あの頃の自分にこそ必要だった

半年以上前、自転車に轢かれた。

轢かれたと言っても「自宅の近所で、小学生が乗っている子ども用自転車が横から激突してきた」というだけの話である。死角から突然自転車が現れたと思ったら次の瞬間、私はアスファルトに手をついていて、片膝から流血していた。肩から掛けていた鞄は何故か前方に落ちていた。

激突してきた小学生は無事だった。「なんかよく分からんがぶつかられた」と思いつつ、スカートの裾を血だらけにしながら猛然と帰宅し、膝の部分が破れたストッキングを見ると、足の甲の部分にタイヤ痕がくっきりと付いていた。そこでなるほどぶつかられたし足の甲を轢かれたのか、と自覚した。事故じゃん、と思った。しかし幸い膝を擦り剥いただけの軽傷で済んだので良かった。子どもの頃にこういう傷を負ったときよりも痛くなかった。強くなったのか、鈍感になったのか、どちらなのだろうか。

ただもし当たった場所が違ったら、とか、ぶつかられた勢いですぐ側の固いポールに体を打ち付けていたら、或いは相手が大人だったら、とか考えると恐ろしいところではある。自転車ユーザーは気を付けてねほんとに。貴方は常に加害者になる無限の可能性を秘めているから。

それはともかく、膝を治療しなければならないので、キズパワーパッドという絆創膏を貼ることになった。前回擦り剥くケガをして絆創膏を貼って治したのが恐らく10年以上前。当時には無かったか、普及していなかった代物である。だから私はキズパワーパッドの使い方を知らなかった。普通の絆創膏だったら傷を洗って消毒した後に貼る。しかしキズパワーパッドは洗って消毒せずに貼る。そして2、3日貼りっぱなしにして、貼り替える。これを続けていくと、傷跡がほとんど残らず綺麗に治る。

何が凄いって、擦り傷を治す過程での嫌なこと「消毒が痛い」「絆創膏の隙間から水が入ると痛い」「傷跡が残る」を経験しないで良いことである。幼少期から小学校にかけて、バランス感覚がアレだったのか鈍臭かったのか、それはそれはよく転んで流血した。ただでさえ痛いのに消毒液が沁みてもっと痛いし、絆創膏を貼って入浴したらどれだけ絆創膏が「防水!」と謳っていようが水ときたらあいつらお構いなしに流れ込んで来るので痛いしおまけに傷口付近はグッチャグチャ、そして治癒したとて今現在もその頃の傷が膝に残っており、何とも汚いことになっている。

しかしキズパワーパッドなら、これらの辛いことを1つも味わわずに済む。「完全防水」とパッケージに書いてあるが、これが本当に防水してくれる。今まで何度「防水防水って言うけど何だこのザマは」と思ったことだろうか。遂に有言実行してくれるものが現れた。おまけに傷跡。治った直後は微妙に皮膚の色が周りと違っていたが、すぐに目立たなくなった。今はもう、本当にじっくり見ない限りどこが傷跡か分からない。もっと前の古傷の方が圧倒的に目立つくらいだ。キズパワーパッド、救世主なのではないか。

何だかジョンソン・エンド・ジョンソンの回し者のようになってきたが、絆創膏の実体験が随分前で止まっていて長らくアップデートされていなかったので、余計感動したのだった。キズパワーパッドのある時代に生まれ、幼少期を過ごしたかった。あのときの痛みと流した涙は何だったのか。現代ならしなくて良い苦労だった。

幼い頃の自分が必要としていたものは間違いなくキズパワーパッドだった。キズパワーパッドと東京ミュウミュウさえあれば他に何も要らなかったのだ、と未だ消えない古傷の痕と綺麗になった半年前の痕を見比べながら、今になって思う。

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山岸苑加

長谷川

喋るほどでもない

コメント2件

いつかこういうのが出るのでは?と思ってたらキタ~!間取りも夢も楽しみにしてますよ!
ありがとうございます〜。ぼちぼちやっていきます🍣
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