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『リッパー・ストリート』シリーズ5 (2016)   ディケンズ的ヴィクトリア朝ゴシック・ミステリー

〈結末や核心に関する記述あり〉

シリーズ4同様、『オリヴァー・ツイスト』や『大いなる遺産』等のディケンズ作品の影響が強い。ちなみにイギリスで猩紅熱や栄養失調などは「ディケンズ的な病気」(Dickensian diseases)と呼ばれていた。

オーガスタスの弟ナサニエルは、オーガスタスにとって、ユングの言うところの「影」であるように思えた。同様にシャインはリードの「影」でもある。

またオーガスタスと弟ナサニエルは、メアリー・シェリーの小説『フランケンシュタイン』の主人公ヴィクター・フランケンシュタインと彼が創造したクリーチャーとの関係にも似ている。第3話は非常にディケンズ的であると同時に、1935年のアメリカ映画『フランケンシュタインの花嫁』の影響を感じた。
またオーガスタスは社会的地位もあるし、経済的にも余裕がありそうだが独身で、女性と交際している様子も無い。これはオーガスタスが同性愛、あるいは性機能障害であることを暗示しているとも解釈できる。メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』は性機能障害または同性愛の話だとも言われているし、『フランケンシュタインの花嫁』が同性愛暗喩作品であることはほぼ間違いない(監督のジェイムズ・ホエールは同性愛であった)。

警察を退職しても切り裂きジャックを追い続けるアバーラインは、1987年のTVドラマ『松本清張シリーズ・天城越え』の老刑事を思い起こした。もちろん、切り裂きジャック事件に取り憑かれているアバーラインの姿は、リード自身の将来を暗示してるのだ。

最終話では、容疑者としてポーランド移民で事件当時床屋だった男が登場するが、このモデルはアーロン・コスミンスキーというユダヤ人理髪師。現在でも彼が切り裂きジャックだったという説が最有力である。

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