ば四角いだけのビルも、それはそれで好きだ。なんてぼーっと外を眺めてたら降りる駅に着いた。方向音痴を如何なく発揮しながらホテルに着くと、16時を過ぎていた。まずはお腹を満たそうと荷物を部屋に置いて食事をすることにした。駅からホテルに行く途中で迷ったおかげで、油そばのお店を見つけたので、そこに入った。ホテルに戻る前に、駅に戻った。駅の構内にはご当地のお弁当が置いてあるお店があるのを前回の出張時に部長に教えてもらったので、次の日の朝に食べるものを買うことにした。何を思ったのか、うに重弁当を買ってしまった。惹かれた。味は大体予想がつくし、なんなら北海道で食べた方が美味しいまであるのに、抑えきれなかった。後悔はしていない。本当ならせっかく東京に来たんだから、みたい建物とかもあったけど、仕事があったのでホテルに戻った。飛行機に乗る前に営業の人が時間に追われて困っていたので、普段助けてもらっているのもあり、書類作成をホテルでやることにしていた。

2時間やっても終わらない。これぐらいで終わると思っていたけど、半分もいってない。お腹が空いた。さっきの油そばでこの日の食事は終わりにしようと、結構量も食べたはずだった。正直なところ、ホテルの目の前に横浜家系ラーメンのお店があったので、お腹が空いたら行こうと考えていた。そのせいかもしれない。「横浜家系」ほど心を鷲掴みされる漢字4文字は探すのが難しい。ウキウキしながらお店に行くと、「今日はやってないんですよ…」と言われ、食べることができなかった。違うお店を探しても良かったのかもしれないが、向かいのお店に行くだけだからと部屋着にアウターを羽織ってホテルから出てきてしまっていた。コンビニで済ませてしまった。ホテルに戻り、結果22時30分ぐらいまでかかった。


ここまで書いて、1ヶ月ほど経ってしまった。忘れてしまったこともあるかもしれないけど、とにかく書いてしまいたいことがあるので、かなり端折ってとりあえず終わらせようと思う。

次の日は朝から試験だったが、試験前は会社のナンバー3に絡まれ勉強ができす。試験は80問中60問以上で合格だったが、1問目から正解がわからず、時間も足りなかった。仕事で使う内容なのに全然わからなかった。せっかく東京に来たし、どこか寄り道をしたかったが、仕事がたくさん残っていたので、落ち込みながら試験終了後早々に北海道に戻った。試験は不合格だと思った。本当に自信がなかった。3週間後ほど経って副支店長のところに試験結果が返ってきた。

「今回の試験結果だけど、非常に…」

あぁ…悪かったんだなぁ。恥ずかしい…。

「良かったよ。50人弱が試験を受けて、合格者が2人。ダメだったところ復習したら、来年まで時間あるし大丈夫だと思うよ」

何かの間違いだ、と言ってしまった。本当に手応えがなかった。少し前にたまたま社長に会った時に、できなさすぎて自信なくしました、なんて言ってしまったばかりだった。勉強もしないで、「全然できなかった〜」とか言って合格点出してる嫌なやつになってしまった。2人しか合格者いないなんて、逆に不安になってしまう。


昇給の時期になり、副支店長と面談があった。

「本社と喧嘩してしまった。手当つくから昇給は無しは違うでしょ?昇給と手当は別にしてもらわないと困るって。顔も見たことなくて一緒に仕事もしたこともない人がA4サイズ1枚の紙だけで簡単に数十分で判断されたくない。またすぐに年齢は?って聞かれるし、本当にもったいない。」

もう少しで役職につける位置にいるにはいるが、定員もあるらしいし、しばらくは昇給がないことは聞かされていたし、以前の面談の時もそれは覚悟しているとは言っていた。昇給しない間も何もしないわけじゃなく、成長することはやめないつもりだった。自分のためにそこまでしてくれるならもっと頑張らなければいけないはずなのに、ここ最近はまるでやる気が出ない。どれだけ頑張ろうが、年齢だけで差が一気になくなってしまう。1年の積み重ねがなかったことにされる気分だ。波打ち際で砂の城を建てようとする人は中々いないんじゃなかろうか。


1ヶ月経過後からまた数ヶ月経ってしまった。時の流れは残酷とはよく言ったものかもしれない。仕事以外のことは思い出せる範囲でまとめて書くとして、仕事関係をまとめて今度こそ、今度こそ終わらせる。

今年入ってからは、モチベーションを探す日々だ。モチベーションを見つけたと思ったら、すぐに失くしてしまう。わかったのは、会社の外ではモチベーションを見つけることができるが、会社に戻るとやる気とともに失してしまっていることだ。

去年終わった大型物件に関する特集がある、とある書籍に広告を出さないかと出版社から連絡があったらしく、支店長が応募したらしい。写真選びと200字程度の文章を考えるのを丸投げされた。苦労した点やお気に入りの場所、熱意などを200字にまとめるというものだった。支店長が書けるわけねぇよな。苦労した点で言えば200字なんて少なすぎるぐらいで苦労はしないが、携わってくれた人の感謝も示しながら、すごい部分をアピールしなければならないとなると難しく、なんだかんだ10日間ぐらい悩みながら文章を完成させた。「ここをこう替えたら媚びを売れるんじゃない?」と言われたが、仕事中は酷い扱いだったし、媚びを売るの好きじゃないと言ったら笑われた。文章はほぼ直さずに掲載されそうだ。

この文章を考えながら、やる気は入社後1番なくなっていた。今年に入ってようやく2年弱かけて終わらせた仕事の成果物が誰にも見える形になって、それについて話せるようにもなった。それを話した時にうまく伝わってないなと思う時もあるけど、それは専門性が高いものだから仕方のない部分がある。諦めてはいるがやはり寂しさは感じてしまう。せめて会社の中だけは違ってくれよ。できて当たり前じゃなかったはずだし、誰がやっても結局は終わるものだとしても、過程は違ったはず。会社は利益さえ上げられれば、やるのは誰でもいい。それを強く感じてしまった。給料は年功序列だけど、仕事内容はそうじゃない。気がついた人がやる。途端に気づかなくなる人が増える。部内の他の人の仕事を頼まれてやったところで、自分の仕事が減るわけでもなく、どこかで休ませてくれるわけでもない。自分が死ぬほど座りたいイスに平然と座って、自分から見れば何もしていない人もいる。自分だったらもっとやりたいこともあって、もっともっと動くのに。自分ができると思ってやったら、出しゃばるなと言われる。これでやる気出るやつ見てみてぇよ。

あぁ〜クソすぎるぅ〜、やる気しねぇ〜、全部くだらねぇ〜なんて会社の外で仕事をしていると、職人さんから「これどうにかなんねぇのか?」とか、「あいつだらしねぇからなんとかしてくれ」など、愚痴のようなものが集まってくる。わかるよ。本当に周りは、だらしない。そうならないように色々動いてはいるけど、やっぱり周りきれない。直接本人に言ってもどうしようもないのだ。わざわざそれを自分に言うということは、自分が動けば少しでも良くなる可能性がある、自分に少し期待しているということだと思っている。そういう時は、職人達は不安よな。オリオン 動きます。って出しゃばるなとか言われても全然気にしないで動ける。中には1平社員ではすぐにはどうしようもないこともあるけど、それは職人さんも理解はしてくれていて、少しずついい方向に向かえるように努力はしているつもりだ。どうせ自分のところにお金が来ないなら、職人さんに使ったほうがいい。「偉くしてやれるように会社に言ってやるから、腹立つアイツの車のタイヤのナット緩めてこいよ。」と言われるけど、会社の外に迷惑がかかるのはやめてくれな…。

これで会社に戻って、自分の仕事をしようとするとやる気がしなくなる。考える時間もないぐらい忙しく仕事してやりたいのに、忙しくできない。やる気出ないだけのことで半年以上ウダウダ悩んでるのも嫌になってくる。文句言ってる暇あるなら何か行動しろよと思っても、これ以上何をしたらいいのかわからない自分も嫌になってくる。なんとなく見返りを求め始めてるような気がするのも嫌だし、やる気が出ないのが周りのせいにしてるみたいなのも嫌だ。

それでも辞める選択をしないのは、どこかもったいない気がするからだ。仕事自体は面白いことやっていると思う。それに、社長には少し評価をしてもらっていると勝手に思っている。最近こそ少しずつ会う機会が増えているが、割と自分のことを見ているような気がする。会った時は何かと気にかけてくれている。自分が媚を売って社内政治を全うしている人を見ると「キッショ!!」と悪寒がすることまで見透かされているような気さえしてくる。何かと自分をアピールする場まで作ってくれる。東京本社の会社の社長が、日本の端っこの支店の1社員なんて…と思っていたけど、そうではなさそうだ。



人生は美しい。とは正直言えない。美しいものは確かにあるんだけど、くだらないものの中に埋もれていて、それを今は見逃してしまっている気がしてならない。口に出すのはとても恥ずかしいけど、曲がりなりにも自分の中にあるロックンロールが死にかけている。それと仕事とは切り離すべきと思う人もいるかもしれないけど、自分はそれは違うような気がしている。ちゃんと自分で納得して仕事をしたい。「こんなもんか」と諦めてしまったら、小さい頃に将来の夢を聞かれた時にこれだけはなりたくないと思った、目の死んだサラリーマンになってしまうような気がしている。今はそれと大差ないのかもしれないけど。とにかくなんとかして、現状を打破したいだけ。

人間はどうせ幸せになるらしいよ。




















知らんけど。

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