イデオロギー操作は誰によって行われた?――「秋田美人」は虚構なのか? 地域別美人説の潮流

――「秋田美人」「京美人」「博多美人」などの地域別美人の名称はメディアでもたびたび取り上げられているが、一般的に世間で流布しているその土地の風土に関連させたような説は、根拠として乏しいのではないか? 都市伝説とも呼べるかもしれない、こうした「美人神話」の謎を追う。

上から時計回りで吉岡里帆(京美人)、橋本環奈(博多美人)、佐々木希(秋田美人)。芸能人が輩出されると、説得力が増す……のか?

 美人を語る際に秋田、京都、博多の3つの地域から構成される「日本三大美人」という「地域別美人」が取り上げられることが多い。

 これらを語るとき、その土地で美人が生まれやすい風土に関する説が唱えられ、メディアでもたびたび言及されている。

 とはいえ、当然ながら「美人の統計データ」なんてものがあるはずもなく、これらはあくまでも俗説でしかない。それなのに、なぜこのような「地域別美人説」が世間ではもてはやされているのだろうか? 本稿ではこの「美人神話」がなぜ生まれ、どのように流布していったのか、その印象操作の歴史を考察していきたい。

 まず昨今、「地域別美人説」がメディアでどのように取り上げられているのかを確認しよう。『ビジネスの9割は「県民性」でうまくいく』(学研新書)などの著書で知られる矢野新一氏が、2010年6月17日号の「プレジデント別冊」(プレジデント社)に寄稿した「なぜ、京都・秋田・博多が『日本三大美人』といわれるのか?」という記事では、秋田に美人が多い理由を「日照時間が短いため紫外線を浴びることが少ない」「県中部に色白の女性が多いのは、玉川温泉などの強酸性水に馴染んできたため」「酒のうまいところは美人が多いとされる」などと述べ、最終的に秋田には「色白肌のぽちゃぽちゃ系美人と彫りの深いロシア系の2種類の美人がいる」と着地する(ぽちゃぽちゃ系に関する説明はない)。

 こうした説は科学的な根拠はないにしても、“物語”としてはなんとなく納得させられそうになるが、一方で「日照時間が短いため、色白な女性が多い」という説について、『21世紀の民俗学』(KADOKAWA)などの著書を持つ、民俗学者の畑中章宏氏は次のように指摘する。

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