ファッション界は「ロゴ戦争」の真っ只中!?「ダニエル・ウェリントン」ダサいのにバカ売れの謎

 現在、ファッション界には、でかでかとロゴを載せたアイテムで溢れかえっている。本稿は、ファッション・アイテムとロゴの関係性について、出版社の代表としてカルチャーマガジンを手がけながら、企業のブランディング戦略にも関わる編集者の小田明志が、紐解いていく。

たった数年で街中に広がった“妖怪ウォッチ”ダニエル・ウェリントン。

 僕が通っているジムのある自由が丘から、中目黒にあるオフィスへ向かう東横線の道すがら、薄型で大きな文字盤とクラシックなフォルムが目立つ時計を、20代の女性が身につけているのをちらほら見かけるようになったのは、確か2年ほど前のことだったはずだ。当初は「大きな文字盤の時計が流行なのだな」 くらいの認識しかなかったが、友人がインスタグラムにその時計の写真を投稿しているのを見て、それがすべて「Daniel Wellington(ダニエル・ウェリントン、以下DW)」という1本2~3万円と比較的リーズナブルな同一ブランドの時計であったことを知った。

 DWは、そのクラッシーな見かけから、老舗と誤解されがちだが、実は2011年にスウェーデンで創業したばかりの生まれて間もないブランドで、その創業者は当時30歳にも満たない青年フィリップ・タイサンダーだ。そのクラシカルなデザインの源泉は、タイサンダーが06年にオーストラリアを旅していた時に出会ったイギリス紳士が身につけていた、黒とグレーのNATOストラップ(引き通し式のナイロン製ストラップ)にあわせられたロレックスにあり、この紳士の名前こそがダニエル・ウェリントンなのだという。

 旅を終えスウェーデンの地元ウプサラに帰ったタイサンダーは、ネクタイと時計を販売するECサイトを立ち上げた。その事業で2万4000ドルを手にした彼は、オリジナルブランドであるDWを立ち上げ、創業から5年足らずで年間1億8000万ドルのセールスを上げるブランドに成長させた。今年32歳を迎えるタイサンダーは、若くして巨万の富を築いたのだ。

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