知られざる選考方法の裏側に迫る!賞金計6億、運営費9億円!ノーベル賞“ヒミツ”の運営術

――発明家であり実業家でもあるアルフレッド・ノーベルが、その莫大な遺産で創設したノーベル賞。毎年日本でも受賞前からメディアに取り上げられるが、その総経費は実に年15億円。ここではそんなノーベル賞の選考や運用についてひもといてみたい。

(絵/黒川知希)

 日本人2人受賞の快挙――。今年も、新聞やテレビをはじめとした各メディアにそんな文字が躍った。10月5日に大村智・北里大特別栄誉教授が「寄生虫による感染症の新治療法の発見」で生理学・医学賞を、そして翌6日には梶田隆章・東京大宇宙線研究所長が「ニュートリノの質量の実証に関する研究」で物理学賞を受賞することが決まった。日本人としては昨年も赤崎勇・名城大終身教授、天野浩・名古屋大教授、中村修二・米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授の3氏が物理学賞を受賞しており、2年連続の快挙となった。

 教育水準の低下――ことさら、理数系の分野が顕著である――が国内で叫ばれる中、こうした快挙を見るにつけ、やはり日本の科学技術力には目を見張るものがあると感じさせる。だが一方で、先の小保方晴子氏による捏造論文騒動を例にとっても、良きにつけ悪しきにつけ科学というジャンルはしばしば注目を集めている。今回の特集では、その“科学”にスポットを当てているが、まずは日本中が歓喜したノーベル賞を見ていこう。

 さて、日本のみならず、世界各国で大きく報じられるノーベル賞だが、言うまでもなく、世界を見渡してもこれほどまでに注目され続け、権威を認められる賞はほかにはない。

 では、あまたある“賞”の中でも、そもそもなぜノーベル賞はそこまで権威であり続けているのだろうか? 『知っていそうで知らないノーベル賞の話』(平凡社新書)の著書があり、住友商事社員としてスウェーデンに在勤していた時から長年ノーベル賞を研究し続けてきた北尾利夫氏は、こう解説する。

「なんといっても、その選考方法が極めて厳格で、長い時間と十分な費用をかけて精緻に行われているということでしょう。ノーベル委員会が世界各国の推薦人に推薦依頼状を発送するのは、授賞式が行われる前年の9月。授賞式が行われるのは、その次の年の12月10日です。10月上旬の受賞者決定から見ても、実に1年以上の期間をかけて選考する。ノーベル賞の賞金は5つの賞(物理学賞、化学賞、生理学・医学賞、文学賞、平和賞。経済学賞についてはコラム参照)で合わせて6億円ですが、この1年以上の選考にも、4億円もの経費をかけているのです」

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