続いてくのさデイズ

80年代後半、高校生の頃に雑誌Oliveを愛読していた一人として忘れられないモデルさんがいます。松本りさ(リサ表記のときも)さん。スッと弧を描く眉毛、涼しげな目元。飄々と媚びない中性的な雰囲気が私にはとてもクールに見えて、自分とほぼ同世代の彼女の出た誌面は関心をもってよく見ていました。

それから何年も何年も経って、杉村ルイさんのInstagramに見覚えのあるお顔が。どうやら松本さんです。お見舞いとあったので気になり、やがてお連れ合いの方のアカウントに行きつきました。現在もパーカッショニストとしてご活躍中の及川浩志さん。ご自身のお仕事のほか、数年前に半身まひとなった松本さんの車椅子を押しては様々な場所にお出かけしたり、いろんな方々と笑顔で過ごすお写真がアップされていて、時折松本さんのモデル時代の写真も載せてあったり、深い愛情が伝わってきます。

もちろん私はおふたりにまったく面識はありませんが、実は何度も繰り返しおふたりの姿を拝見していたことを知りました。あの大ヒット曲『ラブリー』のプロモーションビデオで小沢さんの両脇にいらっしゃる、向かって右側でハンドクラッピングされているのが松本りささん、左側でパーカッションを担当されているのが及川浩志さんなのですね。及川さんはその後も小沢健二さんのバックを務めておられてステージで紹介もされているので、小沢健二さんのファンにはご存知の方も多いでしょう。

私は全く熱心な小沢ファンではありませんが、アルバム『LIFE』が発売されて聴いたときに、圧倒的な祝祭感には衝撃を受けました。特に「東京恋愛専科・または恋は言ってみりゃボディー・ブロー」。私は一人寂しく、帰郷した宮古島でそれを聴いていたのですが、あのイントロの、なんともいえない楽しげなコーラスに気分が高揚したのを憶えています。

松本さんと及川さんのお写真を見ていると、"それでいつか僕と君が 齢を取ってからもたまにゃ2人でお出かけしたいよ 「行きましょ」なんつって腕を組んで"という歌詞を思い出します。それから80年代からとても印象的だった、チャーミーグリーンの洗剤のCMシリーズも頭に浮かんだり(余談ですがチャーミーグリーンは2023年に生産終了を迎えたそうです)。


あのCMが盛んに流れていた頃は、いつか伴侶を得て、こんなふうに歳を重ねても仲良くありたいなと思ったものですが、五十路も半ばに差し掛かろうとする今、そうして過ごせることはなかなかに難しいことも知りました。もしも自分が倒れたとき、大切な人に何か起こったとき、お互いにこうして愛情を持って寄り添っていられるだろうか、考えます。

画面の向こうで、ご友人達に囲まれて自然な笑顔で微笑む松本さんと及川さんのお写真を見ると、なんだか私も幸せになります。素敵な時代をともに過ごされた仲間同士の絆をも感じます。

今年は年初から大きな災害が起こり、貴重な生命が失われ、今なお苦しい思いで生活を立て直すために努力されている方々が大勢いらっしゃいます。
人生に様々な予測もつかないことが起こり、打ちのめされてもそれぞれに日々は"続いてく"。想像することしかできないし、いろんなことを見えていない自分が、もどかしいです。

それでも私も、"いつか悲しみで胸がいっぱいでも"、それを受け入れ歩いてゆく強さを持ちたい、自分なりに闘っていたい、支え合ってゆきたいなと。
できることを、少しずつ。

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