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『September 11 attacks.米国同時多発テロから18年.映画ゴースト・バスターズのロケに使われた消防署 LADDER 8』

秋晴れの雲ひとつない爽やかな朝だった。この日は、世界中の誰もが、自分が何をしていたか少なからず覚えている日だろう。他国でTVの映像に釘ずけになって事件を知った者、WTC現場近くにいた者はいったい何が起こったのか見当もつかない。朝8時15分、急いでホテルをでてタクシーに乗り込んだ。少々遅刻だ、待ち合わせ場所はトレードセンター北棟側のカフェ、そこにスタッフ3名が乗ったワゴン車。映像専門の記者と無線傍受のアマチュア、『火喰い男』NY消防士の1日を追う鬼ごっこのような取材だった。あと1つはツインタワー北棟25階にある投資家のオフィスを訪ねる約束があった。携帯が鳴った「車が混んでて少し遅れます」=実は私も遅れている=、北棟側近くに着いたら連絡する。20分ほどでタクシーを降りて歩いた。100m先にワゴン車が見えた。みな朝食はまだだった。8時43分か、投資家との約束が9時05分、ギリギリだな。=先にどこかで朝食を済ませてくれないか、資料を渡して20~30分ほどで話しは終わる=。火喰い男、ゴーストバスターズの追っかけはそれからだ。スタッフを残して先をいそいだ。

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(NY.トライベッカ地区 LADDER8消防署入口・ゴーストバスターズ記念ペイント)

数分と歩いていない。轟音が頭上の空を斬り裂いて行くと、その先に旅客機が見えた。機影の後を轟音が追う。タワー北棟に突っ込んだ。爆音と黒煙が上がった。一瞬の出来事に何が起きたのか理解できなかった。(えっ〜! なんだ?) 茫然と立ちすくむ。脳内の情報処理にしばらく時間がかかった。=事故か=、スタッフのワゴン車にもどった。彼らも茫然としている。カメラ機材をかついで現場へ行く、と、無意識に言ったらしい。予定変更する。火喰い男たちはみんなここに集まる、みなそれぞれ自己責任で動いてくれ、あとは流れ次第、感で動く。タワー北棟の撮影を開始して、さらにビルの近くへ、8時46分にアメリカン航空11便が突入、その17分後9時03分、ふたたび大きな轟音が近づいてきた。タワー南棟にユナイテッド航空175便が突入、爆音と黒煙が上がる。これは事故ではない、テロの可能性が高い、異常事態であることを実感した。機体とビルの破片が雨のように降り注いでいる。血まみれになった人々が泣きながら歩いてる。消防車、警察車両のサイレンと赤色灯があちこちで点滅して鳴り響いている。人だ、人が降ってきている。手のつけようがない。なんと言う悲惨な光景だろう。これいじょう表現のしようがない。

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(ツインタワー倒壊で犠牲になった消防士343名.  LADDER 8入口左)

地鳴りのような振動を感じた。午前9時59分、ユナイテッド航空175便突入から56分後、トレードセンター南棟が崩壊、10時28分、アメリカン航空11便突入から102分後、南棟に続いてトレードセンター北棟が崩壊した。どす黒い粉塵の煙が、まるで巨大なヘビの群れのようにぐるぐるとまわりながら襲いかかってきた。走れ〜!走れ〜!煙のスピードはそれよりもはるかに速い。わずか数秒で一面が粉塵の煙に呑み込まれてしまった。呼吸が苦しくなり、走る脚が止まる。建物の隙間やゴミ箱の陰に皆が身を隠す。細かく砕かれたビルの破片がバチバチ音をたてて降りそそぐ。(ああ〜、ついにその時か〜) 死を覚悟した。それから記憶が断片的になる。

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