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内水面制度改革の各議論ポイント:漁協の新規立ち上げ要件の緩和(案)

前回の記事では、目標増殖量の見直し、という提案を書きました。
ちょうどこの2023年2月に、北海道大学の研究成果で、放流しても魚が増えない~放流は河川の魚類群集に長期的な悪影響をもたらすことを解明~(地球環境科学研究院 助教 先崎理之) という結果を全道の保護水面河川における過去21年の魚類群集データによる実証分析より明らかにしました。
増殖目標=積極的増殖での対応=大部分が継代養殖漁の河川環境キャパを超えた放流、が結果全体の生物個体群を減らす悪影響をもたらすことを解明しました。
比較的ホットな話題になってきており、目標増殖量はここ数年で結構様変わりする可能性はあるかと思います。ただ、これは都道府県が共同漁業権認可を持っている=都道府県に大きな裁量権ある、という水協法、漁業法の関係と、都道府県が結構内水面やる気ないところが多い。。(これも別途言及したいですが、これも行政制度問題に起因していると思います。後、海あり県
と海なし県の水産関連部署の関連人員数も)。

内水面漁協の新規立ち上げ要件の緩和(案)の前提

さて、今回の提案は、「漁協の新規立ち上げ要件の緩和」です。
ただし、前提として「内水面の制度問題とは??」で書いたように、漁協制度自体の問題もはらんでいるため、「内水面制度改革の基本骨子(案)」での提案のように、内水面漁協に「遊漁料徴収」と「増殖義務」、それに伴う「監視負担」を軽減出来る様な対応(主に今の枠組みでは民間への委託)が当たり前のように出来ることが前提です。

内水面漁協の新規立ち上げする場合の課題点

実際、弊社団でもつりチケ作った次の年ぐらいに、愛知県に漁協をつくろう、という動きをして、愛知県庁、水産庁両方行きましたが、結構けんもほろろでした(ここでは行政職員を憎んでいるとかそういう話ではないためあしからず。罪を憎んで人を憎まず)

前例がない、対象地域在住者(水協法で決められている内水面漁協の成立要件の一つ)、20 名以上の組合員必須(同上)、等条件で断られています。

実際、2000年以降で内水面漁協が新規に認められたのは支笏湖漁業協同組合の一つのみ(ヒメマス)。

最近も、2,3件漁協を作りたいという相談を受けていますが、上記のような課題があること、内水面漁協全体の問題があること、等も伝えてはいます。

ただ、実際の要件としては前例のことを置いておけば、地域で本当にやりたいという話であれば決して作ること自体は難しい条件ではないです。

提言

A)より地域住民による管理に軸足を置く形での組合員定義の変更
B)漁協が成り立つ制度・仕組みに変更されると、自然に申請増加が想定される

A)は、例えば組合員の定義に
「水産動植物の採捕、養殖又は増殖をする日数が年間 30日以上」というものがありますが、以前弊社団で内水面漁協宛にとったアンケート(全国39漁協が回答。全国まんべんなく散らばっています。このアンケート結果もまた今後の記事で。)において、30日以上採捕、養殖又は増殖している人の数は、多いのが20~30%、という結果でした。(未回答が多いので、きっとこれは答えてはいけないやつ、と空気を読まれたのかと笑)

内水面漁協の組合員資格に該当している人の割合実態

実態は上記の通りです。ただ、上記を行政が認める=漁業権の付与、のロジック自体が成り立たなくなるので見てみないふりしているわけです。

でも、そういう実態に合わせた施策を出来ないから、漁協がどんどんなくなっていくわけで。
内水面においては、海面と違ってほとんど専業漁業者がいなくなっているため、30日でもなかなかの量なわけです。(4~8月ぐらいに毎月6回ぐらいのペースで採捕、養殖又は増殖に行かないといけない。土日大部分潰れるとなると、定年後の人しか組合員なれないですよね。。)

政府としてやってほしいことは、優先的に魚を獲る権利を与えるから、地域住民に適切に管理してもらって常に魚がいる状態にしてほしい、というのが本筋だと思っています。
そうであれば、地域での生業になりえる観光産業(宿泊、飲食、レジャー)も組合員定義に含まれるような仕組みにすれば、地域の川の面倒を見てくれるインセンティブがある人をより多く巻き込めると考えます。

ただ、現状はあくまで「漁業法」で漁業のためで、レジャーのためは概念に含まれていないので、組合員、という中には観光産業の方は入らないわけで。。
法律は人のため、社会のためのはずなのに、作った制度で苦しめられるのはおかしな話ですね。(この辺り、日本の法や制度に対しての接し方自体に間違えがある、文化的問題があるとも感じていますが、それはまた別途)

B)は、「内水面制度改革の基本骨子(案)」 のような話が進むと、少々めんどくさくても積極的に漁協の権限を使って地域活性させたい、という人が出てくるはずなので、そういった制度・運用に変えること自体が内水面漁協の新設に貢献すると思っています。

抜本的な変革がなく今の制度で進んだ場合のワーストシナリオは、
内水面漁協でかなりうまく運用している一部の漁協(都道府県毎に2,3あるかどうか)だけが残り、それ以外は漁協管轄が無くなる
 =資源管理主体がいなくなる(都道府県が現場管理まで出来る人員・予算をつけることは今の日本でありえない)
  =釣られ放題・工事し放題で極限までその河川の魚がいなくなる(外来魚持込等も多発するかも)
   =ほとんどの川で釣り自体もほとんどキャパのない川になる
だと思っています。
(上記よりは、すべての漁協が無くなる方が、まだ制度再構築できるのでマシだと思いますが、個別の漁協を見るとすごい人もいるわけで。。)

ということで、内水面漁協で新規立ち上げ要件緩和案を考えました。

次回は自然河川での管理釣り場の話でも。


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