再生数200万回超の「地方創生PR動画」ブームを検証! 補助金で作られるオナニー動画!? 地方自治体PR動画の功罪

――地方自治体が制作するPR動画が密かに話題だ。ものによっては数百万PVを稼ぐものなども現れている。だが、巨額の自治体補助金を使い数千PVほどしか稼げない動画が量産されているのも実情だ。大手広告代理店も参入し、地方創生が盛り上がる中で、そこで生まれる齟齬や補助金ビジネスをひもとく。

「動画で地方をPR」と聞いて思い出されるのは、地方自治体バージョンの「恋するフォーチュンクッキー」ですよね……。

 平成28年度は「地方創生推進交付金」に2000億円、「まち・ひと・しごと創生事業費」として1兆円など、合計1兆5000億円という莫大な予算が「地方創生」に対して割かれている。第2次安倍政権が掲げたその美名のもと、補助金バブルともいえる活況を呈しているのだ。

 そんな中、全国各地の自治体では「シティプロモーション」「観光PR」「移住促進」といったさまざまな取り組みが行われており、動画によるプロモーションがにわかに「ブーム」となっている。YouTubeにアップロードされた宮崎県小林市の移住促進PRムービー「ンダモシタン小林」は204万回、「おんせん県」をPRする大分県のPR動画「シンフロ」が131万回(いずれも9月2日現在)など、100万回再生の大台を超える動画も珍しくなく、フェイスブックやツイッターなどのSNSでも数多くのシェアを獲得。さらに、国としても移住促進プロモーション動画の制作に最大500万円の補助金を交付するなど、この動きを後押ししているのだ。

 しかし、「ンダモシタン」や「シンフロ」のような成功事例はほんの一握り。あまた生み出される動画のほとんどは、数百万円もの税金を投入したにもかかわらず、ほとんど誰にも見られぬままひっそりとYouTubeのサーバーの藻屑となって漂っている……というのが現実なのだ。

 いったい、なぜ自治体の動画プロモーションがここまで浸透したのか? そして、ブームの果てに待っている「地方創生」とは、どのような姿なのだろうか?

低予算でも地方を食い物にする代理店

 地方自治体がプロモーション活動を展開するといっても、そもそも役所内ではPRに関する知見を持っていないことがほとんど。そこで、頼りにされるのが広告代理店だ。博報堂では2015年5月に「地域創生ビジネス推進室」を設立、電通では「地域創生プロジェクト」や、女子の視点から地方創生に取り組む「ギャルラボ@」を設立するなど、地方創生系のプロジェクト獲得のために体制を整えている。

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