宗教的にはハズせない? 商売の神様・伏見稲荷大社の魅力

『伏見稲荷大社』(淡交社)

世界的に人気のある京都市の伏見区にある伏見稲荷大社。「そんなところ修学旅行で行かなかった」という向きも多いだろうが、京都人にとっては古くからの信仰の場として親しまれてきた。その伏見稲荷が世界から観光客を集めるようになったきっかけとして、2005年に公開されたハリウッド映画「SAYURI」のロケ地として使われたことが大きい。

 この伏見稲荷大社を特別な場所としているのは、なんといっても、延々と連なる朱色の千本鳥居だろう。寄贈した人の名前が刻まれているこの鳥居は、この大社に約1万基あるといわれ、その一本一本が、伏見稲荷がその総本山である「稲荷神」への信仰の証である。「お稲荷さん」としても親しまれる稲荷神は、食物、農業、商業などの神であり、白い狐を使いとすることでも知られる。

 詳しくはこちらの記事に譲るが、農業神としての性格にくわえて、平安時代には真言密教と結びつき信仰が広まり、中世には商品経済発達とともに商売の神様となり、江戸期には日本中で稲荷信仰が流行したのだ。伏見稲荷大社では神道と仏教が合体した神仏習合の信仰が行なわれており、明治期に廃仏毀釈によってその両者が分離されたあとの現代でも、伏見稲荷大社ではその信仰形態が残っているのを見ることができる。伏見稲荷大社の背後に聳える稲荷山には延々と千本鳥居の列が続いており、訪れる者を時空を超えた世界に誘い出す。まさに、京都で宗教について考えるならば、やはり絶対に訪れるべき場所なのだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?