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久米宏 ラジオなんですけど「統計不正問題」ゲスト:明石順平さん 【書き起こし】

『久米宏 ラジオなんですけど』(2019年2月9日)13時台のゲストに弁護士で『アベノミクスによろしく』の著者、明石順平さんが出演された回の<前半部分文字起こし>です。

久米宏さん(以下、久米):あの、『アベノミクスによろしく』という大ベストセラーがあって、それの話もお伺いしたんですが、今回また新しく本をお書きになって。『データが語る日本財政の未来』。これ色々あの私も拝読したんですが、細かいデータが載っておりますが、これまだあの毎月勤労調査みたいなああいうちょっとあの手違いがあったようなデータは中に含まれてはいないんですか。
明石順平さん(以下、明石):ええとですね、今回、賃金がそのいい加減な調査をしていたのが分かりましたけど、その本を出した後にそれが出て来た、まあちょっと直前ぐらいですね。刷っちゃうような段階で出たんで、だからどうしても不正確なデータって、どうしても入っちゃって、そこには。
久米:ただ『データが語る日本財政の未来』というこのご本は、データがちょっとミスがある可能性があったりすると本自体の立脚点がちょっと怪しくなるという非常に困る事態ですよね。
明石:ええ、地面が割れていくみたいな感じですね。
久米:何でああいうことになったんだとデータを読む方のご専門の方からはお思いになりますか。
明石:いろんな理由があっていろんな推測が、まあ毎勤の調査について言われていますけど、雇用保険の給付を削りたかったんじゃないかとか、人員不足が原因じゃないかとか色々言われてますけど、まあちょっとそこはまだ確定していないんで分かんないですね。ただ何らかの理由があってああいうことをしたんでしょうねと。
久米:あの、実収入にしてもその、データを半分入れ替えたりみたいなことありましたよね。あれ半分入れ替えたってことは発表してるんですけど、入れ替える前のデータは実は取ってあるのにそれは発表しないとか、ああいうのは恣意的にやっていいものなんですか。
明石:そこなんですけど、今回3分の1しか調査してなかったっていうのがクローズアップされてるんですけど、それとはまた全然別次元の話があって、それで私何回も国会に呼ばれてるんですけど、2018年1月から元々、賃金の算出方法が変更されてたんですね、毎月勤労統計調査の。で、
 サンプルを半分入れ替える。これがひとつ。
 で、もうひとつがベンチマークって言って、これ係数みたいなものだと思って下さい、賃金を算出する際の。このベンチマークを高く出るやつに変えたんですね。
 3つめが問題になってるあれですよ。3分の1しか抽出してなかったんで、それを3倍して復元する操作がされていたと。
 この3つで賃金が思いっきりかさ上げされていた、ていうのがここが一番の問題なんですね。
 まあ例えてみると、サンプル半分入れ替えっていうのは「ちょっと背の高い別人に代わってもらって」、ベンチマーク更新ていうのは「シークレットブーツを履かせて」、復元操作ってのは「頭にシリコンを入れる」、みたいな。そんな感じなんですよ。このトリプルコンボで高くして、賃金21年5か月振りの伸びとかって去年やってたんですね。これ、すんごい嘘っぱちの報道なんですよ。
 で、2018年1月から補正をしてたってことだけはバレちゃったんで。要は「頭にシリコン」だけはバレちゃったんで、そこは修正したんですけど、「ちょっと背の高い別人に、シークレットブーツを履かせて、それをそのまま去年と比較させている」というところは、実は同じなんですね。それをずっと公表してるんですよ。そういう問題があるんですよ。だから公表値だと2018年の賃金伸び率1.4%と公表されたんですけど、これ私に言わせれば嘘っぱちなんですね。ちょっと背の高い別人がシークレットブーツを履いて去年の人と比較して伸びたって言ってるのは同じですから。だから私はそれ嘘なんだからもう公表するの止めなさいと思ってるんですけど、意地になって公表してますね。
久米:あれ経済成長率とか何か、いじって数字が変わっちゃうものを出されるとあちこちで困りますよね。
明石:困るでしょうね。めちゃめちゃ困ると思いますね。だから我々分析する方としては本当困るんですよ。ただそこは厚労省もちょっと配慮しててサンプル入れ替え前後で共通する事業所っていうのもありますから、共通する事業所どうしを比較した参考値っていうのを公表してるんですね。それを見るとそれは実態に近いんです。総務省の統計委員会もそっちを見なさいって言ってるんですね。
 で問題があって、名目賃金の伸び率しか何故か公表してないんです。実質賃金は公表しないんです。なぜかというとマイナスになっちゃうから。
久米:それって話を聞いてるとつまりは「順調に経済成長はしている。実質も名目も賃金は増えている」という風にしたいからだとしか思えないんですけど。
明石:おっしゃる通りです。
久米:おっしゃる通りだと困るんですけど(笑)、これそういう風に数字上をいじっちゃうと昔のあてになんない中国の数字みたいなもんで、それ共産党が勝手な数字書いてるだけじゃないかっていう風なことと同じじゃないですか。
明石:まったく同レベルですね。
久米:それやってる国は日本以外にもあるんですか。
明石:中国はやってるかもしれませんけど(笑)
久米:例えば中国とか北朝鮮とかそういうのは別にして、あのいわゆるOECDに入ってる国ではやってるんですか。
明石:まともな民主主義国家だったらやってないとは思いますけど。
久米:なぜ日本はそれやっちゃうんですか。
明石:上手く行ってないから、ですね。
久米:上手く行ってないから。経済が上手く行ってないから上手く行ってるように見せるためには数字を。それって最悪ですよね。
明石:最悪ですね。全然賃金伸びないんですね。で、他方で物価だけ上がっちゃってるんです。これは消費税増税した上に円安をかぶせたから、ですね。円安でも物価は上がっちゃいますから。それを同時にやっちゃったんで、こうガーンと物価だけ上がって、で賃金の伸びを大きく上回りますから、物価を割り引いた実質賃金で見るとボーンと下がると。だから我々生活苦しくなっただけということですね。

(1分ほど中略)

明石:結局、公表値は今もずっと公表しっぱなしなんですけど。私に言わせれば嘘なんですけど。参考値の方は都合が悪いから頑なに出さないわけですね。あれ簡単に出せるんですよ、あんなもの。もう出てますけど。参考値の方で言うと実質賃金マイナス0.4%ですから、下がってるんです。
久米:それ、国会でそれをお話になっても駄目なんですか。
明石:野党が言ってますよ、出せ出せって。で、出せるかどうか検討中ですとか何とか政府の方は答弁するんですけど、別に簡単に引き算でも簡易的に出せますからね、あれ。
久米:根本的に間違ってるって名前の大臣がいますけど(笑)。根本(こんぽん)て名前の人なんですけど、あの人はやっぱり正直なこと言えないんだ。
明石:言えない、でしょうね、それはまあ一番てっぺんにいる人も交えて相談した上でああいう答弁にしようって言ってるんでしょうから。
久米:それは例えば誰かちゃんと、最高裁の人がっていうわけにはいかないけど、例えば日銀のトップが「まずいよ統計いじっちゃ」とかいう話は出来ないもんなんですかねえ。
明石:出来ないでしょうねえ。まあ今、総理大臣強いですからねえ。みんな怖いでしょうから言えないんじゃないですか、そこは。
久米:いずれ時が来たら全部正直に出すということですかそこは。
明石:そうですね、ていうか出ちゃってるんですけどね(笑)。計算すれば出てるのに、だから結局きのうの報道で見ても公表値の方を報道してましたけど、しかし参考値の実質賃金は出されていないとか各社報道してくれましたから隠せてないんですよね(笑)
久米:シークレットブーツ履いてたら見えちゃったんですよね。
明石:ええそうですね、公表値の方は。ああ、ただ何かみんな混同してますよね、その3分の1しか抽出してなかった問題とごっちゃになっちゃってると。だから政権を擁護する側は「いや3分の1しか調査してなかったのは、それは2004年からの問題なんだから民主党政権だって責任あるじゃないか」みたいな話をずらしてくるんですけど、全然違いますからね、それは。2018年1月からサンプルが半分入れ替わってるというのと、ベンチマークが高く出るのに更新されてるというのは、これ民主党政権は全然関係ないですから。そこで賃金をかさ上げしてごまかしているというのが一番の問題ですから。そこから目をそらしちゃいけないですよね。

久米:あの、日本人のメンタリティってかなり昔からあったんですけど、政治がかなり混乱している時は政治が駄目でも役人がしっかりしていればこの国は大丈夫だっていうような、ほぼ伝説みたいなものがあったんですけど、役所が統計を勝手にこう操作しちゃうってことになると国の運営の根幹にかかわる問題ですよね。
明石:そうですね。ただ官僚が勝手にやったとは思ってなくて。だってそんなリスク背負う意味がないですから、独断でやって。おまえ何やってるんだって後で責任追及されるだけですから。まあ政治主導でやってますよね。ていうか2018年1月から算出方法変えて、しかもそれさかのぼって改定しないっていうのはこれは明らかに官僚の判断ではなくて、もっと上からですね、政治主導ですね。今言われてるのは平成27年10月16日の経済財政諮問会議の麻生発言というのが発端じゃないかと。つまり今まではデータに変な段差が出来るんでさかのぼって改定してたんですね、ちゃんと賃金を。だから変な差が出ないようにしてたんです。ところが今までだとさかのぼって改定しちゃうと賃金伸び率が下がってたんですね。下がるのは分かりにくいだろとか何とかケチをつけられて、それで遡及改定しないってことになっちゃったんです。2018年1月から。
久米:あの財務大臣てけっこう言うこと聞く人いるんだ。
明石:ただ麻生さんが独断でそんなこと思いつくわけないんで、
久米:麻生さんじゃとても(笑)
明石:財務官僚がまあ裏で糸を引いたのかなっていう感じですね。だって財務省にしてみたら賃金がずっと下がってたらいつまでたっても消費税増税できないですから、彼らにとってみれば都合が悪いですよね。財務省は消費税増税したいんですから。

 (書き起こしここまで)


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TBSラジオ 久米宏 ラジオなんですけど
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『データが語る日本財政の未来 』明石順平 著
http://i-shinsho.shueisha-int.co.jp/kikan/033/

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