映画『はりまや橋』を手がけたアーロン・ウルフォーク監督も助言!奴隷制度描写にも変化の兆し――禁忌に挑む黒人映画の最前線

――昨年に公開され特大ヒットを放った映画『ストレイト・アウタ・コンプトン』。今なお“豊作”といわれるブラックムービー業界だが、近年はどのような映画が注目を集めているのか? 各作品をジャンル分けし、その世界観を覗きながら、タブーに挑む作品や社会風刺の利いた映画、日本未公開作品まで含め、徹底分析!

『はりまや橋』(09年)の監督を務めたアーロン・ウルフォーク監督が、本企画のために海外から参戦。過去にはディズニー・スタジオで脚本家として勤務していたことも。http://www.aaronwoolfolk.com

 2014年3月に開催された第86回アカデミー賞にて、『それでも夜は明ける』(13年)が黒人監督作品で初の作品賞に輝くという歴史が刻まれた。それからおよそ2年、ブラックムービーは人々のニーズに応えようと、ジャンルも昔以上に細分化され、盛り上がりを保ち続けている。本稿では前回の映画特集(14年3月号)以降の際立ったブラックムービーをカテゴリ分けしながら、その盛況を見ていきたい。

 まず、一番活況を呈し量産されているのが音楽映画だ。アイス・キューブやドクター・ドレーというスーパースターを輩出した西海岸ラップ・グループの重鎮N.W.Aの栄光を描いた『ストレイト・アウタ・コンプトン』【1】(15年)が日本でも公開されたことは記憶に新しいだろう。「ラップを世界的に広めたN.W.Aの物語を描く」=「ラップの歴史を紐解く」ことでもあり、N.W.Aをリアルタイムで知らない若者たちにも大いに受け入れられ、興行収入は世界中で軒並み好記録をたたき出した。N.W.Aの活動をリアルタイムで聴いていたファンからは、14年以降で好きな映画のトップに挙がり、「ファッションや音楽に文化などすべての面において、その当時を思い起こさせてくれた」という声が多く聞かれた。そしてN.W.Aメンバーで俳優としても活躍するアイス・キューブとF・ゲイリー・グレイ監督(『ストレイト~』も同監督)によるカルト作品『friday』(95年)で流行った「バーイ! フェリシア!!」【編註:ウザい人を邪険に扱う「あっち行け!」の意味で用いられ、たとえウザい人がフェリシアという名前でなくとも使われている】の台詞をさりげなく入れ、この言葉が現在『friday』公開時には生まれていなかった若い世代を中心に再ブレイクするまでに至っている。

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