木村伊兵衛賞、土門拳賞から、“伝統”の写真協会賞まで……国内有名写真賞はコレだ!――有名写真賞の功罪【2】

■キング・オブ・日本の写真賞
「木村伊兵衛写真賞」

主催:朝日新聞社/創設:1975年/賞金:100万円/選考委員:岩合光昭(写真家)、瀬戸正人(写真家)、鷹野隆大(写真家)、長島有里枝(写真家)、佐々木広人(アサヒカメラ編集長)

戦前から活動した日本を代表する写真家・木村伊兵衛(1901~74年)の業績を記念して創設。プロ・アマ・年齢を問わず、毎年1月から12月までに雑誌・写真集・写真展などに発表された作品を対象として選出される写真家の新人賞。写真関係者による推薦を事務局が集計、それをもとに選考委員が合議によって選出する。その選考内容などは、毎年3月発行の「アサヒカメラ」誌に掲載される。現在の選考委員はいずれもプロの写真家であり、過去の受賞者でもある。

■第37回(2011年度)
田附勝『東北』(写真集)

派手なデコトラを追った『DECOTORA』で世に出た田附が2006年より東北地方に通って彼の地の文化や生活を撮り続けたという、リトルモア刊の写真集。

■第26回(2000年度)
蜷川実花『Pink Rose Suite』(写真集)

いまではすっかり文化人の感もある蜷川は、長島有里枝、HIROMIXと共に3人で同時受賞。蜷川氏の受賞作は『Pink Rose Suite』と『Sugar and Spice』の2作で、写真は『Pink Rose Suite』の河出書房新社による新装版。

■第27回(2001年度)
川内倫子『花火』(写真集)

淡い色合いで日常風景を幻想的に切り取る川内倫子は、本書と『うたたね』の2作(共にリトルモア)で受賞。同時受賞作に、松江泰治の『MATSUE Taiji』。

■第32回(2006年度)
梅佳代『うめめ』(写真集)

今ではグラビアなどでも活躍する梅佳代が、子どもの無邪気な表情などを撮影したリトルモア刊の写真集。同時受賞者に、本城直季の『small planet』。


■リアリズムといえばこの賞!
土門拳賞

主催:毎日新聞社/創設:1981年/賞金:30万円/選考委員:大石芳野(写真家)、鈴木龍一郎(写真家)、野町和嘉(写真家)、松山巌(建築評論家・作家)、小川一(毎日新聞社東京本社編集編成局長)

リアリズムに立脚した報道写真やポートレイトで名を馳せた写真家・土門拳(1909~90年)の業績をたたえ、毎日新聞社創刊110年記念事業としてスタート。写真関係者90余名による推薦作品の中から、写真家ら5人で構成する選考委員の合議で決定。新人賞とは銘打っていないため、巨匠から新人まで受賞者はさまざま。アフリカ各地の紛争地域を撮り続けた亀谷亮(2013年度受賞)や、水俣事件を四半世紀にわたって撮り続けた桑原史成(2014年度受賞)など、社会派ドキュメンタリーの作風を持った写真家が受賞することが多い。

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