【橘ケンチ×手塚マキ】EXILEとホストクラブ経営者が語る読書の愉楽――“仲間への愛”に気づく読書論

――毎年恒例になってきた夏の「EXILEと本」企画も今年で第三弾。今回はEXILEきっての読書家・橘ケンチ氏にご登場いただき、「本」を通じて新たな出会いをかなえてもらった。歌舞伎町での書店経営や、ホストクラブでの読書会など、一風変わった読書の楽しみ方を提供する手塚マキ氏との邂逅は、果たしてどんな化学反応を起こすのか……。

この日、初対面とは思えないほど会話が弾んだが、中でも盛り上がったのは「酒」の話。対談後には「日本酒を呑みに行きましょう!」と連絡先を交換する一幕も。(写真/増永彩子)

 過去2年、本誌の「本」特集ではEXILEメンバーに読書愛を語ってもらう企画をお届けしてきた。2017年7月号ではEXILE兼三代目 J SOUL BROTHERSメンバーである小林直己氏が村上春樹愛を熱く語り、18年7月号ではEXILE兼EXILE THE SECONDメンバーの橘ケンチ氏が自己啓発書・ビジネス書を中心とした読書愛を語ってくれた。

 1年おきの連載の様相を呈してきたこの企画が、今年も無事敢行。ご登場いただくのは、ご覧の通り、昨年と同じく橘ケンチ氏である。だが今年は少々趣向を変えて、対談と相成った。お相手は、元歌舞伎町No・1ホストにして、現在はホストクラブやバー、ヘアサロンなど複数店舗を運営するSmappa!Group会長の手塚マキ氏だ。

手塚氏が4月に上梓した『裏・読書』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)では、夏目漱石や村上春樹、東野圭吾などの名著についてカリスマホスト・経営者ならではの独特の視点で語っている。

 手塚氏は、「LOVE」をテーマにした本だけを扱う書店「歌舞伎町ブックセンター」を17年にオープン(現在は移転作業のため閉店中)。ホストが店員を務める異色の書店は、オープン前から話題を呼び、各種メディアで取り上げられた。手塚氏自身も、『裏・読書』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を今春に上梓しており、相当な本好きと見受けられる。「EXILE×本」「ホスト×本」――とても乱暴な物言いになってしまうが、いずれ劣らぬ珍しい取り合わせではないだろうか。なぜEXILE/ホストは本を読むのか――?

――ケンチさんは、ファンの方とオススメの本を紹介し合う書籍レコメンドサイト「たちばな書店」を主宰し、書店でのブックフェアなども行っています。一方、手塚さんは歌舞伎町ブックセンターのオーナーとして、ホストと本の距離を近づける取り組みをされています。ウェブと実店舗という違いはありますが、いずれも一風変わった“本屋さん”といえると思います。そこには何か相通じるものがあるのではないか……というのが今回の対談の狙いでして。ではまず、手塚さんは、なぜ歌舞伎町ブックセンターを作られたのですか?

手塚 僕は基本的に従業員のためのアクションしかしてきてなくて。その中でなかなか堅苦しいことを聞いてくれない彼らに向いている教育の仕方ってどんなものだろう、とずっと考えてきたんです。僕らホストにとって必要な教育は、人がうれしいときには共感して喜べて、悲しいときにはちゃんと一緒に泣けるような人間になるためのものだと思うんです。それには読書が一番効果的なのかな、と思ってきました。それで従業員たちに向けて、本を読んでブログに感想を書いて、その本をお店に持ってきたら書籍代を出す取り組みをやったことがあるんですけど、みんな全然持ってこないんですよね(笑)。だったらもう本屋をやっちゃえば読むんじゃないかな、と思って作りました。

 僕はお店にお邪魔したことはないんですが、超面白い取り組みですよね。

手塚 歌舞伎町ってやっぱり、すごく軽薄な街なんですよ。そこで生まれる会話も、深く考えない表面的なキャッチボールが多い。だからこそ、昼間一生懸命働いている人たちが、夜に来てお酒を飲んでリラックスする場所になってるんだと思います。でもそこで働いている人間がそれに慣れすぎると、本当にただの軽薄な大人になってしまう。それはあんまりよろしくないんじゃないかな、と思っていたんです。僕の周りにいるのも気のいい奴らなんですけど、その浅さのまま年を重ねていって、楽観的だった性格がだんだん卑屈になっていくパターンを結構見ています。だから、もうちょっと物事を深く考察する時間や習慣をみんなが持てるようになったらいいな、と思っていました。

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