ロンドンボーイとムスリム系移民の熱い友情も!――世界の移民たちが叫ぶ幸福論

――入管法の改正や旅行者の増加もあって、移民問題が議論されるようになった日本。だがいまだ、移民たちがどのような生活をし、アイデンティティの悩みを抱えているかといったことを知る機会は少ない。本稿では、前記事のアジア圏からの移民本に続き、世界各国の移民をテーマにした文学を、紹介していこう。

文学だけでなく、映画でも移民をテーマとした作品は多い。こちらもパリ郊外の集合団地の暮らしが垣間見える良作だ。

 生まれた土地、もしくはルーツのある祖国を離れ、異国の地で生活を営む移民。その実情や暮らし、喜び、悲しみ、葛藤などを、移民自身、もしくは有名作家が描いた“移民本”は世界中にある。

 これまで日本政府は表向き「大規模な移民を受け入れない」という立場を取ってきた。しかしながら、少子高齢化で不足した労働力を補うため、外国人に門戸を拡大する流れが加速(しかも保守政党である自民党が主導)しており、これを実質的に新たな日本の移民問題の始まりとみる評論やメディア報道も目立ち始めている。日本の未来にとっても、移民の存在は議論を避けて通れないテーマとなっているのだ。

 ただし現状、労働力の一端として捉えられている移民は、ニュースや書籍において“数字”で語られることがしばしばだ。例えば、「〇万人の〇〇人が〇〇国に移住しました」「政府は〇万人を受け入れることを表明しました」という具合に。ただ普段から彼らをあまり意識してこなかった日本人にとって、数字を見ただけでは移民と暮らす状況を理解しきれない。

 そこで本企画では、彼らの本当の姿を知るべく、海外書籍の翻訳家である金原瑞人氏と三辺律子氏に、日本語に翻訳されている世界の「移民物語」について話を伺った。多様でユニークな物語を紡ぐ「移民物語」こそ、彼らを知り、また彼らが住む社会に多様性をもたらしてくれる貴重な資料となりそうだ。

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