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【イベントレポート】DQ活用ウェビナー~札幌市立中央小学校のデジタルシティズンシップ教育と「1人1台端末活用モデル研究校」としての取り組み~


3月8日付の紙面とウェブ記事で本イベントが教育家庭新聞様にてピックアップされました。
詳しくはこちらから➤ https://www.kknews.co.jp/post_ict/20220307_7b

2月23日(水)、株式会社サイバーフェリックスと一般社団法人 共生と共育ネットワークは、ウェビナー~札幌市立中央小学校のデジタルシティズンシップ教育をご紹介~を共催した。

今回のウェビナーでは、前半にサイバーフェリックスの村上氏が、DQ(デジタルインテリジェンス)とデジタルシティズンシップの育成に特化したオンライン学習ツール DQ Worldについて紹介し、後半に札幌市立中央小学校の中里彰吾教諭が、DQ Worldを用いた学習事例と効果、そして札幌市教育委員会が定める「1人1台端末活用モデル研究校」としてのICT推進の取り組むについて紹介した。

「その禁止、本当に子どものためになっていますか?」


冒頭、村上氏は、文部科学省が提示する「GIGAスクール構想 本校運用時チェックリスト」を用いて、簡単に端末を制限するのではなく、1人1台端末を積極的に活用する中で解決を図る事が大事と説明。

どの学校でも起こりうる懸念事項を例として禁止するだけでは、表面的な懸念が消えただけで、家庭などプライベートなネット環境でトラブルが起こる。家庭と学校でのシームレスな学びが推進される今、私的なインターネットの使用によるトラブルも見逃せない問題になっている。

村上氏は、「こうした環境の変化に対応するためには、ただ使わせるだけではなく、起きたトラブルを児童生徒の主体性を発揮しながら解決する経験を積ませるしかないのではないか」と話す。それが、ICT活用を前提として子どもたちが主体となり適切に使うための方法を自ら考える力を養うことを目的としたデジタルシティズンシップという新しい考え方であり、教育手法であるという。

実証導入で効果、日本全国に広がる新しい情報教育のソリューション

インターネットの使用が日常的になる小学校高学年~中学校児童のデジタルシティズンシップ育成に特化したオンライン教材DQ Worldは、2022年・21年と2年連続で経済産業省のEdTech導入補助金事業のEdTechツールとして採択され、これまで5万人以上の児童生徒、250校以上がデジタルシティズンシップ学習に取り組んでいる。

EdTech導入補助金2021の成果について、DQ Worldの導入校を対象としたアンケートでは、97.5 パーセントの教員が、デジタルシティズンシップ教育を実施するにあたって、主に「カリキュラムがないことによる、継続学習の難しさ」「専門性のある授業への不安」「学習効果の計測の難しさ」といった課題・不安があると回答した一方、学習後には 70 %以上の教員が、授業準備の負担軽減や子どもたちの好奇心に基づく継続学習の実現などを効果について回答していたと、村上氏は報告。さらに、児童生徒の 6割以上が適切なICT活用ができるようになったと言及し、DQ Worldによる学習前後で、トラブル件数が半減された結果が出ているという。(3か月取り組んだ時点での結果)

最後に、DQ Worldの画面共有によるゲーミフィケーションの要素やスコアが算出されるダッシュボードなどの紹介に加え、家庭学習で利用できるワークブックや個人レポート、スクールレポート、指導書、さらにWebサイトで公開されているDQ World導入学校で実際に実践された指導案など教材ツールの詳細について紹介があり、前半の幕が閉じた。

家庭との連携を核としたICT推進

後半では、ゲストである札幌市立中央小学校の中里先生が登壇した。中央小学校は、2020年から札幌市のモデル研究校の指定を受けて以来、『ICTを活用とした「学ぶ力」の育成』について研究を続けている。その研究テーマの一つとして「家庭との連携」があり、中央小学校ではデジタルシティズンシップ教育の実践を通じて、連携の強化を試みている。

札幌市では、令和3年度4月から、GIGAスクール端末の持ち帰り計画を進めており、家庭で端末を使う上での課題の整理や保護者への啓発に力を入れたという。また、保護者のICTリテラシーの格差が大きいということもあり、保護者に関心を持ってもらうための工夫に注力した。

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中里先生によれば、夏休みに持ち帰りが出来るよう、1学期に3回の持ち帰り、そして夏休みに長期の持ち帰りと段階を踏んだそうだ。保護者からのアンケートでは「思ったより子どもが操作出来ていて驚いた」など好意的な意見も多くあったという。家庭との結びつきについては、元々札幌市で推進していた「まほうのかいわ」という標語使って進めていき、家庭での会話を増やしていった。

また、重い端末を持って帰ることに意味があるのかという意見が多く、持ち帰りにおいて課題となった際には、今までの学校文化の見直しをし、禁止していた置き勉を推奨したりと課題解決に向けて取り組んでいった。

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ICTを活用した「学ぶ力」の育成

次に、札幌市立中央小学校でのICTを活用した授業デザインについて紹介があった。従来型の授業を否定するのではなく、ルーブリックなど個別最適な学び・協同的な学びの実現に必要なものを選出して柔軟に取り入れるなど、発展的・提案性のある授業を作っていこうとしたという中里先生。


札幌市が公開している「課題探求的な学習の展開」のセルフチェックシートも使い、ICT活用場面と連携できるか、日常授業をどう改善していくか、各先生と話しながら進めていった結果、積極的に発言することが苦手な児童が画面上で意見を共有することで発言がしやすくなったり、他者から認められる機会になったりするなどの効果があった。


また、6年生の社会ではデジタル教科書を用いて風刺画を読み解く学習を行った。端末上での共同作業を多く取り入れるなど、導入・展開・終末のタイミングで授業に有効に使えるのではないかと検証していった。具体的には、授業支援ツールを使って児童に自由に記述・共有させ、すこから課題を抽出したり、授業の最後に出てきた人物について調べたり、単元終了時に児童にアンケートを配信したりした。

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結果を見た中里先生は、「理解を深める事が出来なかったと答えた児童は、タイピングが遅くゆっくり考える時間がなかったなど、操作に戸惑ってしまっていたため、日常的に使って慣れさせていく事が必要だと感じた」という。一方、手軽に書き足したり、消したりすることができるなどというICTの利便性をよく理解した回答の仕方ができた児童もおり、リテラシーの高まりを感じたという。このように、実践の中でICTの利便性や特性を活かして、児童のリテラシーの把握と改善のサイクルを繰り返す方法で活用を定着させてきた。

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社会に生きる一市民として学ぶデジタルシティズンシップ

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デジタルシティズンシップ教育の導入にあたっては、保護者向けにオンライン講演会を実施し、当日参加できなかった保護者も後日視聴できるようオンデマンド視聴用のURLを全家庭に配布した。


中里先生は、今までの情報モラル教育のように「個として」ではなく、デジタルシティズンシップ教育が重要視する「社会に生きる一市民としてみんながよくあるためにというwell-beingの考え方に変えていきたいと思い、カリキュラムを作成したという。


6月に作成したカリキュラムは、札幌市で採択している情報モラル教材と道徳の情報コラムをリンクさせながら、DQ Worldのゾーンを取り入れて作成。3月と4月に実施するCBTとDQ Worldのスコアを活用し、1年間での成果の確認と今後のスキルアップしていきたいと話していた。

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中央小学校では、4・5・6年生でDQ Worldに取り組んでおり、家庭で課題を取り組んだ後に作文を提出させた。中里先生は、「4年生でもよく理解し文章を書けているのは、真剣に向き合っているからこそだと思う。学びにつながっていることを実感している」と話していた。また、担任の6年生で学んだフィッシング詐欺について児童がDQ Worldで実際に学んでいる映像を流し、双方向に学習できるゲーミフィケーションの良さについても触れていた。

また、プライバシーの扱いについて実際に行った授業の内容にも触れ、想定していたより多くの児童がSNSをやっていたり、顔出しをしていたりと実際の使用状況が垣間見えて驚いたこともあったと振り返った。授業の展開では、デジタルだけではなく、オフラインにおいて「ひそひそ話や子どもたちが好きな手紙まわしは、プライバシー侵害してない?」と問いかけると子どもたちは、はっとした表情をしていたことを振り返り、インターネット上だけの話ではなく、生活指導・学級指導の機会にもつながったと報告した。

授業の指導案はこちらから


「情報の消費から生産的活動へ」

DQ Worldでの学習後に実施したアンケートによると、自分のインターネットの使い方について保護者と会話する機会が増えたと答えた児童が、全体の23%いたという結果が分かった。DQ Worldでの学習前後では、会話の中に出てくる単語にも変化があり、実施前は、お父さん・お母さん・許可といった他律的な言葉が多かったが、実施後は、パスワード・注意深い・セキュリティーといったワードが増え、自律的なインターネットの活用に向かっているのではないか、と中里先生は分析する。

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また、インターネットの使い方の側面において、学習前のアンケートでは、YouTube・オンラインゲーム等の言葉が目立ち「情報の消費的活動」に関するワードが多いが、学習後のアンケートでは、調べ物・学ぶ・考える等「生産的活動」に関するワードが増えていることが分かった。学習を続けてきた成果が見えてきているようであるが、中里先生は、ここで終わりではなく、学習を続けていくことが重要であると強調した。

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最後に、中央小学校でのICT教育の実践例が掲載されている札幌市立中央小学校のウェブサイトが紹介された。質疑応答では中里先生に対する質問が多く挙がり、盛況の中ウェビナーは終了した。

【いますぐ取り組める無料のサービスをご紹介】

・DQ実証実験プログラム2022
学習効果の実証などにご協力頂くと、本年度中、児童生徒用のDQ Worldアカウントを必要なアカウント数分無料でご利用頂けます。
詳しくはこちらから➤https://note.com/cyberfelix/n/n25eefa3a2ecb
・デジタルシティズンシップ簡易診断テスト
DQ Worldの開発元であるシンガポールの研究機関から公開された最新の簡易診断テストです。3ステップで簡単に全世代の方のデジタルシティズンシップを診断することができます。
詳しくはこちらから➤https://note.com/cyberfelix/n/n5d6343b10b17





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