【精神科医・岩波明】閉塞する現代だからこそ紗栄子は輝く! 彼女は自己愛性パーソナリティ障害である

精神科医・岩波明
1959年、神奈川県生まれ。東京大学医学部卒。精神科医。都立松沢病院、東大病院精神科などを経て、現在、昭和大学医学部精神医学講座教授、昭和大学附属烏山病院・院長。近著に『大人のADHD もっとも身近な発達障害』(ちくま新書)など。

『Saeko』(アメーバブックス新社)

 ネットでバッシングされつつも、紗栄子さんは一部から強く支持されています。普通の女性タレントであれば、ダルビッシュ選手のような“玉”を掴んだら、そこに安住するでしょう。しかし紗栄子さんはそうしなかった。その点に彼女の「特別さ」を感じる人がいるのだと思います。

 野球選手は遠征が多く不在がちですし、たまに自分がマスコミに出ても「ダルビッシュ選手の妻」として紹介されてしまう。彼女には、「もっと注目されたい」という思いがあったのでしょう。

 心情的には、2006年に都内で起きた「セレブ妻殺人事件」の犯人・三橋歌織受刑者の思考パターンに近いところがあるように思います。彼女の実家は新潟県の地元の名士。東京の女子大に通うも金遣いが荒く、かなりの仕送りがあっても足りず、結婚後も愛人がいたことがわかっています。彼女はカネとプライドを追い求めて殺人にまで至りましたが、若い女性からは不思議と支持されていました。

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